退院後すぐ家に戻れない親、特養と老健どっちに入るの?【退院までの2週間でやることを時系列で解説】

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「来週、退院できます」

病院からそう連絡が来る。本来なら、うれしいはずの一言です。

でも実際に頭をよぎるのは、これだったりします。

「この状態で家に連れて帰るのは、無理かもしれない」

そこで候補として出てくるのが、「特養」と「老健」という2つの施設です。

何がどう違うのか。そもそも退院日までに、何から手をつければいいのか。

わからないまま、日数だけが減っていく。

まず検討すべきは、老健です。

その理由と、退院日までの2週間で「誰に・何を・どの順番で」伝えればいいのかを、時系列で書いていきます。

【結論】まず検討すべきは「老健」です

退院後すぐに家へ戻れないときの受け皿は、老健(介護老人保健施設)です。

理由はシンプルで、老健は「リハビリをして家に帰るため」の施設だから。まさに今の状況のために作られた場所です。

一方の特養(特別養護老人ホーム)は、「これから先ずっと暮らす」ための施設。退院直後の行き先としては、現実的に選べません。

  • 特養と老健は役割がまったく違う
  • 特養が「いま」選べない2つの理由

同じ「介護施設」でひとくくりにされがちですが、制度上の目的が違います。入所条件も、申し込んでから入れるまでの期間も、別物です。

特養と老健は役割がまったく違う

老健特養
目的リハビリをして家に帰るための施設終の住まいとして長く暮らす施設
入所期間原則3〜6か月程度の一時利用期限なし(看取りまで可)
入所条件要介護1から原則要介護3以上
入りやすさ回転が速く、比較的早く入れる数か月〜数年待ちが普通
医師・リハビリ常勤医師とリハビリ専門職がいる医師は非常勤が多く、リハビリは手薄

要するに、老健は「通過点」。特養は「終点」です。

特養が「いま」選べない2つの理由

1つめは、条件。特養は原則、要介護3以上でないと申し込めません。

2つめは、スピード。申し込みから入所まで数か月〜数年待ちが当たり前です。「退院日は2週間後」には、どう考えても間に合わない。

そしてもう一つ、時期の面でも老健に利点があります。

退院直後の数か月は、入院で落ちた体力が最も回復しやすい「ゴールデンタイム」です。

リハビリ専門職が常駐する老健でこの時期を過ごせば、行き先を確保しながら、落ちた体力を戻しにいける。

つまり老健は、「仕方なく預ける場所」ではないということです。

【退院日までの2週間】やることを時系列で

やることは4つ。相談、申請、見学、日程調整。そして、動く順番が決まっています。

  • 【当日〜3日以内】病院のソーシャルワーカーに相談する
  • 【同時に確認】介護保険の申請は済んでいるか
  • 【1週間以内】老健の候補を見学する
  • 【退院前】入所日を退院日に合わせる

この順番どおりに動けば大丈夫です。

【当日〜3日以内】病院のソーシャルワーカーに相談する

最初の窓口は、入院先の「医療相談室」「地域連携室」などにいるソーシャルワーカーです。

ナースステーションで「退院後のことを相談したい」と言えば、取り次いでもらえます。

何と言えばいいか迷ったら、これをそのまま口に出してください。

「退院後すぐに自宅で介護するのは難しそうです。老健への入所を前提に、退院後の行き先を相談させてください」

「老健を前提に」。この一言で、話が一気に具体化します。

候補施設のリストアップから申し込み手続きまで、あとはソーシャルワーカーが一緒に走ってくれます。

【同時に確認】介護保険の申請は済んでいるか

老健を使うには、要介護認定が必要です。

まだ申請していないなら、親御さんが住む市区町村の窓口(または地域包括支援センター)で、要介護認定の申請をすぐに出してください。

結果が出るまで1か月ほどかかります。ただ、申請日にさかのぼってサービスを使える仕組みがあるので、とにかく早く出す。それだけです。

これも「申請がまだです」とソーシャルワーカーに伝えれば、段取りを教えてくれます。

【1週間以内】老健の候補を見学する

候補が2〜3か所示されたら、できれば家族が見に行きましょう。

雰囲気や清潔感も大事です。でも、それ以上に判断材料になるのが次の2つの質問です。

在宅復帰率はどのくらいですか?」

超強化型ですか? それとも基本型ですか?」

老健には国が定めた区分があって、「超強化型」に近い施設ほどリハビリが手厚い。家に帰すことに本気だ、ということです。

裏を返せば、退所の話も早めに出ます。

「じっくりリハビリして家に帰したい」のか。「特養の順番待ちの間、なるべく長くいたい」のか。

家庭の事情によって、合う施設は変わります。だからこの2つで見極めてください。

ちなみに、一般の見学者はまずこれを聞きません。聞いた瞬間に「わかっている家族だ」と伝わって、説明がぐっと丁寧になります。

知っ得メモ① 高い薬を飲んでいると、老健に断られることがある

あまり知られていませんが、老健に入所している間の薬代は、施設が負担する仕組みです。

つまり、認知症の新しい薬や高価な注射薬を使っていると、施設側の持ち出しが大きくなる。

その結果、入所を断られたり、保留にされたりすることが実際にあります。

対策は2つです。

申し込みの段階で、薬の内容を正直に全部伝えること。そのうえで「この薬、ネックになりそうですか?」と率直に聞くこと。

場合によっては、退院前に病院の主治医に相談して、効果を保ったまま処方を整理できることもあります。

断られてから慌てるより、退院前に手を打つ。これが正解です。

【退院前】入所日を退院日に合わせる

老健が決まったら、病院からそのまま老健へ移る。これが理想です。

日程調整は、ソーシャルワーカーと老健の相談員(支援相談員)がやってくれます。家族がやるのは、書類の準備と持ち物の用意くらいです。

知っ得メモ② 間に合わないときは「地域包括ケア病棟」という手がある

「退院日までに老健が見つからない」

「もう少し病院でリハビリを続けさせたい」

そんなときのために、地域包括ケア病棟という選択肢を覚えておいてください。

在宅や施設への移行準備のための病棟で、リハビリを受けながら最長60日まで入院できます。今の病院に病棟がなくても、別の病院へ転院して利用できます。

退院を迫られても、「行き先が決まるまで自宅で共倒れ」しか道がないわけではない、ということです。

ソーシャルワーカーに「地域包括ケア病棟への転院は可能ですか?」と聞いてみてください。

この選択肢を知っているだけで、行き先を探す時間を最長60日、確保できます。

【お金の話】「負担限度額認定」を知らないと、毎月数万円損します

老健の費用は、介護サービス費の自己負担に、食費と居住費が乗ります。目安として月10万円前後〜というケースが多いです。

絶対に知っておいてほしい制度があります。

負担限度額認定です。

世帯の収入や預貯金が一定以下の場合、市区町村に申請すると、食費と居住費が大幅に減額されます。

たとえば年金収入が少ない方なら、月数万円単位で下がる。年間にすると、数十万円の差になることもあります。

この制度は、申請しないと1円も適用されません。

知らずに満額を払い続けている家族が、実際に少なくない。金額の段階は収入・資産によって細かく分かれているので、要介護認定の申請と一緒に、同じ窓口でこう聞いてください。

「負担限度額認定の対象になりますか?」

これだけです。

【老健に入ったら】次の一手を「入所した日」に打つ

老健に入れた。よかった、これで一段落。

……とは、なりません。

入所したその日からの動きで、半年後の行き先が決まります。

  • 老健には「ずっと」はいられない
  • 【回避策1】老健に入った日に、特養の申し込みを始める
  • 【回避策2】それでも間に合わないときの選択肢を知っておく

老健にいられる期間には、限りがあるからです。特養の申し込みと、それが間に合わなかったときの備えを、同時に進めます。

老健には「ずっと」はいられない

老健は、家に帰ることが前提の施設です。3か月ごとに、入所を続けるかどうかの判定があります。

回復したら自宅へ。これが理想の流れです。

問題は、「家に帰るのは難しい、でも特養の順番も来ていない」という状態。

行き先がないまま退所を求められる、いわゆる「老健難民」です。珍しい話ではありません。

【回避策1】老健に入った日に、特養の申し込みを始める

「家に戻るのは難しそうだ」と少しでも感じるなら、老健に入所したその足で、特養の申し込みを進めてください。

押さえることは3つです。

  • 複数の施設へ同時に申し込む
  • 申込書に在宅介護が困難な事情を具体的に書く
  • 状況が変わったら施設へ連絡する

申し込みは、1か所に絞る必要がありません。通える範囲の特養に幅広く出すのが定石です。

そして、ここが一番大事なんですが、特養の入所は申し込み順ではなく、必要度の高い順に決まります。

つまり、申込書の「家庭の事情を書く欄」に何を書くかで結果が変わる。

「主介護者が日中就労しており在宅介護が不可能」

「老健の退所期限が迫っている」

こういう在宅介護が困難な事情を具体的に書くことが、優先度の判断材料になります。

介護度が上がった。介護する家族が体調を崩した。そういう変化も、そのつど施設に伝えれば反映されます。

知っ得メモ③ 特養を狙うなら「特養と同じ法人の老健」を選ぶ

これは、最初の老健選びの時点で使える、大事なコツです。

老健の中には、特養と同じ法人が運営していたり、同じ敷地に特養が併設されていたりする施設があります。

こういう老健に入ると、日々の様子が特養側にも伝わる。施設間の連携の中で、入所の相談がしやすくなります。

見学のときに、こう聞いてみてください。

「系列や併設の特養はありますか?」

「そちらへ移られた方はいますか?」

「ゆくゆくは特養に」と考えているなら、老健選びの段階から出口を見すえて選ぶ。

待機期間を乗り切る家族は、だいたいこれをやっています。

【回避策2】それでも間に合わないときの選択肢を知っておく

特養の順番が来る前に、老健の退所期限が来てしまった。

その場合も、打つ手はあります。

  • 別の老健に移る
  • ショートステイの長期利用(ロングショート)
  • 介護医療院

別の老健へ移れば、また入所期間を確保できます。

ロングショートは、短期入所サービスを連続して利用してつなぐ方法。ケアマネジャーに相談すれば調整してくれます。

介護医療院は、長期療養と生活の場を兼ねた施設です。たん吸引や経管栄養などの医療的なケアが必要で、特養に断られやすい方には、有力な選択肢になります。

「最悪の場合の逃げ道がある」

そう知っているだけで、退所判定のたびに追い詰められずに済みます。

施設に頼ることは、親を見捨てることではありません

「家に連れて帰ってあげられない」

そこに罪悪感を抱く方は、本当に多いです。

でも、老健への入所は介護の放棄ではありません。リハビリという治療の続きです。

専門職のもとで体を立て直す期間があるから、その先に「家に帰る」という選択肢が残る。

逆に、無理に在宅介護を始めて家族が倒れてしまえば、親御さんの居場所そのものがなくなります。

施設と専門職の力を借りること。

これは、親御さんを長く支えるための、いちばん現実的な愛情のかけ方だと思います。

【まとめ】今日やることチェックリスト

  • 退院後すぐ家に戻れないなら、行き先は老健。特養は条件も待機期間も合わない
  • 病院のソーシャルワーカーに「老健を前提に相談したい」と今日伝える
  • 介護保険(要介護認定)の申請がまだなら、すぐ市区町村へ
  • 同じ窓口で「負担限度額認定の対象になるか」を必ず聞く
  • 老健見学では「在宅復帰率」と「超強化型かどうか」を質問する
  • 薬の内容は申し込み時に正直に伝え、ネックになりそうなら退院前に主治医へ相談する
  • 老健が間に合わないときは「地域包括ケア病棟」への転院を相談する
  • 家に戻るのが難しそうなら、老健入所と同じ日に特養へ複数申し込む(狙い目は特養と同じ法人の老健
  • 間に合わないときの逃げ道(老健の住み替え・ロングショート・介護医療院)を覚えておく

退院までの時間は、限られています。

でも、やるべきことは上のリストだけです。

ひとりで抱え込まなくていい。ソーシャルワーカーとケアマネジャーという「プロの伴走者」に頼りながら、一つずつ進めていきましょう。