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特養から「今回は入所に至りませんでした」と連絡が来ました。要介護1か2なので対象外だと言われました。申し込んだはずなのに、名簿に記録が見当たらないと言われました。
この記事は、そうやって「特養に落ちた」と受け取った家族に向けて、次の一手を順番に書いたものです。
特養で「落ちた」と言われる場面は、不合格の通知とは別物で、4つに分かれます。どれに当たるかが分かれば、順位を上げる材料、特養が決まるまでのつなぎ先、つなぎの費用差の理由、特養へ移るときの手順まで、次にやることが決まります。
特養(特別養護老人ホーム)の入所は、合否で決まる仕組みとは別の形で動きます。国の基準は、申込者の数が空きの数を超えている場合に「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し」、必要性が高いと認められる人を優先的に入所させるよう施設に求めています。家族が「落ちた」と受け取る場面は4つに分かれ、どれに当たるかで次の一手が変わります。
| 状況 | 誰が決めたか | 次の一手 |
|---|---|---|
| 今回の判定で選ばれなかった | 施設の入所に関する検討のための委員会 | 順番待ちは続いている。点数を上げる材料を出す |
| 要介護1か2で特例入所が認められなかった | 施設と市町村 | 特例入所の事情に当てはめて申し出る |
| 申込の有効期間が切れていた | 施設・自治体の名簿の運用 | 申し込み直す |
| 医療処置などで施設が受け入れを見送った | 施設の体制 | 体制の合う特養へ申込先を変える |
表の上から順に、自分の状況がどれに当たるかを施設に聞いて確かめます。
まず考えられるのは、施設に空きが出たときの判定で、他の申込者が優先された場合です。特養の運営基準は、入所申込者の数が空きの数を超えている場合に「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならない」と定めています。
厚生労働省の入所指針は、この運用に透明性と公平性を持たせるため、施設に「入所に関する検討のための委員会」を設け、入所の決定はその合議によるものとするよう求めています。委員会は施設長と生活相談員、介護職員、看護職員、介護支援専門員等の関係職員で構成します。
つまり、空きが1つ出るたびに、申込者の必要性の高さを比べて入所者が決まる仕組みです。今回選ばれなかったとしても、申込はそのまま残ります。次の空きが出れば、また判定の対象になります。
施設に聞く3つ
自治体によっては順位や点数を開示していて、開示の可否は施設か市区町村の窓口で確認できます。3つの答えで、自分がどの位置にいるかが分かります。
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第7条第2項
出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日・老健局高齢者支援課長通知)
特養の入所は、2015年4月1日から要介護3以上が原則です。厚生労働省の入所指針は、この日以降の施設への入所が「原則要介護3以上の方に限定される」一方で、居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由がある要介護1か2の人の「特例入所」が認められると書いています。
「要介護1か2なので対象外です」と言われたときは、申込の書類に特例入所の事情を書いて出していたかどうかを、まず確かめます。指針は、施設が入所申込みの書類に特例入所の要件を具体的に記載し、その内容を申込者側に丁寧に説明したうえで、要件への該当に関する申込者側の考えを記載してもらうこととしています。事情は次の章で挙げる4つで、どれかに当てはまれば申し出られます。
指針は、要介護1か2の人が特例入所の要件に当たると申し立てているときの扱いを、こう定めています。
申込者側から特例入所の要件に該当している旨の申立てがある場合には、入所申込みを受け付けない取扱いは認めないこととする。
申込自体を断られた場合は、この一文を根拠に、市区町村の介護保険窓口へ相談できます。
出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日・老健局高齢者支援課長通知)
自治体や施設によっては、申込に有効期限があります。たとえば船橋市は、4月と10月に入所待機者の順位を見直し、選定基準で算出した点数の高い人から順位をつけた名簿を作ります。名簿の有効期間は6か月です。4月と10月以外の月にも随時申請を受け付け、点数に応じて名簿に加えていく運用です。
施設から申込の記録が見当たらないと言われた場合は、有効期間が切れている可能性があります。申し込み直せば、また名簿に載ります。順位を決めるのは点数なので、申込の早さより点数が効きます。待った長さそのものより、いま出せる材料が順位を動かします。
申込が切れる仕組みと、切らさないためにすることは、次の記事が詳しく扱っています。
出典: 船橋市 特別養護老人ホームへの入所申込方法及び入所者選定基準
特養に置く医師の員数は、国の省令で「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」と定められています。同じ省令は看護職員について、入所者30人までなら常勤換算で1以上、30人を超えて50人までなら2以上、50人を超えて130人までなら3以上、という下限を置いています。これは事業所として置く人数の基準なので、どの時間帯に誰がいるかは施設ごとの体制によります。
たんの吸引や経管栄養に対応できるかどうかも、施設ごとに幅があります。医療処置の内容によっては、点数とは別に「この施設では受け入れが難しい」と判断されます。
認知症に伴う行動(夜間の大声、他の入居者への手出しなど)も、同じ理由で見送られることがあります。この場合は順位の問題より、施設の体制の問題です。
体制の合う特養を探し直すのが早道です。断られた理由の具体化と、断られたときに電話で確かめることは、次の記事が扱っています。
認知症対応可の施設に断られたとき、次を探す前に理由を具体化する方法
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第2条第1項
順位を決めるのは、申込の早さより点数です。点数は自治体や施設の基準表で決まります。厚生労働省の入所指針は、必要性の高さを判断する材料として、要介護度を勘案する「介護の必要の程度」、単身世帯か否かや同居家族が高齢又は病弱か否かを勘案する「家族の状況」、居宅サービスの利用に関する状況などを挙げています。船橋市は「介護に係る労力の程度、認知症の状況、在宅介護の困難性」の3項目を中心に点数化しています。
点数を動かす材料は4つあり、加えて申込先を広げる方法が1つあります。この章では次の5つを順に見ます。
上から順に、自分に当てはまるものを選んで手を打ちます。
申し込んだ後に本人の状態が悪くなっていれば、要介護度の区分変更を申請します。介護保険法第29条第1項は、要介護認定を受けた被保険者が、介護の必要の程度が現に受けている要介護状態区分以外の区分に該当すると認めるときに、市町村へ区分変更の認定の申請ができると定めています。要介護度が上がれば、基準表の点数も上がります。
申請先は市区町村の介護保険窓口です。同法第27条第1項は、指定居宅介護支援事業者などに申請の手続を代わって行わせることができると定めていて、この規定は第29条第2項により区分変更の申請にも準用されます。つまり、ケアマネに申請を頼めます。
結果が出るまでの期間も条文にあります。申請に対する処分は「当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない」と定められています。心身の状況の調査に日時を要するなどの特別な理由があるときは、30日以内に処理見込期間と理由を通知して延期する扱いになります。
「最近転倒が増えた」「食事に介助が要るようになった」「夜間の対応が増えた」といった変化があれば、ケアマネに「区分変更を申請したい」と伝えます。特養の順位に加えて、在宅サービスの区分支給限度基準額も上がります。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法 第27条第1項・第11項、第29条
基準表の中で、家族が動かしやすいのが介護者の状況です。厚生労働省の入所指針は「家族の状況」の勘案として、単身世帯か否か、同居家族が高齢又は病弱か否かなどを挙げています。介護者が働いている、病気になった、遠方に住んでいる、高齢である、単身で介護している、といった事情は、この項目に当たります。
申込のときに書いた状況が変わっていれば、施設に届けます。介護者が入院した、仕事を辞めざるを得なくなった、介護していた家族が亡くなった、といった変化は点数に直結します。
届け出には様式があります。船橋市の場合は、入所申込書(第1号様式)と状況申告書(第2号様式から第5号様式)を、介護保険被保険者証を添えて希望する施設へ提出する形です。届出は書面で出して、控えを手元に残すと、いつ何を申し出たかを後からたどれます。届出の様式と時期は、次の記事が扱っています。
出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日・老健局高齢者支援課長通知)
出典: 船橋市 特別養護老人ホームへの入所申込方法及び入所者選定基準
「在宅介護の困難性」は、家族の主観より記録で示します。ショートステイを月に何日使っているか、訪問介護と訪問看護が週に何回入っているか、夜間の対応が月に何回あったかは、ケアマネのケアプランと実績記録に残っています。
厚生労働省の入所指針も、必要性の高さを判断するその他の勘案事項として「居宅サービスの利用に関する状況など」を挙げています。使った量そのものが、判断の材料になります。
ケアマネに「特養の申込先に出すので、サービスの利用実績を1枚にまとめてもらえますか」と頼みます。ショートステイの日数が増えている、区分支給限度基準額いっぱいまでサービスを使っている、という記録は「在宅で支えきれなくなっている」ことの客観的な材料です。
夜間に何度も起きる、転倒が続いている、といった出来事は、家族が日付と内容をメモしておき、ケアマネの記録と一緒に出します。
出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日・老健局高齢者支援課長通知)
要介護1か2の人が特養に申し込むには、次の4つの事情のどれかに当てはまる必要があります。厚生労働省の入所指針が、申込書の記載例として挙げている4つです。
要介護1か2で特例入所の対象になる4つの事情
指針は、施設が特例入所の要件に該当する旨の入所申込みを受けたときに、保険者である市町村へ報告を行い、その入所申込者が特例入所対象者に該当するかを判断するにあたって適宜その意見を求めることとしています。市町村の側も、地域の居宅サービスや生活支援の提供体制の状況や、担当の介護支援専門員から聴いた居宅における生活の困難度を踏まえて、施設へ意見を表明できます。
家族の側は、どの事情に当たるかを具体的に書いて、施設と市区町村の介護保険窓口の両方に伝えます。「認知症と診断されていて、夜間に外へ出ようとするので家族が交代で見守っています」「同居している介護者が80代で持病があります」のように、事情を本人の状態に引き当てて書くのがコツです。
出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日・老健局高齢者支援課長通知)
特養には2つの種類があります。介護保険法は、定員30人以上の特別養護老人ホームを「介護老人福祉施設」、定員29人以下の特別養護老人ホームを「地域密着型介護老人福祉施設」と定めています。地域密着型サービスは、その市町村の長が指定した事業者から受けたときに保険給付の対象になる仕組みなので、地域密着型の特養は、その市町村の被保険者が利用する形になります。
定員30人以上の特養(広域型)は、住んでいる市町村の外にも申し込めます。待機が長い都市部を避け、通える範囲の郊外や家族の住む地域の特養へ申込先を広げると、順番が早く回ることがあります。複数の施設に同時に申し込めるかは自治体によって違うので、窓口で確認します。
家族が通いやすい場所かどうかは、入所後の面会の頻度に直結します。遠くても早く入れる施設と、近くても待つ施設のどちらを取るかは、本人と家族で決めておきます。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法 第8条第22項・第27項、第42条の2第1項
在宅が限界なら、特養を待ちながら別の場所で過ごす「つなぎ」を考えます。つなぎ先は4つあり、選ぶときに見るのは費用、特養の順位への影響、移るときの縛りの3つです。
| つなぎ先 | 費用の決まり方 | 特養の順位への影響 | 移るときの縛り |
|---|---|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 居住費・食費は国の基準費用額。補足給付あり | 施設入所中の扱いになる自治体がある | 在宅復帰の検討を少なくとも3か月ごとに受ける |
| 介護付有料老人ホーム | 家賃・食費は市場価格。補足給付の対象外 | 施設入所中の扱いになる自治体がある | 解約の予告期間・前払金の扱い |
| ショートステイの連続利用 | 在宅サービスの範囲 | 在宅のまま | 連続30日を超えた日以降は算定の対象外 |
| 小規模多機能型居宅介護 | 在宅サービスの範囲 | 在宅のまま | 登録定員29人以下・泊まりの利用定員 |
表の下2つは在宅サービスなので、特養の順位はそのままです。上2つは費用と順位への影響を確かめてから決めます。
介護老人保健施設(老健)は、リハビリをして在宅に戻ることを目的にした施設です。費用は介護保険の自己負担と居住費・食費で、居住費と食費は特養と同じく国の基準費用額で決まり、補足給付(特定入所者介護サービス費)の対象になります。介護保険法第51条の3は、補足給付の対象になるサービスとして、指定介護福祉施設サービス(特養)、介護保健施設サービス(老健)、介護医療院サービス、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護の6つを挙げています。
在宅復帰が前提の施設なので、老健は入所者が居宅で生活できるかどうかを定期的に検討します。国の基準は、この検討を医師、薬剤師、看護・介護職員、支援相談員、介護支援専門員等の間で協議し、内容を記録するよう定めています。厚生労働省の解釈通知は、検討の間隔を「少なくとも三月ごとには行うこと」としています。
申込のときには「特養に申し込んでいて、決まるまでの入所を希望している」と伝え、受け入れの可否をその場で確かめます。老健に入ると「在宅」から外れるため、特養の基準表で在宅介護の困難性の点数が下がる自治体があります。この点は次の有料老人ホームと同じです。
出典: e-Gov法令検索 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 第8条第4項・第5項
出典: 厚生労働省 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について(平成12年3月17日老企第44号)
介護付有料老人ホームは、都道府県知事などの指定を受けた「特定施設入居者生活介護」の事業所で、介護は施設の職員が行います。空室があれば、そこから入居の日程を決められるので、特養の順番待ちと並行して探せます。要介護度が上がっても住み続けられる施設が多くあります。
費用は特養より高くなります。家賃・管理費・食費が市場価格で決まり、補足給付の対象からも外れているためです。特養と有料老人ホームの費用差の理由は、次の章で費目ごとに説明します。
特養に移ることを前提に入る場合は、契約のときに「特養が決まったら退去する予定」と伝え、解約の予告期間と前払金の扱いを重要事項説明書で確かめます。つなぎ入居の契約の進め方(短期の入居契約・途中退去のときの返還金)は、別の記事で扱います。
ショートステイ(短期入所生活介護)は、特養などに短期間泊まるサービスです。介護報酬には長期の利用についての決まりがあり、連続して30日を超えてサービスを受けている場合、30日を超える日以降に受けたサービスは、短期入所生活介護費の算定の対象から外れます。自費の日を挟んで同じ事業所を続けて利用する場合は、連続30日を超えた日から1日につき30単位の減算になります。
ショートステイは在宅サービスなので、特養の基準表では「在宅」のままです。むしろ、ショートステイの利用日数が多いことは「在宅介護の困難性」の材料になります。
空きのある施設と、上限を超える日の扱いは、ケアマネが調整します。「特養が決まるまで、ショートステイを最大限使いたい」と伝えれば、ケアプランを組み直してもらえます。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第180回・令和2年7月20日)資料4 短期入所生活介護
小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所が「通い」「泊まり」「訪問」を組み合わせて提供するサービスです。月額の定額で、泊まりの回数を状況に応じて増やせます。顔なじみの職員が通いも泊まりも担当します。
在宅サービスの扱いなので、特養の順位はそのままです。国の省令は、登録できる人数を29人以下(サテライト型は18人以下)、通いの1日あたりの利用定員を登録定員の2分の1から15人まで、泊まりの利用定員を通いの利用定員の3分の1から9人までと定めています。定員が埋まっていれば、空きを待つことになります。
小規模多機能に登録すると、居宅サービス計画はその事業所の介護支援専門員が作ります。特養の申込は本人・家族が施設と直接やり取りしているものなので、ケアマネが変わっても申込は続きます。
出典: e-Gov法令検索 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準 第66条・第74条
老健や有料老人ホームに移ったら、申込先の特養に居所の変更を届けます。連絡先の更新に加えて、基準表に「現在の居所」の項目を入れている自治体があり、在宅か施設入所中かで点数が変わります。
届け出を怠ると、施設からの連絡が途絶え、意思確認への返答が途切れたまま名簿から外れることがあります。届けると点数が下がることがあっても、申込を失うほうが損です。
点数の項目に居所が含まれているか、施設入所中はどう扱われるかは、申込先の施設か市区町村の窓口で確認します。つなぎ先を選ぶときは、この影響を先に聞いておきます。特養と有料老人ホームの申込順序と費用の試算は、次の記事が扱っています。
特養と有料老人ホームの費用差は、介護保険の自己負担の差より、居住費と食費の差から生まれます。特養は居住費・食費が国の定める額で、所得が低ければ軽減されます。有料老人ホームは家賃・食費が市場価格で、軽減の仕組みの外にあります。
| 費目 | 特養 | 有料老人ホーム |
|---|---|---|
| 介護保険の自己負担 | 要介護度と負担割合で決まる | 介護付なら特定施設として同様に決まる |
| 居住費(家賃) | 国の基準費用額。補足給付で軽減あり | 市場価格。補足給付の対象外 |
| 食費 | 国の基準費用額。補足給付で軽減あり | 施設ごと。補足給付の対象外 |
| 上乗せの介護費・管理費 | 原則なし | 施設ごとにあり |
| 入居一時金 | なし | 施設によりあり |
| 高額介護サービス費 | 対象 | 対象 |
表の2行目と3行目が、差の大半を作ります。
特養の居住費と食費は、施設の裁量とは別に、国が「基準費用額」を定めています。2024年8月からの1日あたりの基準費用額は、居住費が多床室915円、従来型個室1,231円、ユニット型個室的多床室1,728円、ユニット型個室2,066円、食費が1,445円です。
多床室なら、居住費と食費を合わせて1日2,360円、30日で7万800円です。ユニット型個室なら1日3,511円、30日で10万5,330円です。これに介護保険の自己負担と日常生活費(理美容代、嗜好品など)が加わります。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムは、要介護5の人の1か月の自己負担の目安を、多床室で約106,930円、ユニット型個室で約143,980円としています。内訳は施設サービス費の1割、居住費、食費、日常生活費(約10,000円)です。
有料老人ホームの家賃は、施設ごとの市場価格で決まります。差の大半は、この居住費・食費の決まり方の違いです。
出典: 厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
特養の居住費と食費は、所得が低い世帯に対してさらに下がります。「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という仕組みで、市区町村に申請して負担限度額認定を受けると、所得段階に応じた負担限度額までの支払いで済みます。基準費用額との差額は、保険から施設に支払われます。
対象は、本人と世帯の所得と、預貯金などの資産の額で決まります。生活保護を受けている人や、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者が第1段階、世帯全員が市町村民税非課税で本人の公的年金等収入額とその他の合計所得金額の合計が80.9万円以下の人が第2段階、という区分です。預貯金額の要件も段階ごとにあり、第2段階なら650万円(夫婦の場合は1,650万円)です。
金額で見ると差は大きくなります。第1段階で多床室なら、居住費の負担限度額は0円、食費は300円です。基準費用額の915円と1,445円との差額は、保険から施設に支払われます。
申請先は市区町村の介護保険窓口です。負担限度額認定を受ける手続きなので、入所の前に済ませておきます。
出典: 厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
介護保険法第51条の3が挙げる補足給付の対象は、指定介護福祉施設サービス(特養)、介護保健施設サービス(老健)、介護医療院サービス、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護の6つです。介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームは、この一覧の外にあります。
つまり、有料老人ホームでは、所得が低くても家賃と食費は市場価格のままです。年金収入が少ない人ほど、特養と有料老人ホームの費用差は大きくなります。
つなぎとして有料老人ホームに入る場合、この差を「特養が決まるまでの期間」だけ負担することになります。期間の見通しが立たないまま入ると、差額が積み上がるので、前の章の「特養の順位への影響」と合わせて考えます。
介護保険の自己負担が月の上限を超えたときに、超えた分が支給される「高額介護サービス費」は、特養でも介護付有料老人ホームでも使えます。上限は所得区分で決まります。厚生労働省が示す区分では、市区町村民税課税世帯で課税所得380万円(年収約770万円)未満なら月44,400円(世帯)です。課税所得690万円(年収約1,160万円)以上なら月140,100円(世帯)、市町村民税世帯非課税なら月24,600円(世帯)と段階が分かれます。
ただし、対象は月々の利用者負担額の合計です。厚生労働省の説明も、福祉用具購入費や食費・居住費等の一部をこの合計から除くとしています。居住費、食費、上乗せの介護費、管理費、日常生活費は、対象の外にあります。
「有料老人ホームでも高額介護サービス費があるから安心」と考える家族がいます。ところが有料老人ホームの費用の大半は家賃・管理費・食費で、そこは対象の外です。特養との差が縮まる場面は限られます。
支給を受けるには、市区町村への申請が要ります。
出典: 厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
特養の居住費は、部屋のタイプで差があります。厚生労働省が示す基準費用額で見ると、多床室(相部屋)は1日915円、ユニット型個室は1日2,066円で、30日にすると3万4,530円の差になります。
部屋のタイプは施設ごとです。費用を抑えたい場合は、多床室のある特養に申込先を広げるのも1つの方法です。
補足給付を受けた後の金額にも差が残ります。厚生労働省が示す負担限度額は、第1段階で多床室が0円、ユニット型個室が880円です。第2段階でも、多床室が430円、ユニット型個室が880円と開きます。
本人の性格(他人と同室で眠れるか)と費用の両方で、部屋のタイプを決めます。有料老人ホームの費目(入居一時金と月払いの違い)は、次の記事が扱っています。
出典: 厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
特養から入所の連絡が来てから動き出すと、返事の期限に間に合いにくくなります。つなぎ先に入った時点で、移るときの手順を決めておきます。手順は4つです。
上から順に、つなぎ先へ入る日までに1つずつ決めておきます。
ある家族の進め方
母(要介護4)を介護付有料老人ホームに入れて特養を待っていた次女は、入居した月に「特養から連絡が来たら、返事の期限は何日か」「有料老人ホームの解約は何日前に言えばよいか」を両方に聞いてメモしておきました。8か月後に特養から「2週間後に入所できます」と連絡が来たとき、有料老人ホームには即日で退去を申し出て、予告期間の30日分の月額を払う代わりに、退去日を入所日の前日に合わせました。二重払いは1日で済みました。
特養から「空きが出たので入所できます」と連絡が来たとき、返事の期限は施設によって違います。期限を過ぎると辞退の扱いになり、順位が下がったり名簿から外れたりすることがあります。
連絡を受けたら、最初に「いつまでに返事をすればよいですか」「入所日はいつを想定していますか」を聞きます。そのうえで、つなぎ先の退去に何日かかるかを逆算します。
辞退したときの扱い(順位の低下・再申込の制限)は、次の記事が扱っています。
有料老人ホームの契約には、退去の何日前までに申し出るかという「予告期間」があります。重要事項説明書の契約の解除に関する欄と、契約書の解約条項に書かれています。予告期間より短い日数で退去したときの扱いも、同じ欄に書かれています。
老健の退所は、施設が行う在宅復帰の検討と調整して決めます。特養が決まったことを伝えれば、退所の手続きが進みます。
つなぎ先に入る時点で、予告期間と、途中で退去したときの前払金の返還のルールを確かめておきます。返還金の仕組みは、別の記事で扱います。
特養の入所日とつなぎ先の退去日が離れると、その期間は両方の費用がかかります。特養の入所日を聞いたら、つなぎ先の退去日をできるだけ近づけて交渉します。
有料老人ホームの精算の単位(日割りか月単位か)は、契約書と重要事項説明書に書かれています。老健は1日あたりの費用で計算されるので、退所日までの分を払います。
引っ越しの荷物は特養の居室の広さに合わせて減らします。持ち込める家具の範囲は施設ごとなので、入所前に施設から持ち物のリストをもらいます。
特養に入ると、施設に置かれた医師が健康管理と療養上の指導を担当します。それまでの主治医に診療情報提供書を書いてもらい、薬の情報(お薬手帳)と一緒に特養へ渡します。
ケアマネは、特養の入所と同時に施設の介護支援専門員に変わります。居宅ケアマネ、または老健・有料老人ホームのケアマネからの引き継ぎとして、これまでのケアプラン、本人の好み、注意点を書面で渡します。
特養の運営基準は、入所に際して、居宅介護支援事業者への照会等により、心身の状況、生活歴、病歴、指定居宅サービス等の利用状況等の把握に努めなければならないと定めています。家族が同じ内容を1枚にまとめて渡せば、施設側の把握が早く進みます。
家族が自分で書く引継ぎ票の作り方は、次の記事が扱っています。
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第7条第3項
特養の入所は、申込者の必要性の高さを比べて決まる仕組みです。今回選ばれなかったことと、申込が消えたことは別です。「落ちた」と受け取る場面は4つに分かれ、順番待ちが続いているのか、特例入所の事情の申し出が要るのか、申込の有効期間が切れていたのか、施設の体制の問題だったのかで、次の一手が変わります。
次の一歩は、申込先の特養に電話して「今の順位」「点数の内訳」「次の見直しの時期」の3つを聞くことです。ここを飛ばして有料老人ホームを探し始めると、順番待ちが続いていたと後から気づき、その間の月額の差を何か月分も負うことになります。
次に確かめるのは、自分の自治体の基準表で、点数の項目に何が並んでいるかです。要介護度、介護者の状況、在宅サービスの利用状況、居所のどれを動かせるかが分かれば、次の判定までに出す材料が決まります。介護のあんしんでは、特養に落ちたときの再申込とつなぎ先の選び方も含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。