※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

パンフレットに載っている月額に、いま用意できるお金を割ってみます。何年もつかの数字が出て、そこで手が止まります。この計算が正しいかどうか、自分でも分かっていないからです。
止まる理由ははっきりしています。パンフレットの月額は、その施設で毎月出ていくお金の全部ではありません。そして3年後の金額を、全国の平均から一つの数字で当てることもできません。
この記事で3年と言うのは、予測の射程のことではありません。入居してから契約と資金計画を一度見直すまでの、区切りとして置いています。
だからこの記事では、予測をしません。代わりに、動く条件と動かない条件を分けます。
作るのは3枚の見積りです。いまの状態のとき、重度化したとき、入院や住み替えが起きたとき。この3枚が手元にあれば、電卓に入れる数字が決まります。
見積りを作る前に、入居先の候補の施設がどの種類かを決めます。同じ「老人ホーム」でも、介護の費用が決まる仕組みが違います。ここを取り違えると、以降の見積りが全部ずれます。
介護付きは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設です。介護サービスの費用は施設への包括の報酬として決まり、要介護度ごとの基本部分があります。
住宅型とサ高住は、外部の居宅サービスを組み合わせる形になります。使った分だけ介護保険から出て、区分支給限度基準額という上限があります。
どちらが安いかは、ここでは決まりません。仕組みが違うので、同じ条件の数字になりません。比べるのは種類ではなく、入居先の候補になっている施設ごとの見積りです。
この先、種類で変わるのは3か所です。保険の外で毎月かかる費用の中身、重度化したときの見積りを誰に頼むか、そして読む書面。自分の候補がどちらかを決めてから読み進めてください。
料金表を開くと、家賃と管理費と食費のほかに「介護サービス費」「個別対応費」といった行が並びます。どれが毎月かかり、どれが要介護度で動くのかは、並びからは分かりません。
そこで、費目を4つのグループに仕分けます。
| 費用のグループ | 主な項目 | 要介護度で動くか |
|---|---|---|
| 契約で決まっている費用 | 家賃、管理費、基本の食費、光熱費 | 動きません |
| 介護保険から出る分の自己負担 | 特定施設入居者生活介護費、訪問介護等の自己負担 | 動きます |
| 保険の外で毎月かかる費用 | 上乗せの介護費、個別サービス、おむつ等、医療・薬・日用品 | 動きやすくなります |
| 一時的な費用 | 居室の変更、入院、退去、引越し、再入居 | 月額とは別に置きます |
仕分けの目的は、金額を出すことではありません。どのグループが要介護度で動くのかを、先に見えるようにすることです。
家賃、管理費、基本の食費、光熱費。このグループは要介護度では動きません。動くとすれば、契約に書かれた改定のルールによってです。
だからこのグループの確認先は、施設への質問ではなく契約書と管理規程になります。読む場所はこの記事の後半で示します。
このグループの中身は、種類によって決まり方が違います。
介護付きの場合、特定施設入居者生活介護費の基本部分は要介護度ごとに決まっています。厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会 第260回 資料4によれば、1日当たり要介護1が542単位、2が609単位、3が679単位、4が744単位、5が813単位です。要支援1が183単位、要支援2が313単位となっています。
ここでいう単位とは介護報酬の数え方で、地域によって単価が変わります。
1単位は10円とされ、負担割合1割、1か月30日として計算すると、要介護1の定額部分は月およそ16,260円、要介護5でおよそ24,390円になります。これは厚生労働省の資料に載っている金額ではなく、この前提で計算した値です。
これは基本部分だけを取り出した一例であって、総月額ではありません。加算も、地域による単価の差も、保険外の費用も、2割・3割負担の場合も含まれていません。この数字を余裕幅の根拠にしないでください。
住宅型とサ高住の場合は、外部の居宅サービスを使った分だけ介護保険から出ます。ここには区分支給限度基準額という上限があり、目黒区の解説によれば、1か月当たり要介護1が16,765単位、2が19,705単位、3が27,048単位、4が30,938単位、5が36,217単位です。
区分支給限度基準額とは、介護保険から出る1か月分の上限のことです。介護付きの数字が1日当たりの実額の一部であるのに対し、こちらは1か月の上限にすぎません。性質が違うので、同じ換算をして並べても比べたことになりません。
このグループに入るのは、上限の内側で使った分の1割から3割とされる負担です。上限を超えた分は、次のグループに入ります。
住宅型とサ高住の場合、区分支給限度基準額の上限を超えて使った分は全額が自己負担になります。その分はこのグループに入ります。この額は保険給付を受けられる上限であって、毎月支払う標準額ではありません。
介護付きの場合、介護サービスの費用は施設への包括の報酬で決まるので、上限の超過という話は原則として当たりません。このグループに入るのは、上乗せの介護費や施設独自の個別サービス、おむつ等の消耗品です。
どちらの種類でも、医療費、薬代、日用品、理美容、通信費はこのグループに入ります。要介護度が上がったときに増えやすいのは、このグループです。
居室の変更、入院、退去、引越し、再入居。これらは毎月ではなく、起きたときにまとまって出ます。
月額に混ぜず、予備費として別に確保します。混ぜてしまうと、月額の比較が施設ごとにずれます。
動くグループと動かないグループを分けないまま「月額いくら」を比べても、3年先の見通しにはなりません。
次に、この4つのグループを三つの場面で埋めていきます。
いまの要介護度の金額なら、料金表を見れば分かります。分からないのは、重くなったときと、入院したときです。
ここで作るのは3年後の予測ではありません。3年のあいだに起こり得る条件を、いくつ確認しておくかという話です。
依頼先は種類で変わります。介護付きは基本部分が要介護度で決まるので、施設に見積りを頼めます。住宅型とサ高住は介護の費用がケアプランの中身で決まるので、施設だけでなく担当のケアマネジャーにも、重度化したときのケアプランの見立てを聞きます。
3枚の見積りは、次の形で並べます。
| 費用のグループ | いま | 重度化したとき | 入院や住み替えのとき |
|---|---|---|---|
| 契約で決まっている費用 | 料金表から書き写します | 同じ | 施設に聞きます |
| 介護保険から出る分の自己負担 | 料金表から書き写します | 施設かケアマネに聞きます | 施設かケアマネに聞きます |
| 保険の外で毎月かかる費用 | 実績から書き写します | 施設かケアマネに聞きます | 施設に聞きます |
| 一時的な費用 | 別にします | 別にします | 施設に聞きます |
金額を埋めるのはあなたの側です。この表で決めるのは、どのマスを自分で書き写し、どのマスを聞きに行くかだけで足ります。
表のマスがすべて埋まれば3枚は完成します。埋まらないマスが残ったら、それがそのまま施設に聞き残したことになります。
まず、現在の要介護度と負担割合で4つのグループを積みます。使うのはパンフレットではなく、最新の料金表です。
このとき、加算が何種類乗っているかも確かめます。加算は介護報酬の上乗せで、施設の体制によって付く数が違います。
次に、要介護4になった場合と要介護5になった場合の月額見積りを作ってもらいます。現在の負担割合のままで頼むのがこつです。負担割合まで動かすと、何が原因で増えたのかが分からなくなります。
4と5で頼むのは、そうなると予測しているからではありません。払える上端を先に確かめるためです。 実際にどのくらいの割合で区分が変わるかは、この記事の後半で一組だけ数字を挙げます。
全国平均から差額を推定しないでください。同じ要介護度でも、加算の数と保険外の費目で金額は変わります。
施設が見積りを出せないこともあります。そのときは、料金表の各費目を自分で4つのグループへ分解し、要介護度で動く2つのグループ、つまり介護保険の自己負担と保険の外の費用だけを施設に確認します。
3枚目は、入院や居室の変更が起きたときです。確かめるのは4つ。入院中も発生し続ける費用は何か。食事を取らない月の減額の条件はあるか。居室を移るときの差額はいくらか。退去と原状回復、再入居の初期費用はいくらか。
住み替えで費用が動くことは、制度の側も想定しています。国の標準指導指針は、有料老人ホームの設置と運営について国が示している文書で、地方自治法上の技術的な助言にあたります。その12⑵六は、一定の要介護状態になった入居者が一般居室から介護居室や提携ホームへ住み替える契約などについて、手続を契約書等に明示するよう求めています。
明示させる手続は三つあります。医師の意見を聴くこと、本人または身元引受人等の同意を得ること、一定の観察期間を設けること。同じ号は、家賃相当額の差額が発生した場合の取扱いも考慮するよう求めています。
この規定が求めているのは、手続を契約書に書いておくことです。住み替えの費用そのものを、国が決めているわけではありません。 だから金額は、その施設の書面と回答で確かめることになります。
なお、状態が変わった後も入居を続けられるかどうかは、契約の解除・住み替えの条件で決まります。契約書と重要事項説明書で確認します。
ここまでをまとめると、施設に頼むことは6つになります。
この6つは、電話でも郵送でも頼めます。見学の予約より先に頼んでおくと、見学の日に手ぶらで質問しなくて済みます。
もらった見積りの前提は、契約書と重要事項説明書で確かめます。
見積りをもらっても、その前提がいつまで有効なのかは書かれていないことがあります。前提を確かめる場所が、契約書と重要事項説明書です。読むのは二つ、利用料の改定のルールと、入院・欠食・居室の変更で費用がどう動くかです。
※ ここで読む重要事項説明書は、有料老人ホーム(介護付きと住宅型)の様式です。サ高住には別の制度が乗るため、同じ様式とは限りません。サ高住を見ている場合は、契約書と説明の書類の中から、同じ中身が書かれているところを探すことになります。
書類を開いたら、まず記入年月日(様式により「基準日」)を見ます。いつ時点の記載かを示す日付で、ここが古ければ書いてある内容も今のものではありません。欄名や公開の方法は、自治体や様式の版によって差があり得ます。
個別の施設の重要事項説明書は、自治体がサイトで公開しています。東京都・姫路市・函館市・横須賀市・我孫子市・八尾市・松江市の7つで公開を確認できました。自分の市区町村名、なければ都道府県名と「有料老人ホーム 重要事項説明書」で検索するとたどり着けます。
書類のどの欄をどう読むかは、別の記事で扱っています。
関連記事:介護付有料老人ホームの重要事項説明書で、見学の前に比べる三か所
国の標準指導指針12⑵三は、「利用料等の改定のルールを入居契約書又は管理規程上明らかにしておくとともに、利用料等の改定に当たっては、その根拠を入居者に明確にすること」と定めています。
この規定が求めているのは、ルールを書面に書いておくことと、改定するときに根拠を示すことだけです。改定の可否や上限を、国が決めているわけではありません。 だから、契約書と管理規程の改定条項を自分で読みます。
※ この指針は、通知の冒頭に技術的な助言に該当すると明記されている文書です。実際の指導や処分がどうなるかは、法令と各自治体の運用を確認することになります。
現行の様式で、費用と居住の継続に関わる部分は次のとおりです。名前は様式によって違い得るので、名前ではなく中身で探します。
| 探すもの(欄の名前) | そこで分かること | 効くシナリオ |
|---|---|---|
| 契約解除の内容 | 解約条項、解約予告期間 | 入院や住み替えのとき |
| 入居後に居室を住み替える場合 | 判断基準の内容、手続きの内容、追加的費用の有無、居室利用権の取扱い、前払金償却の調整の有無 | 重度化したとき/入院や住み替えのとき |
| 前払金の受領 | 前払金の有無と内訳 | いま/一時的な費用 |
| 前年度における退去者の状況 | 退去先別の人数、生前解約の状況と解約事由の例 | 補助情報 |
| 特定施設入居者生活介護の加算の体制の有無 | 加算ごとのあり・なし(介護付きの欄) | いま/重度化したとき |
いちばん効くのは2行目です。居室を移ると費用が変わることが、様式そのものに組み込まれています。
ここでいう前払金償却の調整とは、入居時にまとめて払ったお金を住んだ期間に応じて施設の収入へ振り替えていく処理があり、居室が変わるとその扱いが変わることがある、という欄です。居室利用権は、その部屋を使えるという契約上の立場の扱いを指します。
前払金そのものが、施設が続かなかったときにどこまで保全されているかは、別の記事で扱っています。
関連記事:有料老人ホームの入居一時金のうち、実際に保全されている額を契約前に確かめる方法
※ 入居対象となる者の欄と、入居者の状況の欄も見ておくと役に立ちます。どちらも補助情報ですが、その施設がどんな状態の人を受け入れてきたかが分かります。前年度における退去者の状況も同じで、全国の統計の代わりにその施設の実績を見るために使います。
次は、月々の自己負担に上限をかける制度がどこまで効くかを見ます。
高額介護サービス費は、介護のお金の全部に上限をかける制度ではありません。上限額の表を見ると、月にかかる介護のお金はここで止まるのだと受け取ってしまいます。この読み違えが、資金計画をいちばん狂わせます。
高額介護サービス費が上限を設けるのは、介護保険が適用されるサービスの定率自己負担についてです。定率自己負担とは、介護保険が使えるサービスについて、かかった費用の1割・2割・3割を払う仕組みとされています。
つまり、次のものは対象外になります。
4つのグループでいえば、上限が効くのは介護保険から出る分の自己負担だけです。契約で決まっている費用にも、保険の外で毎月かかる費用にも効きません。
上限の金額は、介護保険法第51条と同法施行令第22条の2の2で定められています。
| 区分 | 1か月の上限(円) | 単位 |
|---|---|---|
| 原則 | 44,400 | 世帯合算 |
| 課税所得380万円以上690万円未満の第1号被保険者がいる世帯 | 93,000 | 世帯合算 |
| 課税所得690万円以上 | 140,100 | 世帯合算 |
| 市町村民税世帯非課税者等 | 24,600 | 世帯合算 |
| 生活保護の被保護者、一定の低所得の人 | 15,000 | その人個人の負担について |
この表で見落としやすいのが最下段です。15,000は個人を単位とする上限であり、世帯上限24,600と併存する区分があります。 世帯全体の介護の負担が15,000で止まる、という意味ではありません。
もう一つ、原則として上限を超えた分は後から支給されます。窓口で最初から上限しか払わないとは限らず、一時的に立て替える資金が要ります。
これとは別の話として、高所得の区分では計算した負担額が上限に届かないことがあります。その場合はそもそも払い戻しが生じず、計算額がそのまま最終の負担になります。
あわせてお伝えします。有料老人ホームの家賃・食費は、介護保険の補足給付の対象ではありません。介護保険法第51条の3第1項が対象を列挙しており、特定施設入居者生活介護はそこに含まれていないためです。
補足給付とは、低所得の人の食費・居住費を介護保険から補う仕組みで、対象になる施設が法律で決まっています。対象外であることと、公的な支援が何もないことは別です。 個別の適用は自治体へ確認します。
最後に、重度化がどのくらいの割合で起きているかを一組だけ見ます。
重度化に備えると言っても、どのくらいの見込みで備えるのかが分からないと手が動きません。数字は一組だけ見ておけば足ります。
年間継続受給者406.3万人。これが厚生労働省の「令和6年度 介護給付費等実態統計」の集計の対象です。令和6年4月から令和7年3月まで、12か月連続して介護サービスを受給した人を指します。
同じ統計によれば、要介護1だった人のうち、1年後に重い区分だった人は21.6%でした。同じ区分を維持した人は75.7%、軽い区分へ移った人は2.6%とされています。
読み取れるのはここまでです。この統計では約5人に1人で区分が重くなり、約4人に3人は同じ区分でした。重度化だけでなく、軽度化もあります。
この集計は12か月連続で介護サービスを利用した人が対象で、死亡・入院・利用中断した人は含まれません。施設入居者だけの将来予測には使えません。
重度化は必然ではありませんが、無視もできません。だから予測をするのではなく、重くなった場合の見積りを1枚持っておきます。
ここまでを、施設ごとの手順として並べ直します。
やることを順番に並べると、次の7つになります。
2でもらう書類は、記入年月日を見て、いつ時点のものかを確かめます。6は契約書と重要事項説明書で読みます。
7つを一度にやろうとしなくてかまいません。先に効くのは2と4と7の3つです。書面をもらい、3つの見積りを依頼し、一時費用を別にします。ここまでで見積りは動き出します。
残りは、返ってきた書面と見積りを見ながら足していけば足ります。3枚が手元にあれば、電卓に入れる数字が決まります。
制度と様式は改正されます。ここで参照した内容は2026年8月時点のものであり、最新の様式や条文は各リンク先で確認できます。