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特養に申し込んで待っていますが、在宅の介護はもう限界です。有料老人ホームにいったん入るとして、あと何か月待つのか、短い期間だけ入れる契約はあるのかを知りたいところです。特養が決まって途中で出たときに、お金がどうなるのかも気になります。
この記事は、特養を待つ間のつなぎ入居について、その3つに順番に答えます。
つなぎ入居は、特養の待機の見込み期間で契約の型を選びます。入居後3か月以内の退去なら、法律の決まりで前払金は日割の家賃等を引いた残りが全額戻り、3か月を過ぎると初期償却分は施設のものになります。この違いが分かると、月払い型にするか、前払金型にするか、短期利用で済ませるかが決まります。
特養の待機期間は、全国の平均や地域の目安より、申込先の施設で年に何人入所しているかと、自分の順位で見込みます。見込みを立てるときに見るのは次の4つです。
この4つが分かると、つなぎの期間がおおよそ何か月か、何年かの見当がつきます。
特養の空きは、入所している人が退所したときに出ます。つまり、その施設で年に何人が新しく入所しているかが、空きの出る速さです。
たとえば仮の数字で考えます。定員100人の施設で年に15人が退所すれば、年に15人が新しく入所します。自分の順位が30番目で、順位が動かないとすると、30÷15=2で、2年前後の見込みになります。
施設に聞く2つ
順位を開示しているかは自治体と施設で違います。年間の入所数のほうは、施設が持っている記録から答えられる数字です。この見込みは、特養の側に順位を上げる材料を出すほど短くなり、他の申込者の状況が変わると長くなります。目安として使い、3か月ごとに聞き直します。順位の開示の可否と、申込が切れる仕組みは、次の記事が扱っています。
特養の入所は、申込の順番より、介護の必要の程度と家族等の状況で決まります。国の運営基準は、入所申込者の数が空きの数を超えている場合に「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならない」と定めています。
厚生労働省の入所指針は、この勘案事項の中身を示しています。「介護の必要の程度」については要介護度を勘案すること、「家族の状況」については単身世帯か否か、同居家族が高齢又は病弱か否かなどを勘案すること、その他の勘案事項としては居宅サービスの利用に関する状況などが考えられること、の3つです。
この指針そのものは、関係自治体と関係団体が協議して共同で作り、公表します。施設は入所希望者にその内容を説明します。自分の地域の指針を取り寄せれば、何がどう勘案されるかが分かります。
つなぎ先の有料老人ホームに入ると、この勘案事項のうち家族の状況と居宅サービスの利用状況が変わります。つなぎ先に入る前に、申込先の施設か市区町村の窓口へ「施設に入った場合、判断はどう変わりますか」と聞き、変わるなら待機期間の見込みを長めに取り直します。順位を上げる材料は、次の記事が扱っています。
特養に落ちたら次どうする?順位を上げる再申込とつなぎ先と費用差
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第7条第2項
出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日 老高発1212第1号)
特養に払う居住費は、部屋のタイプで基準が決まっています。厚生労働省が示す基準費用額は、1日あたり多床室915円、従来型個室1,231円、ユニット型個室的多床室1,728円、ユニット型個室2,066円です。
同じ地域でも、施設によって申込の集まり方は違います。費用の安い部屋や、家族が通いやすい場所の施設に申込が集まれば、その施設の順位は後ろになります。
複数の施設に申し込んでいる場合、先に順番が来た施設から入れます。つなぎの期間を短くしたいなら、部屋のタイプと立地の条件を少し広げて申込先を足すのが、順位を上げる材料を出すのと並ぶ現実的な方法です。広げた先の施設にも、年間の入所数と自分の順位を聞いておきます。
出典: 厚生労働省 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料
厚生労働省の調査では、2025年4月1日時点で特養に申し込んでいる要介護3以上の人は全国で20.6万人、そのうち在宅で待っている人は8.6万人です。2022年度の調査は25.3万人と10.6万人で、3年で4.7万人(18.4%)減りました。
同じ調査には、都道府県ごとに、要介護3以上の認定を受けた人のうち特養に申し込んでいる人が何%かも出ています。この割合は、高いところで21.3%、低いところで4.4%と、5倍近く開いています。
つまり、この数字は「全国と地域の混み具合」を示すもので、自分の順番が何か月かは別の話です。待機者が減っていても、都市部の人気の施設は年単位で待ち、地方の施設は数か月で声がかかることがあります。
地域ごとの待機者数と待機期間の目安は、次の記事が詳しく扱っています。この記事では、統計より「申込先の年間入所数と自分の順位」で見込みを立てる方法を勧めます。
出典: 厚生労働省 特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)
特養を待つ間に有料老人ホームへ入る契約には、3つの型があります。短期利用、月払い型、前払金型です。どれを選ぶかで、途中退去のときのお金の扱いが変わります。
| 契約の型 | 入居時の負担 | 月額 | 途中退去のときの扱い | 合う見込み期間 |
|---|---|---|---|---|
| 短期利用(介護付有料老人ホームの空室を期間限定で使う) | なし | 日額で計算 | 期間満了で終了 | 数週間から1か月 |
| 月払い型(前払金0円) | 敷金がある場合のみ | 家賃を毎月払う | 退去予告期間分の月額 | 3か月から数年 |
| 前払金型 | 前払金(入居一時金) | 前払いした分だけ下がる | 未経過分の返還と初期償却 | 長期 |
右端の「合う見込み期間」が、この記事の答えの骨組みです。厚生労働省が定める重要事項説明書の様式にも、利用料金の支払い方式として「全額前払い方式」「一部前払い・一部月払い方式」「月払い方式」「選択方式」の欄があり、その施設がどの型を用意しているかは、見学の前に書面で分かります。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別紙様式 重要事項説明書
介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)には、空いている居室を短期間だけ使う「短期利用特定施設入居者生活介護」の仕組みがあります。介護保険の給付の対象で、施設が満たすべき基準は厚生労働大臣の告示に4つ並んでいます。
短期利用の4つの基準(厚生労働省告示 厚生労働大臣が定める施設基準)
読み解くと、特養の順番が数週間以内に来そうな場合や、在宅の介護者が入院した間だけ預けたい場合に、有料老人ホームを短い期間の泊まりの場所として使えます。前払金はゼロで、施設が受け取れるのは家賃などの対価だけと告示で決まっています。
利用期間が30日以内と決まっているので、それを超える見込みなら、月払い型の入居契約へ切り替えます。施設に「短期利用特定施設入居者生活介護の届出はありますか」と聞くと、使えるかどうかがすぐ分かります。
出典: 厚生労働省 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第96号)
月払い型は、家賃を毎月払う契約で、前払金(入居一時金)はゼロです。入居時の負担は敷金がある場合のみで、退去時に日割の家賃と原状回復費を精算して終わります。
敷金には上限があります。老人福祉法施行規則は、有料老人ホームが受け取れる敷金を「家賃の六月分に相当する額を上限とする」と定め、この範囲の敷金を前払金の計算から外しています。家賃15万円の施設なら、敷金は90万円までです。
つなぎ入居と相性が良いのは、途中退去の返還金の計算が起きないからです。特養が決まって出るときに払うのは、退去の予告期間分の月額までで、前払金の償却の計算と無縁です。
その代わり、月額は前払金型より高くなります。特養の待ちが1年を超えそうなら、月額の差が積み上がります。見込み期間と月額の差を天秤にかけて選びます。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法施行規則 第20条の9
前払金型は、想定した居住期間分の家賃の一部または全部を入居時にまとめて払う契約です。その分、毎月の家賃は下がります。
国の指導指針は、前払金の算定根拠を「(1ヶ月分の家賃又はサービス費用)×(想定居住期間(月数))+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)」の形で示しています。式の後ろ半分があるので、想定居住期間を超えて住み続けても、その分の家賃は入居時に払い終えている扱いになります。
つなぎ入居で問題になるのは、途中退去です。特養が決まって数か月で出ると、前払金のうち戻る額と戻らない額が、契約の条件と法律の決まりで分かれます。その仕組みは、このあとの「途中退去で前払金が戻る仕組み」で説明します。
入居時の負担が大きいため、特養の待ちが短い見込みなら、前払金型は避けるのが基本です。前払金型を選ぶなら、想定居住期間と初期償却率を契約前に確かめます。前払金と月払いの総額の比べ方は、次の記事が扱っています。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針(令和6年12月6日最終改正)
有料老人ホームには、契約前に泊まってみる「体験入居」があります。国の指導指針は、すでに開設されている有料老人ホームに対し、体験入居を希望する入居希望者へ契約締結前に体験入居の機会の確保を図るよう求めています。
重要事項説明書にも「体験入居の内容」の欄があり、「あり(内容)」か「なし」かが書かれます。日数と費用は、この欄と施設の案内で分かります。
特養の順番が近く、本契約を結ぶまでもない場合に、この体験入居で数週間をつなげるかが焦点になります。何日まで延ばせるかは施設ごとの運営で決まるため、「特養の順番が来るまで、体験入居を延ばせますか」と、事情を正直に伝えて聞きます。答えが「できる」なら、日数と日額を書面でもらいます。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針(令和6年12月6日最終改正)
前払金型の有料老人ホームを途中で退去したとき、戻る額は法律で決まっています。決まりは次の5つに分かれます。
5つのうち最初の2つが、つなぎ入居の契約を選ぶときの分かれ目になります。
老人福祉法第29条第10項は、前払金を受け取る有料老人ホームに対して、入居した日から省令で定める一定の期間を経過する日までの間に契約が終わった場合、前払金の額から省令で定める方法により算定される額を控除した額を返還する契約を結ぶよう義務づけています。その期間と計算の方法は、老人福祉法施行規則第21条にあります。
一 入居者の入居後、三月が経過するまでの間に契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合にあつては、三月
一 前項第一号に掲げる場合にあつては、法第二十九条第九項の家賃その他第二十条の九に規定する費用(次号において「家賃等」という。)の月額を三十で除した額に、入居の日から起算して契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した日までの日数を乗ずる方法
読み解くと、3か月以内に特養が決まって退去すれば、実際に住んだ日数分の家賃等を引いた残りが全額戻ります。初期償却分も戻ります。これが「短期解約特例」「90日ルール」と呼ばれる仕組みで、3か月を数え始めるのは入居した日という点が要になります。重要事項説明書の「償却の開始日」の欄も、様式の側に「入居日」と印字されています。
計算の例(すべて仮の数字です。自分の契約の数字に置き換えて計算します)
自分の契約で計算するときは、家賃等の月額を30で割り、入居日から退去日までの日数を掛けます。その額を前払金から引いた残りが、戻る額です。家賃等の月額は重要事項説明書の利用料金の欄に、前払金の額と返還金の算定方法は「前払金の受領」の欄に書かれています。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法施行規則 第21条第1項第1号・第2項第1号
入居後3か月を過ぎてから退去した場合は、施行規則第21条第1項第2号と第2項第2号が働きます。前払金の算定の基礎として想定した居住期間の中で契約が終わったときは、その期間が対象になり、計算の方法は「契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した日以降の期間につき日割計算により算出した家賃等の金額を、一時金の額から控除する方法」です。
法律の側は「前払金の額から、省令で定める方法により算定される額を控除した額」を返すよう求めています。省令が定める方法は、一時金から未経過期間の日割の家賃等を引くというものなので、その結果として戻る額は、まだ住んでいない期間の日割の家賃等に相当する額になります。
たとえば想定居住期間が5年で、1年住んで退去した場合、残り4年分の家賃等に相当する額が戻ります。実際の計算式は契約書と重要事項説明書に書かれていて、施設は前払金の算定の基礎を書面で明示する義務があります。
想定居住期間を過ぎてから退去した場合、この決まりで戻る額はゼロになります。前払金は想定居住期間分の家賃等として払い終えているからです。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法施行規則 第21条第1項第2号・第2項第2号
前払金のうち、入居時に一定の割合を「初期償却」として受け取る施設があります。この分は、3か月を過ぎた退去では施設のものになります。
初期償却が何かは、重要事項説明書の様式に書いてあります。「前払金の受領」の欄には、「想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額(初期償却額)」という項目があり、その下に「初期償却率」の欄が続きます。想定より長く住む人の家賃等を、入居者があらかじめ分けて負担する仕組みだと考えると、この項目の意味が見えてきます。
想定居住期間そのものも、指導指針で意味が決まっています。前払金の償却年数は「入居者の終身にわたる居住が平均的な余命等を勘案して想定される期間」とすることとされていて、重要事項説明書には「想定居住期間(償却年月数)」として月数で書かれます。
つなぎ入居で数か月から1年で退去する場合、この初期償却分がそのまま損になります。前払金型を選ぶなら、初期償却率の低い施設か、初期償却額が0円の施設を選びます。償却の仕組みと失敗例は、次の記事が扱っています。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針(令和6年12月6日最終改正)
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別紙様式 重要事項説明書
老人福祉法第29条第9項は、前払金を受け取る有料老人ホームに対して、前払金の算定の基礎を書面で明示し、返還債務を負うことになる場合に備えて必要な保全措置を講じるよう義務づけています。施行規則第20条の10は、この保全措置を「一時金に係る銀行の債務の保証その他の厚生労働大臣が定める措置」と定めています。
厚生労働大臣の告示は、その措置を4つ挙げています。銀行等に連帯保証を委託する契約、保険会社との保証保険契約、入居者を受益者とする信託契約、高齢者の福祉の増進を目的とする一般社団法人・一般財団法人との保全契約(都道府県知事が認めるもの)です。
保全される額も告示に書かれています。保全金額は「一時金のうち、あらかじめ契約で定めた予定償却期間のうち残存する期間に係る額又は五百万円のいずれか低い方の金額以上の金額」です。残りの償却期間に対応する額と500万円を比べて低いほうが下限になり、施設はそれ以上の額を保全します。
つなぎ入居で前払金型を選ぶ場合、重要事項説明書の「前払金の保全先」の欄に、銀行等・信託会社等・保険会社・全国有料老人ホーム協会・その他のどれで、どこの名前が入っているかを見ます。
また、第29条第8項により、有料老人ホームが受け取れるのは家賃、敷金、介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用だけです。「入会金」「協力金」の名目で家賃等以外の金品を求められたら、この条文を確かめます。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法 第29条第8項・第9項
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法施行規則 第20条の10
出典: 厚生労働省 厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置(平成18年3月31日厚生労働省告示第266号)
月払い型は前払金がゼロなので、返還の計算そのものと無縁です。退去のときに払うのは、契約で決まった退去予告期間分の月額と、住んだ日数分の日割の家賃、原状回復費です。
予告期間は契約ごとに違います。重要事項説明書の様式では「入居者からの解約予告期間」を月数で書く欄になっているので、そこに何ヶ月と入っているかを見ます。特養から入所の連絡が来てから退去を申し出ると、予告期間の途中で出ることになり、残りの期間分の月額の扱いが問題になります。
つなぎ入居では、この予告期間が実質的な解約の費用です。契約前に予告期間を確かめ、特養から連絡が来たら即日で退去を申し出るようにすれば、二重払いの期間が最短で済みます。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別紙様式 重要事項説明書
つなぎ入居の契約で確かめる項目は6つあります。全部、重要事項説明書と契約書に書かれています。見学のときに施設の相談員に聞き、契約前に書面で確かめます。
| 項目 | 書いてある場所 | 確かめる言い方 |
|---|---|---|
| 退去の予告期間 | 重要事項説明書「4 サービス等の内容」の「入居者からの解約予告期間」・契約書の解約条項 | 「退去は何か月前までに申し出ればよいですか」 |
| 返還金の計算式と想定居住期間・初期償却率 | 重要事項説明書「6 利用料金」の「前払金の受領」 | 「1年で退去した場合、前払金はいくら戻りますか」 |
| 短期解約特例の起算日と控除される費目 | 重要事項説明書の「償却の開始日」「返還金の算定方法」・契約書 | 「入居後3か月以内に退去したとき、家賃以外に引かれるものはありますか」 |
| 前払金の保全措置の方法と保全先 | 重要事項説明書「6 利用料金」の「前払金の保全先」 | 「保全先はどこですか」 |
| 特養が決まったときの解約を認める条項 | 契約書の解約条項・重要事項説明書の「契約解除の内容」 | 「特養に入所が決まった場合、解約に条件はありますか」 |
| 月払い型の日割の精算の有無 | 重要事項説明書「6 利用料金」の不在時の取扱いの欄・契約書 | 「退去月の家賃は日割になりますか」 |
右端の言い方をそのまま使えば、見学の場で6項目とも答えが出ます。重要事項説明書のどこを見比べるかは、次の記事が扱っています。
介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所
退去の予告期間は、重要事項説明書の「4 サービス等の内容」にある「入居者からの解約予告期間」の欄に、月数で書かれます。契約書の解約条項には、申し出の方法と期限が書かれます。
特養の入所連絡は「2週間後に入所できます」のように急に来ます。予告期間が3か月の施設なら、退去後も2か月以上の月額を払うことになります。つなぎ入居では、予告期間が短い施設ほど有利です。
ここで知っておくと役に立つのが、国の指導指針の一文です。指針は、入居者の解約の申し出から実際の契約解除までの予告期間等を設定して、施行規則第21条第1項第1号に規定する前払金の返還債務が義務づけられる期間、つまり3か月を事実上短縮することによって、入居者の利益を不当に害してはならないとしています。予告期間で3か月の特例が骨抜きになる契約は、指針の求める形から外れます。
契約前に「特養が決まったら退去する予定です。その場合、予告期間はどうなりますか」と聞き、短縮や免除の運用があれば、書面に残してもらいます。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針(令和6年12月6日最終改正)
前払金型では、重要事項説明書の「6 利用料金」にある「前払金の受領」の欄に、算定根拠、想定居住期間(償却年月数)、償却の開始日、想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額(初期償却額)、初期償却率、返還金の算定方法が並びます。返還金の算定方法は「入居後3月以内の契約終了」と「入居後3月を超えた契約終了」の2段に分かれています。
「1年で退去した場合、前払金はいくら戻りますか」と、つなぎの見込み期間で具体的に聞きます。答えが計算式より金額で返ってくれば、その施設の返還の決まりが分かります。
想定居住期間が短く初期償却率が高い施設ほど、途中退去で戻る額は小さくなります。つなぎ入居なら、初期償却率の低い施設か、月払い型を選ぶ判断の材料になります。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別紙様式 重要事項説明書
入居後3か月以内の退去で日割の家賃等だけを引いて返す短期解約特例は、法律と省令で決まっています。契約書では、起算日が入居日であること、引かれるのが家賃等の日割であることを確かめます。
法律が引いてよいとしているのは、家賃等の月額を30で割った額に入居日からの日数を掛けた額です。原状回復費や事務手数料を別に引く記載があれば、その根拠が契約書のどこに書かれているかを施設に聞きます。
3か月の期限は、入居日から数えます。4月10日に入居したなら7月上旬までが対象で、何日までが特例の範囲かは契約書の記載で確かめます。特養の入所連絡がこの期限の前後に来る場合は、退去日を期限内に入れられるかを施設と調整します。
前払金の保全措置は法律上の義務で、重要事項説明書の「前払金の保全先」の欄に、1から5までの選択肢と保全先の名前が書かれます。1が連帯保証を行う銀行等、2が信託契約を行う信託会社等、3が保証保険を行う保険会社、4が全国有料老人ホーム協会、5がその他です。
この欄が空欄のまま渡された場合や、保全措置を講じていないと説明された場合は、前払金を払う前に、都道府県の有料老人ホームの担当窓口へ確かめます。国の指導指針は、平成18年3月31日までに届出がされた有料老人ホームについても、令和3年4月1日以降の新規入居者は法的義務の対象になると書いています。
つなぎ入居で前払金を払う場合、金額が大きいほど保全先の確認が大切です。保全先の名前と、どの範囲まで保全されるかを聞き、書面で確かめます。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針(令和6年12月6日最終改正)
重要事項説明書には「契約解除の内容」の欄があり、事業主体から解約を求める場合の解約条項と、双方の解約予告期間が書かれます。契約書の側には、入居者からの解約の条件が書かれます。
国の指導指針は、入居契約書に定める設置者の契約解除の条件を、信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めるものとしないこと、入居者と設置者の双方の契約解除条項を入居契約書上定めておくことを求めています。
つなぎ入居であることを最初から伝え、「特養に入所が決まった場合、解約に条件はありますか」と聞きます。「他施設への転居を理由とする解約」を認める旨が契約書か書面に残れば、退去のときに揉めずに済みます。断られた場合は、短期利用や月払い型の別の施設を探します。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針(令和6年12月6日最終改正)
月払い型でも、退去月の家賃が日割になるか、1か月分まるごと請求されるかは契約で違います。「退去月の家賃は日割になりますか」と聞きます。
重要事項説明書には、入院等による不在のときの月払いの利用料金について、「減額なし」「日割り計算で減額」「不在期間が何日以上の場合に限り、日割り計算で減額」の3つから選ぶ欄があります。この欄の選び方は、その施設が日割の精算をどう考えているかの手がかりになります。退去月の精算そのものは、契約書で確かめます。
日割の精算がある施設なら、特養の入所日の前日に退去日を合わせて、二重払いを1日に抑えられます。日割の精算が無い施設は、月末退去に合わせるか、1か月分の重なりを覚悟します。
管理費、食費、介護費についても、日割になる費目とならない費目があります。退去のときの精算の内訳を、契約前に一覧で見せてもらいます。特養へ移るときの手順は、次の記事が扱っています。
特養に落ちたら次どうする?順位を上げる再申込とつなぎ先と費用差
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針 別紙様式 重要事項説明書
つなぎの契約は、特養の待機の見込み期間で選びます。3か月未満、3か月から1年、1年超、見通し不明の4つに分けると、選ぶ型が決まります。
| 見込み期間 | 選ぶ契約の型 | 理由 |
|---|---|---|
| 3か月未満 | 短期利用・体験入居・月払い型 | 前払金を払う意味が薄い |
| 3か月から1年 | 月払い型、または初期償却率の低い前払金型 | 初期償却分の損を避ける |
| 1年超 | 月払い型で腰を据える | 月額の差より返還の損を避ける |
| 見通しが立たない | 月払い型で入り、住み続ける選択も残す | 特養にこだわらない |
この表の左端には、「順位÷年間入所数」で立てた見込みをそのまま当てはめます。
特養の順位が上位で、数週間から数か月で連絡が来そうなら、前払金型は避けます。3か月以内の退去なら短期解約特例で前払金は戻りますが、そもそも大きな額を一時的に払う意味が薄いからです。
介護付有料老人ホームの短期利用(30日以内)、体験入居、ショートステイの連続利用のどれかで、数週間から1か月をつなぎます。それより長くなりそうなら、月払い型の有料老人ホームに入ります。
月払い型なら、解約予告期間の短い施設を選びます。特養の連絡が来たときに払う月額が、予告期間の長さで決まるからです。
見込みが3か月から1年なら、月払い型が基本です。前払金型で3か月を過ぎて退去すると、初期償却分が施設のものになるからです。
前払金型を選ぶ場合は、初期償却率が低い施設か、初期償却額が0円の施設にします。初期償却額が0円なら、3か月を過ぎても想定居住期間の未経過分がほぼ戻り、月払い型より月額が低い分だけ得になることがあります。この2つは、厚生労働省の様式でいう「前払金の受領」の欄で確かめます。
「1年で退去した場合、前払金はいくら戻りますか」と聞いて、月払い型の1年分の総額と比べます。戻る額を引いた実質の負担が月払い型より小さければ、前払金型でも選べます。
特養の待ちが1年を超えそうなら、つなぎ入居は短期の話を超えます。月払い型で入り、腰を据えて待つのが現実的です。
前払金型は、想定居住期間に近い長さまで住むほど有利になります。想定居住期間は「入居者の終身にわたる居住が平均的な余命等を勘案して想定される期間」として設定されるので、1年から2年で退去する見込みなら、初期償却と未経過分の計算をしても、月払い型より不利になることが多くあります。
月払い型の月額の差が気になるなら、特養の申込先を増やして待機期間を短くするほうが、結果として負担を減らせます。申込先の広げ方は、次の記事が扱っています。
特養に落ちたら次どうする?順位を上げる再申込とつなぎ先と費用差
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針(令和6年12月6日最終改正)
順位が下位で、見通しが立たない場合、月払い型の有料老人ホームに入り、特養の申込は続けたまま「このまま住み続ける」選択も残します。
有料老人ホームに入って本人が落ち着き、家族の負担も減ると、特養に移るかどうかを考え直す家族がいます。特養に移れば費用は下がりますが、本人が環境の変化に弱い場合、2度目の引っ越しが負担になることもあります。
この場合、月払い型で入っておけば、住み続けるときに前払金型へ切り替える選択が残ります。特養と有料老人ホームの費用差と、つなぎの試算は、次の記事が扱っています。
つなぎ入居でいちばん重いのは、入居後3か月という区切りです。3か月以内に退去すれば、法律の決まりで、前払金から日割の家賃等を引いた残りが全額戻り、初期償却分も戻ります。3か月を過ぎると、戻るのは想定居住期間の未経過分だけになり、初期償却分は施設のものになります。特養の待機が3か月を超える見込みなら、前払金型より月払い型が合います。
次の一歩は、申込先の特養に電話して「昨年1年で何人が新しく入所したか」と「今の自分の順位」の2つを聞き、順位÷年間入所数で見込みの年数を出すことです。ここを飛ばして有料老人ホームを決めると、数週間で順番が来る人が前払金型に入って初期償却分を失ったり、2年待つ人が割高な月払い型で待ち続けたりします。
次に確かめるのは、見学する施設の重要事項説明書で、「入居者からの解約予告期間」と「前払金の受領」の2か所です。予告期間が何か月か、返還金の算定方法が入居後3月以内と3月超でどう書かれているかが分かれば、その施設をつなぎに使えるかが決まります。介護のあんしんでは、特養を待つ間のつなぎ入居の契約と途中退去の返還金も含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。