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高齢の親のために介護施設を選ぶのは、多くの家族にとって人生の中でも重要な決断の一つです。
施設選びでは、親の介護度や健康状態はもちろん、生活スタイルの希望、予算、立地条件など、様々な要素を考慮する必要があります。
この記事では、介護度の基本的な理解から、具体的な施設の種類、そして実際の施設選びの方法まで、段階を追って詳しく解説します。
高齢の親のために最適な施設を選ぶ際、まず確認しておきたいのが「介護度」です。介護度は、どの程度のサポートが必要かを示す指標であり、施設選びや介護保険の利用範囲、必要なケアの内容にも大きな影響を与えます。
介護度は、「自立」「要支援1・2」「要介護1~5」の8段階に分類されます。この段階というのは、親がどれほどの介護や支援を必要としているかを表し、どの施設が適しているかを判断する基準にもなります。以下、それぞれの段階について説明します。
まず、介護が不要な「自立」から「要支援」に至るまでの3段階について見ていきます。
要支援よりもさらにサポートが必要になるのが「要介護」の段階です。以下の5段階で細かく分類されます。
この8段階で親の状態が評価され、必要な支援やケアが具体的に見えてきます。介護度に応じた施設を選ぶことで、適切なサポートが受けられ、親も安心して生活できる環境を確保できます。
要介護認定は「申請と調査」「一次判定」「二次判定」という3つのステップで行われ、最終的な介護度が決まります。以下、手順ごとに具体的な内容をわかりやすく説明します。
まず、介護が必要かもしれないと感じたら、市区町村の窓口で「要介護認定」の申請を行います。その後、自治体の認定調査員が自宅を訪問し、日常生活でどのくらいの支援が必要かを調べる「基本調査」を実施します。この調査では、歩行、排泄、入浴といった日常の動作や認知機能の確認など、多方面からサポートの必要度が評価されます。
次に、調査結果をもとに「一次判定」として、介護がどれほど必要かをコンピュータで数値化します。これは、厚生労働省の「1分間タイムスタディ・データ」と呼ばれる基準を基にして、親が日常生活でどのくらいサポートを必要とするかを計算するものです。
そして最後に、一次判定で出た数値や主治医の意見書をもとに、医療や福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」で「二次判定」が行われます。二次判定では、親の総合的な状態がさらに評価され、最終的な介護度(自立から要介護5まで)が決定されます。
詳しくは知りたい方は、下記に詳細な手順がまとめられあります。
参考:厚生労働省「介護の手間に係る審査判定」
介護施設を選ぶ際、最も重要な基準となるのが親の健康状態と介護レベルです。
自立している方から24時間体制のケアが必要な方まで、必要なサポートの程度によって最適な施設は大きく異なります。
自立して生活する親には、日常の自由を重視しつつ、いざという時にサポートが受けられる施設が理想的です。具体的には、以下の3つの施設が該当します。
普段は自由に暮らしながら、必要な時に生活支援が受けられるバリアフリー設計が特徴です。緊急通報システムや安否確認も整い、いざという時に安心できる環境です。
プライバシーを守りつつ、交流イベントや趣味活動を楽しむ自由度の高い環境です。自立しながら他の入居者との交流も楽しみたい方に最適です。
介護サービスは提供しないものの、生活支援とレクリエーションが充実しており、健康的な日々を支える工夫がされています。体力維持や趣味活動を楽しみたい方に向いています。
日常生活の一部で支援が必要な親には、自立を尊重しながら、必要なときに柔軟にサポートが受けられる施設が理想的です。具体的には、以下の2つの施設が該当します。
生活支援が充実しており、将来的な介護が必要になった場合にも対応しやすい施設です。介護サービスは外部の訪問介護事業者と契約する形で利用でき、必要に応じて生活支援を受けながら、自立した生活を続けられます。
サ高住の見守り体制に加えて、必要な場合に訪問介護サービスを併用する形が可能です。普段は自由に過ごしつつも、介助が必要なときにサポートを受けられるため、軽度の支援が求められる方に適しています。
これらの施設では、訪問介護や生活リハビリ、健康チェック、食事サポートを柔軟に組み合わせることで、必要な支援を受けながら安心して自立した生活を維持できます。
日常生活の多くで介護が必要でありながら、ある程度の自立性も維持したいと考える親には、常に介護スタッフが支援を提供しながらも、自立性を尊重してくれる施設が適しています。以下の2つの施設が該当します。
介護スタッフが常駐し、食事、入浴、排泄などの基本的な介護サービスを日常的に受けられる施設です。ある程度の自立性を保ちながら、必要なサポートが柔軟に提供されるため、安心して生活が送れます。
認知症の高齢者向けで、少人数制の共同生活を通じて家庭的なケアを提供する施設です。アットホームな環境の中で、食事や入浴、排泄介助に加え、認知症ケアも充実しているため、認知症の親が落ち着いて生活できます。
これらの施設では、食事や排泄、入浴などの日常的な介助に加え、健康管理やリハビリ、レクリエーション活動も行われるため、自立性をできるだけ維持しつつ、必要なケアが提供されます。
24時間体制の介護や医療的ケアが必要な親には、手厚い介護と医療サポートが整った施設が理想です。以下の施設が特に適しています。
重度の要介護者を対象に、24時間のケア体制で食事、排泄、入浴の介護を行う公的施設です。公的支援により費用も抑えられているため、費用負担が軽減されます。
医療ケアとリハビリを中心に提供する施設で、在宅復帰を目指してリハビリを重視しています。医療スタッフが常駐しているため、介護と医療ケアの両方が必要な方に適しています。
医療と介護を一体化した長期療養型の施設で、慢性的な病気や重度の介護を必要とする方が対象です。看取りケアも行われ、終末期にも安心して過ごせる環境です。
これらの施設では、24時間の介護体制や医療ケア、看取りケアまで幅広く対応しており、重度の介護が必要な親が安心して過ごせる環境を提供します。
認知症の親には、認知症に特化した安全な環境とケアが提供される施設が理想です。以下の施設が該当します。
認知症ケアに特化した少人数制の施設で、家庭的な環境を通じて安心感のある生活を提供します。スタッフが常に見守りを行い、記憶保持や社会交流の促進を通じて症状の進行を抑えます。
徘徊や症状進行に対応するプログラムを提供し、安全な生活環境を整えた施設です。見守りシステムや徘徊防止装置が設置され、親の状態に合わせたケアプランが用意されます。
これらの施設では、認知症ケアプログラムや記憶保持活動、見守りシステムを通じて、親が安全で落ち着いた生活を送れるようサポートが行われます。
特定の疾患に特化したケアを必要とする親には、専門的なサポートを提供する施設が理想的です。こうした施設は、疾患ごとの特有のケアやリハビリを提供し、生活の質を高める支援を行います。以下に代表的な疾患ごとに対応した施設を紹介します。
パーキンソン病の方に特化したリハビリやケアを提供し、症状の進行を緩和することを目指しています。たとえば東京都内の「パーキンソン病専門ホーム」では、専門的なリハビリプログラムを組み、個別に合わせたケアを行っています。
ALS患者向けに、呼吸器管理やコミュニケーション支援が整った施設です。福岡県の「ホスピタルホームあいあい日佐」では、専門的な医療ケアと生活支援を提供し、呼吸器ケアや支援機器も整備されています。
糖尿病性腎症や網膜症などの合併症を持つ方には、血糖管理や食事療法に対応した施設が、また脳卒中後遺症にはリハビリを中心とした支援施設が適しています。神奈川県の「ルネサンス リハビリセンター蒔田」では、脳卒中後のリハビリに特化しています。
終末期ケアが必要な親には、穏やかに最期を迎えられる環境と、家族も安心して寄り添えるサポートが整った施設が理想です。以下に適した施設を紹介します。
痛みの管理や家族の宿泊対応、医療的なサポートも整った施設で、親とご家族が穏やかに過ごせる環境です。ペインコントロールに重点を置き、安心して終末期を迎えられます。
精神的なケアと痛みの管理に特化し、親がリラックスできる穏やかな環境を提供します。ご家族も一緒に過ごせるよう、面会時間が柔軟に設定されており、宿泊施設も完備されています。
これらの施設は、ペインコントロールや精神的ケアプログラムが充実しており、親が穏やかに最期を迎えられるよう、家族も安心して見守れる体制が整っています。
施設での生活の質を決める重要な要素が、入居者の生活価値観とプライバシーへの配慮です。アクティブに交流を楽しみたい方もいれば、静かにプライベート空間を大切にしたい方もいます。
親の希望する生活スタイルに合わせて、最適な施設を見つけていく方法を説明します。
社会的な交流や日々のアクティビティを楽しみたい親には、レクリエーションが充実し、他の入居者とのコミュニケーションが積極的に行える施設が理想です。以下の施設が該当します。
自由度が高く、同世代の入居者との交流が楽しめる環境です。定期的にイベントや趣味活動が行われ、日々の生活に刺激を求める方に適しています。外出も自由なため、プライベートと交流をバランスよく楽しめます。
外出プログラムや各種イベントが充実し、社会的なつながりを持ちながらアクティブに暮らせる設計です。ボランティア活動や地域との連携も行われており、同世代の仲間と共に積極的な生活が送れます。
静かな環境でプライバシーを大切にしたい親には、個室で静かに過ごせる施設が理想です。以下の施設が該当します。
個室でプライバシーが確保され、落ち着いた環境で生活ができます。必要な介護サービスを受けながらも、自分のペースで静かに暮らしたい方に適しています。プライベートダイニングや個別の生活支援サービスも利用でき、家族とのプライベートな時間も大切にできます。
完全個室でプライベートな空間が確保されており、静かな環境を求める方に向いています。必要な介護サービスを受けつつも、他の入居者との干渉が少なく、穏やかな生活が送れます。
これらの施設は、静かな生活を望む方に最適で、個別の生活支援や訪問スタイルのケアが整っているため、親が安心して快適に過ごせる環境を提供しています。
理想的な施設が見つかっても、現実的な費用や立地条件を考慮することは不可欠です。長期的な経済的負担や、家族の訪問のしやすさなど、実践的な視点からの検討が必要になります。
ここでは、費用面と立地面から見た施設選びのポイントを解説していきます。
費用に余裕があるかどうかは、親の介護度や今後の見通し、家族の支援状況などにも左右されます。たとえば、現時点で自立していても、介護度が上がった場合の費用を視野に入れて施設を選ぶことが大切です。
下記に「月額費用」と「初期費用」の高低に基づき、長期利用を前提とした場合の選択肢を整理します。
予算 | 月額費用(低) | 月額費用(高) |
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初期費用(低) |
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初期費用(高) |
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– 月額費用の高低:施設ごとに、手厚いサービスが受けられるかどうかの指標になります。
– 初期費用の高低:短期間であれば初期費用が少ない施設、長期の安定を求める場合は初期費用が高めでも安心できる施設が適しています。
費用に余裕がある場合、将来的に介護が必要になってもケアを継続できる高級サ高住や介護付き有料老人ホームが安心です。
一方、費用に制約がある場合は、施設内での医療・介護サービスの選択肢が多いか確認しておくと良いでしょう。
プロの視点からのアドバイス
施設の立地条件は、親の生活環境や家族との距離感に直結するため、じっくり考えたい要素です。
下記に「自宅からの距離(近い・遠い)」と「都市部か郊外か」で、どのようなメリット・デメリットがあるかを整理します。親や家族がどのような生活環境や訪問頻度を望むかによって、施設の立地条件も重要な選択基準になります。
距離 | 都市部の施設 | 郊外の施設 |
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自宅から近い |
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自宅から遠い |
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– 自宅からの距離:家族が頻繁に訪問するか、あるいはたまに訪れる程度かで適した距離が異なります。
– 都市部・郊外の違い:都市部は医療施設が近くにある利便性、郊外は静かな環境や自然に囲まれた生活が望めます。
都市部は、近隣に医療機関や生活インフラが整っている利便性がある一方、生活費が高くなりがちです。
郊外や自然豊かな地域は、静かで穏やかな環境が提供されるものの、家族が頻繁に訪れるにはアクセスに課題が出る場合があります。遠方でも医療体制が整っている施設や、交通アクセスが便利な立地の施設もあるため、慎重に選ぶことが大切です。
プロの視点からのアドバイス
施設を比較する際は、表面的な情報だけでなく実際の生活環境や雰囲気を把握することが重要です。パンフレットの比較から体験入居まで、より良い選択をするための具体的な比較方法をご紹介します。これらのコツを活用することで、親に最適な施設を見つけやすくなります。
親に合った最適な施設を見つけるためには、各施設をただ比較するだけでなく、実際の生活をイメージしながら慎重に確認することが大切です。パンフレットや体験入居、専門家への相談などを通じて、施設の本質を見極めましょう。
この記事で紹介した内容を参考に、長期的に安心して暮らせる最適な施設を選んでください。