老人ホームの身元保証会社の費用は92万〜190万円|内訳と契約で確かめる項目

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老人ホームの申込みで「身元保証人が必要です」と言われ、頼める家族が遠方に住んでいる、あるいは親族との行き来が絶えている。施設やケアマネジャーから「身元保証会社という手があります」と案内され、いくらかかるのかを調べ始めた。この記事は、その段階の方に向けて書いています。

総務省が2023年に公表した調査には、4つの事業者の料金表が例として載っています。契約時に必要な額の合計は、約92万円から190万円でした。ただしこの金額は、身元保証そのものの値段というより、日常生活の支援や亡くなった後の手続きの前払い(預託金)まで含んだ総額です。老人ホームが実際に求めている役割は、そのうちの一部にあたります。

この記事では、費用の内訳と相場、老人ホームの入居で金額が変わる条件、契約書で確かめる項目、実際に起きているトラブルの型、選び方と費用を抑える方法までを、総務省・内閣官房・国民生活センターの公表資料に沿って説明します。

身元保証会社の費用の相場と内訳

保証会社の費用は1つの値段ではなく、性質の違う層が重なった総額です。この章では、次の順に見ていきます。

  • 総務省が調べた4事業者の合計は約92万円から190万円
  • 費用は入会金と身元保証料と預託金と年会費に分かれる
  • 預託金は死後事務の前払いで20万円から120万円
  • 見積もりに出ない都度払いと公正証書の実費がある

はじめの2つで総額と費目の全体を押さえ、あとの2つで金額が動きやすい部分を見ます。

総務省が調べた4事業者の合計は約92万円から190万円

公的に確かめられる金額は、総務省行政評価局が2023年8月に公表した調査報告書にあります。

民間のサイトには「相場は100万〜150万円」といった数字が並びますが、根拠を示しているものは少数です。報告書は全国204事業者を調べ、そのうち資料の提供を受けた4事業者の料金表を例として載せています。4事業者はいずれも、身元保証、日常生活支援、死後事務を実施しています。

費目A事業者B事業者C事業者D事業者
基本料等基本料金51.6万円(入会金44万円を含む)基本契約料金46.2万円(遺言書を作らない場合の基本契約料金52.8万円)申込金5万円・分担金15万円・年会費1.2万円契約金66万円
契約手数料等弁護士費用12.6万円公正証書遺言作成13.2万円公正証書作成10万円・立会人費用1〜2万円
身元保証料身元保証支援19.8万円身元保証料金33万円身元保証5,000円/件・緊急連絡先3,000円/件
生活支援費用33万円(うち22万円は預託金)・22万円超過分は都度徴収・緊急支援1.1万円/4時間・一般支援1,100円/時財産管理1.65万円/月・後見サポート3.3万円/月・訪問料金5,500円/時・お手伝い5,500円/時・夜間お手伝い7,150円/時 等預託金20万円〜・サポート費用2名1.5万円/日・2名7,500円/半日 等見守り支援費用(満80歳となった翌月以降)1.5万円/月・訪問日当3,300円/時・任意後見申立費用11万円 等
死後事務費用葬送支援費(預託)73万円要相談(信託口座に預託)50万円〜(預託金)預かり金120万円
合計(都度払いの費用を除く)190万円約92万円(基本料金46.2万円)/99万円(基本料金52.8万円)※いずれも死後事務費用を除く約100万円186万円

報告書はこの表を受けて、費用の水準を次のようにまとめています。

サービスの利用開始時に必要な額が少なくとも100万円以上であった

同じ「身元保証会社」でも、合計には2倍近い差があります。差を生むのは身元保証の料金そのものより、日常生活支援と死後事務をどこまで含めるか、預託金をいくら先に預けるかの違いです。B事業者の合計に死後事務の費用が入っていないのも、死後事務費用が「要相談」で別枠だったためです。総額を1つの数字として比べるより、費目ごとに並べるほうが、実際の負担に近づきます。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

費用は入会金と身元保証料と預託金と年会費に分かれる

料金表を費目でほどくと、性質の違う5つの層になります。

  • 入会金・基本料金: 契約時に一括で払う。例では46.2万円から66万円
  • 身元保証料: 施設や病院への連帯保証と緊急連絡を引き受ける対価。例では19.8万円、33万円、あるいは1件5,000円
  • 預託金: 亡くなった後の手続き(葬儀・納骨・家財処分など)の前払い。例では20万円から120万円
  • 年会費・月額費: 例では年会費1.2万円、財産管理1.65万円/月、後見サポート3.3万円/月
  • 都度払い: 生活支援の時間単価。例では1時間あたり1,100円から7,150円

D事業者の186万円は、契約金66万円と預かり金120万円の合計です。B事業者の約92万円は、基本契約料金46.2万円と公正証書遺言作成13.2万円と身元保証料金33万円を足した額で、死後事務の費用は別枠になっています。同じ「合計」でも、組み立てはまるで違います。

老人ホームに入るとき、施設が求めているのは主に身元保証料の層です。入会金と預託金の層は、施設が求めるお金というより、事業者の仕組みが求めるお金にあたります。ここを分けて見ると、見積書の読み方が変わります。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

預託金は死後事務の前払いで20万円から120万円

預託金は、亡くなった後の葬儀・火葬・納骨・家財処分・行政への届出などにかかる費用を、生きているうちに事業者へ預けておくお金です。

預託金を求めている事業者は、総務省が調べた204事業者のうち157事業者(77.0%)でした。報告書は預託金を「主に死後事務のサービスを利用する際に要する費用で、あらかじめ事業者(又は事業者と提携している法人等)に預けておくもの」と定義しています。例に載った額は、預託金20万円から、葬送支援費(預託)73万円、預かり金120万円です。

政府のガイドライン(2024年6月)は、事業者が死後事務委任契約に基づいて預託金を受けられること、死後事務に要した費用をその預託金から精算できることを説明しています。そのうえで、利用者の死後に預託金の返還の要否や額をめぐって相続人とのトラブルが生じるおそれがあるとして、死後事務の内容等に照らした的確な預託金額を算定し、利用者と推定相続人へ丁寧に説明しておくことが望ましいとしています。

預託金は「使った分だけ引かれる前払い」であり、残った分は相続人へ戻るのが本来の形です。額そのものより、何に使い、残りをどこへ返すのかが、費用の実質を決めます。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

見積もりに出ない都度払いと公正証書の実費がある

契約時の見積書に載る金額のほかに、あとから積み上がる費用が2種類あります。

1つ目は都度払いです。総務省の例には、緊急支援1.1万円/4時間、一般支援1,100円/時、訪問料金5,500円/時、夜間お手伝い7,150円/時、見守り支援費用1.5万円/月(満80歳となった翌月以降)といった単価が並びます。付き添いや買い物、役所への同行を頼むたびに発生し、預託金から引かれる形の事業者もあります。ガイドラインは、預託金から差し引く方法で費用を支払う場合は費用の詳細が不透明になりやすいとして、差し引かれた費用の金額と内容を明らかにすることが望ましいとし、預託金が不足したときの追加預託の時期や条件を事前に示しておくことも考えられるとしています。

2つ目は公正証書などの実費です。例には、公正証書遺言作成13.2万円、公正証書作成10万円、立会人費用1〜2万円、弁護士費用12.6万円、任意後見申立費用11万円が載っています。死後事務委任や任意後見を公正証書で結ぶ事業者では、この実費が初年度に加わります。

見積書を4つに分けて読み直した例

総務省の料金表に載った値を組み合わせた、仮の計算です。一括払いは、基本契約料金46.2万円と身元保証料金33万円で79.2万円。実費は、公正証書遺言作成13.2万円。頼むたびにかかる額は、一般支援1,100円/時で月2回・1回3時間なら年7.92万円。毎年かかる額は、後見サポート3.3万円/月を使うなら年39.6万円です。初年度は、後見サポートを使わない形なら79.2万円と13.2万円と7.92万円で約100万円、後見サポートを足すと約140万円。2年目からは、頼み方しだいで年8万円ほどから年48万円ほどになります。これは総務省の例の値を当てはめた仮の計算で、実額は各事業者の見積書で確かめます。

見積もりを受け取ったら、「一括払いの額」「毎年かかる額」「頼むたびにかかる額」「公正証書などの実費」の4つに分け、初年度と2年目以降の総額を自分で書き出します。この形にすると、事業者どうしを同じ物差しで比べられます。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

老人ホームの入居で保証会社の費用が変わる条件

保証会社の費用は、事業者の料金表で決まる部分と、老人ホームの側の条件で決まる部分に分かれます。この章では、施設の条件で動く4つを見ます。

  • 施設が求める役割が連帯保証か緊急連絡かで料金が変わる
  • 保証会社は施設に立て替えた分を本人に請求する
  • 収入と資産の確認で契約できるかが決まる
  • 入居後に判断能力が落ちると後見サポート費が加わる

はじめの2つが料金の決まり方、あとの2つが契約できるかどうかと入居後の変化にあたります。

施設が求める役割が連帯保証か緊急連絡かで料金が変わる

料金の幅を作っているのは、施設に対して連帯保証人になるかどうかです。

同じ「身元保証」でも、総務省の例には身元保証料金33万円の事業者と、身元保証1件5,000円・緊急連絡先1件3,000円の事業者がありました。ガイドラインは身元保証等サービスの内容を、①医療施設への入院の際の連帯保証、②介護施設等への入所の際の連帯保証、③入院・入所、退院・退所時の手続の代行、④死亡又は退去時の身柄の引取り、⑤医療に係る意思決定の支援への関与、⑥緊急連絡先の指定の受託及び緊急時の対応の6つに分けています。①②は、本人が利用料を払えなくなったときに事業者が代わりに払う約束で、事業者が損失を抱えるおそれがあるぶん料金は高くなります。③④⑥は手間の対価なので、単価は低く収まります。

施設がどれを求めているのかは、施設に聞けば分かります。有料老人ホーム設置運営標準指導指針は、入居契約書に身元引受人の権利・義務が明示されていることを求めています。総務省の報告書にも、施設や病院が身元保証人に対して求める役割を事前に確認し、それに合わせて緊急連絡対応、本人が亡くなった場合の遺体の引取り、遺品の整理などのサービスを提供している事業者の例が載っています。

「緊急連絡先と退去時の引き取りがあればよい」という施設なら、連帯保証を含むプランは省けます。「連帯保証人として署名を」と言う施設なら、連帯保証の上限額と対象(月額利用料の何か月分か、原状回復費を含むか)を書面で出してもらい、その条件で見積もりを取ります。

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針

保証会社は施設に立て替えた分を本人に請求する

保証会社が肩代わりするのは施設への支払いで、最後に負担するのは本人です。

保証会社が施設の連帯保証人になるとき、本人と事業者の間で結ぶのは保証委託契約です。総務省の報告書は、民法459条1項を引いて、委託を受けて保証をした保証人が主たる債務者に代わって弁済したときは、そのために支出した財産の額の求償権を持つと説明しています。あわせて、その旨を保証委託契約に定めることは法律上要求されていないとも書いています。契約書に求償の条項が見当たらない場合でも、求償そのものは残るという意味です。

だからこそ、契約の際に本人の収入と資産を確かめる事業者が多く、預託金を先に預ける仕組みも広く使われています。利用料の滞納が起きれば、事業者は預託金や本人の口座から回収します。

ガイドラインは、連帯保証(身元保証)に関する契約をする場合には、事業者が保証人として未払費用を負担したときの契約者への求償や、前払預託金からの充当に関するルールを明示することが重要だとしています。契約書のこの部分を読んでおくと、どのお金からいくら引かれるのかが先に分かります。

保証会社が引き受けるのは、施設に対する信用の穴埋めです。お金そのものは本人の年金と貯蓄から出ます。施設が連帯保証を求めているかどうかを先に確かめておくと、必要なプランが絞れます。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: e-Gov 民法

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

収入と資産の確認で契約できるかが決まる

年金と貯蓄の額しだいで、契約そのものを断られることがあります。

総務省の調査では、契約締結の際に本人の収入・資産を確認する事業者が146事業者(71.6%)ありました。方法は「通帳を確認している」が117事業者(80.1%)で最も多く、年金通知書や生活保護受給者証などの収入に関する書類が26事業者(17.8%)、株式等の証書や保険証書、不動産登記簿などの金銭化可能な資産に関する書類が21事業者(14.4%)です。市区町村の生活保護課、地域包括支援センター、ケアマネジャー、施設、病院などの第三者に確認する事業者が20事業者(13.7%)、債務調査を実施する事業者も5事業者(3.4%)ありました。

報告書は、利用開始時に少なくとも100万円以上が必要なことを踏まえて、次のように書いています。

一定程度の収入・資産がなければ、身元保証等高齢者サポート事業の利用は困難であることがうかがえる

この確認は、本人の側にも使い道があります。「毎月の年金額」「施設の月額利用料」「預託金を払った後に残る貯蓄」を紙に書いて渡すと、事業者は必要なプランを絞りやすくなり、話が余分なサービスへ広がりにくくなります。収入・資産の確認を省く事業者に当たったときは、利用料の滞納が起きた場合にどう対応するのかを、契約の前に聞いておきます。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

入居後に判断能力が落ちると後見サポート費が加わる

老人ホームで暮らすうちに判断能力が落ちると、契約に「そのあとの対応」が加わり、月々の費用が動きます。

総務省の例には、財産管理1.65万円/月、後見サポート3.3万円/月、任意後見申立費用11万円といった費目がありました。ガイドラインは、契約時の重要事項として「利用者の判断能力が低下した場合の対応方針」を説明することを挙げています。あわせて、事業者が利用者と財産管理等委託契約を結んでいるときは、任意後見人との権限の重複によるトラブルを避ける観点から、任意後見契約が発効した際に当該財産管理等委託契約が終了することを説明する事項に含めています。月額の財産管理費が止まり、代わりに任意後見の枠組みへ移る、という切り替わりです。

事業者自身が任意後見人になる場合は、利益相反への配慮も要ります。ガイドラインは、事業者が経営する施設やサービスの入所契約・利用契約の締結や費用の支払等について代理権を設定しないこと、代理権の範囲に入れる場合は当該事項を任意後見監督人が代理する旨を契約書に明示しておくことを、配慮の例として挙げています。

契約の前に「判断能力が落ちたとき、誰が何をして、月にいくら増えるか」を書面で確かめます。財産管理費が止まる時点と、後見サポート費が始まる時点の両方を聞いておくと、家族があとで見積もりを見て驚く事態を避けられます。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

保証会社の契約内容で確かめる項目

政府のガイドラインは、契約に際して重要な事項として説明し、重要事項説明書として作成・交付することが重要な項目を12挙げています。そのうち費用に直結する項目と、総務省が調べた実態を並べます。

確かめる項目ガイドラインの位置総務省調査の実態(2023年)
費目ごとの金額と預託金の区分重要事項1)2)ホームページで費用を開示している事業者48.3%・支払方法43.7%
預託金の管理方法と残金の返し先重要事項8)・第3-3預託金あり77.0%。自社の専用口座68.8%・信託口座18.5%
解約の方法と返金の扱い重要事項7)死後事務の契約は35.1%に解約条項なし・任意解約できる旨の規定は42.0%
寄附・遺贈の方針重要事項10)・第2-37割以上が受け取る方針。ホームページでの開示は26.4%
事業継続の対策と相談窓口第4-3・第4-4清算時の対応方針を定めておくことが望ましいとされる

以下、項目ごとに見方を説明します。

費目ごとの金額と預託金の区分が書いてあるか

まず見るのは、金額が1つにまとまっているか、費目ごとに分かれているかです。

ガイドラインは重要事項の1番目に「契約者に対して提供するサービス内容や費用」を置き、包括的に示すのではなく入会金や預託金などを区分して示すとともに、サービス利用の都度支払う費用がある場合にはその旨をはっきり示すことが重要だとしています。2番目の「当該利用者の費用の支払方法」でも、契約時に支払う費用とサービス利用の都度支払う費用について、支払うタイミングと金額と方法が具体的に分かるように示すことを求めています。

ところが総務省の調査では、ホームページのある87事業者のうち、サービスごとの費用を開示しているのは42事業者(48.3%)、費用の支払方法を開示しているのは38事業者(43.7%)にとどまりました。契約前に比べようとしても、公開されている材料は半分ほどにとどまります。

契約書と重要事項説明書を受け取ったら、「一括」「年額」「月額」「都度」「実費」の5つに費目が分かれているかを見ます。「サポート一式◯◯万円」のように1つの額へまとまっている場合は、内訳を書面で出してもらいます。内訳が書面で出てこない事業者は、この段階で候補から外す判断で足ります。

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

預託金の管理口座と残金の返し先はどこか

預託金は、どの口座で管理され、残りが誰へ返るかで、戻る見込みが変わります。

総務省の報告書は、過去に事業者において預託金の保全措置がなされていなかったために、その事業者が経営破綻した結果、サービスが提供されず預託金も返還されなかった事態が生じたと記したうえで、預託金の管理方法についての法令上の規制等はないと書いています。調査時点の管理方法は、預託金がある157事業者のうち、自社の専用口座で管理が108事業者(68.8%)、信託会社の信託口座で管理が29事業者(18.5%)、信託口座を除く自社以外の口座で管理が33事業者(21.0%)でした。

ガイドラインは、利用者からの前払金(預託金)について、事業者自身の運営資金等とはっきり分けて管理すること、利用者に定期的に管理状況を報告することが望ましいとし、これらを契約書に明記して利用者と共有しておくことも望ましいとしています。保全の方法としては、信託銀行または信託会社を相手方とする信託契約を利用することが望ましいとしたうえで、士業等の別法人へ管理を委託する方法や、分別した預金で管理する方法では、事業者や別法人の破綻時に利用者が十分な資金の還付を受けられない可能性がある点にも触れています。

契約書で見る点は3つです。預託金を入れる口座の名義、預託金から引かれた費用の明細を本人と相続人がいつ受け取れるか、そして本人の死後に残った預託金を誰へ返すか。ガイドラインは、死後事務サービスについて、具体的な支援内容や費用支払のための預託金の取扱い、残金の扱いを契約書と重要事項説明書に明記したうえで死後事務委任契約を締結することが重要だとしています。返し先の記載が見当たらない契約書は、書き加えてもらってから署名します。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

途中で解約できるか返金はどう計算するか

解約の条項は、契約の種類によって整い方が違います。

総務省が契約書を入手できた事業者では、解約条項があるのは身元保証で73事業者(91.3%)、日常生活支援で74事業者(93.7%)、死後事務で50事業者(64.9%)でした。死後事務では、解約条項を置いていない事業者が27事業者(35.1%)あります。条項がある事業者のうち「利用者が任意に解約を申し出ることができる」旨を規定しているのは、身元保証で50.7%、日常生活支援で56.8%、死後事務で42.0%です。残りは、契約を継続する事情があり、その事情が解消されることを条件として解約を認める形でした。契約書に解約条項がない事業者などに運用を聞いた結果では、解約を認めないとする事業者はみられなかったものの、解約の運用について回答を得られなかった事業者もありました。

ガイドラインは、契約期間が長かったり契約金額が高額な場合もあり、契約の途中で解約を求める可能性も高いとして、解約等に関する取扱いを重要事項説明の際に書面を交付して説明することが特に望ましいとしています。あわせて、解約料は消費者契約法9条1項1号により平均的な損害の額を超える部分が無効になること、事業者は消費者から説明を求められた場合に解約料の算定根拠の概要を説明する努力義務を負うこと(同条2項)を示しています。適格消費者団体が解約料条項の差止めを請求し、最終的に和解した事案も参考として載っています。

契約前に聞くのは3つです。入会金のうち返る額、預託金が全額返るかどうか、そして解約料の計算式。「契約から1年後に解約したら、いくら返りますか」と時点を決めて聞くと、答えが数字で返ります。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

出典: e-Gov 消費者契約法

寄附と遺贈の方針はどう書いてあるか

7割以上の事業者が、利用者からの寄附・遺贈を受け取る方針でいます。

寄附・遺贈の受取の方針は、総務省の調査で「依頼し受け取る」が8事業者(3.9%)、「申出があれば受け取る」が135事業者(66.2%)、「受け取らない」が61事業者(29.9%)でした。ホームページのある87事業者のうち、この方針を開示していたのは23事業者(26.4%)です。経営状況が分かる資料を入手できた事業者の中には、収益に占める寄附・遺贈の割合が令和元年度から3年度にかけて6〜7割となっていた例もありました。

事業者が寄附や遺贈を受けること自体は、真に利用者の意思に基づくものであれば不適切とはいえない、というのがガイドラインの立場です。そのうえでガイドラインは、死因贈与契約の締結や寄附を契約の条件にすること、預託金の残金を贈与する契約を併せて締結することなどは、真に利用者の意思に基づくものか疑義が残るため避けることが重要だとしています。事業者が利用者と死因贈与契約を締結すると、サービス提供に費用をかけないほど将来受け取る財産が増える利益相反的な立場になる点にも、注意を促しています。

契約書に「寄附」「遺贈」「死因贈与」「残金の帰属」という言葉があれば、その条項だけを家族か地域包括支援センターに見せて、意味を確かめてから署名します。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

事業者が倒産したとき誰が引き継ぐか

身元保証会社との契約は、施設に入ってから亡くなるまで続きます。10年を超える付き合いになる場合もあります。

報告書によれば、事業開始年は平成26年から令和3年まで毎年10事業者以上あり、契約者数は10人未満の事業者が64事業者(33.7%)で最も多いという結果でした。小規模で、事業を続けている年数が短い事業者が多数を占めます。

ガイドラインは、事業継続のための対策として、災害等が生じた場合の事業継続計画と、事業を清算することになった場合の対応方針をあらかじめ定めておくことが望ましいとしています。相談窓口についても、利用者からの相談を一元的に対応できる窓口を設置し、連絡先をホームページに掲載して重要事項説明書にも記入しておくことが望ましいとしています。情報開示の項目には、事業者の基本情報(組織、人員体制等)と財務諸表に関する情報も挙がっています。

契約前に聞くのは、「事業を続けられなくなったとき、身元保証と預託金はどこへ引き継がれますか」の1問です。信託口座での管理、他の事業者や士業法人との引き継ぎの取り決め、財務諸表の公開があれば、答えは具体的に返ります。答えが返らない事業者は、続く年数を考えると不安が残ります。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

保証会社の費用をめぐるトラブルの型と防ぎ方

国民生活センターと総務省の資料をたどると、トラブルは契約時・履行時・解約時・死後の4つの場面に分かれます。この章では、場面ごとの型と防ぎ方を並べます。

  • 相談は契約時と解約時に集中している
  • 説明のないまま預託金と追加サービスを求められる
  • 約束されたサービスが提供されないまま費用が引かれる
  • 解約時の返金が説明なく精算される
  • 全財産を事業者に遺贈する遺言を書かされる
  • 契約前と契約後の相談先は188と地域包括支援センター

最初の1つで相談の全体像を見て、次の4つで型を見て、最後に相談先を確かめます。

相談は契約時と解約時に集中している

寄せられている相談は、契約のときと解約のときに集まっています。

国民生活センターは2019年5月30日に、身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルへの注意を公表しました。全国の消費生活センター等に寄せられた相談件数は、2013年度85件、2014年度99件、2015年度177件、2016年度127件、2017年度74件、2018年度101件と推移しています。

公表資料は、相談事例からみられる問題点として、「サービス内容や料金等を理解できていないまま契約している」「約束されたサービスが提供されないことがある」「解約時の返金をめぐってトラブルになることがある」の3つを挙げています。1つ目が契約のとき、2つ目が履行のとき、3つ目が解約のときにあたります。

件数そのものより、相談の中身が3つに集まっている点が手がかりになります。3つとも、契約前に書面で確かめておけば大半を避けられる型です。ここから、型ごとに見ていきます。

出典: 国民生活センター 身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意(2019年5月30日)

説明のないまま預託金と追加サービスを求められる

契約の場面で多いのは、費目の区分と預託金の用途の説明が抜けたまま話が進む型です。

国民生活センターが載せた相談事例は、60歳代の女性のものです。頼れる親族がいない中、身元保証サービスや亡くなった後の事務手続等を代行する事業者とサポート契約をしたところ、預託金を支払うよう求められました。契約内容などの詳細を理解できていなかったこともあり、さらに高額な預託金の支払いをためらっていたところ、担当者から「明日どうなるか分からない。一刻も早く預託金を支払うように」と急がされた、という内容です。ほかにも「事業者に勧められるままにサービスを追加して思ったより高額な契約になった」「契約するつもりのなかったサービスも含まれていた」という相談が寄せられています。

ガイドラインが重要事項の書面交付を求めているのは、この型を止めるためです。

防ぎ方は2つあります。1つは、預託金について「何に使うお金か」「引かれた明細はいつもらえるか」「残りは誰へ返るか」を、その場で紙に書いてもらうこと。もう1つは、追加のサービスを勧められたらその日は持ち帰り、老人ホームの相談員かケアマネジャーに「施設として要る役割か」を確かめてから返事をすることです。施設が求めていない役割は、契約から外せます。

出典: 国民生活センター 身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意(2019年5月30日)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

約束されたサービスが提供されないまま費用が引かれる

履行の場面では、サービスが来ているかどうかを本人も家族も確かめられないまま、預託金や月額費だけが減っていきます。

国民生活センターの相談には、「約束されたサービスが提供されないので事業者に解約を申し出たところ、説明のないまま精算された」というものがあります。総務省の報告書にも、事業者との契約を解約したうえで成年後見制度の利用に至った例や、業務エリア外へ転居したため契約を解約された例が載っています。

ガイドラインは、重要事項として「契約者に対して提供するサービスの履行状況を確認する方法」を説明することを挙げ、情報開示の項目にも同じ内容を置いています。消費者庁が別紙として出したチェックリストにも、サービス提供の時期・内容・費用等について適時に記録を作成し保存していること、利用者が求めた際にサービスの実施状況を報告していること(民法645条)が項目として並びます。

防ぎ方は、契約書に「いつ、誰が、どの形で履行を報告するか」を入れてもらうことです。訪問や付き添いのたびに記録を残す、預託金から引いた明細を年1回、本人と指定した家族へ送る、といった形になります。老人ホームに入っている場合は、施設の相談員に「保証会社の担当者はどのくらい来ていますか」と聞くだけでも、履行の様子が分かります。

出典: 国民生活センター 身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意(2019年5月30日)

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 消費者庁 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン【別紙】チェックリスト

解約時の返金が説明なく精算される

解約の場面で起きるのは、返金の額と計算の根拠が示されないまま精算される型です。

「契約内容がよく分からず高額なので解約したい」という相談は、国民生活センターの資料にそのまま載っています。総務省の調査では、死後事務の契約の35.1%に解約条項がなく、任意に解約を申し出ることができる旨の規定があるのは42.0%でした。

ガイドラインは、解約料について消費者契約法9条1項1号により平均的な損害の額を超える部分が無効になること、事業者は消費者から説明を求められた場合に算定根拠の概要を説明する努力義務を負うことを示しています。ここでいう算定根拠の概要とは、違約金等を設定するに当たって考慮した事項、当該事項を考慮した理由、使用した算定式、金額が適正と考えた根拠など、違約金等を設定した合理的な理由を意味するものと考えられる、とされています。「入会金は一切返しません」「預託金は全額精算済みです」と言われたときに、この根拠を書面で求められます。

防ぎ方は、契約前に解約条項を読み、「契約から1年後に解約したら、いくら返りますか」を数字で書いてもらうことです。解約後の精算に納得できないときは、消費生活センターへ相談します。

出典: 国民生活センター 身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意(2019年5月30日)

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

全財産を事業者に遺贈する遺言を書かされる

死後の場面でいちばん重いのは、遺言の内容が本人の意思と食い違う型です。

総務省の報告書は、地方公共団体等への調査から、寄附・遺贈が本人の自由な意思に基づかないものであると考えられる例を3件挙げています。

総務省の報告書に載った3つの事例

1件目は、特定の親族に遺産を相続させたいという意思があった高齢者について、その高齢者が入所する施設から「事業者の手配により作成された遺言書を公証役場にて確認したところ、遺産は全て事業者に遺贈する記載になっていた」と相談があった例です。市区町村が弁護士に相談し、弁護士が事業者へ修正を伝えたものの、修正後も全財産を事業者に遺贈する記載のままでした。その後、高齢者の判断能力が不十分になってきたため、弁護士が成年後見人(補助人)を付け、事業者との契約を解除するとともに、本人の意思に沿った内容の遺言に修正しました。

2件目は、利用者が事業者と財産管理に関する契約を締結した際に、事業者から言われるがままに、死亡後は全財産を事業者に遺贈するという内容の遺言書を作成させられたという相談です。地域包括支援センターが本人の意思を確認したところ、親族に遺産を相続させたいという意向でした。市区町村が弁護士に相談して遺言書を作り直し、成年後見の申立ても行いました。

3件目は、高齢者が入所する施設に、その高齢者の財産を全額寄附するよう求める内容の手紙が事業者から届いた例です。施設が不審に思って弁護士に相談し、調べたところ、すでに作成されていた遺言書が、最終的に事業者が財産を受け取る内容になっていました。弁護士が遺言書を修正し、事業者との契約も解除しました。

3件に共通するのは、判断能力が落ち始めた時期に、事業者が遺言や財産管理の契約へ関わっている点です。そして3件とも、施設や地域包括支援センターが気づき、市区町村が弁護士へつないで解決しています。

防ぎ方は2つです。遺言書は事業者を介さず、本人と公証人だけで作ること。そして、遺言や財産管理の書類に事業者の名前が出てきたら、署名の前に地域包括支援センターか弁護士へ見せることです。ガイドラインも、事業者が利用者から遺贈先の相談を受ける場合は、遺贈先として当該事業者のみを示すのではなく、他の遺贈先を選択肢として示すことが望ましいとしています。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

契約前と契約後の相談先は188と地域包括支援センター

相談先は、契約そのものの相談と、契約の前段階の相談で分かれます。

  • 消費者ホットライン「188」: 最寄りの消費生活センターにつながる。契約内容・解約・返金など、事業者との契約そのものの相談
  • 地域包括支援センター: 市区町村が設置する高齢者の相談窓口(介護保険法115条の46)。保証会社が要るかどうか、施設との調整など、契約の前段階の相談

国民生活センターは、消費者へのアドバイスとして「自分の希望をしっかりと伝え、サービス内容や料金等をよく確認しましょう」「預託金等の用途や解約時の返金に関する条件について予め確認しておきましょう」「契約内容を周囲の人にも理解してもらうよう心がけましょう」「契約や解約に際しトラブルになった場合にはすぐに最寄りの消費生活センター等に相談しましょう」の4つを挙げています。3つ目の「周囲の人にも理解してもらう」は、契約の場に第三者を入れることと同じ意味を持ちます。

介護保険法115条の46は、地域包括支援センターを、包括的支援事業などを実施し「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設」と定めています。契約の前に一言伝えておくと、あとで様子が変わったときに気づいてもらえる関係ができます。

出典: 国民生活センター 身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意(2019年5月30日)

出典: e-Gov 介護保険法

保証会社の選び方と費用を抑える方法

ここまでの内容を、選ぶときの物差しと、払う額を減らす手順にまとめます。この章では、次の順に見ていきます。

  • ガイドラインの適合と情報開示の有無で絞る
  • 法人の形と継続年数と契約者数を見る
  • 契約の場に地域包括支援センターかケアマネジャーを立ち会わせる
  • 施設が要る役割だけを契約して費用を抑える
  • 社協の事業と新しい公的な支援を先に確かめる

はじめの3つが選ぶ物差し、あとの2つが払う額を減らす手順です。

ガイドラインの適合と情報開示の有無で絞る

最初の物差しは、政府のガイドラインに沿って情報を公開しているかどうかです。

「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」は2024年6月に、内閣官房、内閣府、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、国土交通省の連名で作られました。ガイドラインは、事業者がホームページ等で公表することが考えられる事項として、基本情報(組織、人員体制等)と財務諸表に関する情報、提供しているサービス内容や費用、費用の支払方法、サービスを利用できない者、提供しているサービスの履行状況を確認する方法、契約変更や解約の事由・手続等、契約変更や解約時の返金に関する取扱い、預託金の管理方法等、寄附や遺贈に関する取扱方針、個人情報の取扱方針と管理体制、相談対応体制・連絡先の11項目を挙げています。

消費者庁は、ガイドラインの別紙として30項目のチェックリストを公表しています。項目には「◎:法令に根拠があるもの」の印が付き、解約料について適正な金額が設定されていること(消費者契約法9条1項1号)、不当な方法による勧誘を行っていないこと(同法4条)、利用者が求めた際にサービスの実施状況を報告していること(民法645条)などが並びます。候補の事業者のホームページをこの一覧で照らすと、開示のない項目がそのまま見えます。

報告書が数えた開示の割合は、サービスごとの費用が48.3%、寄附・遺贈の方針が26.4%です。ガイドラインは法的な拘束力を持つ規則というより指針ですが、沿って開示しているかどうかの差は、契約後の対応の差につながります。開示のない項目は同じ形で書面を求め、出てこない場合は候補から外します。

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

出典: 消費者庁 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン【別紙】チェックリスト

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

法人の形と継続年数と契約者数を見る

法人の形そのものより、続けてきた年数と契約者の数が、事業が続く見込みを教えてくれます。

総務省が調べた204事業者の法人形態は、一般社団法人が95事業者(46.6%)で最も多く、NPO法人が61事業者(29.9%)、株式会社が38事業者(18.6%)と続きます。事業開始年は平成26年から令和3年まで毎年10事業者以上あり、契約者数は10人未満が64事業者(33.7%)、10〜49人が57事業者(30.0%)でした。

寄附・遺贈を受け取る方針の事業者は法人の形にかかわらず7割以上に及ぶので、一般社団法人でもNPO法人でも株式会社でも、寄附・遺贈の方針は同じように確かめます。そのうえで、預託金をどの口座で管理しているかを聞きます。法人の形は、優劣というより「どこを確かめるか」を決める手がかりです。

聞く順番としては、続けてきた年数、契約者の数、信託会社や士業法人との連携の3つが先に来ます。契約者が数人の事業者では、代表者に何かあったときにサービスが止まります。この3つは電話で答えられる範囲なので、最初の問い合わせで聞けます。

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

契約の場に地域包括支援センターかケアマネジャーを立ち会わせる

契約の場に第三者が入るだけで、事業者側の説明が変わります。

ガイドラインは、契約に際して重要な事項を説明する際、利用者本人との面談等を通じ、利用者の年齢、心身の状態、知識及び経験を踏まえた丁寧な説明を行うことを求めています。そのうえで、判断能力の低下が懸念される高齢者を主な対象としていること等を踏まえ、契約の効力についての争いを未然に防止する観点から「契約締結時に第三者(医療・介護関係者、利用者の親族等)の立会いを求めることが考えられる」としています。

第三者が同席すると、費目の区分、預託金の返し先、解約料の計算、寄附の方針といった項目を、その場で聞きやすくなります。本人が一人で聞くと「そういうものです」で流れがちな説明も、ケアマネジャーが「施設はそこまで求めていません」と言えば、契約の範囲が縮みます。

立ち会いを頼む相手は、老人ホームの相談員、担当のケアマネジャー、地域包括支援センターの職員のいずれかです。遠方の家族が電話やビデオ通話で同席する形でも通ります。ガイドラインが第三者の立会いを挙げている以上、「本人だけで来ていただきたい」と言う事業者は、その時点で候補から外す判断で足ります。

出典: 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)

施設が要る役割だけを契約して費用を抑える

費用を抑える一番の方法は、老人ホームが実際に求めている役割だけを契約することです。

有料老人ホーム設置運営標準指導指針が身元引受人について定めているのは、入居者と身元引受人等の氏名と連絡先を記載した名簿の整備、入居者の生活で必要な場合の連絡等の措置、要介護者等についての生活と健康の状況とサービスの提供状況の定期的な報告、設置者が入居者の金銭等を管理するときの承諾の4つです。あわせて指針は、入居契約書に身元引受人の権利・義務が明示されていることを求めています。施設が何を求めているのかは、契約書と重要事項説明書に書いてあります。

そこで、施設の申込書か重要事項説明書で身元引受人に求める役割を確かめ、次のように組み合わせます。

  • 緊急連絡先: 総務省の例には1件3,000円の事業者がある。連帯保証を含まないプランで足りる
  • 支払いの担保: 口座引落と数か月分の前払いを施設へ提案する
  • 退去時の引き取りと死後事務: 死後事務委任契約だけを結ぶ手もある。公正証書の費用は総務省の例で10万円と13.2万円

役割を絞って契約した例

遠方に住む娘が、父親の有料老人ホームの申込みで「身元引受人」を求められた場面です。施設に役割を聞くと「緊急連絡先と、退去時の荷物の引き取りと、利用料が止まったときの連絡先」でした。そこで、緊急連絡先は娘自身が引き受け、利用料は父親の口座からの引落にして3か月分を前払いし、退去時と死後の手続きだけを、連帯保証を含まないプランで契約しました。総務省の料金表に当てはめると、一括で契約する形はB事業者の例で約92万円に死後事務の預託金が加わり、絞った形は緊急連絡先1件3,000円と公正証書の実費10万円から13.2万円の範囲に収まります。金額は組み合わせの一例で、実額は施設の条件と事業者の料金表で変わります。

施設が連帯保証人としての署名を条件にしているなら、連帯保証の上限額を施設に文書で決めてもらい、その額に見合う身元保証料の事業者を選びます。上限が決まっていない連帯保証は、事業者が引き受ける損失の幅も定まらないため、上限を決めてから見積もりを取るほうが金額を比べやすくなります。

出典: 厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針

出典: 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)

社協の事業と新しい公的な支援を先に確かめる

保証会社に払う前に公的な受け皿を確かめると、契約する範囲が縮みます。

社会福祉協議会の日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助、日常的な金銭管理、書類等の預かりを行う事業です。厚生労働省のページによれば、実施主体が設定している訪問1回あたりの利用料は平均1,200円で、契約締結前の初期相談等に係る経費と生活保護受給世帯の利用料は無料です。保証会社の「財産管理1.65万円/月」に当たる部分を、この事業で置き換えられる場合があります。

さらに、2026年6月25日に「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)が公布されました。頼れる身寄りがいない高齢者等に対する日常生活・入院等の手続・死後事務の支援を行う事業を第二種社会福祉事業として定め、あわせて相談体制等の整備を図るものです。施行は令和9年4月1日が原則で、この事業に関する部分は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

もとになった社会保障審議会福祉部会の報告書(令和7年12月18日)は、事業の中身を①日常生活支援、②入院・入所等の手続支援、③死後事務の支援とし、実施主体に制限を設けないうえで、都道府県社会福祉協議会と指定都市社会福祉協議会は必要な事業を実施するものとすることが適当だとしています。第二種社会福祉事業は届出による事業なので、実施主体は都道府県知事へ届け出て事業を始めます。利用料は原則として利用者負担で、無料または低額で利用できる要件に該当する人には利用料を減免する考え方です。

今すぐ施設に入る人は、契約する範囲を「施設が今求める役割」に絞り、残りは施行の時期を見て決めると、払いすぎを防げます。市区町村の高齢福祉の担当課か社会福祉協議会に、新しい事業の準備の状況を聞いておきます。

出典: 厚生労働省 日常生活自立支援事業

出典: 厚生労働省 第221回国会(令和8年特別会)提出法律案 社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要

出典: 衆議院 社会福祉法等の一部を改正する法律案 議案審議経過情報

出典: 厚生労働省 社会保障審議会福祉部会報告書(令和7年12月18日)

まとめ:保証会社に払うのは施設が求める役割の分だけ

いちばん重いのは、総務省が示した約92万円から190万円という金額が、身元保証だけの値段ではないという点です。中身は入会金、身元保証料、預託金、年会費、都度払いの5つの層で、老人ホームが求めているのは主に身元保証料の層です。B事業者の約92万円が基本契約料金46.2万円と公正証書遺言作成13.2万円と身元保証料金33万円の合計で、しかも死後事務の費用を含まないように、同じ「合計」でも含んでいる中身は事業者ごとに違います。

次の一歩は、事業者へ問い合わせる前に、施設の申込書か重要事項説明書で身元引受人に求める役割を確かめることです。有料老人ホームの指導指針は、入居契約書に身元引受人の権利・義務が明示されていることを求めているので、施設に聞けば書面で出ます。ここを飛ばして事業者の料金表から見ると、施設が求めていない連帯保証や死後事務までまとめて含んだプランを、比べる物差しのないまま契約することになります。

役割が決まったら、見積もりを「一括払いの額」「毎年かかる額」「頼むたびにかかる額」「公正証書などの実費」の4つに分け、預託金の管理口座、残金の返し先、解約料の計算式の3点を書面で確かめます。あわせて、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業と、2026年6月に公布された社会福祉法等の改正で第二種社会福祉事業となる支援の準備の状況を、市区町村へ聞いておきます。介護のあんしんでは、身元保証会社の費用と契約も含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。