老人ホーム探しに疲れて決まらない。条件は3つ、見学は3件で決める

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老人ホームを探し始めて数か月。資料を集め、見学にも行ったのに、候補が1つに絞れないままでいる家族は多くいます。

決まらないのは、探し方の失敗というより、条件が増える構造・決める人がいない構造・期限が無い構造の3つが重なるからです。

失格条件を医療と費用と距離の3つに固定し、見学の上限を3件と先に決め、家族の役割を4つに分けると、次の1件で決められます。

老人ホーム探しが決まらない原因

老人ホームを探し始めて数か月がたち、資料を集め、見学にも行きました。それでも、候補が1つに絞れずにいます。

この状態は、探し方の失敗というより、条件が増える構造・決める人がいない構造・期限が無い構造の3つが重なって起きます。ここに「ずっと居られる場所を探す」という願いが加わると、どの施設も候補から外れていきます。

決まらない原因は、次の4つに分かれます。

  • 見学するたびに条件が増えていく
  • 決める人が決まっていない
  • 決める期限が無い
  • ずっと居られる施設を探している

見学するたびに条件が増えていく

見学に行くと、その施設の強みが目に入ります。

1件目で「食事がおいしい」と感じると、食事が条件に加わります。2件目で「夜間の職員が多い」と聞くと、夜間の体制が条件に加わります。3件目で「リハビリが充実している」と分かると、リハビリが条件に加わります。

こうして見学のたびに条件が1つずつ増え、比較の軸が毎回変わります。1件目を見たときの基準で2件目を見ておらず、3件目を見たときには1件目の記憶が薄れています。見学を重ねるほど比べにくくなる仕組みが、ここにあります。

この構造は、見学のチェック項目を増やすほど強くなります。項目が数十に増えれば、どの施設にも減点があり、最後は「一番減点が少ない施設」を消去法で選ぶことになります。選んだ実感が薄いまま契約に向かうので、直前で迷いが戻ります。

解き方は、条件の絞り方の章と、見学は何件で決めるかの章で書きます。

決める人が決まっていない

老人ホーム探しには、介護している家族、離れて暮らす家族、本人の3者が関わります。この3者は、同じ施設を見ても違うものを見ています。

立場見えているもの口にしやすい言葉
介護している家族今の負担と限界早く決めたい
離れて暮らす家族理想と親への思いまだ大丈夫では
本人不安と今の暮らしへの執着家にいたい

3者の意見が揃うのを待つ形にすると、決まる日は遠のきます。誰が最終的に決めるのかを先に決めていないことが、決まらない原因の2つ目です。決める人がいないまま比較を続けると、施設の数より意見の数のほうが増えていきます。

決める期限が無い

「そろそろ探しておこう」と始めた探し方には、決める理由が抜けています。今日決めても、来月決めても、状況は同じに見えます。すると、比較を続けることが目的になり、決める日が先送りになります。

期限には、退院日のように外から来るものと、自分で置くものの2種類があります。外から来る期限を待つ探し方は、その日が来てはじめて決まります。

反対に、退院日が決まった人や在宅介護の限界が来た人は、少ない見学の件数で決めていることが多いようです。期限が、決める理由を作るからです。

期限が無いまま探すと、疲れだけが溜まります。決まらないのは、探す力の問題というより、決める日を自分で置いていないからです。

期限の置き方は、家族で分担する章で書きます。

ずっと居られる施設を探している

「一度入ったら、最後までそこにいてほしい」という願いは自然です。ただ、この願いを条件にすると、どの施設も失格になります。

要介護度が上がる、医療処置が増える、認知症の周辺症状が出る。こうした変化があると、どの施設でも住み替えの可能性はあります。介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けた介護付き有料老人ホームでも、入居契約書には入居者側と施設側の双方の契約解除の条項を定めておくことが、国の指導指針で求められています。つまり、施設側から契約を終える条件は、どのホームの契約書にも書かれています。

「終の住まい」を探す代わりに、「今から2〜3年、この状態で暮らす場所」を探すと、候補が現れます。住み替えは失敗ではなく、状態に合わせた選び直しです。この前提に立つと、条件の数が減ります。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法

出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

決まらないときの条件の絞り方

条件は足すほど決まらなくなります。

この章の答えは、失格条件を医療・費用・距離の3つに固定し、それ以外は比較に使わないことです。

種類中身使い方
失格条件医療処置への対応、月額の上限、家族が通える距離1つでも外れたら候補から外す
あればよい条件食事、行事、部屋の広さ、雰囲気候補を決めた後に確かめる

失格条件を医療と費用と距離の3つに固定する

失格条件を3つにする理由は、この3つが入居後に変えられないからです。

医療処置への対応は、施設の看護職員の配置と協力医療機関で決まります。痰の吸引や経管栄養、インスリン注射に対応できるかは、入居した後もそのまま続きます。介護・看護職員の配置率と協力医療機関は、有料老人ホームの重要事項説明書に記載する項目です。職種別の職員数は、厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも施設ごとに確認できます。これは、介護サービス事業者が運営状況を都道府県知事へ報告し、都道府県がその内容を公表すると介護保険法で決められている仕組みです。

月額の上限は、本人の年金と預貯金で決まります。年金と預貯金の取り崩しで何年持つかを1つの数字にしておきます。決め方は、月々の予算で視野に入る老人ホームと、予算だけでは決まらない三つの関門の記事に書いています。

距離は、面会の頻度で決めます。週1回通うなら自宅から30分以内、月1回なら1時間以内、というように、通える回数から逆算します。「近いほうがよい」より「週1回通える距離」と決めると、地図で線が引けます。

この3つを紙に書き、見学の前に施設へ電話で聞きます。1つでも外れたら、見学を見送ります。

出典: 厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針 別紙様式(重要事項説明書)

出典: e-Gov法令検索 介護保険法

失格条件は要介護度が2段階上がったときで作る

失格条件は、今の状態ではなく、状態が変わったときで作ります。

要介護度が2段階上がったとき、認知症の周辺症状(夜間の大声・徘徊・介護への拒否)が出たとき、医療処置が増えたときに、その施設にいられるかどうかです。

これを確かめる場所は、入居契約書と重要事項説明書の契約の終了に関する項目です。国の指導指針は、入居契約書に定める設置者の契約解除の条件を、信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めるものとしないよう求めています。実際の契約書では「医療的ケアが常時必要になったとき」「他の入居者に迷惑を及ぼすとき」といった書き方が多く、その具体的な線がどこにあるかを見学で聞きます。

今の状態で合う施設を選ぶと、1〜2年で住み替えになることがあります。2段階上がったときで選ぶと、住み替えの回数が減ります。合わない施設の見分け方は、その有料老人ホームが親に合わないと分かる三つの条件の記事に書いています。

出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

あればよい条件は比較に使わない

家族全員の希望を集めると、条件は10を超えます。食事、行事、部屋の広さ、庭、職員の年齢、風呂の回数、ペット。これらは「あればよい条件」で、比較に使うと決まらなくなります。

家族の希望を1つずつ集める手順

  1. 家族一人ひとりに「これだけは」を1つだけ出してもらう
  2. 重なった希望だけを、失格条件に足すかどうか検討する
  3. 重ならなかった希望は、候補を決めた後に「この施設にはあるか」を確かめる項目にする

見学で気づいた良い点は、条件から切り離します。「この施設は食事に力を入れている」と、その施設の特徴としてメモに残します。条件に足した瞬間に、他の施設が失格になり、比較の軸が動きます。

条件を足すのをやめるだけで、決まらない構造の1つが止まります。

見学は何件で決めるか

見学は3件で決めます。増やすより、書類で落としてから行き、同じ紙で見て、本命の1件を2回見るほうが決まります。

見学を減らして決めるための手順は、次の3つです。

  • 書類で落としてから見学に行く
  • 見学の上限を3件と先に決める
  • 本命の1件だけを2回見る

書類で落としてから見学に行く

有料老人ホームの設置者は、施設で提供する介護等の内容や運営状況に関する情報を都道府県知事へ報告することが老人福祉法で決められており、都道府県知事は報告された事項を公表することになっています。東京都のように、提出された重要事項説明書をそのまま一覧で公開している自治体もあります(東京都有料老人ホーム重要事項説明書一覧)。見学の前にこの書類を読むと、行く価値のある施設だけを残せます。

重要事項説明書の様式は国が定めており、見るのは次の3か所です。

  • 入居率(入居者数の合計を入居定員数で割った割合)
  • 前年度における退去者の状況(退去先が自宅等・社会福祉施設・医療機関・死亡・その他のどれか)
  • 業務に従事した経験年数に応じた職員の人数(1年未満から10年以上までの5つの区分)と、前年度1年間の採用者数・退職者数

この3か所で、見学に行かなくても落とせる施設が分かります。読み方は、介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所の記事に書いています。書類で残った施設だけを見学すると、見学の件数が自然に減ります。

出典: e-Gov法令検索 老人福祉法

出典: 厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針 別紙様式(重要事項説明書)

見学の上限を3件と先に決める

「最低3〜4件は見る」という助言と「3つ以内に絞る」という助言が並ぶのは、目的が違うからです。

1件目は基準を作る見学、2件目は比べる見学、3件目は決める見学です。4件目以降は、条件が増える仕組みで書いた通り、比較の軸が変わって決まりにくくなります。

見学の前に「3件見て、失格条件を満たす施設があれば、その中で決める」と家族で合意しておきます。3件とも失格なら、条件を見直してから次の3件を探します。

回り方は、同じ日に2件、同じ時間帯です。日を分けると印象が薄れて比べにくくなります。昼食の時間帯に合わせると、食事の様子と職員の動きが同時に見えます。見学で使う紙は、失格条件3つと当日に聞く質問を書いた1枚で、全施設で同じ紙を使います。当日に聞く質問は、介護付有料老人ホームの見学前に読む職員体制の数字と、当日に聞く四つのことの記事に書いています。

「もう1件だけ見てから」という気持ちが出たら、それは決めたくない気持ちの言い換えです。3件見て失格条件を満たす施設があるなら、その中で決めます。

本命の1件だけを2回見る

見学した施設の数より、本命の1件を2回見たかどうかのほうが、入居後の後悔を減らします。

1回目は昼、2回目は夕方以降です。夕方以降は職員が減る時間帯で、その施設の普段の姿が見えます。重要事項説明書には、夜勤を行う看護・介護職員の人数と夜勤帯の設定時間を記載する欄があるので、書類の数字と実際の様子を照らし合わせられます。

本人を連れて行くのは、この2回目だけにします。全ての見学に本人を連れると、本人が疲れて拒否が強くなります。本命が決まってから、本人と一緒に「ここで暮らすかどうか」を見る回にします。誘い方と当日の見方は、老人ホームの契約前、親本人ともう一度見学すべき?の記事に書いています。

2回目で確かめるのは、1回目に気になった点が本当かどうかです。夜間の職員数、夕食の様子、入居者の表情。1回目のメモを持って行き、同じ場所を見ます。ここで大きなずれが無ければ、決めてよい施設です。

出典: 厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針 別紙様式(重要事項説明書)

家族で分担する方法

一人で探すと、判断の前に体力が尽きます。

この章の答えは、決める人を1人にし、役割を4つに分け、週1回共有し、期限を置くことです。

役割仕事担う人
決める人最終的に1つを選ぶ介護している家族
情報係資料請求・見学の日程・重要事項説明書の取り寄せ遠方の家族
お金係費用の試算・本人の年金と預貯金の確認遠方の家族
本人係本人の気持ちを聞く・本命の見学に同行する本人と話しやすい家族

決める人を1人に決める

最初に、誰が決めるかを家族で合意します。多数決や全員一致より、介護している人が決める形にします。理由は、入居後の面会・施設との連絡・費用の管理を担うのが介護している人だからです。

他の家族は、拒否権の代わりに「条件を1つ出す権利」を持ちます。「兄は距離、妹は費用」というように、一人1つの条件を出し、それが失格条件に入るかを検討します。決める人は、その条件を聞いたうえで最後に1つを選びます。

この合意を紙に書き、家族で共有します。後から「聞いていない」と言われるのを防ぐためです。

決める人を1人にすると、決まらない構造の2つ目が止まります。

役割を4つに分けて遠方の家族にも渡す

役割は、決める人・情報係・お金係・本人係の4つです。

遠方に住んでいる家族には、情報係とお金係を渡します。資料請求、重要事項説明書の取り寄せ、見学の日程調整、費用の試算は、距離に関係なくできる仕事です。介護している人が全部を抱えると、見学の前に疲れます。「遠いから手伝えない」と言われたら、この2つの役割を具体的に渡しましょう。

共有は週1回、30分です。LINEなどで「今週の候補」「落とした施設とその理由」を1枚にして送ります。口頭で伝えると、家族の間で情報がずれ、同じ説明を何度もすることになります。1枚の共有があると、遠方の家族も同じ地図を見て話せます。

意見が割れたら専門職を間に入れる

家族の意見が割れたときは、家族の中で決着をつける代わりに、専門職を間に入れます。

ケアマネジャーか地域包括支援センターに「家族で意見が割れています。本人の状態から見て、何が要るかを専門職として言ってほしい」と頼みます。地域包括支援センターは、市町村が設置し、地域の高齢者の保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援する施設として介護保険法に定められた窓口です。「介護度が上がっているので夜間の見守りが要る」「今の医療処置なら住宅型でも対応できる」という専門職の言葉は、家族の言葉より通ります。理想を言う遠方の家族も、本人の状態を具体的に聞くと、条件を見直します。

施設紹介センターに任せる範囲も決めておきます。紹介センターは、候補を出す・見学の日程を組む・施設と連絡を取る、を無料で引き受けます。ただし多くの紹介センターは施設からの手数料で運営されているので、「決める」は家族に残します。任せるのは情報係の仕事の一部までです。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法

探すのを止める日を先に決める

疲れているときは、探すのを止めてよい日を先に決めます。「〇月〇日までに決める。決まらなければ一度止めて、〇日に再開する」と紙に書きます。期限があると決まりやすくなり、止める日があると疲れが溜まりにくくなります。

止めている間は、介護している人の時間を買います。

  • ショートステイを月に数日入れる
  • デイサービスの回数を増やす
  • 訪問介護を1回足す

ケアマネジャーに「探すのを一度止めるので、その間の負担を減らしたい」と伝えると、ケアプランを組み直してもらえます。

本人の「行きたくない」は、その日の言葉として受け取ります。日によって「迷惑をかけたくない」に変わります。本人係が週1回、同じ質問(どこで暮らしたいか・何が心配か)をして記録すると、揃った記録から本当の希望が見えてきます。家の近く、風呂は毎日、同居の猫。それが分かると、失格条件の3つに本人の希望を1つ足すかどうかを、決める人が判断できます。

まとめ:条件3つと見学3件と決める人1人で決まります

老人ホーム探しが決まらないのは、探し方の失敗というより、見学のたびに条件が増える構造、決める人がいない構造、決める期限が無い構造の3つが重なるからです。だから、失格条件を医療と費用と距離の3つに固定し、見学の上限を3件と先に決め、決める人を1人に決めると、比較が終わって候補が1つに残ります。

今日のうちに、家族へ「これからは介護している自分が最後に決める。ほかの人は条件を1つずつ出してほしい」と伝えて合意を取りましょう。ここを飛ばして見学だけを増やすと、施設の数より意見の数が増えて、決める日が先に延びます。

そのうえで、候補の施設の重要事項説明書を自治体の公表ページで開き、入居率、前年度の退去者の状況、職員の経験年数の分布を確かめましょう。介護のあんしんでは、老人ホーム探しが決まらないときの条件の絞り方と見学の件数も含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。