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デイサービスを1日増やし、ヘルパーに来てもらう日を1日足しました。どれも必要があってのことです。
在宅のほうが安いはずだと思っていたのに、請求は少しずつ増えています。この先どこまで増えるのかを、まだ誰にも聞けていません。
在宅の介護保険の費用が安く収まるのは、1か月に使える上限が決まっていて、その中にいるあいだだけです。この記事では、その上限の決まり方と、上限を超えた分がどうなるか、そして超えるときの使い方を順に説明します。
在宅の費用が保険で収まっているのは、1か月に使える量に上限があるからです。この章では、その上限が要介護度ごとに決まっていることと、実際にはその上限のどこまで使われているかを説明します。
介護保険で在宅のサービスを使うとき、1か月に保険から出る額には上限があります。
介護保険法第43条第1項は、居宅サービスと地域密着型サービスについて、月を単位として支給される保険給付の合計額は「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額を基礎として、厚生労働省令で定めるところにより算定した額の百分の九十に相当する額を超えることができない」と定めています。
この区分支給限度基準額が、上限の正式な名前です。長い名前ですが、ケアマネジャーが毎月作る書類には、この名前のまま書かれています。
条文の「百分の九十」は、保険から9割が出て、残りの1割を自分で払うという意味です。この割合は所得で変わります。介護保険法第49条の2は、政令で定める所得の額以上である人について、条文の「百分の九十」を「百分の八十」と読み替え、さらに高い所得の人については「百分の七十」と読み替えると定めています。1割・2割・3割という負担の割合は、ここから出ています。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
上限まで使い切っている人は、多くありません。
厚生労働省が社会保障審議会の介護給付費分科会へ出した資料に、要介護度別の平均が載っています。受給者1人当たりの平均費用額が支給限度額に占める割合は、要介護1で44.6%、要介護2で53.0%、要介護3で57.9%、要介護4で61.6%、要介護5で65.3%です。要支援1は37.8%、要支援2は31.9%でした。要介護のどの区分も4割から6割台にとどまり、要介護5でも上限の3分の1ほどが使われずに残っています。集計の対象は、その月に居宅サービスなどを使った3,720,882人です。
この数字は平成29年(2017年)4月審査分です。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第145回 参考資料3 区分支給限度基準額
この割合は平均であって、あなたがいまどこにいるかを示すものではありません。同じ要介護3でも、上限のすぐ手前まで使っている家庭と、半分も使っていない家庭が同じ平均の中にあります。
在宅が安く感じられるのは、思い込みではありません。上限の中にいるあいだは、実際に1割から3割で買えているからです。
上限は円ではなく、単位という数え方で決まっています。単位を円に直す率が、住んでいる地域と使うサービスで動くためです。要介護度ごとの単位数と、1単位が何円になるかを、順に説明します。
上限を定めているのは、平成12年2月10日厚生省告示第33号です。1か月あたりの単位数が、要介護状態区分ごとに書かれています。
| 要介護状態区分 | 1か月あたりの単位数 |
|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 |
| 要支援2 | 10,531単位 |
| 要介護1 | 16,765単位 |
| 要介護2 | 19,705単位 |
| 要介護3 | 27,048単位 |
| 要介護4 | 30,938単位 |
| 要介護5 | 36,217単位 |
出典: 厚生労働省 居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(厚生省告示第33号)
この表の数を、そのまま円に読み替えないでください。1単位が何円になるかは、次のとおり地域とサービスで変わります。
1単位の単価は10円が基本ですが、10円のままとは限りません。
厚生労働省のガイドラインは、1単位あたりの単価について、区分や各サービスの人件費割合に応じて、各サービスごとに10円から11.40円になると書いています。
出典: 厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン
単価が変わる仕組みは地域区分と呼ばれ、市町村ごとに1級地から7級地までとその他の区分が当てられています。級地ごとの上乗せの割合と、どの市町村がどの級地になるかは、令和6年度の介護報酬改定の資料に一覧があります。
出典: 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について
同じ要介護3なら、上限の中で買えるサービスの量は、どこに住んでいても27,048単位で同じです。変わるのは、その27,048単位を使い切ったときに払う自己負担の額です。
請求書に並んでいるサービスが、全部この上限で数えられているわけではありません。上限で数えるサービスと数えないサービスは、それぞれ名前で決まっていて、サービスに足される加算にも数えないものがあります。この見分けがつくと、請求書のどの行が上限に近づける行なのかが分かります。
介護保険法施行規則第66条は、上限の対象になるサービスを名指しで列挙しています。
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護(利用期間を定めて行うものに限る)、福祉用具貸与、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(利用期間を定めて行うものに限る)、地域密着型特定施設入居者生活介護(利用期間を定めて行うものに限る)、複合型サービスの18種類です。
在宅で使っているものは、訪問と通いと泊まりと福祉用具の貸与に集まります。上限に近づけていくのは、この4つです。
反対に、上限で数えないサービスがあります。厚生労働省が介護給付費分科会へ出した資料は、5つを挙げています。
①居宅療養管理指導、②特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)(短期利用を除く)、③認知症対応型共同生活介護(短期利用を除く)、④地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)、⑤地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
同じ資料は、その理由を「医師等の判断により行われる『居宅療養管理指導』や、利用期間中に他のサービスを組み合わせることがない『居住系サービス』(短期利用を除く)」と説明しています。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第145回 参考資料3 区分支給限度基準額
このうち在宅で使うのは、居宅療養管理指導です。医師や薬剤師、管理栄養士が家に来て指導や管理を行うもので、これを増やしても上限の計算には入りません。
サービスの基本の費用に足される加算にも、上限の計算に入らないものがあります。厚生労働省が分科会へ出した資料は、対象外とされている加算を5つに分けています。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第153回 資料4 その他の事項について
請求の合計額が上がっていても、上限の計算に入っていない行があります。合計額と、上限に対する使い方は、別に見ます。
上限を超えた分について、保険からは1円も出ません。自己負担が高くなったときに戻る仕組みも、超えた分は対象になりません。上限が締まる期間もあわせて、順に説明します。
上限を超えた分の費用は、全額が自己負担になります。
介護保険法施行令第16条は、保険給付の合計額が「百分の九十(法第四十九条の二第一項の規定が適用される場合にあっては百分の八十、同条第二項の規定が適用される場合にあっては百分の七十)に相当する額を超えることとなる場合」の給付額の計算方法を定めています。計算の結果、保険から出る額は上限までで止まります。
厚生労働省が分科会へ出した資料は、この仕組みを図にしています。上限までの部分には「介護保険給付の対象(1割自己負担)」、上限を超えた部分には「対象外(全額自己負担)」と書かれています。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第145回 参考資料3 区分支給限度基準額
上限の1単位手前までは1割で買えて、1単位超えた分からは10割で買うことになります。どちらも、同じ事業所が行う同じ内容の訪問です。 増えるのはサービスの内容ではなく、値段です。
月々の自己負担が高くなったときに戻る仕組みとして、高額介護サービス費があります。ただし、上限を超えた分はこの仕組みの対象になりません。
介護保険法第51条は、高額介護サービス費を支給する条件を政令に委ねています。介護保険法施行令第22条の2の2第2項は、判定に使う額を「介護サービス費合計額に九十分の十(法第四十九条の二第一項の規定が適用される場合にあっては八十分の二十、同条第二項の規定が適用される場合にあっては七十分の三十)を乗じて得た額」と定めています。ここでいう「介護サービス費合計額」は、保険から支給された額の合計です。
上限を超えた分については、保険から支給された額が0です。そのため、超えた分は高額介護サービス費の判定にも支給にも入りません。
介護保険法施行令第22条の2の2は、戻る前の上限額も定めています。一般の世帯は44,400円、市町村民税を課されていない世帯は24,600円、課税所得が690万円以上の第1号被保険者がいる世帯は140,100円、380万円以上690万円未満の場合は93,000円です。
高額介護サービス費そのものが使えなくなるのではありません。上限の中の1割から3割の自己負担は、いままでどおりこの仕組みの対象です。対象から外れるのは、上限を超えた分だけです。
上限は1か月ごとに区切られ、余っても翌月には回りません。
介護保険法施行規則第67条は、上限を管理する期間について「要介護認定有効期間に係る日が属する月についてそれぞれ当該月の初日からの一月間とする」と定めています。
先月が半分しか使っていなくても、その残りを今月に足すことはできません。急な体調の変化や家族の出張で、1か月だけ利用が集中したとき、その月だけ上限を超えることがあります。
上限を超えている人は、利用者全体のごく一部です。そして超えた人の使い方には、厚生労働省が調べて報告した共通点があります。共通点があるのは、使っているサービスの種類の数ではなく、回数です。
厚生労働省が同じ資料で示した集計では、上限を超えて利用している人は利用者全体の2.3%です。要介護度別では、要支援1で0.4%、要支援2で0.2%、要介護1で1.7%、要介護2で3.6%、要介護3で3.0%、要介護4で4.0%、要介護5で5.0%となっています。平成29年(2017年)4月審査分の集計で、対象は3,720,882人、そのうち超えていたのは85,123人でした。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第145回 参考資料3 区分支給限度基準額
この2.3%は、同じ3,720,882人を分母にした割合です。要支援1・2と要介護1では2%に届かず、要介護4で4.0%、要介護5で5.0%になります。要介護2と要介護3のように要介護度の順どおりには並びませんが、重い区分ほど割合は高くなっています。超えることは例外ですが、親の要介護度が上がっていくほど、例外ではなくなっていきます。
厚生労働省は、上限を超えて利用している人(超過者)と、上限の7割から9割を使っている人の実態を調べ、平成23年(2011年)2月に介護給付費分科会へ報告しています。対象は、全国の市町村から集めた平成22年3月分の情報です。
報告には、次のとおり書かれています。
①サービスの利用状況をみると、超過者及び7~9割の者ともに2種類以下のサービス利用が8割以上を占めていた。
②また、利用しているサービスの種類では、訪問介護や通所介護など見守りを必要とするサービスの利用が多く、訪問看護などの医療系サービスの利用が少なかった。
③一方、全国のサービス利用量の平均と比べると、医療系サービスは利用量が同程度であるが、訪問介護や通所介護は利用量が多かった。
同じ報告は、訪問介護の中身についても書いています。
②また、訪問介護のサービス利用内容をみると、身体介護に比べ、掃除、洗濯、調理・配膳等の生活援助の利用が多かった。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第103回 資料1 区分支給限度基準額について
2種類以下のサービスで8割以上を占めることは、上限を超えた人だけの特徴ではありません。上限の7割から9割を使っている人も同じでした。違っていたのは回数のほうで、超えた人は全国の平均と比べて訪問介護や通所介護の利用量が多くなっています。サービスの種類を広げて超えるのではなく、同じ1つか2つのサービスの回数が増えて超えています。
自分がどれくらい上限に近いかを測るとき、使っているサービスの種類の数を数えても分かりません。見るのは、いちばん多く使っている1つの回数です。デイサービスを週3回から週4回に増やしたときや、ヘルパーの訪問を週2回から週4回に増やしたときは、上限に近づいています。
同じ報告は、上限を超える計画を作った理由も挙げています。
③さらに、区分支給限度基準額を超えたケアプランを作成している理由をみると、「家族等で介護が補えないため」、「利用者本人や家族からの強い要望があるため」が多かった。
出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第103回 資料1 区分支給限度基準額について
いちばん多い理由は、使いすぎではありません。家族が担えなくなったことです。仕事の都合で日中に家にいられなくなったり、介護していた人が体調を崩したり、きょうだいが遠方へ移ったりしたときです。減ったのは家族が担える時間で、増えたのはそれを埋めるサービスの回数です。仕事を辞めて自分で埋めることを考える前に、会社へ申し出られる制度は、別の記事にまとめています。
同じ調査では、超過者のケアプランについて、市町村のケアプランの点検者が評価した結果も報告されています。「見直す余地がある」が9割でした。これは市町村の点検者による評価であって、その家庭の事情まで含めた判断ではありません。
上限にはまだ余裕があるはずなのに、請求が増えていることがあります。そういうときは、上限の外で増えています。増える先は、通いや泊まりでかかる食費と滞在費、そして別の上限で数える住宅改修と福祉用具の購入です。どちらも、上限を超えたかどうかとは関係なくかかります。
食費と滞在費は、はじめから介護保険の給付の外にあります。
介護保険法第41条第1項は、居宅介護サービス費を支給する費用から「通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護及び特定施設入居者生活介護に要した費用については、食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く」と定めています。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
デイサービスの昼食代も、ショートステイの食費と滞在費も、上限の計算には入りません。上限に当たっていないのに請求が増えているときは、通いや泊まりの日数が増えて、この部分が増えていることがあります。
食費と居住費を下げる仕組みとして、特定入所者介護サービス費(補足給付)があります。介護保険法第51条の3が対象を名指しで列挙しており、短期入所生活介護と短期入所療養介護は、その中に入っています。市町村民税が非課税であることなどの条件があり、市町村への申請が要ります。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
手すりを付ける、段差をなくすといった住宅改修と、入浴用の椅子やポータブルトイレのような特定福祉用具の購入には、毎月の上限とは別の上限があります。
介護保険法第45条は住宅改修について、第44条は特定福祉用具の購入について、それぞれ別の支給限度基準額を定めることを求めています。額は告示にあり、住宅改修が20万円、特定福祉用具の購入が10万円です。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
出典: 厚生労働省 居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び介護予防住宅改修費支給限度基準額(厚生省告示第35号)
出典: 厚生労働省 居宅介護福祉用具購入費支給限度基準額及び介護予防福祉用具購入費支給限度基準額(厚生省告示第34号)
住宅改修や福祉用具を買った月に請求がまとまって増えても、毎月の上限を圧迫したわけではありません。数える場所が別なので、その月の訪問や通いが減らされることもありません。20万円の枠で何ができ、福祉用具とどちらを先に試すかは、別の記事にまとめています。
自分がいま上限のどこにいるかは、自分で計算し直さなくても分かります。その数は、ケアマネジャーが毎月作っている書類に載っています。
厚生労働省が示す居宅サービス計画書の標準様式には、区分支給限度基準額と限度額適用期間の欄があります。
保険給付の対象になる分とならない分を分けて説明することは、ケアマネジャーの運営基準に定められています。指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条第10号は、次のとおり定めています。
介護支援専門員は、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等について、保険給付の対象となるかどうかを区分した上で、当該居宅サービス計画の原案の内容について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない。
出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
上限を超える計画は、超える前に説明を受けて、書面で同意した計画です。その書面は、あなたの手元にあります。
聞くときは、次のように言えばそのまま伝わります。
「いま、区分支給限度基準額の何割まで使っていますか」
「このまま通所の回数を増やすと、何回目で上限を超えますか」
「上限を超える月があったら、超えた分がいくらになるか先に教えてもらえますか」
同じ運営基準の第13条第18号の3は、上限に近く訪問介護に偏った計画について、市町村から求めがあったときに、ケアマネジャーが計画の妥当性を検討し、訪問介護が必要な理由等を記載して市町村へ届け出ることを定めています。
出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
これは使いすぎを止めるための仕組みではなく、必要な理由を書いて出す仕組みです。理由を書くのはケアマネジャーなので、家族が何に困っているかは、上の3つを聞くときに一緒に伝えてください。
在宅の介護保険の費用が安く収まるのは、1か月に使える上限があり、その中にいるあいだだけです。上限までは1割から3割で買えて、超えた分は全額が自己負担になり、高額介護サービス費の対象にもなりません。そして超えるのは、サービスの種類を広げたときではなく、1つか2つのサービスの回数が増えたときです。いちばん多い理由は、家族が担えなくなったことでした。
次にすることは、担当のケアマネジャーに「いま区分支給限度基準額の何割まで使っていますか」と聞くことです。ここを飛ばすと、上限を超えたことに気づくのは請求書が届いた後になります。超えた分は10割なので、気づいた時にはその月の分がもう確定しています。
あなたの手元には、自分の要介護度の上限と、いまその何割まで使っているかという2つの数が残ります。
介護のあんしんでは、在宅の費用がどこまで保険で収まり、どこから増え方が変わるのかを確かめる方法も含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。