※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

見学だけで職員の質を断定することはできません。1回か2回、日中に案内される時間に立ち会って、そこで見えるものには限りがあります。
だから、この記事はあいさつや表情や掲示物から判断する方法を示しません。かわりに示すのは、印象だけで選ばないための手順です。
二つの数字は、見学に行く前に書面で読めます。読んでから行けば、当日どこを聞くべきかが決まります。見学は職員の質を見抜く場ではなく、書面で読んだ数字の理由と、書面に出てこない運用を確かめる場になります。
この記事が扱うのは、介護付有料老人ホームです。理由は次の章で書きます。
なお、当サイトは介護施設を運営している事業者ではありません。だから、施設について正面から書ける立場にあります。
この記事の方法が効くのは、入居先の候補が介護付有料老人ホームである場合に限られます。
介護付有料老人ホームとは、特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームのことです。かみ砕くと、ホームの職員がそのまま介護保険の介護を提供する形の住まいです。
判定の手だては2つあります。ひとつは、重要事項説明書のうち、施設の種類を書いている箇所を見ること。欄の名前は様式によって違うので、名前ではなく「介護付有料老人ホーム」「特定施設入居者生活介護」と書かれているかどうかで判定します。
もうひとつは、介護サービス情報公表システムで、その事業所に「特定施設入居者生活介護」のサービスがあるかを見ることです。書類で見つからなければ、こちらで確かめれば足ります。
この記事の方法が介護付に効くのは、人員の基準も、公表システムに載る職員の情報も、特定施設という枠組みで作られているからです。
入居先の候補が介護付だと分かったら、次に用意するのは書面です。
※ 住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、外部サービス利用型特定施設を入居先の候補にしている場合は、ホームの職員と、実際に介護を担う訪問介護・訪問看護等の事業所を分けて調べる必要があります。この記事の見方をそのまま当てはめないでください。
見学の前に手元へ用意する資料は2つで足ります。
1つ目は、最新の重要事項説明書。こちらが第一です。老人福祉法にもとづく法定の書類で、厚生労働省の標準指導指針は、入居相談があったときに交付するほか、求めに応じて交付することを求めています。契約の直前に初めて読むものではなく、見学の予約を取る段階で交付を求めてかまいません。
2つ目は、介護サービス情報公表システムの、介護付の事業所詳細ページ。これは書類に欄が無かったときの回り道です。
先にお伝えすることがあります。これから読む二つの数字は、様式によっては重要事項説明書に欄がありません。国の様式には両方ありますが、自治体の様式では欠けていることがあります。2つ目の資料を用意するのは、そのための保険です。
公表システムの側にも、間違えやすい場所があります。同じ施設に2系統のページが同居していて、「介護保険の情報公表」の側には前年度の採用者数・退職者数が載りますが、「有料老人ホームの生活関連情報」の側の従業者のタブには載りません。開くのは前者のほうです。
そして最大の落とし穴が、欄の名前です。国の様式と自治体の様式では、同じ内容の欄でも名前が違います。だから名前で探さず、その欄に何が書かれているかで探します。対応は次のとおりです。
| 探すもの | 国の様式での呼ばれ方 | 自治体の様式で見た呼ばれ方 | 無かったときの回り道 |
|---|---|---|---|
| 夜勤帯の時間と、最も少ないときの人数 | 「職員体制」の中の「夜勤を行う看護・介護職員の人数」 | 「夜勤・宿直体制」「配置職員数が最も少ない時間帯」 | 公表システムの事業所詳細ページ |
| 前年度の採用者数と退職者数 | 「職員体制」の中の「職員の状況」 | 欄そのものが無いことがあります | 公表システムの事業所詳細ページ |
| 職員の経験の厚み | 「業務に従事した経験年数に応じた職員の人数」 | 「本事業所における勤続年数」があることもあります | 公表システムの事業所詳細ページ |
| 契約上の配置比率と、実際の配置比率 | 「契約上の職員配置比率」と「実際の配置比率」 | 記載が無いことがあります | 施設に聞きます |
表の右端まで見て、どちらにも無ければ施設に聞きます。ここまでが準備です。用意した資料から読む数字は、次の2セットに絞ります。
重要事項説明書そのものを、どの欄からどう読むかは別の記事で扱っています。
関連記事:介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所
書面から読む数字は2セットです。ひとつは最少時の夜間体制、もうひとつは人の出入りと経験の構成です。どちらも重要事項説明書か公表システムで読めます。加えて、手厚い職員配置を表示している施設に限って、その表示を書面と突き合わせる作業がひとつ増えます。表示していない施設には要りません。
数字はこれ以上増やしません。介護福祉士の数、入居率、退居後の行き先、加算の有無は、この記事では扱いません。
ただし、この2セットで分かることの範囲も、先にはっきりさせておきます。分かるのは、体制と人の出入りの安定性と運営の透明性までです。目の前の職員の介護の技術、判断力、入居者の尊厳への配慮、対応の丁寧さは、これらの数字では測れません。書面を読むのは、見抜くためではなく、印象以外の手がかりを持って行くためです。
国の現行の様式では、「職員体制」の中に「夜勤を行う看護・介護職員の人数」という別の欄があります。そこで「夜勤帯の設定時間」「平均人数」「最少時人数(休憩者等を除く)」を、看護職員と介護職員のそれぞれについて書かせています。
自治体の様式では欄名が違います。確認した実物では「夜勤・宿直体制」「配置職員数が最も少ない時間帯」「上記時間帯の職員配置数」と書かれており、「最少時人数」という語は使われていませんでした。前章の表のとおり、名前ではなく中身でたどります。
制度の側も見ておきます。ここは3つの出所が出てくるので、重みの違いから先に押さえます。
省令は、事業者が満たさなければ指定に関わる基準です。その省令は、夜間について時間帯別の人数を定めず、常に1人以上の介護職員が確保されることだけを定めています。
解釈通知は、その省令をどう読むかを国が示したものです。ここでは、これを人数の規定ではなく勤務体系を適切に定めることと説明し、宿直の時間帯を含めて適切な介護を提供できるようにするものとしています。
標準指導指針は、自治体が施設を指導するときのよりどころになる文書です。こちらは、入居者の実態に即し、夜間の介護と緊急時に対応できる数の職員を配置することを求めています。
かみ砕くと、決まりはありますが、入居者が何人いるから何人置け、という形の決まりではありません。
言える水準はここまでです。省令には、夜間の同時配置人数を入居者数に応じて増やす全国一律の数値基準はなく、基準上の最低は介護職員1人以上です。ただし、施設には入居者の状態や緊急時に対応できる体制が求められています。下限だけを取り出して読むと、実態に応じた配置の求めが落ちます。
そして、夜勤の人数は単体では読めません。書面から読める入居者数とフロア数を並べ、そのうえで、同時に複数の事象が起きたときにどうするかを見学で聞きます。この3つでいったん止めます。要介護度の構成や看護のオンコールまで分からないと読めない、とはしません。
読み方を1つ、例で確かめておきます。仮に、書面に「夜勤帯は午後5時から翌午前9時、介護職員の最少時人数2人、看護職員の夜間配置なし」とあり、入居者数が50人、3フロアだったとします。ここまでは書面で分かります。
分からないのは、その2人が3フロアをどう分担するかです。だから見学で聞くのは、そこになります。この例は読み方を示すためのもので、良い施設か悪い施設かの判定に使うものではありません。
国の現行の様式では、「職員体制」の中の「職員の状況」に、看護職員・介護職員・生活相談員・機能訓練指導員・計画作成担当者を常勤と非常勤に分けて、「前年度1年間の採用者数」「前年度1年間の退職者数」の欄があります。同じ表に「業務に従事した経験年数に応じた職員の人数」が並びます。
確認した自治体の様式には、採用者数と退職者数の欄がありませんでした。その場合は公表システムの事業所詳細ページへ回り、どちらにも無ければ施設に聞きます。
公表システムの側では、職種別に常勤・非常勤の実人数と常勤換算人数の両方が載ります。ここで語を3つ開いておきます。実人数とは頭数のことです。常勤換算とは、勤務した延べ時間を常勤職員の勤務時間で割った数え方で、同時に何人いるかを示すものではありません。前年度とは、直前の年度の1年間を指します。
この中で見るのは2つで足ります。前年度の退職者数と、介護職員の実人数です。厚生労働省の解説も、家族が見るべき項目として介護職員数と介護職員の前年度退職者数を挙げ、退職者数と職員数に占める割合を比べることを促しています。
ここで注意がひとつあります。この割合を「離職率」と呼びません。厳密な離職率ではなく、入居先の候補どうしを粗く比べ、質問の起点にするための数字です。小規模な施設、開設直後、増床、事業譲渡、法人内の異動があると、数字は大きく動きます。全国平均と比べても、入居先の候補になる施設の良し悪しは出ません。比べるのは入居先の候補どうしまでにします。
割合を出すなら、分母は介護職員の実人数だけにします。同じ人が介護職員と機能訓練指導員を兼ねていれば、その人は両方の職種の実人数に1人ずつ数えられるからです。全職種の実人数を足すと、同じ人が二重に数えられて分母が膨らみます。
実際、公表されている1件では、機能訓練指導員が実人数11人に対して常勤換算1.2人でした。頭数の割に働いている時間が短い、つまり大半が兼務だと分かります。
もうひとつ、混同しやすいものがあります。公表システムと国の様式にあるのは介護業務全体の経験年数であって、その施設での勤続年数ではありません。だから「1年未満が多いから、この施設に人が定着していない」とは読めません。
自治体の様式に「本事業所における勤続年数」が載っている場合に限り、定着を見る補助材料として使えます。載っていない施設について、経験年数で代用してはいけません。
公表日は事業所ごとにばらつきます。施設を横に並べる前に、まず公表日を見ます。公表制度の基本情報は事業所の自己申告が原則なので、公表値は真実ではなく、施設の説明と照らすための材料だと考えておきます。
読み方をもう1つ、例で確かめておきます。仮に、書面に「介護職員の実人数30人、前年度の退職者数6人」とあったとします。割合は2割になりますが、この数字だけでは良否は決まりません。
増床のために採用が先行した年かもしれませんし、法人内の異動が退職として数えられているかもしれません。だから見学で聞くのは、この数字になった理由と、いまの欠員の状況になります。
ここは新しい作業ではなく、手厚い配置を表示している施設だけ、書面の見方が一往復増えるという話です。表示していない施設では読み飛ばしてかまいません。
省令は、特定施設入居者生活介護について、看護職員および介護職員の合計数を常勤換算方法で、要介護者である利用者の数が3またはその端数を増すごとに1以上と定めています。これは事業所が満たすべき最低ラインであって、質の指標ではありません。
「2対1」「2.5対1」といった上乗せの表示は法定ではなく、事業者の任意の表示です。分子に何を数えるかは施設ごとに違いうるので、表示の数字だけを並べても比較になりません。
国の現行の様式は、この表示を書面で確かめられるようにしています。契約上の職員配置比率を選ぶ欄と、実際の配置比率を書く欄が並び、脚注に、広告やパンフレット等における記載内容に合致するものを選択する旨を印字しています。自治体の様式では記載が無いこともあるので、その場合は施設に聞きます。
やることは、パンフレットの表示と書類の表示が一致しているかを見て、実際の配置比率と並べることです。ここで一致しなくても、そのまま虚偽と決めつけないでください。更新の時点や算定の時点の差でも起こります。実際の配置比率が契約上の比率より手厚い実物もあるので、下回っていないかという一方向だけで読まないほうが確実です。
なお標準指導指針は、こうした表示を行うホームに対して、年度ごとに算定して表示と実態の乖離がないか自ら検証し、入居者等に算定方法と算定結果を説明することを求めています。この突き合わせは、次の章の4つ目の質問につながります。
広告やパンフレットの強い言葉を、どこに置かれた補足情報と突き合わせて読むかは別の記事で扱っています。
関連記事:有料老人ホームの誇大な広告と、強い言葉の近くにあるはずの補足情報の読み方
4つとも、書面で数字を読んだ後に成り立つ質問です。読まずに行って聞き出すためのものではありません。聞くのは、この4つで足ります。
人数と表示そのものは書面にあります。書面に出ないのは、担当の範囲と、応援の体制と、その数字になった理由と現況です。4つ目は、手厚い配置を表示していない施設では要りません。
研修、事故の防止、身体的拘束等については、話の流れで触れられたときに直近の実施時期と運用を聞けば足ります。わざわざ質問を足す必要はありません。
その場合も、個別の記録を見せてもらうことを前提にしないでください。作成や実施の義務があることと、入居希望者が原本を閲覧できることは別です。個別の記録には入居者の個人情報が含まれ得るので、閲覧を断られても、記録が存在しないとは判断できません。
聞き方は「最後に委員会を開催したのはいつか」で足ります。省令は、身体的拘束等の適正化のための委員会を3か月に1回以上、感染症の対策委員会を6か月に1回以上開催することを定めています。だから、直近はいつ開いたかは、施設が答えられて当然の質問になります。
返ってきた回答は、その場で即答できたかどうかでは判定しません。案内の担当者が全ての制度を即答できないのは、不自然なことではありません。その場の反応の速さで判定すると、判断を誤ります。
判断の基準は、次の3つで足ります。
1つ目を「一致していること」にしないのには理由があります。公表値と書面と説明の食い違いは、更新の時点や集計の範囲の差でも起こるからです。食い違いそのものではなく、食い違いを説明できるかを見ます。
説明を聞いてもなお整合しない場合に、はじめて判断材料にします。その場で答えが出そろわなくてもかまいません。むしろ、後日の回答が書面で返ってくるかどうかのほうが、運営の姿勢をよく表します。
この章は、探しに行く作業ではありません。見つけたときにどう読むかの話です。
福祉サービス第三者評価は、社会福祉法が定める質の向上の努力義務にもとづくもので、高齢者施設の受審は任意です。東京都では評価結果が事業者の同意を得たうえで公表され、掲載は過去5年分になります。
全国を横断して探せる入口はありません。だから探し回る必要はなく、施設から示されたり、都道府県のページで目に入ったりしたときに読めば足ります。受けていないことを減点の材料にはしません。
指定の取消しや効力停止といった行政処分は、都道府県が公表しています。東京都の場合は、事業所名・所在地・処分内容・処分理由まで実名で載ります。一方、立入検査の年度報告は指摘の多かった事項の集計で、個別の施設名は出ません。
こちらも読み方は同じです。行政処分がないことを、品質の保証と受け取りません。
笑顔やあいさつで決めるのではなく、資料を読み、書面に出ていないことを質問し、説明の整合性を見ます。この記事が示すのは、その手順です。
やることは3つに絞れます。見学前に最新の重要事項説明書と、公表システムの介護付の事業所詳細ページを手元に置きます。読む数字は最少時の夜間体制と、人の出入りと経験の構成の2セットにします(手厚い配置を表示している施設だけ、配置比率の突き合わせが加わります)。見学では書面に出ていない4つを聞き、その場の即答だけで判定しません。
そして、この手順で分かるのは体制と安定性と透明性までです。目の前の職員の技術や配慮そのものは、最後まで数字には出てきません。そこを数字で決めようとしないことも、この手順の一部です。
見学の1時間で確かめられるのは、書面に出ていない4つまでです。ただ、書面を読んでから行けば、その1時間の使い道は変わります。