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夫が要介護3、妻は要支援1。この差があると、二人で同じ施設に入るのは難しいと感じます。
壁になるのは介護度の差そのものより、施設の種別ごとに決まった入居要件と、軽い方の配偶者をどう扱うかです。要介護の人だけを受け入れる介護専用型の介護付き有料老人ホームでも、配偶者は要介護認定を受けていなくても入居できると法律が定めています。
種別ごとの入居要件、介護付きと住宅型の選び分け、部屋の取り方、二人分の費用、探す順番、入居後の備えを順にまとめます。
介護度が違っても、夫婦で同じ施設に入れます。
壁になるのは介護度の差そのものより、施設の種別ごとに決まっている入居要件と、軽い方の配偶者をどう扱うかの2点です。種別ごとに見ていくと、候補に残る施設と早めに外す施設が分かれます。
| 施設の種別 | 軽い方が自立 | 軽い方が要支援 | 軽い方が要介護1・2 |
|---|---|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム(混合型) | 入居できる | 入居できる | 入居できる |
| 介護付き有料老人ホーム(介護専用型) | 配偶者として入居できる | 配偶者として入居できる | 入居できる |
| 住宅型有料老人ホーム・サ高住 | 施設ごとの入居要件による | 施設ごとの入居要件による | 施設ごとの入居要件による |
| 特別養護老人ホーム | 対象の外 | 対象の外 | 特例入所の枠 |
| グループホーム | 対象の外 | 要支援2で認知症の診断があれば介護予防の対象 | 認知症の診断があれば対象 |
表の上3行が夫婦で同じ施設の候補、下2行が早めに外す種別です。
介護付き有料老人ホームには、要介護の人だけを受け入れる「介護専用型」と、自立や要支援の人も受け入れる「混合型」があります。混合型なら夫婦の介護度が違っても、二人ともそのまま入居の対象です。
見落とされやすいのは介護専用型です。介護保険法第8条第21項は、介護専用型特定施設を「その入居者が要介護者、その配偶者その他厚生労働省令で定める者に限られるもの」と定めています。省令にあたる介護保険法施行規則第17条の6は、入居の際に要介護者だった人、入居者である要介護者の三親等以内の親族などを挙げています。要介護の夫と、要介護認定を受けていない妻が介護専用型に夫婦で入ることは、法律の上で認められています。
施設の窓口で「要介護1以上の方が対象です」と言われたら、それは施設の方針です。法律が引いた線とは別なので、「配偶者としての入居は受けていますか」と一歩踏み込んで聞く価値があります。
その施設が自立や要支援の人を受け入れているかは、重要事項説明書の「(入居に関する要件)入居対象となる者」欄で分かります。この欄は「自立している者」「要支援の者」「要介護の者」のそれぞれについて、あり・なしを表示する様式です。介護付きか住宅型かの別は「(類型)」欄に載ります。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条・e-Gov法令検索 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第17条の6・厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、入居要件を施設ごとに決めています。自立の人だけを受ける施設もあれば、自立から要介護5まで幅広く受ける施設もあり、夫婦の介護度が離れていても候補に入れやすい種別です。
介護は、施設の職員が行う形ではなく、訪問介護やデイサービスなど外部の事業者と一人ずつ契約して受けます。在宅介護と同じ仕組みなので、夫は毎日の訪問介護、妻は週2回のデイサービスというように、二人の介護度に合わせて別々の計画を組めます。
ただし、外部サービスには介護保険で使える月の上限があります。介護保険法第43条が居宅サービス等の区分支給限度基準額を定めており、これを超えた分は全額自己負担です。夜間の見守りをどこまで施設が担うかも施設ごとに違います。
軽費老人ホームであるケアハウスも、介護保険法施行規則第15条により特定施設の指定を受けられる施設です。入所の対象は60歳以上ですが、その配偶者と三親等内の親族は年齢の要件から外れる定めがあり、夫婦で入る道が開いています。一方で、ケアハウスで日常生活を営むのが難しくなったと認められた入所者には、状態に合うサービスの情報提供と援助に努めるという定めもあるため、介護が重くなったときの行き先を先に確かめておくと安心です。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法第43条・e-Gov法令検索 介護保険法施行規則第15条・e-Gov法令検索 軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準(平成20年厚生労働省令第107号)第13条・第14条
特別養護老人ホームは、入所する要介護者を厚生労働省令で定める要介護状態区分に該当する人などに限っています。介護保険法第8条第22項の括弧書きがそう定め、その括弧書きは同条第27項にも及びます。介護保険法施行規則第17条の9が指すのは要介護3から要介護5で、要介護1・2の人は、居宅で日常生活を営むのが難しいやむを得ない事由がある場合の特例入所の枠です。厚生労働省の通知は、この扱いが平成27年4月1日以降のものだと示しています。自立や要支援の配偶者は対象の外なので、「二人で特養」は制度の上で成り立ちにくい組み合わせです。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、介護保険法第8条第20項が「要介護者であって認知症であるもの」を対象と定めています。地域密着型サービスなので、市町村長が指定し、その市町村が行う介護保険の被保険者への給付として効力を持ちます。要支援2の人は介護予防認知症対応型共同生活介護が受け皿です。認知症の診断がない配偶者は対象の外で、こちらも夫婦同時の候補にはなりにくい種別です。
特別養護老人ホームは入所を待つ人も多く、厚生労働省が毎年その状況をまとめています。2025年4月1日時点の集計では、要介護3以上の入所申込者が20.6万人、要介護1・2が1.8万人でした。夫婦で同じ施設に入ることを優先するなら、この2種別は早い段階で候補から外し、介護付き・住宅型・サ高住の3種別に絞って探すほうが近道です。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法第8条・第42条の2・e-Gov法令検索 介護保険法施行規則第17条の9・第17条の10・厚生労働省 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日老高発1212第1号)・厚生労働省 特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)
介護付きか住宅型かは、二人の介護度の組み合わせで答えが変わります。
判断の軸は3つです。重い方の介護度、軽い方の介護度、そして重い方の将来。順番に当てていくと、夫婦に合う種別が見えてきます。
介護付き有料老人ホームの介護費は、特定施設入居者生活介護として要介護度ごとに1日あたりの単位数が決まっている定額です。要介護3の人は、その日に介護を何回受けても1日の介護費は同じです。介護量が増えても月額の介護費は変わらず、家計の見通しが立ちます。
住宅型は外部サービスを使った分だけ払います。要介護3以上になると、毎日の排せつ介助や夜間の対応など使う量が増え、区分支給限度基準額に近づきます。上限を超えた分は全額自己負担になるため、月額の見通しが立ちにくくなります。
重い方が要介護3以上なら、介護付きの定額の方が費用の見通しが立ちやすい組み合わせです。重い方が要介護1・2で使うサービスが少ないうちは、住宅型の「使った分だけ」の方が安く収まることもあります。
出典: 厚生労働省 介護報酬の算定構造(令和6年4月)・e-Gov法令検索 介護保険法第43条
軽い方が自立の場合、どちらの種別でも介護保険サービスを使わないので自己負担はゼロです。ただし介護付きでは、施設が独自に定める費用が別に必要になる場合があります。費目は重要事項説明書の「(利用料金の算定根拠)」欄に、家賃・敷金・介護費用・管理費・食費・光熱水費などと並んで載ります。
軽い方が要支援1・2の場合、混合型の介護付きでは介護予防特定施設入居者生活介護として要支援度別の定額を払います。この介護予防特定施設入居者生活介護は、介護保険法第8条第9項が介護専用型特定施設を除く特定施設のサービスと定めているため、介護専用型に配偶者として入った要支援の人は、この定額の対象から外れます。住宅型なら、使った分だけの介護予防サービス費で済み、使わずに済んだ月はゼロです。
軽い方の費用だけを見れば、住宅型の方が負担は軽くなります。ただし、これは軽い方に合わせた見方です。重い方の将来をどう支えるかを確かめてから、二人の合計で判断します。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法第8条第9項・厚生労働省 介護報酬の算定構造(令和6年4月)・厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)
介護付きと住宅型の判断で最後に残るのは、重い方の介護度が今より上がったときに、同じ施設で暮らし続けられるかです。介護付きは職員が施設内で介護を行うため、要介護5になっても同じ居室で介護を受け続ける形が基本です。
住宅型は外部サービスの上限と夜間対応の壁があります。重度化して上限を超えた分が自費になったり、夜間の介護が施設の対応範囲を超えたりすると、契約解除の条件に触れる可能性があります。厚生労働省の指導指針は、契約解除の条件を信頼関係を著しく害する場合に限るなど、入居者の権利を不当に狭めるものにしないよう求めていますが、条件そのものは施設ごとに置かれます。重い方だけが別の施設へ移ることになれば、「夫婦で同じ施設」の目的が崩れます。
ここにトレードオフがあります。軽い方に合わせて住宅型を選ぶと重い方の将来に不安が残り、重い方に合わせて介護付きを選ぶと軽い方が介護費を多めに払う形になります。夫婦で同じ施設に長く暮らすことを優先するなら、重い方の将来を基準に介護付きを選ぶ判断が一つの軸になります。
住宅型とサ高住で介護と夜間の体制がどう違うかは、サ高住と住宅型有料老人ホームの違いは?介護と夜間の体制を解説の記事に書いています。
部屋の取り方は、二人部屋か、個室を2室契約するかの二択です。
月額の安さで決めたくなりますが、見るべきは「介護度の差が広がったときに住み替えずに済むか」と「軽い方の介護負担が本当に減るか」の2点です。
二人部屋は、個室を2室契約するより月額が安くなる施設があります。居室料が1室分で済み、水道光熱費もまとまるためです。自宅と同じように同じ部屋で暮らせる安心感もあります。
一方で、二人部屋を用意しているかどうかは施設ごとに違います。重要事項説明書の「居室の状況」欄には「全室個室」か「相部屋あり」かの区分と、最少何人部屋・最大何人部屋か、居室タイプごとの面積と室数が表示されます。二人部屋の有無と室数は、この欄で確かめられます。
介護度の差が大きいときに二人部屋を受けるかどうかも、施設の判断です。一方に認知症があり夜間に起き出す、夜間の介助が頻回で職員の出入りが多い、といった場合に、もう一方の生活をどう守るかを施設が考えます。二人部屋を希望するなら、この点を最初に相談します。
個室を2室契約する方法は、介護度が違う夫婦にとって住み替えを避けやすい取り方です。入居した当初は一方をリビング、もう一方を寝室のように使い、夫婦で過ごす時間を保てます。重い方の介護が増えてきたら、それぞれの居室で寝る形に切り替えるだけで済み、引っ越しも新たな契約も不要です。
一方が亡くなったり入院したりした場合も、残った方は自分の居室でそのまま暮らせます。二人部屋のように個室へ移る手続きや費用が発生しにくいのが強みです。
弱点は2つあります。空きが同時に2室、できれば隣室か同じフロアに必要なことと、二人部屋より月額が高くなる施設があることです。見学のときに隣り合う個室の空き予定を聞き、二人合計の月額を二人部屋と並べて比べます。
同じ部屋で暮らすと、元気な方が夜中に起きて排せつを手伝い、食事の介助をし、転びそうになれば支えます。自宅で続けてきた介護がそのまま施設の中で続き、施設に入った目的である「介護を職員に任せて休む」形が崩れます。
同室で起こり得る流れ(仮の例)
要介護3の夫と自立の妻が二人部屋に入居する。夜中に夫がトイレへ行くたび妻が起きて付き添い、職員を呼ぶ前に自分で済ませてしまう。職員は「奥様がいらっしゃるので」と夜間の巡回を控えめにし、3か月後に妻が体調を崩して受診する。自宅での老々介護が、そのまま施設の中で続いていた。
これを避けるには、個室2室で「食事とレクリエーションは一緒、夜は別の部屋で職員に任せる」と決めておく形が合います。二人部屋を選ぶ場合も、「夜間の介助は職員が行い、配偶者は職員に任せる」と入居前に施設と話し合い、ケアプランに書き込んでもらうことで、老々介護に戻る流れを止められます。
夫婦で入居する費用は、居室料・管理費・食費・水道光熱費に、一人ずつの介護保険の自己負担と前払金(入居一時金)が乗ります。
このうち介護度の差で変わるのは「介護保険の自己負担」と「居室の形」の2か所です。合わせて、夫婦だからこそ戻ってくる制度も押さえます。
介護保険の自己負担は、夫婦であっても一人ずつ、その人の要介護度で計算されます。介護付き有料老人ホームでは、特定施設入居者生活介護として要介護度別に1日あたりの単位数が決まっており、それに日数を掛けた額の1割(所得によって2割・3割)を払います。
要介護1と要介護5では1日の単位数が違います。1単位10円の地域で30日、自己負担1割という仮の条件で計算すると、二つの差はおよそ8千円になります。単位の単価は地域で変わり、加算も乗るため、実額は施設の料金表で確かめます。
要支援1・2の配偶者は、混合型の介護付きなら介護予防特定施設入居者生活介護として要支援度別の定額です。自立の配偶者は介護保険サービスを使わないので自己負担はゼロです。住宅型では、訪問介護やデイサービスを使った分だけの自己負担を一人ずつ払います。
費用を見積もるときは、二人分の介護費をそれぞれの介護度で出し、居室料や食費と合算します。重要事項説明書の「(利用料金のプラン)」欄は代表的なプランを2例まで示す様式で、そこに並ぶのは一人分の月額です。二人合計で並べ直します。
出典: 厚生労働省 介護報酬の算定構造(令和6年4月)・厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)
二人部屋は個室2室より安いと思われがちですが、差の向きは施設によって変わります。居室料の設定次第で、二人部屋がはっきり安い施設もあれば、差がわずかな施設もあります。
費目のうち、どれが一人ずつかかり、どれが居室ごとにかかるかは、重要事項説明書の「(利用料金の算定根拠)」欄で分かります。この欄には家賃・敷金・介護費用・管理費・食費・光熱水費などの費目と、その算定根拠が並びます。
比較するときは「二人部屋の合計月額」と「個室2室の合計月額」を同じ施設の料金表で並べ、差額を出します。その差額で「介護度が変わっても住み替えずに済む」「一方が亡くなっても部屋を移らずに済む」という個室2室の利点を買えるかどうかで判断します。安さだけで二人部屋を選び、後から個室へ移る費用を払う形になると、差額は簡単に消えます。
前払金(入居一時金)がある施設では、二人で入居する場合の額が施設ごとに違います。二人部屋の1室分に二人目の額が乗る形か、個室2室分かで総額が変わるので、見積もりの段階で内訳を出してもらいます。
老人福祉法第29条第9項は、前払金の算定の基礎を書面で示すことと、返還債務に備えた保全措置を設置者に義務づけています。同条第10項は、入居した日から一定の期間内に契約が解除されたり、入居者の死亡により終了したりした場合に、前払金から所定の方法で算定した額を控除した額を返還する契約を結ぶよう定めています。老人福祉法施行規則第21条は、この期間を、入居後3か月までと、前払金の算定の基礎とした想定居住期間までの2つに分けています。
重要事項説明書の「(前払金の受領)」欄には、想定居住期間(償却年月数)、償却の開始日、初期償却額と初期償却率、返還金の算定方法、前払金の保全先が並びます。夫婦で入居する場合は、この償却が一人ずつ進むのか、契約単位で進むのかを合わせて確かめます。
支払い方法は、月払い方式、前払い方式、これらを組み合わせた方式など複数あります。想定する居住期間で総額を計算し、方式ごとに並べて比べます。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条・e-Gov法令検索 老人福祉法施行規則(昭和38年厚生省令第28号)第21条・厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針・厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)
夫婦で同じ施設に入り、二人とも介護保険のサービスを使うと、月の自己負担の合計が大きくなります。ここで使えるのが高額介護サービス費です。介護保険法施行令第22条の2の2は、同じ世帯に属する要介護被保険者などが同じ月に受けたサービスの自己負担を合算し、44,400円を超えた分を支給すると定めています。
この44,400円は、世帯の所得によって置き換わります。世帯の第1号被保険者に課税所得690万円以上の人がいれば140,100円、380万円以上690万円未満なら93,000円、市町村民税世帯非課税なら24,600円、老齢福祉年金の受給者などは15,000円です。夫婦がそれぞれ要介護3・要介護1で介護付きに入居している場合、二人の自己負担の合計がこの上限を超えれば、超えた分が戻ります。申請の窓口は市区町村なので、手続きの形は住んでいる市区町村で確かめます。
一方、食費・居住費を軽くする負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)は、介護保険法第51条の3が対象を6つのサービスに限っています。指定介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス、介護医療院サービス、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護の6つです。有料老人ホームやサ高住は対象の外なので、この制度を前提に費用を組むのは避けます。
費用を下げる制度をまとめて見たい場合は、老人ホームの費用が払えない?負担を下げる制度と確かめ方を解説の記事に書いています。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第22条の2の2・e-Gov法令検索 介護保険法第51条の3
探す順番は「重い方で種別を絞る」「部屋の形を広げる」「書面で照合する」です。
軽い方に合わせて探し始めると候補が広がりすぎ、重い方の将来に合わない施設に時間を使うことになります。
最初に決めるのは施設の種別で、基準にするのは重い方です。重い方の要介護度が3以上なら介護付き、1・2で当面の介護量が少ないなら住宅型やサ高住も候補、という軸で絞ります。
次に医療依存度を見ます。胃ろう、たんの吸引、インスリン注射、在宅酸素などがある場合、施設の看護職員の配置と夜間の対応によって受け入れの可否が分かれます。重要事項説明書の「(夜勤を行う看護・介護職員の人数)」欄には、夜勤帯の設定時間と、看護職員・介護職員それぞれの平均人数、休憩者等を除いた最少時人数が並びます。介護度の差を心配する前に、重い方の医療面で受け入れられる施設かを先に確かめると、無駄な見学が減ります。
種別が決まったら、軽い方について「配偶者としての入居は可能か」「自立または要支援の入居者にかかる費用は何か」を施設に聞きます。介護専用型でも配偶者は法律上入居できるので、施設の回答が「要介護1以上のみ」なら、配偶者としての入居の実績を重ねて聞きます。
二人部屋を条件にすると、候補は減ります。二人部屋を持つ施設が限られるためです。
探す条件を「二人部屋、または隣り合う個室2室の同時空き」に広げると、候補になる施設が増えます。施設に「ご夫婦で個室2室に入居している方はいますか」と聞くと、その施設が夫婦での入居に慣れているかどうかも分かります。
空きの確認では、今の空室に加えて、近く空く見込みの部屋も聞きます。一方が先に入居し、隣室が空いたら配偶者が入る形を施設が受けてくれるかどうかで、待ち方が変わります。
同じフロアの2室でも、居室のタイプが違えば面積も便所や浴室の有無も変わります。重要事項説明書の「居室の状況」欄はタイプごとに面積と戸数・室数を示す様式なので、二人で使う2室がどのタイプかを、空きの話と合わせて確かめます。
候補が数か所に絞れたら、重要事項説明書を取り寄せて読みます。老人福祉法第29条第7項は、有料老人ホームの設置者に、入居する人と入居しようとする人への情報開示を義務づけています。厚生労働省の指導指針は、この規定を受けて、重要事項説明書を書面で交付し、パンフレット・入居契約書・管理規程とあわせて公開し、求めに応じて交付するよう定めています。見学の前でも請求できます。同条第11項・第12項により、都道府県も設置者から報告された有料老人ホーム情報を公表しています。
夫婦で入る場合に読む欄は次の6つです。
| 読む欄 | 何を確かめるか |
|---|---|
| (類型) | 介護付き(一般型・外部サービス利用型)か住宅型か健康型か |
| (入居に関する要件)入居対象となる者 | 自立している者・要支援の者の受け入れがあるか |
| (利用料金の算定根拠) | 家賃・管理費・食費・光熱水費のどれが一人ずつかかるか |
| (前払金の受領) | 想定居住期間・初期償却率・返還金の算定方法・保全先 |
| (入居後に居室を住み替える場合) | 判断基準・手続き・追加的費用の有無・前払金償却の調整 |
| 契約解除の内容 | 事業主体から解約を求める場合の解約条項と解約予告期間 |
二人入居の料金は様式の欄に含まれないので、二人部屋と個室2室それぞれの合計月額を、施設に書面で出してもらいます。見学では「夫婦で入居している方の介護度の差はどのくらいか」「差が広がった夫婦にどう対応したか」を聞きます。施設の経験がそのまま、夫婦の将来の扱われ方になります。
重要事項説明書のどこを先に見るかは、介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所の記事に書いています。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法第29条・厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針・厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)
夫婦で同時に入居する形にこだわると、二人分の空きが揃うまで待つことになります。重い方の状態が待てないなら、重い方が先に入居し、軽い方は自宅から通う形で始める順番があります。
このとき施設に「配偶者の入居希望」を登録しておきます。隣室や二人部屋に空きが出たときに声をかけてもらえるかを確認し、可能なら書面に残します。
逆に、軽い方が先に入居し、重い方を在宅で支えながら待つ形は避けた方が無難です。重い方の介護を軽い方が一人で担う期間が延び、共倒れの危険が高まります。先に入るのは重い方、という順番で組みます。
入居後に起こる変化は3つです。重い方がさらに重くなる、一方が入院したり亡くなったりする、軽い方が要介護になる。
どれも契約前に「そのとき費用と部屋はどうなるか」を書面で確かめられます。
二人部屋で暮らしていた夫婦の重い方が重度化し、夜間の介助が頻回になると、施設から個室への移動を提案されることがあります。重要事項説明書の「(入居後に居室を住み替える場合)」欄には、一時介護室へ移る場合・介護居室へ移る場合の別と、判断基準の内容、手続きの内容、追加的費用の有無、居室利用権の取扱い、前払金償却の調整の有無が並びます。移る先で面積・便所・浴室・洗面所・台所がどう変わるかも、この欄で分かります。
介護付きなら、重度化しても同じ施設の中で介護を続けられるのが基本です。住宅型では、外部サービスの上限を超えた分が自費になり、夜間の対応が施設の範囲を超えると契約解除の条件に触れる可能性があります。重い方が住宅型から介護付きへ移ることになれば、夫婦は別の施設に分かれます。
厚生労働省の指導指針は、一定の要介護状態になった入居者が一般居室から介護居室へ住み替える契約や、介護居室の入居者の心身の状況に著しい変化があって居室を変更する契約について、一連の手続を入居契約書などに定めるよう求めています。見学での口頭の回答は、書面にしてもらいます。
出典: 厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)・厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針
夫婦のどちらかが長期入院したり亡くなったりすると、残された方の暮らしと費用が変わります。二人部屋の場合、一人で二人部屋を使い続ける料金がいくらか、個室へ移るよう求められるか、移るときの費用は誰が持つかが問題になります。重要事項説明書の「(利用料金の支払い方法)」欄には、入院等による不在時の月払い料金の扱いとして、減額なし、日割り計算で減額、一定の日数以上の不在に限り日割り計算で減額の3つが示されます。
前払金があれば、亡くなった方の分がどう返還されるかを確かめます。老人福祉法第29条第10項と同法施行規則第21条は、入居者の死亡により契約が終了した場合も返還の対象に含めています。入居後3か月までに終了した場合は、家賃等の月額を30で割った額に入居の日からの日数を掛けた額を控除し、想定居住期間の内に終了した場合は、終了した日以降の期間を日割りで計算した額を控除する方法です。償却が一人ずつ進むのか契約単位で進むのかで、返還額の計算が変わります。返還先が誰か(残された配偶者か、相続人か)も契約書に書かれています。
契約前に施設へ出してもらう1枚
「夫が亡くなった場合、妻がこの二人部屋に一人で住み続けたときの月額」と「個室へ移った場合の月額と移動にかかる費用」を、今の料金表と同じ形で書面にしてもらう。口頭の説明で済ませず、重要事項説明書と一緒に保管する。
二人部屋の安さで選んだ施設で、一人になった後に個室へ移る費用と高い月額が待っていた、という流れをこの1枚で防げます。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法第29条・e-Gov法令検索 老人福祉法施行規則第21条・厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)
軽い方が自立や要支援から要介護になると、介護費が増えます。混合型の介護付きなら、その日から特定施設入居者生活介護の要介護度別の自己負担が発生し、要支援のときの介護予防の定額から本体の給付の定額に切り替わります。住宅型なら、訪問介護やデイサービスの契約を新たに結び、使った分の自己負担が乗ります。
増え方を把握するには、契約前に「二人とも要介護3になった場合の合計月額」を施設に出してもらいます。介護付きなら料金表から計算でき、住宅型なら外部サービスの想定利用量で概算が出ます。
二人とも要介護になれば、高額介護サービス費の世帯合算で戻る額も増えます。増える費用と戻る制度を合わせて見ると、夫婦で同じ施設に暮らし続けるための月額が、入居前の段階で見通せます。
夫婦が同じ施設に入れるかどうかを決めるのは、介護度の差ではなく施設の種別ごとの入居要件です。要介護の人だけを受け入れる介護専用型でも、介護保険法は入居できる人に「要介護者、その配偶者その他厚生労働省令で定める者」を挙げています。施設の窓口で言われる「要介護1以上のみ」は施設の方針であって、法律が引いた線とは別です。
次の一歩は、候補の施設から重要事項説明書を取り寄せ、「(入居に関する要件)入居対象となる者」欄を見ることです。ここで自立と要支援の受け入れの有無が分かります。この1枚を飛ばして見学と口頭の確認だけで進めると、二人入居の料金、居室を住み替えるときの費用、前払金の返還の条件が入居後まで分からないまま契約することになります。
候補が数か所に絞れたら、二人部屋と個室2室の合計月額を同じ施設の料金表で並べて確かめましょう。介護のあんしんでは、夫婦で介護度が違うときの施設の選び方も含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。