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親が入居している施設のケアに、こうしてほしいことがあります。けれども誰にどう言えばよいのかが分からず、面談で「ご希望はありますか」と聞かれても答えの形を思い浮かべられない家族に向けた記事です。
日々のケアは、施設が現場だけで決めているのではありません。計画という書面に書かれていて、その書面を書き換える相手と場は、入居先の種類ごとに国の定めた運営基準が決めています。始まりは、親の入居先がどの種類かを確かめるところです。
次に当てはまる方には、別の記事を用意しています。
計画をつくる人も、家族が話せる場も、入居先の種類で変わります。種類は、手元の書面と施設の名称で見分けられます。
特別養護老人ホームと介護老人保健施設は、施設の名称でそのまま分かります。グループホームは、契約書や重要事項説明書に「認知症対応型共同生活介護」と書かれています。
有料老人ホームは、名称からは類型が分かりません。国の指導指針が示している様式では、住まいの概要のところに「類型」という欄があり、「介護付」「住宅型」「健康型」から選んで書くことになっています。介護付であれば、介護保険事業者番号と指定した自治体名も入ります。
サービス付き高齢者向け住宅は、登録を受けている旨が重要事項説明書に書かれています。ただし、その中には特定施設入居者生活介護の指定を受けているものがあります。介護保険事業者番号があれば、介護付有料老人ホームと同じ読み方になります。
分かれ目は1つです。介護保険の指定を受けているのが、住まいそのものか外の事業者かを見ます。住まいが指定を受けている種類では施設が計画をつくり、訪問介護や通所介護の事業者が指定を受けている種類では、入居する前から担当していた居宅のケアマネジャーが計画をつくり続けます。
希望を言う相手を決めているのは、施設の善意ではありません。入居先の種類ごとの運営基準です。
| 入居先の種類 | 計画をつくる人 | 家族の希望の扱い | 家族が個別の計画について話せる場 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設 | 施設の計画担当介護支援専門員 | 家族の希望を勘案する | 課題を洗い出す面接 |
| 介護付有料老人ホーム | 施設の計画作成担当者 | 利用者又はその家族の希望に基づく | 案の説明と同意の場 |
| グループホーム | 施設の計画作成担当者 | 条文に家族の希望の記載がない | 案の説明と同意の場 |
| 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 | 入居前から続く居宅のケアマネジャー | 家族の希望を勘案する | サービス担当者会議 |
表から読み取ることは3つあります。担当が切り替わるかどうか・家族の希望を条文がどう書いているか・家族が話せる場がどこかです。
1つ目は、入居しても担当が切り替わらない種類があることです。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、外の事業者の介護サービスを組み合わせて使う形なので、それまでのケアマネジャーが計画をつくり続けます(指定居宅介護支援等基準 第13条第1号)。前の章のとおり、同じサービス付き高齢者向け住宅でも特定施設の指定を受けていれば、施設の計画作成担当者に切り替わります。
2つ目は、家族の希望の扱いが条文の書き方から違うことです。特別養護老人ホームと介護老人保健施設は「入所者の家族の希望を勘案して」案を作成すると定めています(指定介護老人福祉施設の基準 第12条第5項・介護老人保健施設の基準 第14条第5項)。介護付有料老人ホームは「利用者又はその家族の希望」に基づいて作成すると定めています(指定居宅サービス等基準 第184条第3項)。グループホームだけは条文に家族の希望が書かれておらず、本人の心身の状況と希望と生活の環境を踏まえるという書き方です(指定地域密着型サービス基準 第98条第3項)。
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
3つ目は、家族が個別の計画について話せる場が種類で違うことです。特別養護老人ホームと介護老人保健施設では、課題を洗い出す面接を入所者と家族に対して行うことになっています(第12条第4項・第14条第4項)。介護付有料老人ホームとグループホームには、この面接の定めがありません。案の説明と同意の場が、家族が話せる最初の場になります。居宅のケアマネジャーが続く種類では、サービス担当者会議を「利用者及びその家族の参加を基本としつつ」開くと定められています(指定居宅介護支援等基準 第13条第9号)。
グループホームには、このほかに運営推進会議があります。利用者と家族が構成員に入り、おおむね2か月に1回以上開くことになっています(指定地域密着型サービス基準 第108条・第34条第1項)。ただし、これは事業所の活動状況を報告して評価を受ける場で、個別のケアの希望を決める場ではありません。 個別の希望は、上の表の場へ持ち込みます。
なお「キーパーソン」という言葉は、ここまでに挙げたどの運営基準の条文にも出てきません。条文が書いているのは「入所者又はその家族」で、運営基準は窓口を家族の誰かに限定していません。ただし、誰を窓口にするかが契約で取り決められていることはあるので、契約書の身元引受人や連絡先の条項もあわせて見ます。
日々のケアは、計画という書面に基づいて行うことになっています。
特別養護老人ホームの運営基準は、施設が提供するケアについて「施設サービス計画に基づき」行うと定めています(第11条第1項)。同じ条は「漫然かつ画一的なものとならないよう配慮して行われなければならない」ともしています(第11条第2項)。
その計画は交付されているはずのものです。本人への交付を定めているのは、特別養護老人ホームでは第12条第8項です。介護付有料老人ホームは指定居宅サービス等基準 第184条第5項、グループホームは指定地域密着型サービス基準 第98条第5項が定めています。居宅のケアマネジャーが続く種類では、指定居宅介護支援等基準 第13条第11号が本人と担当者への交付を定めています。手元にも居室にも見当たらなければ、施設やケアマネジャーへ写しを求められます。
その書面から確かめる項目は3つです。
3つとも、案に書くことになっている事柄として運営基準が名指ししている欄です。案に同意して確定したものが計画なので、案の記載事項がそのまま交付された計画に載ります。
運営基準は、案に「指定介護福祉施設サービスの目標及びその達成時期」を記載すると定めています(第12条第5項)。「指定介護福祉施設サービス」は、特別養護老人ホームが提供する介護サービスの、条文の上での呼び名です。
同じ形の欄は、ほかの種類にもあります。介護付有料老人ホームは「サービスの目標及びその達成時期」です(第184条第3項)。グループホームは「援助の目標」(第98条第3項)、居宅のケアマネジャーが続く種類は「提供されるサービスの目標及びその達成時期」です(第13条第8号)。手元の計画書で欄の名前が違っていても、いつまでに何を目指すかを書いた箇所を探せば当たります。
ここに書かれている目標が、家族の思っている方向と食い違っていることがあります。家族は「歩けるようになってほしい」と思っているのに、計画には「転ばずに過ごす」と書かれている場合です。日々のケアが違って見える理由が、この欄にそのまま出ています。
同じ第5項は、案に「指定介護福祉施設サービスの内容」を記載すると定めています。ほかの種類にも、提供するサービスの内容を書く欄があります(第184条第3項・第98条第3項・第13条第8号)。
この欄を読むと、いま行われていることを2つに切り分けられます。1つは計画に書かれていてそのとおり行われていること、もう1つは計画と食い違っていることです。
食い違いは、たとえばこういう形で見つかります。
どちらも、希望を伝える前に確かめることです。
食い違いがあるなら、希望よりも先にそちらを話します。 計画に書かれたとおりに行われていないことは、実施状況の把握で扱われる話です(第12条第9項)。新しい希望は計画を変える話なので、扱う場が違います。分けて出せば、どちらも流れずに済みます。
同じ第5項は「サービスを提供する上での留意事項等」も記載事項に挙げています。介護付有料老人ホームには「サービスを提供する上での留意点等」(第184条第3項)、居宅のケアマネジャーが続く種類には「サービスを提供する上での留意事項等」(第13条第8号)があります。グループホームの条文には、これに当たる欄の名指しがありません(第98条第3項)。その場合は、本人の癖や好みがサービスの内容の欄に入っていないかを見ます。
本人の癖・好み・避けたい場面が入る欄です。家族の希望がいちばん入りやすい場所でもあります。手元の計画書で「留意事項」という名前とは限らないので、欄の名前ではなく、ケアのときに気をつけることを書いた箇所を探します。
ここが空欄に近いときは、本人の癖や好みが計画に入っていない可能性があります。ただし、同じ内容が目標の欄やサービスの内容の欄に書かれていることもあるので、3つの欄を通して読んでから判断します。
計画には、見直しが起きる場面が3つあります。次の更新まで動かない書面ではありません。
3つのうち、場面1と場面2は施設やケアマネジャーの側で開く場です。来る時期が決まっているので、待っていれば来ます。家族の側から起こせるのは場面3です。
運営基準は、計画の作成後も実施状況の把握を行い、必要に応じて変更すると定めています(第12条第9項)。この実施状況の把握を、条文はモニタリングと呼んでいます。定期的に本人と会って、計画のとおりになっているかを確かめて記録する作業のことです。
特別養護老人ホームと介護老人保健施設では、特段の事情がない限り定期的に本人と面接することになっています。結果を定期的に記録することも定められています(第12条第10項・第14条第10項)。介護付有料老人ホームとグループホームにも、作成後の把握と必要に応じた変更の定めがあります(第184条第6項・第98条第6項)。
居宅のケアマネジャーが続く種類だけは、回数が条文に入っています。少なくとも1か月に1回、利用者に面接することになっています(指定居宅介護支援等基準 第13条第14号イ)。ほかの種類の「定期的」が何か月ごとかは条文に書かれていないので、次のモニタリングがいつになるかは計画をつくる担当者に聞きます。
出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
要介護更新認定を受けたとき、または要介護状態区分の変更の認定を受けたときは、施設は計画を変更する必要があるかどうかを検討することになっています(第12条第11項)。検討の仕方も定められています。サービス担当者会議を開くか担当者へ照会するなどして、専門的な見地からの意見を求めるのは施設です。居宅のケアマネジャーが続く種類にも同じ定めがあります(第13条第15号)。
介護付有料老人ホームとグループホームの基準には、認定が変わったときの検討を定めた条文がありません。この2つでは、認定の結果が届いたことを家族から伝えて、計画を見直すかどうかを聞くことになります。
認定の結果が届いた時期は、どの種類でも家族から希望を出しやすい時期です。施設の側で見直しの検討が始まる種類では、その検討に乗る形になります。
第12条第9項は「必要に応じて」変更すると書いています。必要が生じる時期を定期のモニタリングに限っていません。介護付有料老人ホーム・グループホーム・居宅のケアマネジャーが続く種類の条文も、同じ書き方です(第184条第6項・第98条第6項・第13条第13号)。
家族の申し出を次の定期まで待たせる条文は、どの種類にもありません。待つ理由が制度に無いので、気づいた時点で伝えられます。
言う相手と時期が決まっても、面談で「ご希望はありますか」と聞かれた場でどう答えるかは残ります。ここからは条文ではなく、計画の欄の形から言えることを書きます。
計画に入るのは「もっと丁寧に見てほしい」という要求ではありません。困っている場面と、それを計画のどの欄でどう変えたいかです。組み立ての順は3つあります。
「もっと丁寧に見てほしい」ではなく、「面会に行くと決まって同じ姿勢のままでいる」から始めます。
要求の形は、そのままでは計画のどの欄にも入りません。入るのは、困っている場面のほうです。計画をつくる担当者は、その場面を解決すべき課題の欄に置き換えて案に書けます。手元の計画書では「生活全般の解決すべき課題」のような長い名前になっていることがあるので、欄の名前ではなく、何に困っているかを書いた箇所として探します。
日付・時間帯・場所のうち、分かるものを1つ添えます。
施設は提供したサービスの内容等を記録することになっています(第8条第2項)。訪問介護などの事業者にも同じ定めがあります(指定居宅サービス等基準 第19条第2項)。家族の話に日付があれば、同じ日の記録と突き合わせられます。突き合わせられれば、家族の感じ方の問題として片づかずに済みます。
伝えたいことが複数あるときは、前の章で見た3つの欄のどれに当たるかを先に決めます。
目標の欄を変えたいのか、サービスの内容の欄を変えたいのか、留意事項の欄に足してほしいのかで分けます。この分け方で出すと、計画をつくる担当者は書き換える場所をそのまま決められます。要求を並べた形では、どの欄の話なのかを担当者が決めることになります。
家族が伝えたことが計画に載るまでには、条文が定めた手続きがあります。
特別養護老人ホームでは、案の作成から説明・文書による同意・交付までの規定を、変更のときにも準用することになっています(第12条第12項が第2項から第8項までを準用)。介護老人保健施設も同じです(第14条第12項)。介護付有料老人ホームは案の作成から交付までを準用し(第184条第7項)、グループホームも同じ形です(第98条第7項)。居宅のケアマネジャーが続く種類も、案の作成から交付までを準用します(第13条第16号)。
つまり、1回の変更ごとに、この一連の手続きが1セット要ります。 伝えたいことを小出しにすると、そのたびに同じ手続きが回ることになります。まとめて1回で出せば、手続きは1回で済みます。前の章の欄ごとの整理は、この1回にいくつ載せるかを家族が決めるための準備です。
手続きが終われば、変更後の計画が交付されます。受け取ったら、伝えた内容がどの欄に入ったかを見ます。入っていなければ、そのことをもう一度申し出られます。
日々のケアには根拠になる書面があり、その書面を書き換える相手と場は、入居先の種類ごとに運営基準が決めています。家族が希望を言えるかどうかを分けるのは、言い方の上手さではなく、自分の入居先ではどこに何が書かれているかを知っているかどうかです。
いま始められるのは、親の入居先がどの種類かを確かめて、その種類の計画を出して読むことです。ここを飛ばすと、どの欄をどう変えてほしいのかを家族が示せないまま、書き換える場所を施設が決めることになります。
介護のあんしんでは、ケアの中身のように、家族が施設へ求める先が見えにくい場面の判断を扱っています。