※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

2018年7月3日、消費者庁が、有料老人ホームを運営する会社に対して措置命令を出しました。対象になったのは、その会社が運営する106施設に関するパンフレットの表示です(この命令は同社に対する一つのもので、施設ごとに出されたものではありません)。
問題になったのは、「終の棲家」とうたったことだけではありません。パンフレットには「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」と書かれ、「寝たきりなど要介護度が重い方もお過ごしいただくことができます」と続いていました。
一方で実際には、他の入居者や従業員の生命や身体に危害を及ぼす、あるいはその切迫したおそれがある場合で、通常の介護方法や接遇方法では防げないときには、入居契約を解除することがありました。その条件が、表示の近くに明確に示されていませんでした。
命令の文言は、根拠になった告示の条文をほとんどそのまま写した形になっています。つまり、強い言葉の近くに条件が書かれているかを見るという読み方は、行政が実際に判断に使っている形と同じものです。
この記事が扱うのは、有料老人ホームの運営事業者が出すパンフレットやウェブサイトの表示です。
※ サービス付き高齢者向け住宅・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・認知症グループホームには別の規定がかかるため、同じ扱いにはしません。
手元のものがどちらかは、重要事項説明書や契約書にサービス付き高齢者向け住宅としての登録の記載があるかで分かります。名称に「ホーム」と付いていても、登録があればそちらの規定が先に効きます。
同じ有料老人ホームでも、介護付・住宅型・健康型で当てはまり方が変わる話があります。どの種類にかかる話なのかは、そのつど示します。
先に結論を書きます。広告は、書かれた言葉が嘘かどうかだけで読みません。嘘だけでなく、判断に必要な補足が欠けていることも問題になります。
広告の読み方は、三つの手順に絞れます。手順そのものは短いのですが、なぜそれで足りるのかには告示の作りに理由があり、手順が求める「近くに書かれている」にも行政側の基準があります。手順、その根拠、「近く」がどこまでを指すのかの順に見ていきます。
やることは三つで、順番も決まっています。
囲む対象になる強い表現は、充実・24時間・終身・最後まで・安心といった語です。
この手順の要は、二つ目にあります。強い言葉そのものを疑うのではなく、その足元に具体があるかを見ます。
だから、覚えるべき禁止語のリストはありません。持つのは「この良いことには、どんな条件が付くはずか」と問う癖のほうです。
有料老人ホームの広告表示には、景品表示法に基づく指定告示「有料老人ホームに関する不当な表示」が適用されます。
この告示の各項は、「◯◯についての表示であって、〜が明りょうに記載されていないもの」という同じ形をしています。良い印象を与える表示があり、それに必要な補足が明確に書かれていない、という組み合わせを拾う作りになっています。
言い換えれば、告示は表示と補足を一組で見ています。だから広告もその形で読みます。手順の二つ目が効くのはこのためです。
ここで一つ、誤解を避けておきます。この告示があるからといって、嘘が対象外になるわけではありません。景品表示法は、事実と違う表示や、実際より良く見せる表示、有利に見せる表示も別に対象にしています。
もう一つ、逆向きの誤解も避けておきます。告示の引き金は、事業者がその事項を表示したことにあります。「◯◯についての表示であって」が各項の入口になっているため、何も書いていない広告に、この告示をそのまま当てることはできません。
つまり、書いていないことを探して回るチェックではありません。書いてある強い言葉の近くを見るチェックです。何も書かれていないことが気になるなら、それは法的なチェックとは別に、見学で聞けば足ります。
告示が求める補足は、条件だけではありません。終身居住の制約、職員数の具体値、介護サービスの提供主体、協力医療機関との協力の内容、費用の内訳など、項目によって中身が違います。まとめて言えば、判断に必要な補足情報です。
具体例を二つ。「管理費」とだけ書かれた費用の表示には、その費用の内訳が近くに書かれているはずです。医療機関との連携をうたう表示には、どの医療機関と、どういう協力をするのかが、診療科目の具体的な名称を含めて近くに書かれているはずです。
※ 有料老人ホームの表示に効くのは、老人福祉法の専用の広告条項ではなく、この景品表示法に基づく指定告示です。
「近く」という言葉には、行政側の基準があります。告示の運用基準は、告示各項でいう「記載されて」いるとは、その表示に近接した箇所に、高齢者にも分かりやすく、目立つように記載されていることだ、としています。
つまり、離れたページの小さな但し書きでは足りないという決まりになっています。パンフレットを読んで「条件は書いてあったが気づかなかった」と感じたなら、その感覚には制度上の裏づけがあります。
ただし、同じ運用基準には但し書きが三つ付いています。
| 場合 | 運用基準の扱い |
|---|---|
| 同じ広告媒体の2箇所以上に同じ表示がある | もっとも目立つ表示に近接した箇所に書かれていれば足ります |
| 媒体の制限で全部を近くに書けない | 近くに要点を書いたうえで、詳細を同じ媒体の他の箇所に見やすく書きます |
| 近くに書かれているが、内容が事実と違う | 原則として不当な表示にあたります |
上の二つがあるため、手元のパンフレットの一部だけを見て「これは違反だ」と決めることはできません。目立つ別の箇所に書かれているかもしれませんし、要点だけが近くにあって詳細が他の箇所にあるのかもしれません。
三つ目は逆向きに働きます。近くに書いてあっても、その中身が実際と違えば別の問題になる、ということです。だから、書いてあるかどうかだけでなく、書いてある内容が実際と合っているかも突き合わせの対象になります。
そこでこの記事では、判定という言葉を使いません。使うのは「確認が必要な表示」です。確認の相手は、重要事項説明書と、見学のときの施設になります。
次は、この読み方を職員数の表示に当てます。
職員数を読む前に、その施設がどの種類かを先に確かめます。同じ数字でも、意味が変わるからです。
「介護付」は、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設で使われる表示です。指定を受けていない有料老人ホームが「介護付」と表示できない旨を定めているのは、国が自治体へ示した標準指導指針の別表であって、法令ではありません。だから「指定がなければ違法」とは書けません。
指定を受けているかどうかは、介護サービス情報公表システムで施設名から探せば分かります。同じ「介護付」でも、施設の職員が介護を提供する形と、外部の事業者が提供する形があります。
住宅型の場合は、もう一段ややこしくなります。施設の職員配置と、実際に介護を提供する体制が同じではありません。だから住宅型では、施設の職員数の表示だけでは介護の体制が読めません。介護を提供する事業所の名前と、その事業所の体制を別に確かめることになります。
そのうえで、職員の手厚さをうたう表示について、告示第10項が明りょうな記載を求めているものが三つあります。
このうち二つ目は条件付きです。介護職員等が、要介護者等以外の入居者にも食事の提供その他日常生活上必要なサービスを提供する場合に限られます。すべての施設に、常に三つの数値が要るわけではありません。
その施設がこれに当たるかどうかは、パンフレットや重要事項説明書で、要介護でない人も受け入れているかが分かる記述を探せば見当がつきます。入居の対象や要件を書いた欄がそれにあたりますが、欄の名前は書類によって違うので、名前ではなく中身で探します。分からなければ、見学で聞けば足ります。
そして、数字が書いてあること自体が、介護の質を保証するわけではありません。確認するのは、その数字が何を数えたものかです。
なお、離職率や実際の配置比率の読み方は、重要事項説明書の側の話になります。詳しくは関連記事で扱っています。
関連記事:介護付有料老人ホームの見学前に読む職員体制の数字と、当日に聞く四つのこと
常勤換算とは、勤務時間を常勤職員の勤務時間で割って、人数に直した数え方をいいます。週に数日だけ働く職員が何人かいても、その合計が常勤の一人分にしかならないことがあります。実際にその場にいる人数とは別の数字です。
運用基準は、この「表示」に「多数」「多くの」「十分な」「充実の」等、具体的な数値を明示せずに行う表示を含むとしています。つまり、数字が一つも書かれていなくても、職員の多さをうたっていれば職員数についての表示にあたりえます。
もう一つ、数え方についての定めがあります。運用基準は、次の職員の数を加算して表示することを、不当な表示として取り扱うとしています。
つまり、介護職員等に該当しない職員を混ぜて数えてはいけない、という意味です。これはパンフレットの数字を疑うための材料ではなく、質問に変える材料になります。「この人数には、どの職種が含まれていますか」と聞けば、その数字が何を数えたものかが分かります。
運用基準は、夜間の最少人数の明りょうな記載について、宿直の時間帯における最少の介護職員および看護職員の数と、その施設が設定した宿直の時間帯が記載されていることだとしています。
ここでいう宿直の時間帯は、パンフレットでは「夜間」と書かれます。運用基準が挙げている例も「夜間(◯時〜翌△時)最少時の介護・看護職員数◯人(介護職員◯人、看護職員◯人)」という形です。
読み取れることが二つあります。一つは、人数だけでなく時間帯もセットで書かれているはずだということ。もう一つは、平均ではなく最少のときの人数が求められているということです。
書かれていなかった場合は、それ自体を告示で問題にすることはできません。書いていない広告には、この告示が当たらないからです。
だから、書かれていなければ見学で聞きます。これは法的なチェックとは別のやり方になりますが、知りたいことには、こちらのほうが早く届きます。
ここまでの読み方を、実際によく出てくる三つの言葉に当てはめます。
| 強い言葉 | 近くにあるはずの情報 |
|---|---|
| 24時間対応 | 連携する医療機関の名称と、協力の具体的な内容 |
| 3対1 | 常勤換算による介護職員等の数と、夜間の最少人数 |
| 終身、最後まで | 継続できない場合があること、どういう状態のときか |
右の列は、告示が近くへの記載を求めている補足情報です。書かれていないから違反、と読むための表ではありません。近くに無ければ、見学の質問に回します。その質問は最後にまとめてあります。
この言葉は、広告の中で意味が一つに決まりません。たとえば、介護職員が24時間施設内にいる場合、看護師が24時間施設内にいる場合、看護師へ24時間連絡できる場合、緊急コールに24時間対応する場合、提携する医療機関が24時間連絡を受ける場合があります。
どれも「24時間対応」と書けます。だから、この言葉から体制を読み取ることはできません。呼べば来ると決めつけることも、常駐だと決めつけることもしません。
分解して聞きます。誰が、どこに、どの時間帯にいるのか。夜間は施設内にいるのか、電話連絡だけなのか、必要時に何分程度で来る体制なのか。この四つが埋まれば、言葉ではなく体制が分かります。
ここからは介護付の表示を読むときの話です。根拠になる基準がかかるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設だけなので、住宅型や健康型のパンフレットに同じ基準を当てないでください。
介護保険の指定居宅サービス等基準は、「看護職員及び介護職員の合計数は、常勤換算方法で、要介護者である利用者の数が三又はその端数を増すごとに一以上であること」と定めています。
数え方は先ほどの常勤換算と同じですが、数える相手が違います。告示が記載を求める職員数は介護職員等の数で、入居者全体に向けた表示に対して求められます。一方この基準は、看護職員と介護職員の合計を、要介護である利用者の数で見ます。
だから、パンフレットに載っている職員数を入居定員で割って、この基準を満たしているかどうかを確かめることはできません。分母も、数える職種も違います。
そのうえで、この数字は各時間帯にその場にいる実人数でもなく、夜勤の人数でもありません。入居者3人につき職員1人が常についているという意味ではなく、省令が定めているのは常勤換算した合計の人数です。
配置の基準は、ケアの質を表す数字でもありません。基準を満たしていることと、実際にどう配置されているかは別の話です。
だから、この表示を見たときにやることは決まっています。夜間の実人数を別に聞きます。
告示の運用基準は、この項に当たる表示の例として、「終身介護」「最後までお世話します。」「生涯介護」「終身利用」を挙げています。
そして、明りょうな記載とは何かも定めています。二つあります。入居者の状態によっては退去または提携施設等への住み替えを求める場合があることと、退去または住み替えを求めることとなる入居者の状態の具体的な内容です。
つまり、「終身」「最後まで」とうたう表示の近くには、そうならない場合があることと、どういう状態のときにそうなるのかの二つが書かれているはずだ、ということになります。
冒頭で挙げた2018年の措置命令は、まさにこの項の事案でした。表示の近くに解除の条件が示されていなかったことが、命令の理由です。
ただし、解除の条項があること自体は、「終身」の表示が不当である証拠にはなりません。どの状態で退去を求めるのが妥当かも、この告示では判定できません。その条件が妥当かどうか、実際に退去を求められたときにどうするかは、別の記事で扱っています。
関連記事:老人ホームから退去を求められたときに、その場で同意せず確かめること
広告で足りない分は、書面で埋めます。突き合わせる相手は重要事項説明書です。
国の標準指導指針は、重要事項説明書を「入居相談があったときに交付するほか、求めに応じ交付すること」としています。契約の直前に渡される書類ではありません。
ただし、この指針は国が自治体へ示した技術的な助言であって、法令ではありません。求めれば確実に出てくるという保証はありません。断られたら、その理由を聞いて、見学の質問へ回します。
手順は四つになります。
三つ目については、公表システムに載るのは介護保険のサービスを提供する事業所なので、介護付なら特定施設入居者生活介護の事業所として探せます。住宅型は、施設そのものが見つからないことがあります。
自治体の公開の仕方も一様ではありません。PDFをそのまま載せている自治体もあれば、公表システムへ誘導している自治体もあり、同じ自治体でも施設の種類によって扱いが違うことがあります。一度の検索で出てこなくても、公開の入口が違うだけのことがあります。
書面のどの欄に何が書いてあり、それをどう読むのかは、別の記事で詳しく扱っています。
関連記事:介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所
一つ注意があります。ポータルサイトに載っている文章は、施設が作った表示とは限りません。気になった表現があったら、その施設の公式サイトやパンフレットでも同じ表現が使われているかを見ます。使われていなければ、施設が出した表示ではない可能性が高くなります。
書面で埋まらなかった分は、見学で聞きます。三つに絞ってあります。
二つ目は、夜間は施設内にいるのか、電話連絡だけなのか、必要時に何分程度で来るのかまで聞きます。
職員数の内訳が気になったときは、質問を増やさずに、一つ目に続けて「その人数には、どの職種が含まれていますか」と聞けば足ります。
そして、回答を口頭だけで終わらせません。その場でメモを取り、あとから施設へメールで確認するか、書面でもらいます。言葉は記憶に残りませんが、書面は残ります。
最後に、一つだけはっきりさせます。
広告の説明が足りないことは、その施設の介護の質が低いことの証拠ではありません。逆に、広告が整っていることが、介護の質が高いことの証拠にもなりません。表示の話と、施設の話は別です。
それでも、この読み方には意味があります。高額な契約を、表示の印象だけで決めないための確認のサインになるからです。
持ち帰るのは、最初に書いた三つの手順そのものです。
この三つを通せば、印象で読んでいた広告が、施設へ渡す質問の一覧に変わります。決めるのはそのあとで足ります。
本文で引用した告示・運用基準・措置命令の文言は、いずれもこれらの原本に当たって確認したものです。2018年の措置命令は過去の行政処分であり、現在の事業者や施設の運営を評価するものではありません。