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施設に入居している親が入院し、退院の見通しがまだ立っていない家族に向けた記事です。戻れるかどうかを最後に決めるのは、入院の長さではなく、退院したときの親の状態がその施設の引き受けた範囲に収まるかどうかです。ただし契約書に入院や不在の期間の定めがあれば、状態を見るより先にその期間が答えになります。この記事では、入院中の請求書の読み方・期間の定めがどこにあるか・戻れるかの判断を左右する情報の渡し方・入院が長引いたときの決め方を、この順に置きます。
次に当てはまる方には、別の記事を用意しています。
入院中に払っているのは、使った分ではなく居室を空けておく分です。
入院した翌月に届く請求書には、家賃も管理費も前の月と同じように並んでいます。親は病院のベッドにいて、施設の食堂にも浴室にも行っていません。それなのに同じ額が請求される、というところで手が止まるはずです。
これは珍しい扱いではありません。厚生労働省が令和2年度に行った調査に、認知症のグループホームを対象にした事業所調査があります。退院後の再入居に備えて入院中も空室・空きベッドを確保している事業所は93.1%でした。確保している期間は1事業所あたり平均2.2か月です。この93.1%は、調査に答えた3,268事業所の全部を分母にした割合です。
空室を確保しておく料金として家賃(居住費)相当分を徴収している事業所は86.3%です。こちらの分母は、空室を確保している3,044事業所のほうで、全事業所ではありません(複数回答)。3,268事業所の全部に対して数え直すと、およそ8割になります。
出典: 厚生労働省 認知症対応型共同生活介護等における平成30年度報酬改定の影響に関する調査研究事業(結果概要)
施設の側から見ると、その居室は「使っていない部屋」ではなく「他の人へ貸さずに空けてある部屋」です。 戻れる場所を残すことと、その間の家賃が発生することは、同じことの表と裏になっています。
同じ調査には、空けて待っていない側の回答もあります。入院中に空室を確保していない事業所や再入居を想定していない事業所に、退院後に円滑に入居できる体制を確保するうえでの課題を聞いた結果です。最も多かったのは「長期間の空床は経営を圧迫するため困難」で85.9%でした。この分母は、そこに当てはまる85事業所です(複数回答)。全事業所でも、空けて待っている事業所でもありません。
この85事業所の回答は、空けて待つ施設が家賃を取る理由を説明したものではありません。 空けて待たない施設が、なぜ待たないのかを答えたものです。ただし、空床を長く抱えることが経営の負担になるという事情そのものは、待つ側にも同じようにあります。空けておけば負担が出ますし、空けておかなければ戻る場所が無くなります。施設はこの2つの間で運営しています。
この調査が対象にしたのは認知症のグループホームです。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居している方は、この割合を自分の施設の扱いとして読み替えないでください。自分の施設がどうしているかは、契約書と重要事項説明書の費用に関する記載に書いてあります。
施設から何も言われていないことは、何も決まっていないという意味でもありません。入院の連絡を受けた施設は、居室をどうするかを内部で判断しています。空けて待つかどうか・いつまで待つか・待つ間の費用をどう扱うかが代表的なもので、これで全部というわけではありません。その判断は、家族へ改めて説明されないまま進むことがあります。請求書は、その判断の結果だけが数字になって届いたものです。
だから家族の側からは、判断のほうを聞けます。いつまで居室を確保してもらえるのかと、その間に費用はどうなるのかの2つです。どちらも、聞かれて困る質問ではありません。
入院中の請求書は、費目ごとに動き方が違います。
この章の費目の名前は、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の請求書のものです。 特別養護老人ホームでは家賃・管理費という費目が無く、費用の柱は居住費と食費で、金額の決まり方も制度の側にあります。特別養護老人ホームに親がいる方は、費目の名前を読み替えたうえで、下の費目3から先を読みます。
3つとも、契約書と重要事項説明書の費用に関する記載で、自分の施設の扱いを確かめられます。
家賃と管理費は、居室を確保している対価なので原則としてかかり続けます。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針には、家賃の決め方が書かれています。施設の整備に要した費用・修繕費・管理事務費・地代に相当する額等を基礎として合理的に算定したものとし、近傍同種の住宅の家賃から算定される額を大幅に上回るものでないこと、という定めです。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
この指針が定めているのは家賃の算定の方法までで、不在のときに止まるかどうかは書いていません。 算定の基礎に挙がっているのは建物と土地に関する費用なので、人がそこで寝起きしたかどうかでは動かない性格の費用だと考えています。実際に止まるか止まらないかを決めているのは、指針ではなく契約です。
管理費も同じ考え方です。共用の部分の維持や事務にかかる費用なので、その人が建物にいたかどうかでは動きません。
開くのは、重要事項説明書の費用に関する記載と、入居契約書の利用料の条項です。探すのは、入院・不在・長期不在といった言葉が入った条項です。一定の日数を超えて不在になったときに管理費の一部を減らす、と決めている施設もあります。 書いていなければ減額の定めが無いということなので、そのときは請求書のとおりに発生し続けます。
減額の定めが無いこと自体は、契約違反でも不当な請求でもありません。 居室を空けておく費用という組み立てから素直に出てくる結果です。確かめるのは、書いてあるかどうかまでです。
食事の費用は、日ごとに落ちる部分と、落ちない部分に分かれます。
同じ指針は、食費を含むサービス費用について、入居者に対するサービスに必要な費用の額を基礎とする適切な額とすることとしています。食材そのものの費用は、提供していない日には発生しません。一方、調理の職員の配置や厨房の維持にかかる費用は、入居者ひとりが不在でも減りません。日割りにする施設としない施設に分かれるのは、この2つのどちらを重く見るかが違うためです。
確かめるのは請求書の食費の行です。日割りで引かれているか、月額のまま並んでいるかを見ます。月額のままなら、入院した日からの扱いを聞きます。入院中の食費はどう計算されていますか、という聞き方になります。食材の仕入れも調理の人の配置も月単位で組んでいるので日割りにしていない、という答えが返ることもあります。聞いて納得できるかどうかは別として、理由の分からない請求ではなくなります。
入院中は、施設と病院の両方から請求が来ます。病院で出る食事の費用は病院の側の請求になるので、施設の食費と二重に払っていないかを見るときは、2枚の請求書を並べます。医療費・食事療養費・差額ベッド代は病院の側、家賃・管理費・食費・介護に関する費用は施設の側です。
入院中は施設の介護のサービスを受けていないので、この分は施設の種類ごとに扱いが変わります。
厚生労働省が示している介護給付費単位数の算定構造には、次の仕組みがあります。
| 施設の種類 | 入院している間の扱い |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 入院を要した場合と居宅への外泊を認めた場合に1月に6日を限度として1日246単位 |
| 認知症のグループホーム | 入院時費用として1月に6日を限度として1日246単位 |
| 介護付有料老人ホーム | 上の2つと同じ形の日額の仕組みは無い |
単位は金額そのものではありません。 1単位あたりの単価は地域とサービスの種類で決まるので、246単位に一定の額を掛けたものがそのまま請求されるわけではありません。ここで読み取ってほしいのは、金額ではなく仕組みのほうです。入院した日を、通常のサービス費に代えて日額で数える仕組みがあります。
先ほどのグループホームの調査では、この入院時費用を算定している事業所は23.9%でした。分母は86.3%と同じで、空室を確保している3,044事業所です(複数回答)。制度にこの仕組みがあることと、その施設が使っていることは別です。
介護付有料老人ホームについては、入院している間の扱いが契約で決まるので、ここも重要事項説明書の費用に関する記載を開きます。
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、介護のサービスを外部の事業者から受けています。入院すると、施設との契約は続いたまま、外部の訪問介護などの利用だけが止まります。止まった分は請求されないので、その事業者からの請求は減ります。一方で、施設へ払う家賃と管理費は減りません。請求の相手が複数に分かれているので、入院した月は届いた請求書を全部並べて確かめます。
入院した月の請求書は、この費目だけが下がって見えることがあります。介護保険のサービスを受けた日数で計算する部分が減るためです。家賃と管理費は変わらないのに合計だけが少し下がる、という形になります。合計の増減で「入院中は安くなった」と受け取らないほうが確実です。見るのは合計ではなく、費目ごとの行です。
3か月という数字は、特別養護老人ホームの省令の条文から来ています。他の種類には、この数字の条文がありません。
特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準の第22条は、次のように定めています。
特別養護老人ホームは、入所者について、病院又は診療所に入院する必要が生じた場合であって、入院後おおむね三月以内に退院することが明らかに見込まれるときは、その者及びその家族の希望等を勘案し、必要に応じて適切な便宜を供与するとともに、やむを得ない事情がある場合を除き、退院後再び当該特別養護老人ホームに円滑に入所することができるようにしなければならない。
出典: e-Gov法令検索 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準
長い一文ですが、施設に義務づけているのは1つです。3か月以内に退院できる見込みがはっきりしている場合に、戻れるようにすることです。
この条文は、3か月を超えたら退所になると書いたものではありません。 義務を負っているのは施設で、期限が切れると入所者が不利になる、という作りではありません。3か月を超えた場合は、この条文が施設に義務づけている範囲の外になります。そこから先を決めているのは、施設との契約と、その施設の運営規程(その施設が自分で定めて備えている運営の決まり)です。
条文は「おおむね三月以内に退院することが明らかに見込まれるとき」と書いています。見込みを判断するのは主治医です。入院が長引きそうかどうかを施設が決めるのではないので、見通しは病院から取ります。
定員が29人以下の地域密着型の特別養護老人ホームには、指定地域密着型サービス基準にまったく同じ文の条文があります。中身が同じなので、自分の親の施設がどちらかを調べる必要はありません。契約書や運営規程に書かれた省令の名前が違って見えても、同じ条文だと考えて構いません。
特別養護老人ホーム以外の種類には、期間を区切った条文がありません。代わりにあるのは「戻すことに努める」という形の定めです。
| 施設の種類 | 定めている場所 | 定めの形 |
|---|---|---|
| 認知症のグループホーム | 指定地域密着型サービス基準 第105条第6項 | 病状が軽快し退院が可能となった場合には再び速やかに入居させることができるよう努めなければならない |
| 介護付有料老人ホーム | 指定居宅サービス等基準 第191条第6項 | 同じ形の定め |
| 住宅型有料老人ホーム・有料老人ホームに当たるサービス付き高齢者向け住宅 | 標準指導指針(協力医療機関等の項目) | 同じ形の定め。ただし指針は都道府県などが指導のときに参考にする助言 |
出典: e-Gov法令検索 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準/e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
3行目の根拠は標準指導指針です。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
表を読むときは、3行目の「ただし」に注意します。1行目と2行目は省令で、3行目は通知です。介護付有料老人ホームは省令と指針の両方が当たりますが、施設へ持ち出すときは省令のほうを使います。 有料老人ホームなので指針も当たる、という関係です。
サービス付き高齢者向け住宅が有料老人ホームに当たるかどうかは、そこで食事の提供・入浴や排せつや食事の介護・洗濯や掃除などの家事・健康管理のうち1つでも行われているかで決まります。老人福祉法が有料老人ホームをそう定義しているためで、届出をしているかどうかは関係ありません。どれも行わず住まいと安否の確認と生活の相談だけであれば、有料老人ホームには当たらず、指針も当たりません。その場合に開くのは契約書だけになります。
「努めなければならない」という書き方なので、戻すことが約束されているわけではありません。 施設がその努力をどう果たすかは運営に委ねられています。だから、特別養護老人ホーム以外の種類では、条文よりも契約書のほうが強く働きます。
ここが、入院の長さで決まる場所です。 契約書の解除の条項や運営規程に、入院や不在が一定の期間を超えたときの扱いが書かれていることがあります。書かれていれば、退院したときの状態を見るより前に、その期間が答えになります。開く場所は、入居契約書の契約解除の条項と、重要事項説明書の解約に関する記載(国の別紙様式では「契約の解除の内容」という名前の欄)です。
期間の定めが無いか、まだ余裕がある場合に見られるのが、退院したときの状態です。 戻れるかどうかを判断するのは施設で、その判断を左右するものは次の章に置きます。
契約書の期間の定めを越えた先で、戻れるかどうかを決めるのは、退院したときの状態です。
施設が引き受けている範囲を決めているのは、医療の処置と夜間の体制です。他にも認知症の症状の程度や看取りの方針が判断を左右することがあるので、この2つで全部というわけではありません。入院の前と後で状態が変われば、同じ施設でも収まるかどうかが変わります。
分かれ目になりやすいのは、退院のときに次のことが増えている場合です。
4つとも、その施設が置いている職員と時間帯の体制に直接ぶつかります。この一覧のどれが自分の親に当てはまるかを見ると、日数を数えるより早く見当がつきます。 1か月の入院でも状態が大きく変われば戻れないことがあり、半年の入院でも状態が入院前と同じなら戻れることがあります。
引き受けた範囲がどこに書いてあるかは、入院中でも確かめられます。開くのは、管理規程(運営規程)の「医療を要する場合の対応」と、重要事項説明書の職員体制に関する記載(国の別紙様式では「夜勤を行う看護・介護職員の人数」という名前の欄)の2か所です。この2か所と、上の一覧を突き合わせると、どこがぶつかりそうかが先に見えます。
ぶつかりそうな点が見えたら、次にすることは、退院時の状態を施設へ渡すことです。
渡す情報は4つです。取り先は情報の種類ごとに違います。
| 渡す情報 | どこから取るか |
|---|---|
| いまの状態 | 病棟の看護師と主治医 |
| 退院の見通し | 主治医 |
| 退院のときに必要になりそうな処置 | 主治医と病院の相談窓口 |
| 退院後に使えそうな医療の支援 | 病院の相談窓口 |
日々の様子は病棟の看護師がいちばんよく見ています。一方、退院した後の生活まで含めた見通しを持っているのは、主治医と病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカーがいる部署)です。 見通しについて病棟の看護師に聞いても、答えられる立場ではありません。
4つ目は見落としやすい行です。退院した後も訪問看護や在宅酸素などの支援を続けられる場合があり、それがあれば施設が引き受けられる範囲も変わります。施設へは、状態だけでなく使える支援も含めた形で渡します。
渡す時期は、早いほうが確実です。退院日が決まってから伝えると、施設は体制を検討する時間を持てません。まだ見通しが立たない段階でも「いまはこういう状態です」と伝えておくと、施設の側から必要な情報を聞き返してもらえます。
渡し方は、口頭より紙のほうが残ります。病院からもらった書類の写しに、家族が気づいたことを1枚添える形で足ります。
退院の見通しが立ってきたら、もう1つ頼めることがあります。退院の前に、病院と施設と家族が同じ場で話す機会を作ってもらうことです。 退院前カンファレンスと呼ばれることが多く、病院の相談窓口へ頼みます。
同じ場で話すと、伝言の行き違いが減ります。家族が病院の説明を施設へ伝え直す形になると、医療の言葉を家族が要約することになり、施設が判断に使いたい細かい部分が落ちます。落ちた部分が「うちでは難しい」という結論を作ってしまうことがあります。
断られることもありますが、頼むこと自体は普通の依頼です。退院の日が決まる前に頼みます。
入院すると、施設と病院の両方に対して家族が担う役割が出てきます。
2つとも、入院してから決めるものではなく、契約と病院の手続で先に決まっています。
標準指導指針は、入居契約書に明示する事項をいくつも挙げています。有料老人ホームの種類・利用料等の費用負担の額・入居開始可能日などと並んで、身元引受人の権利・義務もその1つです。身元引受人は、入居契約のときに家族などが引き受ける立場で、施設との関係で名前を書いた人を指します。
何を担うことになっているかは、入院してから相談して決めるものではなく、契約書に先に書いてあります。 入院の連絡先になること、費用の支払いについて負うもの、退院後の行き先を決めるときの立場。どこまでが書かれているかは施設ごとに違うので、契約書のその条項を読みます。
同じ指針は、施設が入居者と身元引受人等の氏名・連絡先を書いた名簿を整備しておくことも定めています。緊急のときに迅速に対応できるようにするためのものです。連絡先が変わっているなら、入院を機に更新を頼みます。
入院の場面でもう1つ問題になりやすいのが、契約書に名前が書かれている人と実際に動いている人が違うことです。契約のときに長男が身元引受人になっていて、実際に通っているのは近くに住む次女、という形はよくあります。
このとき、施設からの重要な連絡は契約書に名前のある人へ行きます。病院からの連絡も、施設が伝えた連絡先へ行きます。入院のように決めることが続く場合は、この行き違いがそのまま判断の遅れになります。 誰が窓口になるのかを家族の中で決めて、施設へ伝えておきます。
病院からは、入院の手続・費用の支払い・退院先の決定について、家族が窓口になることを求められます。施設が代わりに引き受けてくれるものではありません。
ここで負担になるのが、施設と病院で同じことを別々に聞かれることです。入院前の暮らしの様子・飲んでいる薬・家族の連絡先を、両方に同じように説明することになります。
先に1枚にまとめておくと、この繰り返しが減ります。書き出すのは、入院前の状態・飲んでいる薬・介護の認定の区分・施設の連絡先と担当者の名前・家族の連絡先の5つです。病院にも施設にも同じ紙を見せられるので、伝わり方の食い違いも減ります。
病院から、施設の身元引受人とは別に身元保証人を立てるよう求められることもあります。身元保証人は、病院との関係で入院の費用の支払いなどを保証する立場で、施設の身元引受人とは別の契約になります。施設の身元引受人になっているからといって、病院の身元保証人を兼ねることにはなりません。
立てられない場合について、厚生労働省の医政局医事課長が平成30年に出した通知は、次のように述べています。
入院による加療が必要であるにもかかわらず、入院に際し、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19 条第1項に抵触する。
出典: 厚生労働省 身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて
立てられないことだけを理由にした入院の断りは医師法に触れると、この通知が示しています。求められたときに、立てられないと伝えて相談してよい場面です。ただしこの通知が扱っているのは入院を断ることまでです。支払いや退院後の行き先の決定について家族が求められることは変わりません。
続けるか解約するかは、口座の残高ではなく、決める日を先に置いてから判断します。金額を並べるのは、その日に何を見るかを決めておくためです。
並べるのは4つです。上の2つが続けた場合、下の2つが解約した場合の数字になります。
| 並べるもの | どこから取るか |
|---|---|
| 続けた場合に毎月出ていく額 | 入院中の請求書の固定の費目 |
| あと何か月続けられるか | 親の年金と貯金の残り |
| 解約した場合に戻る前払金 | 入居契約書の返還金の算定の方式 |
| 解約を伝えてから終わるまでの月数 | 重要事項説明書の解約予告期間の記載 |
3行目に出てくる前払金は、入居のときにまとめて払った家賃などの前払い分のことです。払っているかどうかは、入居契約書に前払金の額と返還金の算定の方式が書かれているかで分かります。 書かれていなければ、月払いだけの契約なのでこの行は空欄になります。
前払金は、契約のはじめに一定の割合が使ったものとして差し引かれ(初期償却)、残りが年月をかけて少しずつ減っていきます。解約したときに戻るのは、その時点でまだ減り切っていない分です。標準指導指針は、前払金の返還額について入居契約書に明示し、契約のときに十分に説明することを求めています。算定の方式は契約書に書いてあるので、その式に入居からの月数を当てはめると戻る額が出ます。 自分で計算しにくいときは、施設に「いま解約したら返還金はいくらになりますか」と聞けます。
出典: 厚生労働省 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
4つを同じ紙に並べます。並べないまま「もったいないから」で決めると、続ける場合の負担と解約したときに戻る額のどちらも見えないまま日が過ぎます。
退院の見通しが立たないときほど、決める日を先に置きます。置かないと、毎月届く請求書のたびに判断が揺れます。
置き方は難しくありません。次に病院から見通しの説明を受ける日か、月初に請求書が届く日に合わせます。その日までに戻れる見込みが立たなければ、並べた4つの数字で決める、と先に決めておきます。
迷っているうちは、続けるほうを既定にします。 解約は取り消せませんが、続けることは翌月にもう一度考え直せます。ただし、あと何か月続けられるかの行が残り少なくなっているなら、この既定は逆になります。
もう1つ、期間の制約があります。入居者が解約する場合は、予告の期間があります。 重要事項説明書の解約に関する記載(国の別紙様式では「契約の解除の内容」という名前の欄)に、入居者からの解約予告期間が月数で書かれています。
予告の期間が1か月なら、解約を決めてからさらに1か月分の費用がかかります。決める日は、この期間の分だけ手前に置きます。
戻ると決めた場合にも、伝えることがあります。退院の予定日と、退院のときの状態と、必要になる処置の3つです。戻る意思があることだけを伝えて、状態を伝えないでおくと、退院の直前になって受けられないと言われることがあります。
決めた内容は、どちらに決めたときも施設の担当者へ書面で伝えます。口頭だけだと、担当が代わったときに引き継がれません。
戻れるかどうかを最後に決めるのは、入院の長さではありません。退院したときの状態です。ただし、契約書に入院や不在の期間の定めがあるなら、その期間で先に決まります。まず契約書を開いて期間の定めを確かめ、そのうえで状態を見る、という順番になります。
次にすることは、いまの状態と見通しを施設へ渡すことです。これを飛ばして退院日が決まってから伝えると、施設は体制を検討する時間を持てません。時間が無いまま判断されると、戻れたはずの状態でも受けられない、という結果になりえます。渡しておけば、施設の側からも準備の相談が返ってきます。
親が入院している間は、家族が病院と施設の両方に向き合うことになります。どちらにも同じことを早めに伝えておけば、退院の日が決まったときに、決めるべきことが1つずつ減っています。