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医療的なケア・夜間の対応・認知症にともなう行動を理由に、老人ホームへ何件も断られている家族に向けた記事です。「認知症がひどいので」「医療対応が難しいので」と、どこからも似た言葉が返ってくる段階を想定しています。
この記事を読むと、断り文句を5つの条件へ分解する方法が分かります。そのうえで、次にどこへ当たり直すか、同じ種類へ出し直すか種類を変えるか、次の電話で何を聞くかまでが決まります。
断り文句は「認知症」「医療対応」という状態の名前で返ってきます。ただ、施設が実際に見ているのは、次の5つです。必要な行為・時刻・職種の3つに、2つを足したものです。足すのは、本人ができる範囲と、認知症の行動の状態です。
この5つに分解できていれば、次の施設には「認知症です」ではなく「夜間に週3回ほど他の入居者の居室へ入ります」と伝えられます。前者はどの施設にとっても判断の材料が足りませんが、後者なら対応できる施設とできない施設が分かれます。
だから何件も断られたときに変えるのは、申し込みの件数ではなく、施設へ伝える条件と確認する条件です。次へ申し込む前に、断った施設へこう聞き直します。
「対応が難しいのは、どの行為ですか。何時ごろ、何回必要で、どの職種がいないため対応できないのでしょうか。」
認知症を理由に断られたのなら、これを足します。
「どの行動が、どの時間帯に、どれくらいの頻度で共同生活上難しいと判断されましたか。」
この記事が扱うのは、医療的なケア・夜間の対応・認知症にともなう行動を理由とする断りだけです。空床や満床を理由に止まっている場合、費用や保証人や生活保護が理由の場合、地域の要件や感染症が理由の場合は、この記事では扱いません。満床と言われた話や、紹介の会社の段階で入居先の候補から外れている話は別の記事にあります。
扱う施設の種類も5つに絞ります。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、グループホーム、介護付有料老人ホームです。この5つは、入居先の候補になり得る側にも、条件から外れる側にも出てきます。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、介護や看護を担うのが施設の職員ではなく別に契約する事業所になるため、聞く相手そのものが変わります。この記事では扱いません。
もう一つ、あらかじめお伝えします。この記事で確かめるのは、その施設の体制が親の状態に合うかどうかだけです。空きがあるか、費用が払えるか、通える距離かは別に残ります。体制が合っても入れないことはあります。
以下では、医療的なケアの場合と認知症の行動の場合で、それぞれ何をどこまで聞くのかを分けて書きます。最後に、分解した結果を書いたメモの見本を置きます。
医療的なケアで先に押さえるのは、医行為かどうかが状態の名前ではなく工程で分かれるという点です。医行為とは、医師や看護職員でなければ行えないと国が整理している行為のことをいいます。以下に出てくる「看護職員等」も、看護師と准看護師を指す言い方です。
厚生労働省の通知は、行為を工程の単位で切り分けています。医行為ではないものとして挙げられているのは、次のものです。
どれも、施設の介護職員が担える工程です。
一方で同じ令和4年の通知は、酸素吸入の開始と停止は医師・看護職員・患者本人が行うものとしています。酸素マスクや経鼻カニューレの装着と除去もここに含まれます。経管栄養についても、対象になるのは準備と片付けであって、注入と停止は含まれません。
つまり同じ「在宅酸素」でも、機器の準備は介護職員が担えて、吸入の開始と停止は担えません。状態の名前でまとめると、この境目が見えなくなります。
介護職員が研修を修了したうえで実施できる行為は、社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条が5つを列挙しています。口腔内の喀痰吸引、鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養です。在宅酸素・インスリン・褥瘡の処置・導尿・ストーマは、この5つに入っていません。
この5つを実施するには、施設の側にも条件があります。同法第48条の3にもとづいて都道府県知事の登録を受けた事業所であることが要ります。これが「登録喀痰吸引等事業者」と呼ばれるもので、研修を修了した職員がこの5つを行うために、施設が都道府県へ届け出て受ける登録のことです。
ここまでが制度の側の線引きです。家族の側に置き直すと、聞き方はこうなります。
「在宅酸素があるから無理です」と言われたら、酸素に関するどの工程を施設側が担えないのかを聞きます。機器の準備なのか、流量の確認なのか、カニューレの再装着なのか、夜間の状態の観察なのか、急変時の判断なのか。工程によって、介護職員が行えるものと看護職員等でなければ行えないものが分かれるからです。
頻度と本人ができる範囲も抜けやすくなります。同じインスリンでも、本人が自己注射できる場合、朝だけ職員の対応が必要な場合、夜間も測定と調整が必要な場合では、必要な体制がまったく変わります。「インスリンがあります」だけを伝えると、施設の側は最も手のかかる形を前提に見積もることになります。情報が粗いほど、安全な側へ寄せた判断になるからです。
認知症を理由とする断りを決めているのは、認知症の重さではありません。
グループホーム(指定認知症対応型共同生活介護)の対象者は、指定地域密着型サービス基準第94条第1項で「要介護者であって認知症であるもののうち、少人数による共同生活を営むことに支障がない者」と定められています。分かれ目は「共同生活への支障」です。 重度でも支障がなければ対象になり、軽度でも他の入居者への危険があれば対象から外れる方向へ寄ります。
だから聞くのは診断名ではなく行動そのものになります。
最後の一つは見落とされやすいところです。いまいる場所の音や明るさ、服用している薬、生活のリズムが行動を起こしている場合があります。そのときは施設を変えることより先に、主治医に評価してもらうほうが早く進みます。
「老健の判定会議で否決されました」という返事にも注意が要ります。否決は結果であって、理由ではありません。 医療の必要度なのか、リハビリテーションの目的と合わなかったのか、認知症の行動なのか、空床なのか、退所の見込みなのかが分からなければ、次の候補は選べません。否決の理由を具体的に聞き直すところからやり直します。
分解した内容は、口頭で覚えておくのではなく紙かスマートフォンに書き出します。次の候補へ電話をかけるときに、そのまま読み上げるためです。
書き方を示すために、例を2つ挙げます。実在する誰かの記録ではなく、埋め方を見せるために作った例です。
例1は医療的なケアの場合です。
例2は認知症の行動の場合です。
どちらの例も、埋まっていない欄があります。埋まっていない欄が、次に聞くことです。 例1なら夕方以外の時間帯の体制、例2なら主治医の評価がそれに当たります。
このメモができたら、次は入居先の候補を絞ります。次の章の表は、いま埋めた欄を左から順に当てはめていく作りになっています。
断られた理由から、次に調べる入居先の候補を絞ります。ここではそのための表を使います。
ただしこの表は、次に申し込む先を決める表ではありません。入居先の候補を絞り、その候補へ何を聞くかを決めるための表です。
表は2枚に分けてあります。1枚目で入居先の候補を絞り、2枚目でその候補へ何を聞くかを決めます。 行の並びは同じなので、自分の行を上下で見比べてください。1枚目だけを読んで電話をかけると外れます。
読む前に二つ。ひとつは、断られた先がどの種類かで、読み方が変わることです。介護付有料老人ホームから断られたのなら聞く相手は施設の職員ですが、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅から断られたのなら、介護と看護を担うのは別に契約する事業所であり、同じことをその事業所にも聞くことになります。
もうひとつは、在宅酸素・ストーマ・導尿を1行にまとめてあるのは、聞き方が共通するからであって、境目の位置が同じだからではないことです。どの工程が医行為に当たるかは状態ごとに違います。表は「工程で聞く」という手順を共通のものとして示しているだけなので、自分の親の状態については前の章の線引きに戻って確かめてください。
1枚目は、入居先の候補を絞るための表です。
| 断られた理由 | まず確認すること | 入居先の候補になり得る先 |
|---|---|---|
| 喀痰吸引・胃ろう | 行為・時刻・頻度 | 5つの種類のどれでもかまいません。登録喀痰吸引等事業者の登録がある施設 |
| インスリン・褥瘡の処置 | 実施する時刻と観察の内容 | 必要な時刻に看護職員がいる施設。介護医療院・特別養護老人ホーム・介護付有料老人ホーム |
| 在宅酸素・ストーマ・導尿 | 職員に担ってほしい具体的な工程 | 5つの種類のどれでもかまいません。工程に対応できる個別の施設 |
| 夜間の急変・見守り | 必要な対応と頻度 | 夜間の体制を持つ施設。介護医療院・介護老人保健施設 |
| 認知症の行動 | 行動・頻度・危険性・治療の要否 | グループホーム。特別養護老人ホーム |
3列目には施設の種類の名前と、その中で何を満たす施設かという条件の両方が入っています。種類で絞れる行と、種類では絞れず条件でしか絞れない行があるからです。喀痰吸引や在宅酸素は5つの種類のどれでも条件を満たしうるので、種類で入居先の候補を減らす意味がありません。
語尾にも理由があります。「入居先の候補になり得る」であって「次に合う」ではありません。制度の上で対象になりうるというだけで、その施設が受け入れられるかどうかは次の表で決まります。
2枚目は、絞った入居先の候補へ何を聞くかの表です。
| 断られた理由 | 入居先の候補になる条件 | 個別の施設へ聞くこと |
|---|---|---|
| 喀痰吸引・胃ろう | 登録の対象に必要な行為が入っていて、研修修了者が必要な時刻に勤務している | 登録の対象になっている行為と、夜間を含む勤務の体制 |
| インスリン・褥瘡の処置 | 本人ができない工程を、必要な時刻に職員が担えます。本人が自分でできるなら看護職員の配置は条件から外れます | 看護職員の実際の勤務時間と対応の範囲 |
| 在宅酸素・ストーマ・導尿 | 医行為ではない工程だけか、看護職員等が必要な工程を含むか。境目の位置は状態ごとに違います | どの工程を誰が担えるか |
| 夜間の急変・見守り | 夜勤の実人数と看護職員と急変時の動き方が合う | 実人数、勤務の形態、呼び出しの後の動き |
| 認知症の行動 | グループホームは共同生活に支障がない場合。特別養護老人ホームは原則として要介護3以上で、要介護1・2なら特例入所の相談から入ります | 対応できる行動の範囲、夜勤、相談の手続き |
2枚目の中列が満たされていない入居先の候補は、電話をかける前に外してかまいません。右の列は、電話でそのまま読み上げる質問になります。
1枚目の3列目に出てくる介護医療院は、長期にわたる療養が必要な人を対象にした介護保険の施設です。介護保険法第8条第29項が対象を「要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者」と定めています。夜勤を行う看護職員の数が人員の基準に置かれている点でも、他の種類と違います(平成12年厚生省告示第29号)。
ただし数は多くありません。令和6年介護サービス施設・事業所調査の概況によれば、令和6年10月1日現在で917施設・定員52,837人です。同じ時点の介護老人福祉施設(特別養護老人ホームのこと。この調査での呼び名です)は8,621施設、介護老人保健施設は4,214施設なので、施設の数では大きく開きがあります。
だから探し方の順が変わります。「介護医療院を探す」のではなく、地域包括支援センター、ケアマネジャー、市町村の介護保険の担当、介護サービス情報公表システムで、自分の地域にあるかを先に確かめます。無い地域では、この行は最初から入居先の候補になりません。
特例入所は、要介護1・2の人だけに関わる仕組みです。特別養護老人ホームは原則として要介護3以上が対象で、要介護3以上なら特例入所の話はそもそも出てきません。要介護1・2でやむを得ない事情があるときに、入所を検討してもらえる道が開いています。国の通知が挙げるやむを得ない事由の第一は「認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること」です(平成26年12月12日 老高発1212第1号)。言えるのはここまでで、該当するか、優先されるか、実際に入所できるかは市町村と施設の個別の判断になります。
もう一度お伝えします。この表が扱うのは受入体制の適合性であって、実際に入居できるかどうかではありません。公表されている情報も、申し込み前の絞り込みであって受入の保証ではありません。
入居先の候補を増やすより、外れる条件を先に潰すほうが早く進みます。外れる条件のほうが制度の側で決まっていて、電話をかける前に紙の上で判定できるからです。逆に「対応できるかどうか」は施設ごとに違うので、電話をかけるまで分かりません。
グループホームは、上に書いた「少人数による共同生活を営むことに支障がない者」が対象者の要件です。だから他の入居者への危害や他室への侵入、夜間の大声は、対象から外れる方向に寄ります。逆に、行動が本人の居室の中で完結していて他の入居者に及んでいないなら、認知症が重くても外れません。
グループホームには、もう一つ別の条件があります。地域密着型サービスであり、住んでいる市町村の中で使うことを前提にした区分に入ります。原則として事業所のある市町村の被保険者が使います(介護保険法第42条の2第1項、第78条の2第4項第4号)。市町村をまたぐ道は所在地の市町村長の同意や協議で開きますが(介護保険法第78条の2第9項)、実際に通るかは自治体によって違います。自分の市町村と、施設のある市町村の両方に確かめる形で進めます。
介護老人保健施設の対象は、介護老人保健施設基準第8条が「看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療等が必要であると認められる者」と定めています。定員を超える申込があるときの優先の基準も同じ条文にあります。したがって生活の面での困難だけでは順番が上がりにくくなります。
介護医療院は先に書いたとおり長期の療養が前提です。短期の療養や在宅への復帰を目指す場合は外れます。
認知症の行動が理由の場合、この2つを当てはめると次にやることが決まります。他の入居者に及ぶ行動があるならグループホームは外れ、特別養護老人ホームの側から当たります。 行動が本人の中で完結しているなら、グループホームは残ります。要介護1・2で特別養護老人ホームに当たるなら、入口は特例入所の相談になります。
なお、空床や待機、紹介の会社の段階で入居先の候補から外れている問題は別の記事で扱います。決まった施設を受けてよいかの確かめ方も別の記事にあります。次が決まるまでの時間の埋め方も、この記事では扱いません。
ここまでで入居先の候補は2枚の表の上に絞れました。ただし絞れたのは施設の種類までです。次の章で、その先に何が残っているかを見ます。
表の3列目には施設の種類の名前が入っていますが、種類が決まっても受け入れられるかは決まりません。法定の基準が最低線であることと、同じ種類でも施設ごとに中身が違うことが、どちらも同じ結論を指しているからです。
つまり、表で施設の種類を絞った後にもう一段あります。その一段を先に済ませてから、次の章で切り替えの判断に入ります。
人員の基準の数字は、常勤換算を含む最低の基準です。常勤換算とは、一定の期間の勤務時間を合計して、常勤の職員ひとり分の勤務時間で割り、人数に直したものをいいます。全員が同じ時間帯にいることを意味しません。だから基準を満たしていることと、必要な時刻に人がいることは別です。
施設の種類ごとに置かれている基準も違うので、種類の名前を添えて読みます。たとえば介護医療院では、夜勤を行う看護職員の数が人員の基準に置かれています(平成12年厚生省告示第29号)。これは表の「入居先の候補になる条件」に使えますが、実際の人数や、特定の処置ができるかどうかや、空床の有無は別に確かめることになります。
同じ種類の中でも、次が施設ごとに違います。
数字で見ておきます。令和5年度老人保健健康増進等事業の実態調査研究事業の報告書によれば、介護付有料老人ホームの夜間(深夜帯)の看護職員の実人数をたずねた設問では、0人が80.0%、1人以上が14.1%です。どちらもこの調査に回答した施設に占める割合で、2つを足しても全部にはなりません。全国の施設を数え上げたものではなく、この数字から個別の施設がどうかは分かりません。つまり「介護付」という名前だけでは、夜に看護職員がいるかどうかは決まりません。
だから加算の区分を聞いて止めないでください。区分を聞いたうえで、夜間の実人数、勤務の形態、呼び出しの後にどう動くかまで確認します。夜間の看護についての詳しい話と、公表されている情報の読み方は、それぞれ別の記事で扱っています。
ここがこの記事の題に直接答える章です。次の申し込みを同じ種類に出すのか、種類そのものを変えるのかは、分解した5つの条件のうち何が足りないと言われたかで分かれます。
| 断られたときに足りなかったもの | 次にやること |
|---|---|
| その施設に体制が無かっただけ(登録・研修修了者の勤務時間・夜勤の実人数・受け入れの方針) | 同じ種類のまま、体制のある個別の施設を探します。種類を変える必要はありません |
| その種類の対象者の要件から外れている(共同生活への支障・医学的管理の必要性・長期の療養) | 種類を変えます。同じ種類へ出し直しても同じ答えが返りやすくなります |
| 何が足りないのかまだ分からない | まず断った施設へ理由を聞き直します。分解が終わるまで申し込みを増やしません |
この表の読み方は一つだけです。同じ種類へ申し込み直すことが無駄とは限りません。 体制の問題で断られたのなら、同じ種類の別の施設に体制がある可能性は残ります。逆に、種類を変えても必要な体制がなければ同じ答えが返ります。
自分が3行目に当たるかどうかは、断りの言葉で見分けられます。「認知症だから」「医療対応が難しいから」という状態の名前のままなら、まだ分解が終わっていません。断られた回数を数えるより、この見分けのほうが役に立ちます。
ここからは、絞った入居先の候補へかける電話で聞くことを決めます。
聞くのは「対応できますか」ではありません。この聞き方には、どの施設も「相談させてください」と答えられてしまいます。聞くのは、数字か条件の形で返ってくる質問です。
もう一つ、聞く相手が変わることを先に置きます。介護付有料老人ホームや介護保険の施設なら、施設の職員が答えられます。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、介護と看護を担うのが別に契約する事業所になるため、同じことをその事業所にも聞く必要があります。
以下、医療的なケアと夜間の体制についての質問と、認知症の行動についての質問に分けて置きます。
3つ目は言葉の意味を押さえてから聞きます。夜勤は夜の時間帯を勤務として建物の中にいる形、宿直は建物にはいるが本来の業務ではなく待機に近い形、オンコールは建物の外にいて呼び出しに応じる形です。同じ「夜も対応します」という返事が、この3つのどれを指すかで意味がまったく違います。
最後の項目は、市町村と施設のどちらへ相談するのかを確かめます。特例入所は特別養護老人ホームに固有の仕組みであって、他の種類にはありません。他の種類に問い合わせるときにこの言葉を使うと話が通じません。
断られた電話で、もう一つだけできることがあります。次の相談先を尋ねることです。
ただしこれはあくまで補いであって、次の候補を探すことの代わりにはなりません。
指定を受けたサービスには、自ら必要なサービスを提供することが困難と認めた場合に、適切な病院や診療所や施設の紹介その他の適切な措置を速やかに講じることを求める条項があります。特別養護老人ホームなら指定介護老人福祉施設基準第4条の3、グループホームなら指定地域密着型サービス基準第94条第3項、介護付有料老人ホームなら指定居宅サービス等基準第179条第3項です。この条項があるのは指定を受けたサービスであり、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅には同じ条項が掛かりません。
だから、断られた電話を切る前にこう聞きます。
「こちらでは難しいとのことでしたが、この状態で相談できる施設や医療機関に心当たりはありますか。」
条文の作りについて、ここで一つ注記しておきます。介護付有料老人ホームの場合、提供を拒んではならないと定めた条項の対象は「入居者」であり、入居申込者は入っていません。一方で紹介の条項のほうは「入居申込者又は入居者」と書き分けられています。断られた側も、次の相談先を尋ねてよい立場にはある、というところまでです。条文を持ち出して求める形にすると、その後の情報が得にくくなります。
ただし、この条項は具体的な受入先が出てくることを保証するものではありません。紹介先が受け入れるかも、同じ地域にあるかも定まっていません。この返事を待つ間も、入居先の候補探しは並行して進めます。 尋ねるのは電話を切る前のひと言で、そのあとは自分で動きます。
ここまでで、分解のしかたと、入居先の候補の絞り方と、電話で聞くことが決まりました。最後に、手を動かす順番だけを並べ直します。
この3つを終えたときに手元に残るのは、施設の種類の名前ではなく、最初の章で作ったメモです。
このメモが埋まっていれば、次の電話は「認知症です」から始まりません。変えるのは申し込みの件数ではなく、伝える条件と確認する条件です。