月々の予算で視野に入る老人ホームと、予算だけでは決まらない三つの関門

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月15万円なら、特別養護老人ホームの個室は視野に入ります。地域によっては住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も入居先の候補になります。

ただし、同じ15万円でも、要介護度、医療対応、1割から3割の負担割合、軽減制度、入居一時金によって、実際に選べる施設は変わります。月額の予算は、入居先の候補の範囲を示すものであって、入れる施設を決めるものではありません。

この記事では、まず予算帯ごとの見取り図を示します。そのうえで、なぜその表だけでは決まらないのかを三つの関門として示し、費用の中身、軽減制度、お金では解決しない条件を順に見ていきます。

予算帯ごとにいま視野に入るもの

最初に全体の見取り図を示します。次の表は、月々の予算帯ごとに何が視野に入るかを、価格の決まり方で2つに分けて示したものです。

この表の前提:要介護3、介護保険の自己負担1割、30日換算、軽減制度を使う前の金額。介護保険施設の列は介護費と居住費と食費を含みます。有料老人ホーム・サ高住の列は家賃と管理費と食費を含み、そのうえで介護付き有料老人ホームは介護サービス費を月額に含み、住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は介護サービス費が別に加わります

予算帯介護保険施設で視野に入るもの有料老人ホーム・サ高住で視野に入るもの何が最終判断を変えるか
月10万円前後特養の多床室、特養の従来型個室、老健の多床室ほぼありません要介護度、待機の状況、医療対応
月13万円から15万円特養のユニット型個室、老健・介護医療院の一部地域によっては住宅型有料老人ホーム、サ高住の一部(介護サービス費が別に加わる)要介護度、負担割合、軽減制度、医療対応、介護費の上乗せ
月20万円台上記に加え、軽減制度を使わない場合の選択介護付き有料老人ホーム(介護サービス費込み)を含めて広がる入居一時金、地域、介護費が別料金かどうか

2つの列を同じ「月額」として横に比べてはいけません。含んでいる費用の範囲が違うからです。この違いは後の章で詳しく扱います。

※ この表に載せていない種類が2つあります。ケアハウス(軽費老人ホーム)は、月額が親の収入に応じて段階的に決まるため、予算帯の表の形では示せません。グループホームは、認知症の診断と住所地の要件が先に効くため、予算だけでは入居先の候補になるかどうかが決まりません。どちらも後の章で扱います。

月10万円前後なら特養の多床室が視野に入る

この予算帯で中心になるのは、特別養護老人ホームの多床室と、介護老人保健施設の多床室です。居住費が低く抑えられているため、介護費と食費を足しても10万円前後に収まります。

ただし、視野に入るというだけで、入れるという意味ではありません。要介護度の条件、待機の状況、医療対応の可否が、それぞれ独立に入居先の候補を閉じます。

そして、この予算帯には大きな断層があります。特別養護老人ホームは原則として要介護3以上が対象です。要介護1・2の家族にとっては、最も安い選択肢が最初から閉じています。

要介護1・2なら、見る種類そのものが変わります。特養の多床室ではなく、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウスが中心になります。この分岐は後の章で詳しく扱います。

月13万円から15万円なら特養の個室が視野に入る

特別養護老人ホームのユニット型個室、介護老人保健施設や介護医療院の一部が入ってきます。地域によっては、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の一部も入居先の候補になります。

ここで注意が要ります。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の表示月額には、介護サービス費が入っていません。表示が月13万円でも、外部の介護サービスを使った分の自己負担がそこに加わります。特養の個室の13万円とは、そもそも数えているものが違います。

この差は小さくありません。後の章で具体的な金額を示しますが、表示月額をそのまま予算と突き合わせると、判断を誤ります

月20万円台なら有料老人ホームとサ高住の選択肢が広がる

介護付き有料老人ホームを含め、選択肢は広がります。ただし、この帯で結果を左右するものは3つあります。入居一時金をいくら払うか、どの地域か、介護費が月額に含まれているか別料金か。

20万円台なら入れる、とは言えません。入居一時金を数百万円払う前提の月額表示と、0円プランの月額表示は、同じ施設でも金額が違います。この関係も後の章で扱います。

入居先の候補が決まるのは三つの関門が重なる範囲

予算帯の表だけでは、入れる施設は決まりません。ここでは、入居先の候補を閉じる三つの関門を先に並べ、その三つが重なった範囲が実際の候補になることを示します。

月額の予算は、通るべき三つの関門のうちの1つでしかありません。予算のほかに2つの関門があり、その3つが重なった範囲だけが実際の候補になります

通るべき三つの関門

一つ目(関門1)は、入居条件です。要介護度、認知症の診断、住所地、必要な医療処置とその実施時間。ここで閉じる選択肢は、予算をいくら積んでも開きません。

医療的ケアは、予算を増やしても解決しない場合がある重要な受け入れ条件の一つです。ただし、入居先の候補を閉じる条件はこれだけではありません。要介護度も、負担割合も、入居一時金も、同じように入居先の候補を閉じます。

二つ目(関門2)は、制度を適用した後の負担額です。介護保険の自己負担割合が1割か2割か3割か、負担限度額認定の対象になるか、高額介護サービス費が効くか。ここを反映しない金額は、実際の請求額とずれます。

この関門の入口にあるのが介護保険負担割合証です。毎年7月ごろに市区町村から届く、1枚の書類。ここに1割・2割・3割のどれかが書かれています。

三つ目(関門3)は、家計が続けられる上限です。入居一時金、毎月継続できる額、家族が補填できる額、貯蓄を何年で取り崩すか。ここで大事なのは、入居時に一度だけ出せる額と、毎月続けて出せる額を分けることです。この2つを混ぜると、選択肢の見え方が変わってしまいます。

三つが重なった範囲だけが実際の候補になる

三つの関門を通った結果として残るものを、この記事では「視野に入る施設」と呼びます。「入れる施設」とは呼びません。空室があるか、施設が個別に受け入れると判断するかは、最後まで残るからです。

入居先の候補を絞るときは、関門1から順に通すほうが早く進みます。予算に合う施設を並べてから入居条件で落とすより、入居条件で絞ってから予算を見るほうが、見る施設の数が少なくて済みます。

この先では、施設側がいくら請求するのかという費用の中身を先に見ていきます。関門3、つまり家計の上限に収まるかどうかの判断は、施設側の数字が出て、制度を当てはめた後の金額が分かってから最後に行います。関門3の出し方は最後の章に置いています

介護保険施設の費用は公定価格から計算できる

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院は、費用の大部分が国の定めた額から計算できます。この3つを、この記事では介護保険施設と呼びます。

ここでは、まず介護費・居住費・食費の基本額を出し、そこに含まれない費用、負担割合による変わり方、加算と地域差の掛かり先を順に見ます。最後に、親の手元の書類のどこを見れば判断できるかまで進みます。

介護費と居住費と食費の基本額

次の表は、介護費・居住費・食費の基本額(要介護3・1割負担・30日で試算)です。

施設の種類・居室介護費(月・円)居住費(月・円)食費(月・円)基本額(月)
特養 多床室21,96027,45046,350約9.6万円
特養 従来型個室21,96036,93046,350約10.5万円
特養 ユニット型個室24,45061,98046,350約13.3万円
老健(基本型)多床室27,24013,11046,350約8.7万円
老健(基本型)ユニット型個室27,39061,98046,350約13.6万円
介護医療院I型 ユニット型個室35,97061,98046,350約14.4万円

これは試算であって、請求書の金額ではありません。介護サービス費の基本報酬に、居住費と食費の基準費用額を足したものです。

食費の基準費用額は、厚生労働省の告示に基づき、2026年8月1日から1日1,445円が1,545円へ変わりました(月に換算すると46,350円)。居住費の基準費用額は据え置かれています。以前の額で計算した表を見た記憶がある人は、食費の分だけ上がっていることに注意してください。

この表に含まれない費用

実際の請求額には、この表に含まれていないものが加わります。

  • 各種の加算
  • 地域区分による差
  • 日常生活費
  • 医療費
  • 理美容代
  • 施設が独自に設定した居住費・食費
  • おむつ代や上乗せの介護費など、種類ごとの別料金
  • 自己負担が2割・3割の場合の差

これだけの項目が外にあるので、この表と実際の請求額がほぼ同じだとは言えません

居住費と食費については、もう一段の注意があります。この2つは契約事項なので、施設ごとに自由に設定でき、基準費用額を上回ることも下回ることもできます。ただし基準費用額を超えて設定すると補足給付(所得の低い人の居住費と食費を下げる公的な補助。後の章で扱う負担限度額認定がこれにあたります)が出ないため、大多数の施設は基準費用額と同額に設定しています。同額かどうかは施設ごとに決まるので、料金表で確かめるまで前提にしてはいけません

負担割合が2割・3割なら介護費の部分が変わる

上の表は1割負担で計算しています。同じ施設・同じ要介護度でも、自己負担割合が2割なら介護費の部分は2倍、3割なら3倍になります。居住費と食費は変わりません。

つまり、特養のユニット型個室で介護費が24,450円のところ、2割負担なら48,900円になり、基本額は約13.3万円から約15.7万円へ動きます。

ただし、この基本額をそのまま予算と突き合わせてはいけません。前の節で挙げた日常生活費、医療費、加算を足してから比べます。厚生労働省は施設サービスの日常生活費の目安を月約1万円としているので、それだけでも基本額に上乗せされます。予算15万円の家庭なら、負担割合が1割か2割かで、足したあとの着地が予算の内側か外側かに分かれます

確認するのは介護保険負担割合証です。この記事で最初に手に取ってほしい書類がこれになります。

加算と地域差は介護費にだけ掛かる

加算と地域差については、何に率が掛かるのかが分かれば足ります。

介護保険のサービスの値段は、円ではなく「単位」で決まっています。その単位数に1単位あたりの単価を掛けたものが介護報酬であり、その1割から3割が自己負担になります。

処遇改善加算は、この介護報酬の部分にだけ乗ります。居住費と食費には乗りません。地域区分も同じで、影響するのは主に介護報酬の部分です。1単位あたりの単価は、厚生労働省が定める地域区分によって10.00円から10.90円の幅があります。

したがって、月額の全体が地域によって9%増えるわけではありませんし、加算で1割も2割も上振れするわけでもありません。掛かる先が介護費に限られていると理解しておけば足ります。

※ この記事で単位数から金額を出すときは、1単位10円で計算しています。次の章で出てくる金額も同じ前提です。

親の手元の書類は3点を見れば足りる

ここまでの話を、手元の書類に落とします。見るのは3つです。

介護保険負担割合証で、1割か2割か3割かを確認します。施設の重要事項説明書と料金表で、居住費と食費が基準費用額と同じかどうかを確認します。直近の請求書で、加算と日常生活費がいくら乗っているかを確認します。

すでに入居している施設があるなら、この3つを並べるだけで、上の表と実際の差が見えます。これから探すなら、見学のときに料金表をもらい、同じ3点を確認すれば足ります。次は、費用を施設側が決める種類を見ます。

有料老人ホームとサ高住は施設が決める部分が大きい

介護保険施設と違い、こちらは住まいの費用を施設が決めます。だから、表示されている月額の意味も施設によって違います。

ここでは、月額に何が含まれるかを種類ごとに整理し、介護費が月額の中にあるか外にあるかを見分けます。そのうえで、入居一時金と月額の関係、相場の集計の読み方、料金表で範囲を合わせる手順まで進みます。

表示されている月額に何が含まれるか

まず、月額に含まれるものと別途かかるものを、種類ごとに整理します。

施設の種類月額に含まれるもの別途かかるもの
特養・老健・介護医療院介護サービス費の自己負担、居住費、食費日常生活費、医療費、理美容代
介護付き有料老人ホーム家賃、管理費、食費、介護サービス費の自己負担(定額)日常生活費、医療費、おむつ代、上乗せの介護費
住宅型有料老人ホーム・サ高住家賃、管理費(共益費)、食費外部の居宅サービスを使った分の自己負担、日常生活費、医療費、おむつ代

3行目だけ、介護サービス費が月額に入っていません。ここが、同じ「月額」で範囲の違う数字を比べてしまう最大の原因になります。

介護付き有料老人ホームの介護サービス費は公定価格で読める

よく「有料老人ホームの価格に決まりはない」と説明されますが、これは正確ではありません。介護付き有料老人ホームの介護サービス費には、公定価格があります

厚生労働省の介護報酬の算定構造によれば、特定施設入居者生活介護費は1日あたり要介護1で542単位、要介護3で679単位、要介護5で813単位と決まっています。1単位10円・1割負担・30日で計算すると、要介護3の介護サービス費の自己負担は月20,370円です。

これを、前の章で出した特養のユニット型個室の介護費24,450円と並べてみてください。介護の部分に限れば、大きくは変わりません。

差がつくのは、介護の部分ではなく家賃と管理費の側です。介護付き有料老人ホームが特養より高くなるのは、介護が高いからではありません。住まいの費用の決まり方が違うからです。

住宅型有料老人ホームとサ高住は介護費が別に加わる

住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、介護を外部の事業者と契約して使います。使った分だけ払う仕組みなので、月額表示に介護費は入っていません

上乗せされる額には上限があります。介護保険には区分支給限度基準額という上限があり、要介護度ごとに「1か月にこれだけまでは保険で使える」という単位数が決まっています。その上限を使い切ったときの自己負担が、上乗せの上限になります。

1単位10円・1割負担で限度いっぱいまで使った場合、要介護3で月27,048円、要介護5で月36,217円です。もとになる単位数は、目黒区などの自治体が区分支給限度基準額の一覧として公表しています。上限を超えて使った分は全額自己負担になるので、そこはさらに上乗せされます。

つまり、月13万円と表示されている住宅型有料老人ホームは、要介護3で限度いっぱいまで使えば16万円前後になります。この足し算をしてから、介護保険施設の金額と並べます。そうして初めて、同じ条件で比べられます。

入居一時金と月額は交換の関係にある

同じ種類の中で、入居一時金が0円の施設と数千万円の施設が混在しています。これは施設の格の違いではなく、前払金が家賃の前払いだからです。月払い方式を選べば0円になり、前払い方式を選べばまとまった額になります。

したがって、0円プランはその分だけ月額が高くなります。入居一時金の有無だけを見て安い・高いを判断できません。

※ 前払いで払った額のうち、どこまでが実際に保全されているかは、別の記事で扱っています。

関連記事:有料老人ホームの入居一時金のうち、実際に保全されている額を契約前に確かめる方法

種類ごとの目安は、事業者が公表している料金表によればこうなります。介護保険施設とグループホームは原則0円(グループホームは保証金がかかる場合があります)。ケアハウスは0円から30万円程度。有料老人ホームだけが、0円から数千万円まで開いています。

ケアハウス(軽費老人ホーム)は、価格の決まり方そのものが違います。月額が生活費と事務費に分かれ、事務費の本人徴収額が対象収入に応じて段階的に決まります。だから、この種類だけは相場表を見るのではなく、親の年金額から逆算します

掲載物件の集計は参考の幅として読む

インターネットで見る相場表は、事業者が掲載した物件の集計です。民間の介護施設情報サイトが公表している集計によれば、介護付き有料老人ホームの月額の代表値は約25万円から27万円となる例があります。ただし、掲載施設、地域、入居一時金の扱いで大きく変わるため、全国の全施設の平均ではありません。中央値を使うか平均を使うか、0円プランを除くかどうかでも数字は動きます。

より母数がはっきりした資料もあります。令和7年度の老人保健健康増進等事業として行われた調査(社会保障審議会 介護給付費分科会 第260回の資料に収録)による、月当たりの居住費用の平均は次のとおりです。

施設の種類回答施設数月当たり居住費用の平均
介護付き有料老人ホーム844109,137円
住宅型有料老人ホーム61746,334円
サービス付き高齢者向け住宅74761,747円

ただし、この居住費用は家賃・管理費に相当する部分であり、食費と介護サービス費を含みません。したがって、ここに食費と介護費を足して総額を作ってはいけません。

この3つを横に並べて高い安いを比べることもできません。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、ここに外部の介護サービス費が別に乗る種類です。46,334円という数字だけを見て安いと読むと、乗る前の数字を乗った後の数字と比べることになります。この表は種類ごとに単独で読み、住まいの費用がどれくらいの水準かを掴むために使います。足せば計算はできますが、施設ごとに定義の違う費目を積み上げることになり、見かけだけ精密な数字ができあがります。

公的な調査は内訳と種類による差を理解するために使い、総額の見当は掲載物件の集計から幅として受け取り、最終判断は入居先の候補になる施設の料金表から取ります。役割を分けるのが安全です。

料金表は内訳と外の費用と前払金を見る

見学や資料請求で料金表をもらったら、次の順で見ます。

まず月額の内訳を見ます。家賃、管理費、食費、介護費のどれが入っているか。次に、月額の外に置かれている費用を探します。おむつ代、上乗せの介護費、日常生活費、医療費の扱いがどう書かれているか。

最後に、入居時にまとめて払う金銭を探します。制度上の名前は「前払金」ですが、書類では「入居一時金」「入居金」「前払家賃」などと書かれています。欄の名前で探すのではなく、前払いか月払いか、償却の期間と割合が書かれている箇所を探します

そして、表示された月額の隣に、これに何が足されるかを自分で書き足します。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅なら、まず介護サービス費を足します。この一手間で、施設どうしを同じ条件で比べられるようになります。ここまでが施設側の請求額です。次は、そこから制度で下げられる部分を見ます。

制度で下げられる負担と下げられない負担

軽減制度には、効く範囲と効かない範囲がはっきりあります。期待の外れる制度を先に外しておけば、無駄な手続きをせずに済みます

ここで扱うのは、負担限度額認定・高額介護サービス費・医療費控除の3つです。それぞれ誰が対象になり、何がいくら下がり、どこには効かないのかを順に見て、最後に親の手元の書類でどこまで見分けられるかまで進みます。

負担限度額認定の対象になるのは誰か

負担限度額認定(補足給付)は、居住費と食費を段階別の上限まで下げる制度です。ただし、対象になるかどうかは非課税かどうかの一問では決まりません。

要件は3つで、すべてを満たす必要があります

  1. 本人と世帯全員の住民税非課税
  2. 配偶者の非課税
  3. 段階別の要件額以下の預貯金等

2つ目の配偶者は、世帯分離していても見ます(事実婚を含む)。世帯を分けていても、配偶者が課税されていれば対象になりません。3つ目の要件額は、市区町村の案内によれば、単身で1,000万円、650万円、550万円、500万円と段階によって違います。夫婦の場合は同じ案内で、それぞれ2,000万円、1,650万円、1,550万円、1,500万円です。

外れるとすれば、3つ目の預貯金の要件か、2つ目の配偶者の要件です。

そして、対象になる施設が限られています。特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・短期入所だけです。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームには効きません。この制度を前提に予算を組んでから有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を探すと、前提が崩れます。

なお、課税世帯でも使える特例減額措置があります。市区町村の案内によれば、世帯が2人以上で、収入から施設費用を除いた残りが80万円以下、預貯金等が450万円以下といった条件を満たす場合に、負担を下げる仕組みです。該当しそうなら市区町村に確認する価値があります。

負担限度額認定で下がる額は段階で違う

段階ごとに下がり幅は違います。次の額は、市区町村の案内による段階別の限度額をもとに、特別養護老人ホームのユニット型個室に入った場合の居住費と食費が、基準費用額から段階別の限度額まで下がる差を、30日で換算したものです(2026年8月1日以後の額)。居室の種類や施設の種類が変われば、額も変わります。

所得段階何で分かれるか下がる額(月・30日換算)
第1段階老齢福祉年金受給者または生活保護受給者約7.3万円
第2段階年金収入等が82万6,500円以下約7.0万円
第3段階①82万6,500円超から120万円以下約4.7万円
第3段階②120万円超約2.2万円

同じ「非課税世帯」でも、下がる額は3倍以上違います。第1段階は原則として老齢福祉年金の受給者か生活保護の受給者なので、それ以外の家庭は第2段階から第3段階②のいずれかになります。「非課税なら大きく下がる」と考えて予算を組むと、第3段階②だった場合に2万円台しか下がらず、計画が狂います。

負担限度額認定の申請と2026年8月の改定

負担限度額認定は申請が要ります。認定証の有効期間は申請した月の初日から翌年7月31日までで、毎年更新します。更新を忘れると、翌8月から基準費用額での請求に戻ります。

そして、2026年8月1日から負担が一部増えています。第3段階①の食費が1日30円、第3段階②の食費が1日60円と居住費が1日100円、それぞれ以前より上がりました。第2段階の所得基準額も、以前の80.9万円から82.65万円へ見直されました。厚生労働省の告示に基づく改定で、介護保険最新情報で示されています。

古い解説記事で見た金額と食い違う場合は、この改定の前後を確かめてください

高額介護サービス費が効く範囲

高額介護サービス費は、介護サービスの自己負担に月額の上限をかける制度です。上限を超えて払った分は、後から戻ってきます。

上限額は一つではなく、所得の区分によって分かれています。市区町村の案内によれば、一般世帯の上限は月44,400円です。所得が高い区分ではこれより高い上限になるので、自分の世帯がどの区分かを市区町村で確かめてから予算に織り込みます

効く範囲も見ます。この制度が対象にするのは介護サービスの自己負担だけで、居住費・食費・日常生活費には効きません

一方で、負担限度額認定と違って、介護付き有料老人ホームの介護サービス費にも効きます。軽減制度が何も使えないと思っている入居者でも、この制度は使えます。初回に申請すれば、以後は自動的に償還されます。

医療費控除は毎月の請求額を下げる制度ではない

医療費控除は、施設の費用の一部を所得控除の対象にする制度です。国税庁の説明によれば、特別養護老人ホームは自己負担額の2分の1、介護老人保健施設と介護医療院は全額が対象になります。有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)とグループホームは対象外です。

ただし、これを負担限度額認定や高額介護サービス費と同じ「月額を下げる制度」として並べてはいけません。医療費控除は所得控除であり、毎月の請求額は1円も変わりません。年末調整や確定申告を通じて、翌年の税負担に影響するだけです。しかも戻る額は、所得や税率、他の医療費の額によって変わります。

毎月の家計が回るかどうかの計算には、医療費控除を入れません。別に考えます。

手元の3つの書類で対象かどうかを見当づける

負担限度額認定の対象になりそうかは、手元の書類である程度まで判定できます。

住民税の課税・非課税は、市区町村が発行する課税証明書か、毎年6月ごろに届く住民税の通知書で分かります。年金収入は、年金の振込通知書か源泉徴収票で分かります。預貯金は通帳の写しで確認します。

3つを並べて判定が付かなければ、市区町村の介護保険担当窓口で確かめます。窓口では「うちは対象になりますか」と聞くより、この3つの書類を持って行って見てもらうほうが早く済みます。この確認は、最後の章で示す行動につながります。次は、金額では動かない入居条件を見ます。

お金では解決しない条件

ここからが関門1、つまり入居条件です。予算を上げても外れない条件を順に見ていきます。要介護度・認知症の診断・住所地で最初から閉じるもの、要介護1・2の家庭が見る種類、医療処置の書き出し方、夜間の対応体制の確かめ方、そして入所の順番の決まり方です。

要介護度・認知症・住所地で最初から閉じる選択肢がある

まず、要介護度で閉じるものがあります。特別養護老人ホームは平成27年4月から原則要介護3以上が対象になりました。要介護1・2には特例入所の仕組みがありますが、原則は要介護3以上です。

次に、認知症の診断と住所地で閉じるものがあります。グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症であることを主治医の診断書等で確認する必要があります。さらに地域密着型サービスなので、原則として施設の所在地の市町村に住んでいる人に限られます(指定基準)。親を呼び寄せて隣の市のグループホームへ、という組み立ては原則としてできません。

これらは予算とは無関係に効きます。月30万円出せても、要介護1なら特養の多床室は視野に入りません。

特例入所は、要介護1・2でも在宅での生活が著しく困難だと市町村が認めた場合の仕組みです。単身で介護してくれる家族がいない、認知症の症状で在宅生活が難しいといった状況が続いているなら、該当するかどうかを市区町村の介護保険担当課に確かめる価値があります。ただし例外なので、これを前提に計画を立てないでください。

要介護1・2は特養を外して3種類から見る

要介護1・2で、月10万円から15万円ほどの予算という家庭は、次のように見ます。

見なくてよいのは、特別養護老人ホームです。原則要介護3以上なので、この段階で入居先の候補から外して考えたほうが早く進みます。

見るのは、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウス(軽費老人ホーム)。認知症の診断があるなら、住所地の要件を満たす範囲でグループホームも入ります。

ただし、住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅を見るときは、表示月額に外部の介護サービス費が上乗せされる前提で見積もります。要介護1・2なら保険で使える上限そのものが要介護3より小さいので、上乗せ額も小さくなりますが、ゼロにはなりません。

ケアハウスは、前の章で書いたとおり価格の決まり方が違います。相場表を見るのではなく、親の年金額を持って自治体か施設に問い合わせます。この種類に限っては、相場を調べる時間が無駄になります。

医療処置は種類と回数と実施時間まで書き出す

医療的ケアは、予算を増やしても解決しない場合がある重要な受け入れ条件の一つです。

令和元年度に行われた特別養護老人ホームの入所申込者の調査では、施設が入所不可と判定した理由として「医療的ケアの必要性が高く、対応が難しかった」が67.8%で最も多く挙げられました(複数回答)。

この数字の読み方には注意が要ります。これは令和元年度に、特養が入所不可と判断した申込者について、理由を複数回答で尋ねた結果です。すべての施設の種類で医療的ケアが最大の理由であることを示す数字ではありませんし、現在も同じ割合であることを示すものでもありません。

ここですべきことは、統計の解釈ではなく、自分の親の医療処置を具体的に書き出すことです。書き出すのは3点。処置の名前(たんの吸引、経管栄養、インスリン注射など)、1日あたりの回数実施する時間帯。とくに夜間に必要かどうかで、受け入れられる施設の範囲が大きく変わります。

主治医やケアマネジャーと一緒に作れば、抜けが出にくくなります。

夜間の対応体制は種類の名前では分からない

「特養が難しいなら有料老人ホームへ」という順路は、そのままでは成り立ちません。特別養護老人ホームで受け入れが難しい医療的ケアが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅なら自動的に対応可能になるわけではありません

令和7年度の老人保健健康増進等事業として行われた調査(社会保障審議会 介護給付費分科会 第260回の資料に収録)では、回答した介護付き有料老人ホーム844施設のうち、夜間にたんの吸引ができる職員が常にいる施設は17.4%でした。夜間の看護体制そのものにも、施設によって大きな幅があります。

ここで、種類どうしを「どちらが手厚いか」で並べるのは適切ではありません。介護付き有料老人ホームも、住宅型有料老人ホームも、サービス付き高齢者向け住宅も、いずれも施設ごとに体制を決める側にあるからです。種類の名前ではなく、個別の施設に体制を確認します。これが唯一の確かめ方になります。

※ いま入居している人がどの医療的ケアを受けているかという実施率の数字もありますが、実施率が低いことは受け入れ能力が低いことを意味しません。医療ニーズの低い人を主に受け入れている、調査対象の施設の性格が違う、といった別の説明が成り立ちます。実施率から受け入れ能力を判断しないでください。

その施設が親に合わないと分かる条件を、体制と暮らしと契約の側から確かめる手順は、別の記事で扱っています。

関連記事:その有料老人ホームが親に合わないと分かる三つの条件

入所は申込順ではなく待つこと自体は順位を上げない

特別養護老人ホームの入所は、申し込んだ順ではありません。国の指針は、介護の必要の程度、家族の状況(単身か、同居家族が高齢・病弱か)、居宅サービスの利用状況を勘案要素とし、施設の入所検討委員会が判定すると定めています。

ここから言えることは明確です。一つの施設の順番を待ち続けるのではなく、条件に合う施設へ並行して申し込みます。待つこと自体が順位を上げるわけではないからです。

そして、待機の状況は人数の統計ではなく、施設に直接聞いて確かめます。聞くのは3つで足ります。直近1年で何人が入所したか。入所検討委員会はどの要素を重く見ているか。申込に有効期間があるか、更新が要るか。この3つが分かれば、自分の順位の見当がつきます。

全国の特養の申込者数は減少しています。ただし、厚生労働省自身が、申込者名簿には長期間登載されたままの人も含まれ、必ずしも現に入所を必要としている場合に限らないと注記しています。人数だけで自分の待ち時間は判断できません。次は、ここまでの三つの関門を具体の例に当てはめます。

※ 費用以外の条件として、身元保証人の有無を確認される場合もあります。いない場合の取り扱いは施設ごとに違うので、入居先の候補になる施設の重要事項説明書で保証人の欄を見て、いない場合にどうなるかを直接確かめます

三つの例で手順を通してみる

三つの関門を、具体の場面に当てはめてみます。次の3つはいずれも仮の例であり、実在の家庭ではありません。ここまでに出した数字だけを使います。

要介護2で医療処置がなく月12万円の家庭

関門1(入居条件)。要介護2なので、特別養護老人ホームは原則対象外です。この時点で、最も安い多床室が閉じます。医療処置がないため、医療対応で閉じるものはありません。認知症の診断がなければグループホームも外れます。

関門2(制度を適用した後の負担)。負担限度額認定は特養・老健・介護医療院・短期入所にしか効かないので、この家庭が入居先の候補にする種類では使えません。負担割合証を確認して、1割か2割かを押さえます。高額介護サービス費は、外部の介護サービスを多く使う場合に効きます。

関門3(家計の上限)。月12万円のうち、外部の介護サービス費に回る分を先に見込みます。要介護2なら区分支給限度基準額は要介護3より小さいものの、上乗せはあります。残った額が、家賃と管理費と食費に使える予算になります。

視野に入る入居先の候補は、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウス。次に確認するものは、ケアハウスの事務費が親の年金額でいくらになるか、入居先の候補になる施設の表示月額に何が含まれているか。

要介護3で住民税非課税・預貯金要件を満たす月15万円の家庭

関門1(入居条件)。要介護3なので特別養護老人ホームが入居先の候補に入ります。医療処置の内容によって、受け入れ可否は施設ごとに変わります。

関門2(制度を適用した後の負担)。ここが最も動きます。負担限度額認定の3要件を満たすなら、特養のユニット型個室で居住費と食費が下がります。ただし下がる額は所得段階で決まります。段階別の限度額は品川区などの案内で確認でき、第2段階なら約7.0万円、第3段階②なら約2.2万円下がります。公定価格から計算した基本額約13.3万円からの引き算になるので、同じ「非課税」でも手取りの負担は大きく違います。この差を確かめないまま予算を組めません。

関門3(家計の上限)。月15万円の予算に対して、軽減後の負担がどこに着地するか。第2段階なら余裕が出るので、その分を医療費や日常生活費に充てられます。第3段階②なら、日常生活費と医療費を足したときに15万円に収まるかを確かめる必要があります。

視野に入る入居先の候補は、特養のユニット型個室、特養の従来型個室、老健。次に確認するものは、所得段階がどれになるか(課税証明書・年金の振込通知書・通帳を持って市区町村へ)、入居先の候補になる施設が居住費・食費を基準費用額どおりに設定しているか。

要介護4で夜間のたん吸引がある月25万円の家庭

関門1(入居条件)。この家庭では、関門1が予算より先に効きます。夜間のたんの吸引に対応できるかどうかで入居先の候補が決まります。介護付き有料老人ホームのうち、夜間にたんの吸引ができる職員が常にいる施設は、前の章で引いた調査では17.4%です。予算が25万円あることは、この関門を通す助けになりません

関門2(制度を適用した後の負担)。負担割合が2割・3割なら、介護費の部分が2倍・3倍になります。要介護4なら介護費そのものが大きいので、ここの影響も大きくなります。高額介護サービス費の上限が効くかどうかを確認します。

関門3(家計の上限)。入居一時金のあるプランと0円プランで、月額が変わります。25万円という月額予算に対し、入居時に一度だけ出せる額がいくらあるかで、選べる施設が変わります。

視野に入る入居先の候補は、夜間の医療体制を個別に確認したうえでの介護付き有料老人ホーム、または医療対応を持つ介護医療院や老健。次に確認するものは、処置の名前・回数・実施時間を書いた一覧を持って、入居先の候補になる施設に夜間の体制を直接聞くこと。種類の名前では決まりません。最後に、今日のうちに手元でできることを3つにまとめます。

今日手元で確認する3つのもの

記事を閉じたら、次の3つを手元で行います。どれも今日のうちにできます

  1. 主治医やケアマネジャーと、必要な医療処置を書き出します。処置の名前、1日の回数、実施する時間帯(とくに夜間があるか)まで具体的に書きます(関門1・入居条件)。
  2. 介護保険被保険者証と介護保険負担割合証を出します。1割か2割か3割かを確認します(関門2・制度を適用した後の負担)。
  3. 入居時に出せる額と、毎月継続して出せる額を分けて出します。この2つを1つの数字にまとめません(関門3・家計の上限)。

順番は関門1から関門3へ。先に絞ってから金額を当てるほうが、見る施設の数が少なくて済みます。

この3つが揃うと、施設を探す前に入居先の候補の範囲がかなり絞れます。

毎月使える額の出し方

3つ目の「毎月継続して出せる額」は、次の式で出します。

毎月使える額 = 親の月収 + 家族が継続して補填できる額 + 施設費に使える貯蓄の月割額 - 施設費以外に残す支出

3つ目の項がいちばん考えどころになります。貯蓄を何年で取り崩すかを先に決めないと、月割額が出せません。そして、その決め方は入居一時金の判断に直結します。入居一時金にまとまった額を使えば、貯蓄から月々に回せる額は減ります。

月額を費目ごとに分け、重度化と入院まで見込んで見積りを用意する手順は、別の記事で扱っています。

関連記事:老人ホームの月額を四つに分け、重度化と入院に備えて三枚の見積りを用意する手順

※ 平均年金や平均貯蓄は世帯構成で大きく変わるため、全国平均ではなく親本人の数字で予算を作ります

施設が絞れてから確認するもの

次の3つは、入居先の候補になる施設がいくつかに絞れてから行います。今日やる必要はありません。

世帯・配偶者の課税状況と預貯金を確かめ、負担限度額認定の対象になりそうなら市区町村の介護保険担当窓口へ行きます。課税証明書・年金の振込通知書・通帳を持って行きます。

入居先の候補になる施設の料金表と重要事項説明書で、月額の範囲を合わせます。表示月額に何が足されるかを書き足します。

夜間の医療対応の体制を、個別の施設に聞きます。書き出した処置の一覧を持って行きます。

この順で進めれば、施設に問い合わせる回数を減らせます。

出典

公定価格・費用

軽減制度

入居可否の条件