「もう無理」と言われた入居中の親が今の施設に居続けられるかの確かめ方

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シニアのあんしん相談室


※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

 

親が入っている施設の職員から「もう無理」「うちでは見られない」と言われた家族に向けた記事です。まだ退去は求められていない段階を想定しています。居続けられるかどうかを決めているのは職員の感触ではなく、その施設が書面で引き受けた範囲です。そして、どこまで引き受けたのかは家族の側から確かめられます。この記事では、それを決めている3つの取り決めと、取り決めが書かれた書面の見つけ方を先に置きます。そのうえで、施設へ説明を求めるときの根拠へ進みます。最後に、対応できないと施設が判断したときの手続と、言われた日から家族が踏む順番を置きます。

次に当てはまる方には、別の記事を用意しています。

「もう無理」と言われた段階で起きていること

職員から限界を示す言葉が届いても、それは契約を終わらせる通知ではありません。

家族に最初に届くのは「退去してください」という言葉ではありません。「迷惑をかけている」「困っている」「もう無理」「精神科を受診してほしい」といった、日常の言い方で届きます。夜の見回りのあとに言われたり、面会のときに立ち話で言われたりします。書面は渡されないままです。

だから受け取った家族は、これが退去の通告なのかどうかを自分で判断できません。判断できないまま、次の面会までの日数を数えることになります。

契約を終わらせるときには決まった形があります。厚生労働省は、都道府県などへ出した通知(有料老人ホームの設置運営標準指導指針)の中で、有料老人ホームの重要事項説明書を別紙様式に基づいて作るよう求めています。その様式には「契約の解除の内容」という欄があり、事業主体から解約を求める場合の「解約条項」と「解約予告期間」を月数で書き込む欄が並びます。

出典: 厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)

この様式と、様式のもとになっている標準指導指針が当たるのは、有料老人ホームと有料老人ホームに当たるサービス付き高齢者向け住宅です。 特別養護老人ホームと認知症のグループホームは有料老人ホームではないため、この通知の対象ではありません。この記事で標準指導指針と別紙様式を引くところは、どこもこの範囲の話になります。

親の入っている先がサービス付き高齢者向け住宅の場合は、そこで食事の提供・入浴や排せつや食事の介護・洗濯や掃除などの家事・健康管理のうち1つでも行われていれば、有料老人ホームにも当たります。老人福祉法が有料老人ホームをそう定義しているためで、届出をしているかどうかは関係ありません。多くの登録住宅は少なくとも食事の提供を行っているので、この記事の範囲に入ります。

出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

特別養護老人ホームと認知症のグループホームに親がいる方は、通知の代わりに、その施設が定めている運営規程と契約のときに受け取った書面を開きます。確かめる中身は同じで、開く書類の名前が変わります。 認知症のグループホームについては、この記事でも当たる省令をそのつど示します。

契約を終わらせる話は、こうして条項と予告の期間を伴って進みます。立ち話で届いた一言は、その形をしていません。

では何が起きているのでしょうか。考えられることは1つではありません。親の状態がその施設の引き受けた範囲を超えかかっている場合もあれば、一時的な状態の変化や、その日の人繰りについて言われている場合もあります。どれなのかを分けるのが、この後の作業です。

施設の側の事情は3つに分かれます。1つ目は、夜間に動ける職員の人数です。2つ目は、その時間帯にいる職員が医療の処置を行えるかどうかです。3つ目は、他の入居者の安全をどう保つかです。どれも職員の気持ちで増減するものではなく、その施設が置ける人数と、その人数でできることに縛られます。「もう無理」という言葉は、その縛りに現場が当たったという報告でもあります。3つとも、家族の側から確かめられる場所があります。 1つ目と2つ目は取り決め2で、3つ目は取り決め3で扱います。

もう1つ分かれるのは、いま起きている変化が一時的なものか、続いていくものかです。標準指導指針は、有料老人ホームが提供するサービスとして、入居者が一時的な病気などで日常生活に支障がある場合には介助などの世話を行うことと定めています。熱を出した数日や、転んで動けない期間は、施設が世話をすることになっています。 一方、認知症の症状が進んだ場合や、医療の処置が毎日必要になった場合は違います。元に戻らない変化なので、話は引き受けた範囲のほうへ移ります。

どちらについて言われているのかは、その場では分かりません。分けるための材料は、話し言葉ではなく書面にあります。

ここで家族の足が止まります。強く聞けば預けている親に不利が及ぶのではないか、という心配があるからです。心配そのものは自然なものの、確かめる作業は施設と争うことではありません。これから開く書面は、どれも施設が入居のときに家族へ渡した書類か、施設が備えていて求めれば見せる書類です。 争って引き出すものが1つもない、というところから始めます。

居続けられるかを決めている3つの取り決め

引き受けた範囲を決めているのは職員の判断ではなく、3つの取り決めです。

どれも、入居のときに受け取った書面か、施設が備えている書面に書いてあります。

  • 取り決め1:医療が必要になったときの対応
  • 取り決め2:夜間に置く職員の人数
  • 取り決め3:契約を終えるときの条項と手続

3つとも、家族が頼み込んで教えてもらうものではなく、先に決まって書いてあるものです。以下、1つずつ見ていきます。

取り決め1:医療が必要になったときの対応

医療が必要になったときにどうするかは、管理規程に書き出す決まりになっています。

標準指導指針は、管理規程について次のように定めています。

入居者の定員、利用料、サービスの内容及びその費用負担、介護を行う場合の基準、医療を要する場合の対応などを明示した管理規程を設けること。

出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

「医療を要する場合の対応」が、この記事で家族が探す一か所です。 吸引が必要になったとき・点滴が始まったとき・夜間に医療の処置が要るようになったときに、その施設は何をすることにしているのか。それを書き出す場所は制度が決めています。

呼び名は施設によって違います。同じ指針は、内容を含んでいて入居者への説明ができる資料であれば、呼び方にかかわらず管理規程として扱って差し支えないとしています。表紙が「管理規程」でなくても、「運営規程」「入居のご案内」といった名前で同じことが書かれていることがあるので、表紙の名前ではなく項目の中身で探します。

医療について確かめる場所は、もう1つあります。協力医療機関の欄です。

介護付有料老人ホームに当たるのは、厚生労働省令の指定居宅サービス等基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)です。この省令は、入居者の病状が急変した場合などに備えて、あらかじめ協力医療機関を定めておくことを義務として定めています。

そのうえで同じ省令は、2つの要件を満たす協力医療機関を定めるよう努めることとしています。病状が急変した場合などに医師か看護職員が相談に応じる体制を常時確保していること・診療の求めがあった場合に診療を行う体制を常時確保していることの2つです。こちらは努力義務なので、2つとも満たしているとは限りません。

同じ条文は、年に1回以上の確認と届出も義務として定めています。急変したときの対応を協力医療機関との間で確認し、その名称などを都道府県知事へ届け出ることの2つです。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

認知症のグループホームに当たるのは、別の厚生労働省令の指定地域密着型サービス基準(指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準)です。その第105条が同じ形の定めを持っています。違うのは届出先で、こちらは市町村長です。

出典: e-Gov法令検索 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準

義務の部分と努力義務の部分が混じっているため、夜間に医師へつながるところまでを制度が保証しているわけではありません。 だから、うちの協力医療機関は夜間に何をしてくれるのか、という聞き方が要ります。

取り決め2:夜間に置く職員の人数

夜間に動ける人数は、重要事項説明書の職員体制の欄に書いてあります。

先に挙げた別紙様式には「夜勤を行う看護・介護職員の人数」という欄があります。ここには夜勤帯の設定時間と、その時間帯の「平均人数」、そして「最少時人数(休憩者等を除く)」が並びます。休憩している人を数に入れない、と様式のほうに書いてあるので、その時間帯に実際に動ける人数がここに出ます。

「もう無理」という言葉が夜の出来事について言われているなら、開くのはこの欄です。

制度の上でも、下回ってはいけない人数が施設の種類ごとに定められています。数える単位が種類によって違うので、単位まで含めて並べます。

施設の種類数える単位夜間について制度が定めている最低の人数定めている省令
介護付有料老人ホーム施設ごと常に1人以上の介護職員が確保されること指定居宅サービス等基準 第175条
認知症のグループホームユニット(共同生活住居)ごと夜間と深夜の時間帯を通じて1人以上の介護従業者が勤務に当たること指定地域密着型サービス基準 第90条
住宅型有料老人ホーム定めなし介護の人員基準の対象ではないため制度上の最低の人数がなく施設ごとの取り決めになる該当なし

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準e-Gov法令検索 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準

表を横に読むときは、単位の列を先に見ます。介護付有料老人ホームは施設ごとの人数、グループホームはユニットごとの人数なので、同じ「1人以上」でも指している範囲が違います。 数字だけを並べて手厚さを比べられるものではありません。住宅型有料老人ホームの行だけ人数が空いているのは、この種類が特定施設入居者生活介護の指定を受けておらず、施設の職員の人数を定めた省令の基準が当たらないためです。

この表の人数は、施設が下回ってはいけない最低のものです。 実際に何人置いているかを示すものではありません。その施設の夜間の人数は、重要事項説明書の欄にしか出ていません。

グループホームには、上の表とは別の置き方も同じ省令が認めています。3つのユニットが同じ階で隣り合っているなど一定の条件を満たす場合は、事業所ごとに2人以上とすることができます(指定地域密着型サービス基準第90条第1項ただし書き)。

出典: e-Gov法令検索 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準 第90条第1項ただし書き

ユニットの数と夜勤の人数の関係は施設ごとに違うので、うちは何人ですかと直接聞くほうが速い場所です。

住宅型有料老人ホームでは、夜勤の欄からは読み切れないことがあります。夜間に動くのが施設の職員なのか、外部の訪問介護の事業者なのかが、人数だけでは決まらないためです。誰が来るのかを、事業者の名前まで含めて確かめます。

医療の処置が増えてきた場合は、人数に加えてもう1つ確かめることがあります。その時間帯にいる職員が、その処置を行えるかどうかです。

介護の職員が医師の指示のもとで行える処置は、社会福祉士及び介護福祉士法の施行規則で5つに決められています。たんの吸引が3つ(口の中・鼻の中・気管カニューレの内部)と、管を使った栄養の注入が2つ(胃や腸に作った口から入れるものと、鼻から管を通して入れるもの)です。親に必要になったものがこのどれかに当たるかは、施設の看護職員か主治医に確かめられます。

出典: e-Gov法令検索 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則

この5つを行うには、条件が2つあります。1つは、その職員が決められた研修を修了していることです。もう1つは、事業所が都道府県知事の登録を受けていることで、こちらは同じ法律の第48条の3が定めています。職員が研修を修了していても、事業所が登録を受けていなければ行えません。

出典: e-Gov法令検索 社会福祉士及び介護福祉士法

「夜勤者が1人います」という答えでは、まだ足りません。聞くのは、夜勤の時間帯にこの処置へ対応できる体制が毎日あるかどうかです。職員個人の資格ではなく体制を聞く形にすると、研修と登録の両方をまとめて確かめられます。

取り決め3:契約を終えるときの条項と手続

どうなったら契約が終わるのかは、契約書の解除の条項に先に書いてあります。

介護付有料老人ホームについては、指定居宅サービス等基準の第178条第2項が、契約の内容そのものに条件を付けています。入居者の権利を不当に狭めるような契約解除の条件を定めてはならない、という条文です。標準指導指針のほうも設置者の契約解除の条件について同じことを求めていて、信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めるものとなっていないこと、という書き方になっています。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

状態が変わったというだけで契約が終わる作りにしてよい、とはされていません。

第1章で挙げた施設の側の事情の3つ目、他の入居者の安全を確かめるのもこの条項です。解除の条項には、親の状態そのものではなく、他の入居者への影響を理由に挙げる項が入っていることがあります。その項がどう書かれているかは、解除の条項を読むときに一緒に確かめられます。 上の2つの決まりがある以上、他の入居者への影響を理由にする場合も、条件は入居者の権利を不当に狭めない範囲に収まっていなければなりません。

手元の重要事項説明書を開いたとき、解約条項の欄に「入居契約書第◯条による」と条番号だけが書かれていることがあります。そのときは、その条番号が指す条文を見せてほしいと施設へ頼みます。読むのは条文のほうです。

取り決めが書かれた書面の見つけ方

3つとも、探す場所は決まっています。開くのは、入居契約書と重要事項説明書と管理規程(運営規程)の3点です。多くは入居のときに封筒か紙ばさみで一式を受け取っていて、そのまま家のどこかにあります。

どの書面に何が書いてあるかは、次のように対応します。欄の名前は施設によって違うので、正式な名前と、その欄で探す中身を並べます。

確かめたいこと開く書面探す欄の正式な名前その欄で探す中身
医療が必要になったときの対応管理規程(運営規程)医療を要する場合の対応吸引・点滴・夜間の処置が必要になったときに施設が何をするか
夜間に動ける職員の人数重要事項説明書夜勤を行う看護・介護職員の人数夜勤帯の時間と最少時人数
どうなったら契約が終わるか入居契約書・重要事項説明書契約の解除の内容(解約条項・解約予告期間)施設の側から解約できる場合と予告の月数

3列目の名前は、標準指導指針の別紙様式と、指針が管理規程に書くよう挙げている事項の名前です。手元の書類にこの名前の欄が見当たらないときは、4列目の中身のほうで探します。 特別養護老人ホームと認知症のグループホームでは別紙様式を使わないので、この3列目は目印にならず、4列目の中身を運営規程と契約書面の目次から探すことになります。

3つの欄を続けて読むと、その施設が引き受けたことと引き受けていないことの分かれ目が見えてきます。目次と見出しから3つの欄を探し、その周りだけを読めば足ります。

読んでも見つからないときは、施設へ、この3つがどこに書いてあるかを尋ねます。尋ねて「書いていない」という返事が返ってきたら、それも確かめた結果です。 次の面談で、書いていない部分をどう決めているのかを聞く材料になります。

手元に一式が無いときは、写しを求められます。標準指導指針は、設置者が入居者と入居しようとする人に対して重要事項説明書を書面で交付することと定めています。あわせてパンフレット・重要事項説明書・入居契約書・管理規程などを公開し、求めに応じて交付することも同じ項に書かれています。入居した後も、求めれば交付されるものとして書かれています。 家族が代わりに頼むときは、入居している本人の意向を伝える形になります。

出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

写しの交付を頼むときに、理由を長く説明する必要はありません。手元で確認したいので写しをください、で足ります。頼む相手が分からないときは、面会のときに受付で「書類の写しをお願いしたいのですが、どなたに言えばよいですか」と聞けば取り次いでもらえます。生活相談員か施設長が窓口になることが多いものの、職種の呼び名は施設によって違います。

家族が説明を求めるときの根拠

説明を求めることは、家族の側の遠慮ではなく施設の側の決まりです。根拠は2つあります。1つは家族から求められたときの説明で、もう1つは要介護の入居者についての定期の報告です。

家族から求められたときの説明

介護付有料老人ホームについて、指定居宅サービス等基準の第183条第3項は次のように定めています。

指定特定施設の特定施設従業者は、指定特定施設入居者生活介護の提供に当たっては、懇切丁寧を旨とし、利用者又はその家族から求められたときは、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行わなければならない。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

家族から求められたら、分かるように説明することまでが仕事に含まれている、という条文です。説明を求めることが施設に迷惑をかける行為だという前提は、ここにはありません。

聞くときの言い方も難しくありません。夜間に難しいと言われた場面について、いま何人でどう見てもらっているのかを教えてください。この形で足ります。責任を問う言い方より、理由を聞く形のほうが、施設の側も事実で答えやすくなります。

この条文が当たるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設です。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、この指定を受けていないことがあります。 受けているかどうかは重要事項説明書に書かれています。自ら介護サービスを提供していないホームが「介護付」と表示することは不当表示になるおそれがあると指針が注意しているので、書類やパンフレットの表示でも見分けられます。受けていない場合に使えるのは、標準指導指針が求めている管理規程と重要事項説明書の記載のほうです。書いてあることについて説明を求める、という形になります。

要介護の入居者についての定期の報告

もう1つは、家族が求める前から施設に課されているものです。

標準指導指針は、要介護の入居者について、入居者の生活及び健康の状況とサービスの提供状況を身元引受人等(入居契約で身元引受人として名前を書いた家族など)へ定期的に報告することとしています。

出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

求めたから報告されるのではなく、定期的に報告することになっている、という順序です。 状態が変わってきたと感じているのに報告が届いていないなら、そのこと自体を先に頼めます。いつ、どういう形で報告をもらえるのかを決めてもらう、という頼み方になります。

報告の形は、書面のこともあれば、面会のときの口頭のこともあります。口頭で受けたときは、その日のうちに家族が書き留めます。 後で書面を開いて突き合わせるときに使うのは、その記録です。

対応できないと施設が判断したときに決まっていること

引き受けた範囲を超えたと施設が判断しても、出て行ってくださいと言って終わりにはなりません。施設の側に課されていることが2つあります。契約を終えるときに踏む手続と、自ら提供できないと認めたときの措置です。

契約を終えるときに踏む手続

標準指導指針は、一定の要介護状態になったことを理由として契約を解除する契約の場合などについて、次の手続を含む一連の手続を入居契約書か管理規程に明らかにしておくことと定めています。

イ 医師の意見を聴くこと。

ロ 本人又は身元引受人等の同意を得ること。

ハ 一定の観察期間を設けること。

出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

3つとも、施設がひとりで決めて実行できるものではありません。医師の意見が要り、本人か身元引受人の同意が要り、そのうえで一定の期間を置いて様子を見ることになっています。

この3つが自分の施設の書面にあるかどうかは、言われる前に確かめられます。 書いてあれば、いま届いている「もう無理」という言葉と、契約が終わる話との間にどれだけの段取りがあるかが分かります。

「一定の観察期間」が何日なのかを、指針は決めていません。施設ごとに書き方が違うので、そこは自分の施設の書面で確かめます。

同じ指針は、施設を出るのとは別の道も想定しています。要介護の状態になった入居者を一時介護室(一時的に介護を行うために施設が用意している部屋)で世話する場合は、医師の意見を聴いて行うものとされています。本人の意思を確認し、身元引受人などの意見を聴くことも、入居契約書か管理規程に明らかにしておくこととされています。

一般の居室から介護の居室へ移る契約の場合についても、イ・ロ・ハの3つを含む一連の手続を明らかにしておくこととされています。居室が変わって家賃相当額に差が出る場合は、その差額の扱いを施設が考えることとされています。上がるのか下がるのかは指針に書かれていないので、移る話が出たときに施設へ確かめます。

いま届いている言葉の先にあるのは「出る」だけではありません。同じ施設の中で居室を移す形はありますか、という聞き方ができます。

特別養護老人ホームと認知症のグループホームには、この指針ではなく別の省令が当たります。認知症のグループホームに当たるのは、指定地域密着型サービス基準の第94条第5項です。利用者が退居するときには利用者と家族の希望を踏まえたうえで、退居後の生活環境や介護の継続性に配慮して退居に必要な援助を行わなければならない、と定めています。

出典: e-Gov法令検索 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準

出るときに手ぶらで送り出さないことまでが、事業者の側の義務として書かれています。

自ら提供できないと認めたときの措置

介護付有料老人ホームについては、もう1つ強い定めがあります。指定居宅サービス等基準の第179条第3項は、入居申込者と入居者について次のように定めています。

入院治療を要する者であること等入居者等に対し自ら必要なサービスを提供することが困難であると認めた場合は、適切な病院又は診療所の紹介その他の適切な措置を速やかに講じなければならない。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

自分のところでは必要なサービスを出せないと施設が判断したなら、その先を用意することまでが施設の仕事に含まれます。家族が求めてよいのは、謝罪でも説得でもなく、この措置のほうです。

聞き方は難しくありません。うちでは見られないという話であれば、どこなら見られるのかを一緒に探してもらえますか、で足ります。理由によって出てくるものが変わります。医療の処置が理由なら病院や診療所の紹介、認知症の症状が理由ならその症状を引き受けている施設の情報、という違いです。

認知症のグループホームの省令は、入居の申込みを受けた段階について同じ形の措置を定めています(第94条第3項)。すでに入居している人については、先に挙げた退居の援助の義務のほうが当たります。入居の申込みの段階と退居の段階で条文が分かれているので、いま入居中であれば退居の援助のほうを持ち出します。

言われた日から家族がする順番

確かめる中身と、その根拠はここまでで出ています。あとは順番です。記録する・書面を開く・面談で聞くの3つを、この順に進めます。

まず言われた言葉を日付と場面で書き留める

書き留めるのは5つです。日付・時刻・誰が言ったか・どこで言われたか・どの言葉で言われたかを並べます。要約せず、言われたとおりに書きます。

たとえば「8月14日/午後7時ごろ/夜勤のAさん/2階の廊下で立ち話/夜はもう見られません」という形になります。

「夜間の対応が難しくなってきた」と「もう無理」は、後から思い出すと同じ話に見えますが、意味が違います。前者は状況の報告で、後者は限界の表明です。どちらを言われたのかは、その日のうちにしか正確に残せません。

これは施設を責めるための記録ではありません。 書面を開いて確かめるときに、感触ではなく事実として並べるためのものです。同じことを何度も言われているのか、この1回だけなのかも、書き留めていれば分かります。

次に書面の該当箇所を開く

3つの取り決めを、見つけた書面で1つずつ開きます。読む順は、医療が必要になったときの対応・夜勤の人数・契約の解除の条項です。いま届いている言葉といちばん近いところから読むためで、夜の出来事について言われているなら夜勤の欄を先に開いても構いません。

最後に計画を見直す場で手続まで聞く

介護の計画(介護付有料老人ホームなら特定施設サービス計画、それ以外なら担当のケアマネジャーが作る計画)は、状態が変わったときに見直します。見直しの場には家族も呼ばれますが、呼ばれるのを待たずに、状態が変わったので見直しの場を設けてほしいと頼むこともできます。

その場で聞くことは2つあります。1つ目は、いま引き受けてもらえているのがどこまでかです。2つ目は、それを超えたと判断するときにどの手続を踏むのかです。

2つ目を聞き落とさないようにします。 1つ目だけを聞くと、答えは「様子を見ましょう」で終わりがちです。手続を聞いておけば、次に何かが起きたときに、施設の側も家族の側も同じ順序を踏めます。

言い方に迷ったときは、次の4つをそのまま読み上げても構いません。

聞くこと言い方
いま引き受けてもらえている範囲いまの状態について、どこまで対応してもらえていますか
夜間の体制夜勤の時間帯は何人で、この処置に対応できる体制はありますか
超えたと判断する場面どうなったら、うちでは難しいという判断になりますか
そのときの手続そう判断するときは、どういう手順を踏むことになっていますか

4つとも、施設を責める形になっていません。答えにくいのは3つ目と4つ目ですが、契約書か管理規程に書いてあることを聞いているだけなので、書いてあれば答えが返ります。書いていないという返事なら、では今どう決めているのかを続けて聞きます。どちらの返事でも、次に進む材料は残ります。

聞いた内容は、記録に残してもらいます。介護の記録は施設が作って保管しているものなので、そこへ入れてもらう形になります。次に別の職員から同じ話をされたときに、前回どこまで決めたのかを双方が同じ紙で確かめられます。

断られる前に家族から確かめる

居続けられるかどうかを決めているのは、職員の感触ではありません。その施設が書面で引き受けた範囲です。

次にすることは、手元の書面を開くことです。これを飛ばすと、言われた一言がどこに当たる話なのか分からないまま日が過ぎていきます。分からないままだと、次の面会でまた同じ不安を持ち帰ることになります。

親が入っている施設は、家族が確かめてよい相手です。書面で範囲を知っておけば、次に何かを言われたときに、その言葉を受け止める場所ができます。