要介護3の施設の選択肢と費用比較、特養を待つ間の過ごし方

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シニアのあんしん相談室


※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

 

要介護3の認定が出ると、ケアマネジャーから「特別養護老人ホームに申し込めますよ」と言われます。

ところが、申し込めることと入れることの間には距離があり、その間をどこで過ごすかで、月々の負担も家族の生活も変わります。

要介護3で選べる6つの種別を制度の決まりから並べ、費用の決まり方と在宅の限度額を公式の単位数で計算し、待つ場所の決め方までをまとめました。

要介護3で入れる施設の選択肢

要介護3の方が検討する主な施設・サービスを、次の6つのグループで整理します。

特養は原則として要介護3以上が対象です。ほかの住まいにも、それぞれ認知症の診断や医療・介護体制などの条件があります。長く暮らす場所か、一時的な利用か、介護費がどう決まるかで比べます。

種別要介護3で入れるか介護の提供住まいかつなぎか
特別養護老人ホーム要介護3から対象施設職員・定額住まい
介護付き有料老人ホーム受入条件を確認施設職員・定額住まい
グループホーム認知症の診断・地域等の条件を確認施設職員・定額住まい
住宅型有料老人ホーム・サ高住受入条件を確認外部サービス・使った分住まい
介護老人保健施設(老健)受入条件を確認施設職員・定額つなぎ(在宅復帰が目的)
ショートステイ使える施設職員・定額短期利用(介護保険の連続利用は原則30日まで)

要介護3で新たに対象になるのは特別養護老人ホーム

特養の新規入所は原則として要介護3以上が対象です。法律と省令に基づく基準で、要介護3になると通常の入所対象として申し込めます。

要介護1・2でも、自宅で暮らすことが難しいやむを得ない事情があれば、特例入所の検討対象になります。これは要介護3以上の人の待機順位を上げる制度とは別です。

特養には、所得・資産などの条件を満たす方の食費・居住費を下げる補足給付があります。介護費は公的な報酬で計算しますが、食費・居住費の実際の料金は契約で確認します。

ただし、対象になることと入れることは別です。特養には申込者が並んでいて、入所の順番は申し込んだ順とは違う基準で決まります。この距離は「特養の対象になっても入れない理由」の章で扱います。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条e-Gov法令検索 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第17条の9・第17条の10

介護付きとグループホームは、介護度ごとの基本料金で介護を受ける

介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)とグループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、施設の職員が介護を行い、介護費は要介護度ごとの1日単位の定額です。特定施設入居者生活介護費の要介護3は1日679単位で、介護の回数が増えても、この単位数は同じです。

夜間の排せつや移動の介助も、施設での介護に含まれます。ただし、要介護3でも必要な介助は人それぞれです。基本料金とは別の加算や自費サービス、夜間の実際の職員数を確認します。

グループホームは、介護保険法第8条第20項が「要介護者であって認知症であるもの」の共同生活の住居として定めた仕組みで、認知症の診断があることが入居の条件です。あわせて地域密着型サービスなので、同法第42条の2第1項により、原則として住民票のある市区町村が指定した事業所を使う形になります。認知症があり、少人数の家庭的な環境が合う人には、介護付きより費用を抑えられる候補になります。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)e-Gov法令検索 介護保険法第8条第20項・第42条の2

住宅型と一部のサ高住は、外部サービスの費用を足して比べる

住宅型と、特定施設の指定がないサ高住では、訪問介護などを別に契約します。要介護3の区分支給限度基準額は月27,048単位です。サ高住でも特定施設の指定がある場合は介護付きの仕組みなので、住宅の名称だけで決めつけません。

限度額を超えた対象サービスは全額自己負担です。ただし、夜間の介護を入れると必ず超えるわけではなく、サービスの組み合わせで変わります。定期巡回などの利用も含め、担当者に必要な支援と費用を組んでもらいます。

夜間の見守りや介助を、誰がどの料金で行うかを聞きます。基本サービスに含む範囲、外部サービス、自費対応を分けて確認すると、表示月額だけでは見えない費用が分かります。

出典: 厚生労働省 居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(平成12年厚生省告示第33号)

老健とショートステイは利用目的と次の予定を確認する

老健は、リハビリや医療・介護を受けながら在宅での生活を目指す施設です。少なくとも3か月ごとに在宅生活が可能か検討しますが、全国一律で3か月後に退所するという決まりではありません。入所の目的と次の生活の場を、相談員と話し合います。

ショートステイは短期間泊まって介護を受けるサービスです。介護保険での連続利用は原則30日までで、長期利用には保険外の日や報酬上の別の扱いが生じます。「31日目以降はずっと同じ条件」と考えず、利用日程全体と自己負担をケアマネジャーに確認します。

つなぎの2つは、特養の空きを待つ間や、有料老人ホームの契約が決まるまでの期間を埋める道具として使います。「老健に入れたから安心」と受け止めて次の住まいを探す手を止めると、3か月ごとの検討の時期に退所の話が出て慌てることになります。老健とショートステイを使うときは、次の住まいの候補と申し込みを同時に進めます。特養待ちの間に有料老人ホームを短期で使う契約の選び方は、特養待ちの有料老人ホームつなぎ入居で途中退去の返還金と契約の選び方の記事に書いています。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法第8条第28項e-Gov法令検索 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第8条厚生労働省 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について(平成12年3月17日老企第44号)厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表8の注21

特養の対象になっても入れない理由

要介護3で「特養の対象になった」と聞くと、申し込めばいずれ入れると考えがちです。

入所は申し込み順だけでは決まりません。地域の指針に沿って介護の必要性や家庭の事情を評価し、施設の受け入れ体制も踏まえて決めます。

特養は介護の必要性や家庭の事情をもとに優先順位を決める

国の通知は、施設の委員会で入所を検討し、自治体などが具体的な指針を作ることを示しています。評価方法や手続きは地域で異なるため、申し込む施設の案内を確認します。

この通知を受けて、都道府県や市が入所指針を公開しています。横浜市の入退所指針(令和6年4月施行)は、要介護度・入所希望者本人の状況・主たる介護者である家族の状況・横浜市内居住者・その他の特記事項の5項目を別表で点数化し、合計点の高い順に優先順位を決めると定めています。委員会は施設長・生活相談員・介護職員・看護職員・介護支援専門員などで構成し、原則として月1回以上開くこととされています。

横浜市の指針では、求めに応じた入所判定情報などの開示も示されています。点数表は目安になりますが、自分だけで順位を確定せず、申込窓口へ確認します。

出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日老高発1212第1号)横浜市 横浜市特別養護老人ホーム入退所指針

横浜市の例では、要介護度以外の事情も大きく評価する

点数の配分を見ると、要介護度だけで順位が決まる形とは違うことが分かります。横浜市の指針の別表では、要介護度の点数は要介護5が40点、要介護4が35点、要介護3が30点で、要介護3と要介護4の差は5点です。

一方、要介護度以外の項目の満点は合計70点です。入所希望者本人の状況が最高15点(独居15点、65歳以上のみの世帯10点)、主たる介護者である家族の状況が最高20点(介護者がいない20点、入院・入所・県外で介護できない15点、要介護・高齢・療養・障害・育児・就労などのため介護ができない15点)、横浜市内居住者が10点、その他の特記事項が最高25点です。

要介護度が高い人が必ず先になるわけではありません。本人が一人暮らしか、家族が病気・育児・仕事などで支援できるかも評価されます。点数を上げるために誇張せず、実際に困っている状況を具体的に伝えます。

なお、点数の項目と配点は自治体ごとに違います。横浜市の数字はあくまで一例なので、住んでいる自治体の指針で自分の家の点数を確かめます。

出典: 横浜市 横浜市特別養護老人ホーム入退所指針 別表

特例入所は要介護1と2のための仕組みで要介護3の順位とは別

特例入所は要介護1・2の方が対象です。認知症などによる生活上の困難、虐待の疑い、家族の支援を期待できず地域のサービスも不足している場合など、在宅生活が難しい事情を検討します。

要介護3以上では、通常の入所判定の中で緊急性や必要性が考慮されます。「特例入所」と混同せず、状態や家族の事情が変わったら申込窓口に更新を伝えます。

順位を上げる余地があるのは、点数の項目のうち介護者の状況と本人の世帯の状況、そして各施設が要綱で定めるその他の特記事項です。横浜市の指針が例示する特記事項には、在宅サービスの利用状況、自傷行為や常時の徘徊など在宅生活が困難と認められる認知症の周辺症状、膀胱留置カテーテル・経管栄養・酸素療法などの医療的処置、住居環境が介護に適さない場合、主たる介護者の介護離職の恐れが並びます。当てはまるものがあれば、申込書に書き落とさないようにします。

出典: 厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日老高発1212第1号)e-Gov法令検索 介護保険法施行規則第17条の10横浜市 横浜市特別養護老人ホーム入退所指針 別表

申し込んで待つ間の住まいを別に決める

申込者の数は、厚生労働省が3年ごとに公表しています。2025年4月1日時点の集計では、要介護3以上の入所申込者は全国で20.6万人、うち在宅で待っている人が8.6万人でした。要介護度別に見ると要介護3が8.7万人で最も多く、要介護4が7.6万人、要介護5が4.3万人です。要介護3以上の入所申込者は2022年度の25.3万人から18.4%減っています。

同じ資料は、この数値に長期間にわたり各施設の申込者名簿に登載されている人も含まれており、必ずしも現に入所を必要としている場合に限らない点に留意する必要があると書いています。待つ期間は自治体と施設によって幅があるので、平均の月数を探すより、申し込む施設の受付窓口に直近の入所の状況を聞くほうが早く進みます。

特養を待つ場合は、その間に安全に暮らす場所も相談します。在宅サービスを増やす、ショートステイを使う、有料老人ホームを検討するなど、本人と家族に合う方法を選びます。民間施設で暮らし続ける選択もあり、必ず特養へ移る必要はありません。

特養と介護付きのどちらを先に申し込むかの考え方は特養と介護付き有料、先に申し込むべきはどっち?申し込んだ後の動き方とお金の分岐点まで、順位が届かなかったときの再申込は特養に落ちたら次どうする?順位を上げる再申込とつなぎ先と費用差の記事に書いています。

出典: 厚生労働省 特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)

要介護3の施設の費用比較

施設の費用は「特養は安い、介護付きは高い」と月額の一言で比べられがちです。

ところが、費用の決まり方が種別で違うため、同じ要介護3でも月額の中身がばらばらです。決まり方を先に見て、条件をそろえてから比べます。

種別介護費の決まり方居住費・食費補足給付(負担限度額認定)
特養要介護度と部屋の型で公定施設との契約額。補足給付の対象なら負担限度額まで使える
老健要介護度と部屋の型で公定施設との契約額。補足給付の対象なら負担限度額まで使える
介護付き有料老人ホーム要介護度別の定額(特定施設)施設ごとの設定対象外
住宅型・サ高住使った外部サービスの分施設ごとの設定対象外
グループホーム要介護度別の定額施設ごとの設定対象外

特養の費用は所得段階と部屋の型で決まり補足給付で下がる

特養の月額は、介護費(介護福祉施設サービス費)、居住費、食費、日常生活費の合計です。介護費は要介護度と部屋の型で公定されていて、要介護3は多床室と従来型個室が1日732単位、ユニット型個室が1日815単位です。1単位10円の地域で自己負担1割の人なら、30日分の介護費は多床室で21,960円、ユニット型個室で24,450円になります。ここに施設の加算が乗ります。

補足給付は、食費・居住費を所得に応じた負担限度額まで軽減する制度です。世帯全員と別世帯の配偶者の課税状況、収入、預貯金等を確認します。対象外の場合の料金は施設との契約で決まり、国の基準費用額と同じとは限りません。

特養の1日あたりの額は次のとおりです(2026年8月からの額)。

所得段階食費多床室従来型個室ユニット型個室
第1段階(生活保護受給者・老齢福祉年金受給者)300円0円380円880円
第2段階(年金収入等が82万6,500円以下)390円430円480円880円
第3段階①(82万6,500円超120万円以下)680円430円880円1,370円
第3段階②(120万円超)1,420円530円980円1,470円
基準費用額(第4段階の目安)1,545円915円1,231円2,066円

たとえば要介護3・1割負担・30日・1単位10円・加算なしなら、第2段階の多床室は食費・居住費24,600円+介護費21,960円=46,560円です。補足給付のないユニット型個室を基準費用額で計算すると、合計132,780円。実際には加算や日常生活費を足し、高額介護サービス費の払い戻しなども別に確認します。

第2・第3段階の預貯金等の上限は、単身で650万円・550万円・500万円、配偶者ありではそれぞれ1,000万円を加えた額です。第1段階は別の条件で、生活保護受給者には預貯金要件がなく、老齢福祉年金受給者は非課税等の条件と資産基準があります。自分の区分を市町村で確認します。

出典: 厚生労働省 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)e-Gov法令検索 介護保険法第51条の3(特定入所者介護サービス費)e-Gov法令検索 介護保険法施行規則第83条の5厚生労働省 食事の提供に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める費用の額(平成17年厚生労働省告示第411号)厚生労働省 居住に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める費用の額(平成17年厚生労働省告示第412号)厚生労働省 食費の負担限度額(平成17年厚生労働省告示第413号)厚生労働省 居住費の負担限度額(平成17年厚生労働省告示第414号)

介護付き有料老人ホームは介護費が定額で居室料は施設ごとに違う

介護付き有料老人ホームの月額は、介護費(特定施設入居者生活介護)、居室料、管理費、食費、水道光熱費の合計に、施設独自の上乗せ介護費が加わる形です。介護費は要介護3が1日679単位で、1単位10円の地域で自己負担1割なら30日分は20,370円です。

この条件での介護の基本報酬は、特養と介護付きで大きくは離れていません。ただし、加算や軽減を含めた負担は変わります。家賃・居住費・食費なども足した総額で比べます。

居室料・管理費・食費は施設ごとの設定で、ここが月額の差の本体です。同じ地域でも、居室料が月5万円の施設と15万円の施設があります。さらに入居一時金の有無で月額が変わり、一時金を払う型は月額が下がり、一時金0円の型は月額が上がります。補足給付の対象は介護保険施設への入所とショートステイなので、介護付き有料老人ホームは対象の外です。所得が低い世帯ほど、特養と介護付きの月額の差は広がります。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)厚生労働省 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)

住宅型などはサービス量で変わり、支給限度額の超過分は全額自費になる

住宅型や特定施設の指定がないサ高住では、家賃などに外部の介護費を足します。使うサービスが少なければ介護の自己負担を抑えられる場合がありますが、施設費全体が安いとは限りません。

要介護3でも利用量は一律ではありません。日中と夜間に必要な支援を整理し、限度額に入る分、超える分、自費サービスを分けて見積もります。

住宅型とサ高住の月額を介護付きと比べるときは、施設が示す月額に「要介護3で実際に使うサービスの自己負担」と「限度額を超える自費分」を足してから並べます。施設のパンフレットの月額は介護費を含まないことが多く、そのまま比べると住宅型が安く見えます。

出典: 厚生労働省 居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(平成12年厚生省告示第33号)

比較は要介護3で同じ条件にそろえた月額の合計で行う

費用の比較は、次の順で条件をそろえると成り立ちます。

  1. 要介護3・自己負担1割・同じ地域にそろえる(1単位の単価は地域区分で10円から変わります)
  2. 特養は部屋の型と所得段階を自分の家に合わせて1つに決める
  3. 種別ごとに「介護費+居住費(家賃)+食費+管理費+上乗せ+医療費・別料金の日用品等(特養のおむつ代は介護費に含む)」の月額合計を出す
  4. 高額介護サービス費で戻る分を引く

高額介護サービス費は、1か月に支払った介護サービスの自己負担の合計が所得区分ごとの上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される仕組みです。特養でも介護付きでもグループホームでも使えます。上限額は世帯単位で、住民税が課税されている一般の世帯が月44,400円、市町村民税が世帯非課税の人は24,600円、課税所得380万円以上690万円未満の人がいる世帯は93,000円、690万円以上は140,100円です。居住費・食費・日常生活費はこの仕組みの対象の外なので、上限額を当てるのは介護費の自己負担だけです。

非課税世帯の一定の低所得者には個人15,000円の上限もあります。1割負担でも対象になる場合があるため、負担割合だけで「戻らない」と判断しません。

この手順で並べると、「特養は安い」「介護付きは高い」の差が自分の家の数字になります。数字を出す先は、特養なら市区町村の介護保険の窓口(所得段階)と施設の料金表、介護付きなら重要事項説明書の料金の欄です。同じ表に横並びで書き出すと、月額の差と、その差で買える介護の中身(夜間の職員配置・看護体制)が見えてきます。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法第51条(高額介護サービス費)e-Gov法令検索 介護保険法施行令第22条の2の2

在宅介護を続ける場合との比較

要介護3で施設を考え始めた人の多くは、在宅を続ける道も残しています。

費用と合わせて、夜間の介助や家族の休息を確保できるかを見ます。介護度だけで在宅の可否は決まりません。

要介護3の限度額で組めるサービスを計算例で確認する

要介護3の区分支給限度基準額は月27,048単位です。1単位10円の地域なら約27万円分のサービスを1割負担(27,048円)で使えます。この枠で何が組めるかを、公式の単位数で計算します。次は、1単位10円の地域で、デイサービスを週3回(1か月13回)使う仮の例です。

組み合わせ(仮の例)計算月の単位数
朝の訪問介護(身体介護・20分以上30分未満)244単位×30日7,320単位
デイサービス(通常規模型・7時間以上8時間未満)900単位×13回11,700単位
福祉用具貸与(介護用ベッド一式と車いす・月15,000円と仮定)15,000円÷10円1,500単位
合計20,520単位
区分支給限度基準額(要介護3)27,048単位
残り6,528単位

この例の基本報酬などの合計は20,520単位で、限度額の約76%です。残りは6,528単位。加算や地域単価による違いは別に確認します。

ここに20分以上30分未満の身体介護244単位を毎日30回足すと7,320単位で、限度額を792単位超えます。1単位10円なら超過分は7,920円を全額負担する計算です。これは時間帯加算などを除く例で、早朝・夜間・深夜には加算があります。実際の利用時間で再計算が必要です。

つまり、要介護3の在宅は「日中は介護保険、夜間は家族」の形になりやすい仕組みです。夜間のトイレ介助や体位交換が家族の担当になり、その回数が週に数回を超えると、介護者の睡眠が削られます。在宅の費用を見るときは、この夜間の分を「家族の時間で払っている」と数えます。限度額の仕組みと超えた分の扱いは、在宅介護の費用はなぜ増える?介護保険の限度額と超えた分を解説の記事に書いています。

出典: 厚生労働省 居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(平成12年厚生省告示第33号)厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)

在宅の費用は介護保険の自己負担に介護者の時間を足して比べる

在宅も、介護の自己負担、保険外サービス、食費、光熱費、おむつなどを合計します。持ち家でも固定資産税や修繕費などは残るため、住居費をすべて0円にはしません。

ところが、この計算からは介護者の時間が抜けています。厚生労働省の2022年の国民生活基礎調査は、同居の主な介護者の介護時間を要介護度別に集計しています。要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が最も多く、要介護2でも45.0%を占めます。ところが要介護3になると「ほとんど終日」が31.9%で最も多くなり、「半日程度」の21.9%を合わせると半分を超えます。要介護4は「ほとんど終日」が41.2%、要介護5は63.1%です。

この調査は同居する主な介護者の集計で、すべての家庭に同じ時間が必要という意味ではありません。自分の家では、介護で減った勤務時間、夜間の起床回数、受診や休息を確保できているかを書き出して比べます。

出典: 厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

夜間の介助と介護者の健康を記録して相談する

在宅を続けるか迷ったら、次の3点を記録してケアマネジャーに相談します。

  • 夜間の介助の回数: 週に何回、何時に起きているか
  • 認知症の行動: 外に出て戻れなかった回数、介護を拒んだ回数
  • 介護者の健康: 自分の受診を後回しにした月数、切れている薬

睡眠が途切れる、受診できない、仕事を続けにくいなどの変化は、支援を増やす相談のきっかけです。「週何回なら限界」と一律には決まらないため、本人と介護者の実際の負担を伝えます。

在宅を続ける判断は「本人が在宅を望むか」に加えて、「介護者の体が続くか」で決めます。数えた結果を家族で見て、限界の前に施設を探し始めるか、つなぎの道具で在宅を延ばすかを決めます。

ショートステイや小規模多機能で、家族の休息を確保する

在宅を続けながら介護者の負担を下げる道具が2つあります。ショートステイ(短期入所生活介護)は、施設に数日から数週間泊まる仕組みで、介護者の休息や旅行、自分の受診に使えます。介護保険で払える連続の日数は30日までで、区分支給限度基準額の枠の中で使います。

小規模多機能は、通い・訪問・泊まりを組み合わせるサービスです。介護費は月額制で、要介護3の基本報酬は、同一建物以外の登録者なら22,359単位です。加算、食費、宿泊費などは別に確認します。訪問看護も必要なら、看護小規模多機能を相談する方法があります。利用できる地域や空き、ほかのサービスとの併用条件も確認します。

これらを組み合わせて、在宅生活を続ける方法もあります。泊まりの日数や夜間対応は、本人の必要性と事業所の体制を踏まえて相談します。施設への移行を前提にせず、定期的に暮らし方を見直します。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法第8条第19項・第23項厚生労働省 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)

要介護3の選択肢の決め方

要介護3では、本人に必要な介護と、家族が無理なく続けられる暮らし方を選びます。特養を待つことだけが答えではありません。

医療処置、認知症の症状、家族の負担、費用、特養の入所見込みを順に確認すると、候補を整理できます。

条件合う選択肢
胃ろう・たん吸引・インスリンがある処置に対応する特養・介護付き・介護医療院など
認知症の行動が目立つグループホーム・介護付き
介護者が高齢か仕事があり夜間が続かない必要な夜間介護に対応できる施設を検討
在宅の支援で本人と介護者の安全を保てる在宅サービスやショートステイを組み合わせる
払える月額が特養の水準に近い特養(ユニット型も申し込む)+老健などのつなぎ

医療依存度と認知症の行動で入れる種別を絞る

最初に見るのは医療依存度です。胃ろう、たんの吸引、インスリン注射、在宅酸素などがあると、施設の看護職員の配置と夜間の対応によって受け入れの可否が分かれます。特養も介護付きも施設ごとに看護体制が違うので、処置の名前と時刻を伝えて受け入れられるかを先に聞きます。横浜市の指針が、膀胱留置カテーテル・経管栄養・酸素療法などの医療的処置が必要な場合に看護職員の体制や設備の状況に応じて入所者の決定を調整すると定めているとおり、医療的処置は種別の中でも施設ごとの分岐になります。

認知症の症状がある場合は、起きる時間帯や対応方法を伝えます。グループホームのほか、体制の整った住宅型なども候補になる場合があり、種別だけで対応を決めつけません。医療の必要が大きい場合は、主治医に介護医療院なども含めて相談します。

候補施設に必要な支援を伝え、受け入れ可能かを確認してから総額を比べます。介護や医療が増えたときの対応も聞いておきます。

出典: 横浜市 横浜市特別養護老人ホーム入退所指針

年金と資産から払える月額と年数を出す

払える月額は、本人の年金の月額に、資産を想定する年数で割った額を足して出します。

払える月額の出し方(仮の例)

年金を月12万円、初期費用と予備費を除いて使える貯金を600万円、計算する期間を10年と仮定します。600万円÷120か月=月5万円、年金と合わせて月17万円が総予算です。施設費だけでなく医療費・日用品なども含めます。期間や値上げを変えた場合も計算します。

この額を、費用比較の章で出した種別ごとの月額合計と並べます。特養(自分の家の所得段階・部屋の型)、介護付き(候補の施設の月額合計)、在宅(自己負担+自費+消耗品)。払える月額の中に入る選択肢が残ります。

介護付きの基本報酬は要介護3で1日679単位、要介護5で813単位です。30日・1単位10円・1割負担・加算なしなら差は月4,020円。医療費や自費サービス、利用料の改定も含め、今の総額だけで判断しません。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)

在宅の負担を確認し、見直す時期を決める

介護者の健康、仕事、夜間の介助、手伝える人を整理します。何か月なら大丈夫と正確に予測するより、今すでに無理がないかと、支援を増やす条件を確認します。

介護者の年齢や夜間介助の回数だけで、年単位・月単位と決めることはできません。眠れているか、受診できるか、休める日があるかを具体的に聞き、必要なら早めに支援を増やします。

特養の入所時期も確定しないため、定期的な見直し日と、急に在宅が難しくなったときの連絡先を決めます。ショートステイや民間施設の相談も並行すると、変化に対応しやすくなります。

特養を待つ場合は、その間の暮らしと再検討の条件を決める

決め方の順番は次のとおりです。

  1. 特養を希望するなら、費用と受入条件を確認して複数施設へ申し込む
  2. 払える月額を出す
  3. 在宅を続けられるか、必要な支援と緊急性を相談する
  4. 在宅支援・短期利用・長く暮らせる施設を比較する
  5. 特養の順番が来た時点で、本人の状態や希望を踏まえて移るか判断する

特養から連絡が来た場合に何を優先するかは、家族で話しておきます。ただし、本人の状態や希望は変わるため、入居前の判断を固定せず、その時点で再確認します。

特養、民間施設、在宅のどれが合うかは家庭ごとに違います。必要な介護、本人の希望、家族の負担、費用をそろえて比較し、見学や相談を進めます。

まとめ:要介護3では、必要な支援と無理のない暮らし方を選ぶ

要介護3でいちばん重いのは、特養に申し込む資格ができたことよりも、その順番が申込みの早さではなく自治体と施設の指針の点数で決まることです。横浜市の指針では要介護3と要介護4の差が5点である一方、要介護度以外の項目には合計70点の枠があり、そのうち本人の世帯の状況と介護者の状況で35点を占めます。要介護3の家が動かせるのは、要介護度ではなく、介護者の状況をどこまで正確に伝えられるかです。

次の一歩は、本人に必要な支援と家族が困っていることを整理し、ケアマネジャーへ相談することです。特養を希望するなら申し込みと並行し、待つ間の在宅支援や別の住まいも確認します。介護者の年齢や介助回数だけで限界を決めず、今の負担に合わせて進めましょう。

次に確かめるのは、住んでいる自治体の入所指針の点数表と、自分の家の所得段階です。どちらも市区町村の窓口と自治体のホームページで確かめられます。介護のあんしんでは、要介護3で選べる施設の種別と費用の決まり方も含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。