※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

犬や猫と暮らしてきた人が施設を考え始めたとき、最初に出る言葉は「この子はどうなるの」です。
ペットと一緒に入れる老人ホームはあります。ただし、そこで問われるのは施設の種別だけではなく、飼い主が世話を続けられるか、そして続けられなくなったとき誰が引き受けるかまでです。
条件の3層、少ない理由の中心、費用の3層、電話で聞く3問、世話を続けられなくなったときの備え、見つからないときの形を順にまとめます。
ペットと一緒に入れる老人ホームはあります。
条件は「施設の種別」「ペット側」「飼い主側」の3層に分かれます。目に付きやすいのは上の2層ですが、申込みが止まりやすいのは飼い主側の2つです。
| 施設の種別 | 制度上の扱い | ペットとの同居 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院 | 介護保険法の介護保険施設 | 制度が想定の外に置いている |
| グループホーム | 認知症の要介護者が共同生活を営む住居 | 制度が想定の外に置いている |
| 介護付き有料老人ホーム | 老人福祉法の有料老人ホーム(特定施設の指定あり) | 施設の管理規程による |
| 住宅型有料老人ホーム | 老人福祉法の有料老人ホーム | 施設の管理規程による |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 高齢者住まい法の登録を受けた住まい | 管理規程や賃貸借契約による |
表の上2行が早めに候補の外へ置く種別、下3行が探す範囲です。
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院は、介護保険法第8条第25項が「介護保険施設」と定める3つです。いずれも施設サービス計画に基づく入浴・排せつ・食事等の介護、機能訓練、健康管理、療養上の世話を行う施設として制度が組み立てられており、入居者が自分のペットを連れて入る形は制度の想定の外にあります。グループホーム(認知症対応型共同生活介護)も、同条第20項が「要介護者であって認知症であるもの」の共同生活の住居として定めた仕組みで、同じく想定の外です。
一方、有料老人ホームは老人福祉法第29条第1項が都道府県知事への届出の対象と定める施設で、ペットの扱いは法令ではなく施設が定める管理規程の中にあります。厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針は、入居者の定員、利用料、サービスの内容及びその費用負担、介護を行う場合の基準などを明示した管理規程を設けるよう求めており、ペットの飼育の可否と条件もこの規程に書かれます。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条により都道府県知事の登録を受けた賃貸住宅または有料老人ホームで、こちらは賃貸借契約と管理規程がペットの扱いを決めます。
探す範囲は、はじめから有料老人ホームとサ高住に絞られます。特別養護老人ホームの待機に名前を載せながらペットと一緒に入れる施設を探す形は成り立ちにくいので、介護保険施設は早い段階で候補の外に置いて考えます。グループホームの入居条件そのものは、認知症のグループホームの入居条件は?費用と退去の決まりを解説の記事に書いています。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条・e-Gov法令検索 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条・e-Gov法令検索 高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)第5条・厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針
ペット可の施設でも、受け入れるペットの範囲は管理規程で決まります。規程に並びやすい欄は次の4つです。
このうち犬については、飼い主に法律が求めるものがあります。狂犬病予防法第4条は、犬を取得した日から30日以内に市町村長へ登録を申請し、交付された鑑札を犬に着けておくことを飼い主に義務づけています。同法第5条は、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせ、交付された注射済票を犬に着けておくことを義務づけています。施設が求める「予防接種の証明」は、この注射済票と接種の記録が中心になります。
マイクロチップは、動物の愛護及び管理に関する法律第39条の2により、犬猫等販売業者には装着が義務づけられ、それ以外の飼い主には努力義務として定められています。この仕組みは2022年6月1日から始まりました。自分の判断で装着した場合も、同法第39条の5により、装着の日から30日を経過する日までに環境大臣の登録を受けることになります。登録証明書を手元に置いておくと、施設への提出がすぐに済みます。
これに加えて、無駄吠えやトイレのしつけを面談や試し入居で確かめる施設もあります。条件は施設ごとに違うので、飼っているペットの種類・体重・接種の記録を先にそろえておくと、電話での確認が早く進みます。
出典: e-Gov法令検索 狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)第4条・第5条・e-Gov法令検索 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第39条の2・第39条の5・環境省 犬と猫のマイクロチップ情報登録について
見落とされやすいのが、飼い主側の条件です。散歩・排せつの処理・餌やりを誰が行うかは、管理規程と入居契約書で決まります。介護保険のサービスにペットの世話が入らないため、施設は「入居者本人が行う」ことを前提にするか、自費のサービスとして別に引き受けるかのどちらかを選びます。
この条件は入居のときだけ満たせばよいものとは違い、入居後も続きます。要介護度が上がって散歩に出られなくなる、排せつの処理が難しくなる、といった段階で「世話ができること」という前提から外れます。
入居3年目に起こり得る流れ(仮の例)
要支援1で小型犬と住宅型有料老人ホームに入居する。2年目に転倒して要介護2になり、散歩に出られなくなる。施設からは「散歩は職員の仕事の範囲の外なので、世話ができる方に預ける形をご検討ください」と言われ、離れて暮らす娘に犬を引き取ってもらうことになる。
入居の申込みでは、今の自分が世話できるかに加えて、3年後の自分が世話を続けられなくなったとき誰が代わるかまで聞かれると考えておきます。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法第8条第11項・e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第182条
ペット可の施設には、飼い主が入院したり亡くなったりしたときにペットを引き受ける人を、入居の前に決めて書面に残すよう求めるところがあります。身元引受人とは別に「ペットの引受人」を立てる形です。厚生労働省の指導指針は、入居契約書に身元引受人の権利・義務や契約当事者の追加を明示するよう求めており、ペットの引受人はこの欄とは別に、契約書の特約や管理規程で扱われます。
引受人は家族や親族が中心ですが、離れて暮らす子どもが犬を引き取れる家に住んでいるとは限らず、ここで申込みが止まる人が出ます。引受人の欄が空のままでは、条件のそろった施設が見つかっても契約に進みにくい状態が続きます。
引受人を家族以外で用意する方法もあります。施設を探し始める前に「もし自分が世話を続けられなくなったら誰に頼むか」を家族と話しておくと、そこから先の手続きが一気に進みます。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法第29条・厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針
ペット可の老人ホームが少ない理由として、アレルギーや衛生、鳴き声への配慮がよく挙げられます。
どれも実際の事情ですが、理由の中心は別にあります。飼い主が世話を続けられなくなった後を、施設が引き受けにくいという構造です。
老人ホームの職員や訪問介護のヘルパーがペットの世話をする場合、それは介護保険の給付の外にあるサービスです。厚生労働省の通知「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」は、訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に草むしりやペットの世話のサービスを提供する例を挙げ、保険外サービスとして事業の目的・運営方針・利用料を別に定め、契約と会計を分けるよう求めています。
訪問介護の中身を定めた通知(老計第10号)でも、生活援助は掃除・洗濯・調理などの日常生活の援助とされ、直接本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為は生活援助の内容に含まれないという注意書きがあります。
施設の職員についても同じです。介護保険法第8条第11項は、特定施設入居者生活介護を「入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの、機能訓練及び療養上の世話」と定めています。ペットの世話はこの範囲の外にあり、施設が引き受ける場合は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第182条第3項第1号が認める「利用者の選定により提供される介護その他の日常生活上の便宜に要する費用」として、介護保険の利用料とは別に費用を受け取る形になります。
つまり、施設が「職員がペットの世話をします」と言うなら、その人件費は施設の負担か、入居者が別に払う自費のサービスです。人手に余裕のない施設ほど、この負担を引き受けにくくなります。
だから施設は「本人が世話できる間だけ」という線を引きます。要介護度が上がる入居者を前提にした介護付き有料老人ホームほどこの線を保ちにくく、住宅型有料老人ホームとサ高住は入居者が自分で世話を続けられる期間が長いぶん、この線を保ちやすい形です。両者で介護と夜間の体制がどう違うかは、サ高住と住宅型有料老人ホームの違いは?介護と夜間の体制を解説の記事に書いています。
出典: 厚生労働省 介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて(平成30年9月28日)・厚生労働省 「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について(平成30年3月30日老振発0330第2号)・e-Gov法令検索 介護保険法第8条第11項・e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第182条
動物の愛護及び管理に関する法律第7条第4項は、動物の所有者に対し、飼養または保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限りその動物が命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)に努めるよう定めています。努力義務の形ですが、責任の宛先は飼い主のままで、施設へ移る仕組みはこの法律の外にあります。
飼い主が亡くなると、ペットは相続の対象になります。民法第85条は「物」を有体物と定め、第896条は相続人が相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています。施設はそのペットを自由に譲渡したり処分したりできる立場になく、施設で飼い続ける義務も負わないため、行き先の決まらないペットが施設内に残る状態が起こり得ます。
自治体の動物愛護センターへ持ち込む道も、法律が絞っています。同法第35条第1項は、都道府県等が犬猫の引取りを求められたときは引き取らなければならないと定める一方、ただし書で、終生飼養を定めた第7条第4項の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合には引取りを拒否できるとしています。その場合を並べた同法施行規則第21条の2には、犬または猫の老齢や疾病を理由に引取りを求められた場合、引取りを求める犬猫の飼養が困難とは認められない理由で求められた場合、あらかじめ譲渡先を見つけるための取組を行っていない場合などが挙がっています。「世話を続けられなくなったら保健所に」という道は、制度の上で細くなっています。
この責任の空白を避けるために、施設は入居前に引受人を確保することを条件にし、条件のそろわない申込みを断ることがあります。
出典: e-Gov法令検索 動物の愛護及び管理に関する法律第7条・第35条・e-Gov法令検索 動物の愛護及び管理に関する法律施行規則(平成18年環境省令第1号)第21条の2・e-Gov法令検索 民法(明治29年法律第89号)第85条・第896条
ペットを受け入れるには、建物側の準備も要ります。足洗い場、排せつ物の処理場所、爪の傷に耐える床材、鳴き声を抑える防音、換気。既存の建物に後から加えるのは難しく、設計の段階で織り込んだ施設が中心になります。
他の入居者への配慮も、部屋の数を絞る理由になります。動物アレルギーのある入居者や、鳴き声や匂いに敏感な入居者と同じフロアには置きにくいため、ペット可の居室を1階だけ、専用フロアだけ、と限っている施設があります。
その結果、ペット可の施設でも実際にペットと暮らせる部屋は限られ、空きが出ると早く埋まります。探すときは施設の数より部屋の空きを見ます。
ペットと入居する費用は、3層に分けて見ます。施設に払う上乗せ、ペット自体にかかる費用、そして飼い主が世話を続けられなくなったときの費用です。
多くの人が気にするのは1層目ですが、見積もりから抜け落ちやすいのは3層目です。
施設に払うペットの費用は、入居時・毎月・退去時の3か所に出てきます。入居時は敷金の加算という形で、居室の汚れや傷に備える前払いです。毎月はペットの飼育費や共益費の上乗せで、共用部の清掃や設備の維持に使われます。
名目のはっきりしない一時金には注意します。老人福祉法第29条第8項は、有料老人ホームの設置者が、家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除いて、権利金その他の金品を受領することを禁じています。ペットの受け入れを理由に協力金のような一時金を求められたら、それが何の対価かを書面で確かめます。
退去時は原状回復です。ペットのいる居室は消臭や床の張り替えが要ることがあり、敷金で足りない分を請求される形になります。ここが施設に払う上乗せの中で最も読みにくい費用です。
金額は施設ごとに違います。料金表にペットの飼育費として月額が載る施設もあれば、管理規程の中に敷金の加算だけが書かれている施設もあります。見学のときに「入居時・毎月・退去時のペットに関する費用」を3つに分けて書面で出してもらうと、施設どうしを並べて比べられます。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法第29条・厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針
ペット自体の費用は、施設に入っても自宅と同じようにかかります。フード、トイレ用品、トリミング、ワクチンの接種、ノミやダニの予防。犬なら狂犬病の予防注射が毎年一回かかり、これは狂犬病予防法第5条による義務です。
ペットも飼い主と同じように歳を取り、通院が増えます。腎臓や心臓の病気、関節の痛みで定期的な通院と投薬が必要になると、月ごとの支出が読みにくくなります。ペット保険に入れる年齢の範囲は保険会社ごとに決まっているので、加入を考えるなら約款で確かめます。
施設に入ると、通院の付き添いも課題になります。自分で連れて行けない場合、動物病院への送迎を頼む先(家族・シッター・往診の獣医)と費用を見込んでおきます。施設の近くに往診をしてくれる動物病院があるかどうかも、探すときの確認項目に入れておくと役に立ちます。
費用の3層目は、飼い主が世話を続けられなくなったときの費用です。短期の入院ならペットホテルやシッターの日額、長期なら老犬ホーム・老猫ホームの月額、亡くなった後まで見てもらうなら終生の預かりにかかる費用です。
この層の相場は、公的な統計の外にあります。金額は施設と地域で幅が大きいので、預け先の候補が決まったら料金表と契約書を取り寄せ、月額か一括か、医療費は誰が持つのか、預けた後に追加で請求されるものは何かまで、書面で確かめます。
ペットと一緒に入居する前に、この3層目を払えるかを見積もっておきます。「一緒に入れる施設が見つかった」の先に「自分が動けなくなったときの費用」が待っているからです。ここを先に見ておくと、引受先と費用の残し方の選び方も決まります。
探す順番は「検索サイトのタグで集める」「電話の3問で見分ける」「見学する」「書面で固める」です。
ペット可の部屋は空きが出ると早く埋まるため、見学と申込みは同時に進めます。
施設検索サイトで「ペット可」の絞り込みをかけると、候補が一覧で出ます。ただし、この「ペット可」には中身の違う3段階が混ざります。
タグの上では3つとも「ペット可」と表示されるため、一覧の件数を見て安心すると、電話をかけた段階で「居室での飼育は対象の外です」と言われます。
最初にすることは、一覧に出た施設に電話をかけて「居室でペットを飼えますか」と聞くことです。ここで居室での飼育を認める施設だけを残すと、候補は一覧の数分の一に減ります。減った後の数が、その地域で実際に探せる施設の数です。
電話で聞く質問は3つに絞ります。答えによって、その施設が自分に合うかどうかがおおむね決まります。
1は3段階の見分けです。2は、自分の要介護度が上がったときに施設内で暮らし続けられるかを決めます。有料のサービスがある施設なら、費用と手続きを聞いておきます。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第182条第4項は、介護保険の利用料と別に受け取る費用について、あらかじめ利用者や家族へ内容と費用を説明し、同意を得るよう事業者に求めています。この説明が用意されているかどうかで、施設の慣れ具合が分かります。
3の答えには施設の姿勢がそのまま出ます。「引受人を決めていただきます」なら標準的な施設で、「提携している老犬ホームや団体があります」なら備えの厚い施設です。「その時に相談で」という答えなら、世話を続けられなくなった後の流れを施設が決めていないので、自分で用意する前提で考えます。
出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第182条
見学で見る場所は3つです。1つ目はペット可の居室の場所です。1階だけ、専用フロアだけ、庭に出られる部屋だけ、と限られている施設が多いので、その部屋の空きが自分の順番に回ってくるかを聞きます。
2つ目は共用部のルールです。廊下やエレベーターではリードかケージが要るか、食堂やロビーに連れて行けるか、足洗い場や排せつ物の処理場所はどこか。ルールが細かい施設ほど、他の入居者との調整が進んでいます。
3つ目は、実際にペットと暮らしている入居者の数と年齢層です。今ペットと暮らしている人が何人いるか、その人たちの要介護度はどのくらいか。要介護3以上でペットと暮らし続けている人がいる施設は、世話を続けられなくなった後の対応を実際に経験しています。
候補が絞れたら、管理規程と入居契約書を取り寄せて読みます。老人福祉法第29条第7項は、有料老人ホームの設置者に、入居する人と入居しようとする人への情報開示を義務づけています。厚生労働省の指導指針は、重要事項説明書、入居契約書、管理規程、入居案内パンフレット等を都道府県へ提出させ、公開するよう努めることを都道府県に求めており、見学の前でも請求できます。
指針は、入居契約書に契約解除の要件及びその場合の対応を明示するよう求めています。ペットについて読む欄は次の4つです。
| 読む欄 | 何を確かめるか |
|---|---|
| ペット飼育の規定(管理規程) | 種類・体重・頭数・共用部のルール・予防接種の義務 |
| 契約書の特約 | 引受人の届け出・世話を続けられなくなったときの扱い |
| 契約解除の要件 | ペットの問題行動や世話の不能で退去になる条件 |
| 原状回復と敷金 | ペットによる汚れや傷の負担範囲・敷金の精算 |
口頭で「大丈夫ですよ」と言われた内容は、書面に書かれていなければ施設の担当者が変わったときに消えます。とくに「世話を続けられなくなったときの扱い」は、契約書に書かれている施設とそうでない施設で、入居後の安心が大きく違います。重要事項説明書のどこを先に見るかは、介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所の記事に書いています。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法第29条・厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針
飼い主が世話を続けられなくなる局面は3つです。入院、要介護度の上昇、そして死亡。
備えは「誰が世話を引き継ぐか」「費用をどう残すか」「約束が守られているかを誰が見るか」の3点で考えます。
短期の入院なら、ペットホテルやペットシッターで乗り切れます。施設の居室にペットを残す場合、施設が有料で世話を引き受けるかを先に確かめておきます。介護保険のサービスにペットの世話が入らないため、頼めるのは自費のサービスか家族です。
要介護度が上がって散歩や排せつの処理ができなくなったときは、長期の担い手が要ります。選べる形は、施設の有料のサービス、外部の散歩代行やシッターの定期利用、家族の通い、老犬ホームへの月ごとの預かりです。
どの形でも、費用は毎月かかります。入居前に「自分が世話を続けられなくなったら誰が、いくらで」を書き出しておくと、施設から「ペットを預ける先を」と言われたときに落ち着いて動けます。担い手を先に決めておくことが、ペットと一緒に暮らし続ける期間を延ばす方法です。
出典: 厚生労働省 介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて(平成30年9月28日)
飼い主が亡くなった後の引受先は、大きく4つです。それぞれ約束の安定度と費用が違います。
| 引受先 | 約束の安定度 | 費用 |
|---|---|---|
| 家族・親族 | 口約束は途中で崩れやすい。書面に残すと安定する | 飼育費を渡すかは相談 |
| 知人・里親 | 引き受ける人の年齢と住環境に左右される | 飼育費を渡すかは相談 |
| 団体によるペットの後見 | 団体が引受先を探し、飼育を見守る仕組み | 会費や預託金は団体ごと |
| 老犬ホームの生前契約 | 契約で終生の預かりを約束する | 料金表と契約書で確かめる |
自治体の動物愛護センターは、動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第21条の2が挙げる場合に引取りを拒否できます。あらかじめ譲渡先を見つけるための取組を行っていない場合もその一つなので、「最後は保健所が」という前提で進めるのは避けます。
引受人の書面に入れる4項目
引受人の氏名と連絡先/引き受ける時期(入院時・要介護度の上昇時・死亡時のどこから)/飼育費の渡し方(月額か一括か・誰から誰へ)/引受人が引き受けられなくなったときの次の引受先
引受先を決めたら、その人や団体の連絡先を施設に届け出て、契約書の特約に書きます。家族が引き受ける場合でも、口約束のままにせず、飼育費をどう渡すかまで書面にしておくと、亡くなった後に家族の間で揉める種が減ります。
出典: e-Gov法令検索 動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第21条の2
引受先を決めても、飼育費が渡らなければ約束は続きにくくなります。民法第85条は「物」を有体物と定めており、ペットは法律の上で物として扱われるため、財産を受け取る側は人に限られます。そこで、人に財産を渡して世話を条件にする形をとります。道具は2つです。
負担付遺贈は、遺言で「ペットの世話をすることを条件に財産を渡す」と書く方法です。民法第1002条が負担付遺贈を定め、受け取った人は遺贈の目的の価額を超えない限度で負担した義務を履行する責任を負います。ただし第986条により、受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄できるので、事前に引き受ける意思を確かめておきます。世話をしなかったときは、第1027条により、相続人が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは家庭裁判所へ遺言の取消しを請求できます。請求できるのは相続人なので、誰が見守るかを決めておいて初めてこの仕組みが働きます。
ペット信託は、財産を信頼できる人や法人に託し、飼育する人へ定期的に飼育費を渡す仕組みです。信託法第131条は、信託行為で信託監督人となるべき者を指定する定めを設けられるとし、受益者が受託者の監督を適切に行えない特別の事情がある場合には、裁判所が利害関係人の申立てにより信託監督人を選任できるとしています。飼い主が生きている間の入院や認知症の段階から働かせられる点と、監督する人を置ける点が負担付遺贈との違いです。設計に専門家の費用がかかります。
どちらも、飼い主が生きている間に用意した分だけが使えます。ペット可の施設を探し始めたら、同時に遺言か信託の準備を始めます。
出典: e-Gov法令検索 民法第85条・第986条・第1002条・第1027条・e-Gov法令検索 信託法(平成18年法律第108号)第131条
条件に合う施設が見つからないときの形は3つです。近くに預けて会う、面会同伴で会う、施設のペットと触れ合う。
この3つを先に知っておくと、「一緒に暮らす」だけを追いかけて探し疲れる流れを止められます。
自分が入る施設の近くに老犬ホームや老猫ホームがあれば、ペットをそこに預けて定期的に会いに行く形が取れます。家族が引き取れる場合も、施設から通える距離なら同じです。
この形の利点は、施設をペット可に限らずに選べることです。医療対応や介護体制で選んだ施設に入り、ペットは別の場所で世話を受けます。ペットの世話が自分の体調に左右されなくなるので、要介護度が上がっても関係が続きます。
会いに行く頻度は、自分の体調と距離で決まります。週に1回会える距離にあるかを基準に、預け先を選びます。ペットの年齢が高く残りの時間が限られている場合は、この形を先に選ぶことで、一緒に暮らせる施設の空きを待つ間の時間を守れます。
検索サイトの「ペット可」の3段階のうち、面会同伴だけを認める施設は、居室での飼育を認める施設より探しやすくなります。家族がペットを引き取り、面会のときに連れて来る形です。
面会の場所と条件は施設ごとに違います。ロビーや屋外の庭に限る施設、居室まで連れて行ける施設、ケージに入れることを条件にする施設。見学のときに「家族がペットを連れて来られますか、どこで会えますか」と聞いて確かめます。
この形は、ペットの世話を家族が担うので費用が抑えられます。家族の側にも「面会に行く理由」ができ、施設に入った後も会う回数が保たれる利点があります。ペットと暮らせる施設が地域に見当たらない場合、この形が現実の選択肢の中心になります。
施設で飼っている犬や猫(ホーム犬・ホーム猫)がいる施設や、動物が定期的に訪問するアニマルセラピーを取り入れている施設もあります。自分のペットと暮らす形とは違いますが、動物に触れる時間を毎日か毎週の生活に残せます。
自分のペットを家族や老犬ホームに預け、施設ではホーム犬と過ごす。この組み合わせなら、ペットと離れることになっても、動物と触れる生活が残ります。見学のときに、ホーム犬がいるか、訪問の頻度はどのくらいかを聞きます。
ペットのために入居を遅らせて、飼い主が倒れてしまう例があります。ペットの残りの時間と、自分の体調の見通しを並べて、どの形なら両方を守れるかを家族と決めておくと、選択に後悔が残りにくくなります。
ペットと一緒に入れるかどうかを決めるのは、施設の種別よりも飼い主側の2つの条件です。ペットの世話は介護保険のサービスの外にあるため、施設は「本人が世話できる間だけ」という線を引きます。そして動物の愛護及び管理に関する法律第7条第4項の終生飼養の責任は飼い主に残り、自治体の引取りも、譲渡先を探す取組をしていない場合などには断られます。だから施設は入居前に引受人を求めます。
次の一歩は、ペットの引受人を1人決めて、氏名と連絡先、引き受ける時期、飼育費の渡し方を紙に書き出すことです。ここを飛ばすと、条件のそろった施設が見つかっても引受人の欄が空のまま契約に進めず、ペット可の数少ない部屋の空きを見送ることになります。
引受人が決まったら、候補の施設から管理規程と入居契約書を取り寄せて、ペットの飼育の規定と契約解除の要件を確かめましょう。介護のあんしんでは、ペットと一緒に入れる老人ホームの条件と探し方も含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。