介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所

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「介護がつらい…」「近くにどんな施設があるの?」
まずは資料を取り寄せてみよう!

シニアのあんしん相談室


※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

 

見学に行くと、分厚い重要事項説明書を渡されます。数十ページあり、どこから読めばいいのか分からないまま鞄にしまうことになります。

先に書いておきます。この書類は、施設の良し悪しを一枚で決める判定表ではありません。見学の前に入居先の候補を並べて比べ、施設へ聞くべき質問を見つけるための書類です。

だから読み方も変わります。全部を同じ重さで読む必要はありません。見学の前に見るのは、前年度の退去先と生前解約の状況、職員体制、前払金の三か所です。

なぜこの三つかというと、どれも施設ごとに書かれる中身が大きく割れ、そのうえで差の理由を施設に質問できる欄だからです。パンフレットや口頭の説明では出てこない数字が、同じ様式に並んでいます。

ただし「三つだけ見ればいい」という話ではありません。契約を決める前には、契約解除の条件・対応できる医療的ケア・利用料の改定を、これとは別に確かめる必要があります。見学の前に見るものと、契約を決める前に確かめるものは、最初から分けたほうが早く済みます。

対象は介護付有料老人ホームとします。特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホームのことで、介護サービスを施設の職員が提供する形になっているものを指します。

※ 住宅型有料老人ホームは同じ様式を使いますが、介護サービスの担い手が違うぶん欄の意味も変わるため、要所で短く注意を添えるにとどめます。

※ サービス付き高齢者向け住宅は書類そのものが別で、高齢者住まい法に基づく「登録事項等についての説明」になります。ここでは扱いません。

書類がまだ手元にないなら、最後の章から先に読んでください。見学の前に手に入れる方法をそこに書いています。

まず記入年月日と施設の種類を確かめる

一枚目を開いたら、いきなり数字を探しません。先に見るのは日付と施設の種類の二つです。

厚生労働省の標準指導指針が定める現行の様式は、冒頭が「記入年月日」「記入者名」「所属・職名」の三つの欄で始まります。「基準日」という欄名は、国の様式にはありません

様式は記入日を基準に読ませる作りになっており、本文にも「入居者の状況【冒頭に記した記入日現在】」「実際の配置比率(記入日時点での利用者数:常勤換算職員数)」と印字されています。

一方で、自治体が独自に用意した様式に沿った書類には、表紙に「基準日 令和8年6月1日 現在」と印字されているものがあります。呼び名は様式によって割れます。

この日付が効いてくるのは、時点によって中身が変わる欄です。前年度をまとめた欄と、記入日現在の状態を書く欄が同じ書類に混ざっているため、日付を押さえないと期間の違う数字を並べてしまいます。

欄名についても、先に断っておきます。この記事で書く正式名は、国の現行の様式から取っています。手元の書類では、同じ欄が違う名前で書かれていることがあります

だから以降は、正式名だけでなく「その欄で何を探すのか」を併せて書きます。名前が違っても、探すものが分かれば見つけられます。

自治体が公開しているPDFは、施設ごとに日付がばらつきます。手元の版と公開版の日付が違うことがあるという点だけ、頭の隅に置いてください(確かめ方は最後の章に書いています)。

もう一つが施設の種類です。介護付か住宅型かで、同じ欄でも読める中身が変わります。住宅型は介護サービスを外部の事業者が担うため、施設職員の欄だけではケア体制を読み切れません。

空欄があっても、そこで慌てなくてかまいません。現行の様式そのものが、当てはまらない場合の省略を認めています。「住み替えを行っていない場合は省略可能」「前払金を受領していない場合は省略可能」といった注記が、様式の中に印字されています。

空欄を見つけたら、次の三つのどれなのかを確かめます。

  • 非該当(その施設には当てはまらない)
  • 別の書面・別の事業所の書類に書いてある
  • 未記入、または更新されていない

三つ目だけが問題で、前の二つは問題ではありません。空欄それ自体は悪い情報ではありません。どれに当たるかは見れば分かるものではないので、気になった欄は施設に聞きます。

前年度の退去先と生前解約は質問の入口になる

ここがこの書類でいちばん厚く読む場所になります。退去先の人数も生前解約の件数も、それ自体が答えになる数字ではなく、施設へ何を聞くかを決めるための入口です。

探すのは「(前年度における退去者の状況)」という見出しの欄で、その中に「退去先別の人数」と「生前解約の状況」の二つが入っています。前年度に何人がどこへ移ったかを書かせる欄です。様式によっては「退去」ではなく「退居」と書かれています。

国の現行の様式では、退去先の区分は「自宅等」「社会福祉施設」「医療機関」「死亡」「その他」の五つです。ただし実際の書類では「死亡者」と印字されていましたし、自治体の様式では「直近1年間に退去した者の人数と理由」という別の欄名で、区分の数も名前も違っていました。

探すのは名前ではなく、「前年度に何人がどこへ移ったか」という中身です。区分名を一つに覚えて探しにいかないほうが確実です。

退去先の内訳は施設ごとに構成がまるで違う

自治体が公表している介護付有料老人ホームの重要事項説明書から、前年度の退去先の内訳を二つ引きます。どちらも実物の記載で、区分名はその書類の表記のまま並べています。

先に断っておくと、この二つは規模がまるで違います。施設Aは退去した人が百人を超え、施設Bは十数人しかいません。優劣を見るために並べたのではなく、構成が施設によって違うことを示すための二つの実例です。

退去先の区分施設A施設B
自宅等01
社会福祉施設12
医療機関822
死亡者5110
その他11

同じ欄でも、構成がまるで違います。施設Aは医療機関へ移った人が最も多く、施設Bは死亡が最も多くなっています。読み取れるのはここまでで、どちらが良い施設かはこの表からは出てきません

公表されている施設Aの内訳を合計すると135人になりますが、書類に合計欄はありません。内訳を足したのはこの記事です。公表されている施設Bの内訳の合計は16人で、母数として小さくなっています。総数の大小を施設どうしで比べても意味を作れません。

そして、この欄から分からないことのほうが多くあります。退去の理由、退去したときの状態、施設側の判断だったのか本人と家族の希望だったのか、入院した人がその後どうなったのか。どれも書いていません。

だから、医療機関への退去が多いことを「重度化すると出される施設だ」と読むことはできません。理由を推定するための材料が、この欄には一つも入っていません。

この構成になる説明は、次のどれもが立ちます。

  • 看取りを希望しない家族が多い
  • 近隣の病院へ早めに移す地域の運用がある
  • もともと重度の入居者を多く受け入れている
  • 急性期の治療後に戻る予定だったが、集計上は退去に入った

どれが実際に起きているのかを、この欄だけで切り分けることはできません。切り分けられるのは施設だけなので、聞くしかありません。

同じ欄にある「生前解約の状況」も併せて見る

退去先の人数のすぐ隣に、もう一つ欄があります。「生前解約の状況」で、「施設側の申し出」と「入居者側の申し出」に分けて人数を書かせ、それぞれに解約事由の例を書かせる作りになっています。

つまり、生前に契約が終わった件数と、その申し出がどちら側からだったかが書いてあります。

ただし、「施設側の申し出」の人数を、追い出された人数と読んではいけません。合意のうえで解約したものが含まれるうえ、その後どうなったかも書かれていません。事由も全件ではなく「例」です。

この欄が無い様式もあります。無ければ、生前に契約が終わった件数がどれくらいあったかを施設に聞けば足ります。

退去の欄を見たら施設へこの五つを聞く

数字そのものより、数字から作る質問のほうが役に立ちます。退去の欄を見たら、次の五つを聞きます。

  1. 医療機関へ移った方は、どのような理由が多かったか
  2. 入院した後、どういう条件なら戻れるか
  3. 施設の中で対応できなくなる医療的ケアは何か
  4. 看取りを希望した場合、これまでどの程度対応してきたか
  5. 医療機関へ移ることになった場合、契約は終了するのか

質問はこの五つから増やしません。生前解約の欄を見て気になることが出たら、一つ目の質問に続けて「施設側の申し出による解約は、どういう場面でしたか」と聞けば足ります。質問が多いほど良い見学になるわけではありません。

次は、同じ書類の職員体制の欄を見ます。

職員体制は契約上の比率より実際の配置と夜勤を見る

見学で「うちは3対1です」と言われることがあります。この数字が何を指しているのかは、書類を見ると分かります。

探すのは「職員体制」の中の「(特定施設入居者生活介護等の提供体制)」で、そこに「契約上の職員配置比率」と「実際の配置比率」が並んでいます。様式によって欄名は動くので、契約上の比率と実際の比率が二段で書かれている場所を探せば足ります。

同じ「職員体制」には、夜勤の時間帯と人数、前年度一年間の採用者数と退職者数も並びます。配置比率で読めるのは日中を含めた全体の厚みまでで、夜間に動く人数は夜勤の欄にしか出てきません。採用と退職の数は、そのままでは多い少ないを判断できません。この三つを順に見ていきます。

「3対1」は常時3人に1人という意味ではない

先に用語を押さえます。3対1は、入居者3人に対して看護職員と介護職員を合わせて1人を常勤換算で置くという、指針が定める制度上の最低の基準です。常勤換算とは、勤務時間を常勤職員の勤務時間で割って人数に直した数え方をいいます。

だから、いつ訪ねても入居者3人あたり職員1人がその場にいる、という意味ではありません。夜間は日中より薄くなります。契約上の比率は下限であって、実際にどう置いているかは別の欄に書いてあります。

自治体が公表している介護付有料老人ホームの実物から、二段書きの例を引きます。

記載欄施設C施設D
契約上の職員配置比率3対1以上3対1以上
実際の配置比率2.7対11.8対1

この二つの実物では、契約上の下限は同じでも、実際の配置は違っていました。どちらも下限より手厚い側に振れていますが、二例からそういうものだと決めることはできません。実際の比率が契約上と同じ水準で書かれている書類もあります。

読むときに一つ注意がいります。実際の配置比率の分母は、定員ではなく記入日時点の入居者数です。様式にも「記入日時点での利用者数:常勤換算職員数」と印字されています。空室が多い時期ほど手厚く見える、という構造がここにあります。

※ 住宅型では、この欄そのものが省略されていることがあります。様式に「一般型特定施設以外の場合、本欄は省略可能」と印字されているためで、空欄でも記入漏れとは限りません。

なお、同じ配置の数字がパンフレットや広告に書かれていたときの読み方は、別の記事で扱っています。

関連記事:有料老人ホームの誇大な広告と、強い言葉の近くにあるはずの補足情報の読み方

夜勤の欄で見るのは平均ではなく最少時人数

同じ「職員体制」の中に、夜勤を行う看護・介護職員の人数を書かせる欄があります。夜勤帯を何時から何時までとしているかと、その時間帯の平均の人数、そして最も少ないときの人数が並びます。

実物では、16時から翌9時を夜勤帯として、平均2名・最少時1名と書かれているものがありました。見るのは平均ではなく最少時のほうです。休憩者を除いた数だと様式に印字されているので、その時間帯に動ける人数がここに出ます。

ただし、この人数だけで優劣は決められません。定員が何人か、建物が何フロアあるか、夜間に看護職と介護職がどう分担するかで、同じ人数の意味は変わります。見学のときに、定員とフロア数を添えて聞くのが確実です。

※ 住宅型では、夜間に動くのが施設の職員なのか外部の事業者なのかが、この欄からは読み切れません。誰が来るのかを、事業者の別まで含めて確かめる必要があります。

採用者数と退職者数は並べて見るだけにする

同じ章に、前年度の採用者数と退職者数を書かせる欄があります。ここで離職率を計算したくなりますが、やめたほうが確実です

理由ははっきりしています。書類に載っている職員数は常勤換算による勤務量の数で、退職者数は人の数です。単位が違うものを割っても、離職率とは呼べない数字しか出てきません。世の中に出ている介護職員の離職率とも、分母も対象職種も期間も揃いません。

そして、この二つの数字が多いのか少ないのかも、この書類だけでは判断できません。相場が分からないまま「多い気がする」で入居先の候補を外すほうが損です。

だから、大きいと感じたかどうかにかかわらず、聞くことを決めておきます。退職の理由に多かったものは何か、補充はできているか、いま欠員はあるか。この三つで足ります。

三か所目が前払金の欄になります。

前払金で見るのは高い安いではなく戻らない額と戻り方

前払金の欄は、費用の安さを比べる欄ではありません。入居した時点で戻らないことが決まる額と、途中で終わったときの戻り方を確かめる欄です。

探すのは、前払金を受け取っているかどうかとその内訳を書かせる欄で、国の様式では「(前払金の受領)」という見出しが付いています。想定居住期間、償却の開始日、初期償却額、初期償却率、返還金の算定方法、前払金の保全先が並ぶ場所を探せば足ります。前払金を受け取っていない施設では、この欄ごと省略されています。

先に釘を刺しておきます。公表されている実物には前払金0円の施設もありますが、360万円の施設と並べて前者が安いとは言えません。前払金の分が月額に振り替えられていることがあるからです。総額の比較は、この欄だけではできません。

初期償却額と初期償却率で戻らない額が決まる

様式の欄名は「想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額(初期償却額)」という長いものですが、要するに入居した日に戻らないことが決まる額です。初期償却率は、それが前払金全体の何割にあたるかを示します。

想定居住期間は、その施設が「だいたいこれくらい住むだろう」と見込んだ期間で、前払金を減らしていく計算の分母になります。実際の入居期間ではありません。

自治体が公表している介護付有料老人ホームの実物から、前払金の内訳を引きます。

項目金額(万円)
前払金360
うち初期償却額(戻らない額)60
返還の計算の対象になる額300

この施設では、想定居住期間と償却期間がどちらも60か月でした。入居して3か月を超えてから解約した場合、戻らないと明記されているのは60万円で、残りの300万円が期間の経過に応じて減っていきます。

返還金の算定方法は三月を境に二段になっている

同じ欄に「返還金の算定方法」があり、「入居後3月以内の契約終了」と「入居後3月を超えた契約終了」の二行に分かれています。途中で終わったときにいくら戻るかの計算式が、ここに書いてあります。

二行に分かれているのは、短期で契約が終わったときの扱いを別に定めているためです。どちらの行も埋まっているかを見て、片方が空欄なら、その場合にどうなるのかを施設に聞きます。

先ほどの施設の、3月を超えた場合の式は、実物の記載でこうなっていました。契約終了日から償却期間満了日までの日数を償却期間の日数で割り、それに前払金から初期償却額を引いた額を掛けます。

※ 法令の側の表現は「三月」です。実務では「90日ルール」と呼ばれることが多いのですが、書類の欄も法令に合わせて三月で切られています。

日数で計算する式なので、60か月で単純に月割りした金額とは一致しません。おおよその見当を付けるのはかまいませんが、確定した金額として受け取らないほうが確実です。

保全先の欄で読めるのは種類と名称までである

前払金の欄の最後に、保全先を書かせる欄があります。選べるのは、連帯保証を行う銀行等、信託契約を行う信託会社等、保証保険を行う保険会社、全国有料老人ホーム協会、その他の五つで、そこに名称を書かせます。会社が倒れたときに誰が返すのかの約束先だ、と考えれば足ります。

つまり、この欄で読めるのは保全先の種類と名称までです。いくらが保全の対象なのかを書かせる欄は、様式にありません。

法令が事業者に求めている保全額の最低の基準は、厚生労働省の告示により、予定償却期間のうち残存する期間に係る額または500万円のいずれか低い方の金額以上とされています。先ほどの前払金360万円の例なら、残っている額のほうが500万円を下回るため、最低の基準になるのは残っている額のほうです。あくまで最低の基準であって、上限ではありません

だから「保全措置あり」と書いてあっても、前払金の全額が保全されているとは限りません。保全の方法と対象額は、この書類ではなく施設に聞きます。あわせて、前払金を払うことで月額がいくら下がるのかも聞いておくと、初期費用と月額を一つの物差しに乗せられます。

実際にいくらが保全されているのかを施設へ聞く手順は、別の記事で扱っています。

関連記事:有料老人ホームの入居一時金のうち、実際に保全されている額を契約前に確かめる方法

この書類だけでは決められない三つのこと

見学の前に見る三か所からは、入居先の候補の差と、聞くべきことは出てきます。ただし契約を決める前には、この書類だけでは足りないものが三つあります。契約解除の条件、対応できる医療的ケア、利用料の改定の三つで、いずれも書面が契約書の条番号を指すだけになっていたり、欄そのものが無かったりします。

契約解除の条件は条番号しか書いていないことがある

現行の様式には契約解除について書かせる欄があり、事業主体から解約を求める場合の解約条項と、解約予告期間、入居者からの解約予告期間が並びます。予告期間は月数で書かせるので、解約予告期間が何か月かは、この書類で読めます。

問題は解約条項のほうです。実物には、事業者から解除できる場合を具体的に列挙しているものと、「入居契約書第◯条による」と条番号を参照するだけのものの両方があります。

対処は決まっています。条番号しか書いていなければ、契約書そのものをもらいます。見学の場で、その条番号が指す条文を見せてほしいと頼みます。

なお、施設から退去を求められたときに断れるのか断れないのかという判断は、この記事では扱いません。書面の読み方と、契約の当否は別の話です。

関連記事:老人ホームから退去を求められたときに、その場で同意せず確かめること

対応できる医療的ケアと入院後の条件は書面に無い

まず押さえておきたい点があります。現行の様式には、対応できる医療的ケアを列挙する専用の欄がありません。医療の体制について読めるのは、協力医療機関の枠に書かれた診療科目・協力科目・協力内容と、二つのチェックだけです。

二つのチェックとは、「入所者の病状の急変時等において相談対応を行う体制を常時確保」と「診療の求めがあった場合において診療を行う体制を常時確保」のあり・なしを指します。

ここで注意がいります。「あり」に印が付いていても、いつでも診てもらえるという意味ではありません。体制についての届出であって、実際の対応を保証するものではありません。国の指針も、相談対応や診療を行う体制を常時確保した協力医療機関を定めるよう「努めること」という書き方をしています。努力義務、つまり努めるべきだが罰則はない書き方であり、水準は施設ごとにばらつきます。

協力医療機関の枠は五つあります。三つしか埋まっていないから少ない、という読み方はしません。見るのは数ではなく協力内容です。往診に来るのか、24時間つながるのか、緊急のときに搬送を受けるのか、入院を受け入れるのか。

入院した後にどういう条件なら戻れるのか、施設の中で対応できない処置は何か。これは書面には出てこないので、施設に聞くしかありません。

利用料の改定

三つ目が利用料の改定です。家賃・管理費・食費といった月額の費用を、どういう場合に、どういう手続きで変えられるのかを見ます。

ここも、書面が契約書の条番号を指すだけになっていることがあります。その場合は契約書を請求します。入居してから月額が上がる条件は、入居する前にしか確かめられません

見学の前に重要事項説明書を手に入れる方法

最後が、いちばん行動を変える話になります。重要事項説明書は、契約の直前に渡される書類ではありません

厚生労働省の標準指導指針は、入居相談があったときに交付するほか、求めに応じて交付することを定めています。説明についても、契約を結ぶ前に十分な時間的余裕をもって行うこととされています。

この指針そのものは国が自治体へ示した助言にとどまりますが、介護付については、指定基準が文書の交付と説明を事業者の義務として定めています。つまり、見学の前に「重要事項説明書をください」と言ってかまいません。

自治体のサイトの次に介護サービス情報公表システムで探す

施設に頼む前に、自分で探すこともできます。有料老人ホームの重要事項説明書は、都道府県知事が公表することとされているためです。

探し方は二段構えにします。まず自治体名と「有料老人ホーム」「重要事項説明書」を組み合わせて検索します。PDFをそのまま載せている自治体があります。

見つからなければ、厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」で探します。都道府県と市区町村を選んでから施設名で絞り込むと、その施設の公表情報にたどり着きます。自治体によっては、自前でPDFを載せず、このシステムへ誘導しています。どの自治体でも全件がPDFで載っているわけではありません

手に入れたら、入居先の候補の施設ともう一つ、比較の相手になる施設を並べます。一つだけ見ても、その数字が施設として普通なのかどうかは分かりません。

公開されている版は、日付が古いことがあります。どういう場合に古い版が残るかは自治体ごとに違い、たとえば姫路市は、設置者が提出しない場合は直近年度に提出されたものを公開していると明記しています。手元の版と公開版で日付が違ったときだけ、施設に更新の有無を聞けば足ります。

手に入れたらこの三つを順にやる

やることは三つだけです。

  1. 書類の記入年月日と施設の種類を確認する
  2. 入居先の候補の2施設について、同じ三か所を横に並べる
  3. 数字の差について、その理由を施設へ質問する

二つ目に並べるのは、前年度の退去先と生前解約の状況、実際の配置比率と夜間の最少時人数、前払金の初期償却額と返還金の算定方法と保全先です。記入年月日は、様式によっては「基準日」と書かれています。

三つ目がこの記事の目的地になります。本文で「施設に聞く」と書いたことは、すべてこの三つ目に入ります。退去の欄については、2章で挙げた五つの質問をそのまま使えば足ります。

数字で答えを出すのではなく、数字を使って質問を作ります。それが、この書類のいちばん実のある使い方です。

聞いた答えをどう受け取るかも、先に決めておきます。物差しは、答えが数字か条件の形に落ちるかどうかの一点で足ります。夜間に動ける人数、入院した後に戻れる条件、実際に保全されている額。どれも数字や条件で返ってくれば、入居先の候補の2施設を横に並べて比べられます。「人によります」「その都度の判断です」とだけ返ってきた欄は、まだ比べる材料が手元に無いということなので、書面で出してもらうところまでを次にやることにします。

それでも差が埋まらないなら、実際の配置比率と夜間の最少時人数が書かれているほうを先に残します。この二つは記入日時点の実測が入る欄で、退去先や保全額のように施設へ聞かないと意味の取れない数字とは違うからです。

契約解除の条件・対応できる医療的ケア・利用料の改定は、入居先の候補を絞った後に契約書で確かめます。見学の前に見る三か所と混ぜないほうが、見学の場で迷いません。

参考にした資料

本文で引用した退去先・職員配置・前払金の数値は、いずれも自治体が公表している介護付有料老人ホームの重要事項説明書の記載です。施設が特定できる形では扱っていません。