看取りの意思確認を求められたら家族はまず誰がいつ判断するかを決める

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施設から、看取りの方針や急変したときの対応について意思を確認したいと言われた家族に向けた記事です。求められているのは、治療をやめるという約束ではありません。決めるのは、心肺蘇生をするかしないかではなく、誰がどの時点で判断するかになります。この記事では、書類で聞かれていること・決め方を定めたガイドライン・急変の場面ごとの分かれ方・施設に確かめること・後から変える方法・家族の中で先に決めておくことを、この順に置きます。

次に当てはまる方には、別の記事を用意しています。

なお、施設の体制を書面で確かめる手順(後半の「『看取り対応可』の意味は施設ごとに違う」)は、介護付有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・認知症のグループホームを想定しています。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、看取りの体制は施設の側ではなく、外から入る訪問看護や訪問診療との契約の側にあります。その2つに親がいる方は、書面の欄ではなく、いま入っている訪問看護と訪問診療の事業所が夜間と最期の場面で何をするかを確かめます。 ほかの章は、どの種類にも同じように当てはまります。

意思の確認で聞かれていること

手元に来た書類は、治療をやめる約束をさせるためのものではありません。

書類の名前は、施設によって違います。看取りに関する同意書・急変時の意思確認書・終末期の医療についての確認書といった呼び方があります。呼び方は違っても、聞かれているのは2つです。最期をどこで迎えたいかと、急変したときにどうするかになります。

求められる時期にも形があります。入居のときに一度、そして状態が変わったときにもう一度、という進め方をしている施設があります。いま求められているのが2回目なら、施設は本人の状態が変わってきたと見ている可能性があります。何を見てそう判断したのかは、この後の面談(施設が意思の確認のために設ける話し合いの場)で一緒に聞けます。

この書類が怖く見えるのには理由があります。書類には心肺蘇生・救急搬送・点滴といった具体の処置が並んでいて、それぞれに丸を付ける形になっているためです。並んだものに一度に丸を付けると、その場で全部を決めてしまうように見えます。

施設の側の事情も、書類の形に表れています。夜間に急変したときにどう動くかは、先に決まっていないと、その場で判断することになります。確認を求めてくるのは、決めさせたいからではなく、決まっていない状態で夜を迎える形を避けるためです。

署名しなければどうなるのか、という心配もあります。意思の確認に答えることは、一般に契約上の義務として書かれる性質のものではありません。 手元の入居契約書の解除の条項と、サービスの内容を定めた条項を見て、看取りの意思確認に触れた記載があるかを確かめられます。

ただし、答えないままにしておくと、方針が決まっていない状態が続きます。方針が無い場面で何が起きるかは、施設の運営によって違います。決まっていなければ原則として救急車を呼ぶ、と決めている施設もあれば、その場で連絡を取りながら判断する施設もあります。どちらになるのかを、面談で先に聞いておけます。

答えないという選び方より、決められるところと決められないところを分けて答えるほうを勧めます。そのほうが家族の側に選べる余地が残ります。全部に答えるか、何も答えないかの二択ではありません。

書類に何を書くかを決めるのは家族です。ただし、その書類がどう働くかは、書類の外の決まりで決まっています。次の章がその決まりです。

決定のしかたを定めたガイドライン

決め方そのものは、厚生労働省のガイドラインに書かれています。

  • 定め1:判断するのは医療とケアのチーム
  • 定め2:本人の意思は変わるものとして扱う
  • 定め3:話し合った内容はその都度文書にする

3つとも、家族が署名する前から決まっているものです。

定め1:判断するのは医療とケアのチーム

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は、次のように書いています。

人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである。

出典: 厚生労働省 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン

治療を始めるか・始めないか・変えるか・やめるか。このどれも、家族の署名だけで決まる作りにはなっていません。 医学的に妥当かどうかを、複数の職種の医療と介護の担当者が見て判断することになっています。

同意書に署名したことが、そのまま治療をやめる約束になるわけではありません。 署名は、そのときの話し合いの結果を残したものです。実際に何をするかは、そのときの状態を見て判断されます。

ただし、記録が軽いという意味ではありません。 急変した場面では、その記録が最初の動きを決めます。署名がそのときの合意の記録であることと、その記録が急変時の初動を左右することは、両方とも成り立ちます。書き直せることと、書いてあるとおりに動くことは別の話です。

医療・ケアチームという言葉も、この場面では具体の人になります。入るのは次の人たちです。施設の医師か協力医療機関の医師・看護職員・介護の職員・生活相談員・介護の計画を作る担当者になります。普段から本人を見ている人たちで、家族が知らない誰かが遠くで決めるのではありません。

このガイドラインは、法律ではありません。厚生労働省が示している指針で、平成30年3月に改訂されたものです。それでも施設の運営に反映されています。理由は介護報酬の仕組みにあります。介護報酬は、施設が受け取るお金の計算のしかたを国が定めたもので、決められた体制や取組をしている施設だけが受け取れる上乗せ分(加算)があります。 その上乗せを受け取る条件として、このガイドラインに沿った取組が求められています。

定め2:本人の意思は変わるものとして扱う

同じガイドラインは、本人の意思の扱いについても書いています。

本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。

一度決めたら終わり、という前提でこのガイドラインは書かれていません。 意思は変わるものだから、その都度示せるように支えることと繰り返し話すことが重要だ、という書き方です。

同じ箇所は、本人が自分で伝えられない状態になる場合についても続けています。

本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。

定め3:話し合った内容はその都度文書にする

3つ目は、記録のしかたです。

このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする。

書類は最後の1枚ではなく、そのときの合意の記録です。その都度まとめる、と書かれているので、状態が変わったら新しい記録が要ります。

この定めは、家族の側からも使えます。 面談で話した内容を記録に残してほしい、と頼めます。その場で決めなかったことも、決めなかったこととして残してもらう形です。次に話すときの出発点が変わります。

残してもらう形は、施設の記録に書いてもらうのがいちばん確実です。家族が自分のノートに書いても、施設の職員が代わったときに引き継がれません。面談の終わりに、いま話したことを記録に入れておいてください、と言うだけで足ります。

急変したときに分かれる場面

決めるのは、救急車を呼ぶかどうかの二択ではありません。

急変と呼ばれる場面は、実際にはいくつかに分かれます。分かれた先で問われることも、判断を前に出す人も違います。

場面何が問われるかチームの中で前に出る人
心臓や呼吸が止まったとき心肺蘇生をするか事前の方針をもとに医師
急に具合が悪くなったとき救急車を呼ぶか施設で見るかその場の職員と医師
食べられなくなったとき胃ろうなどの栄養をどうするか医師と家族の話し合い
水分が取れなくなったとき点滴をどこまでするか医師と家族の話し合い
治る見込みのある病気になったとき治療するか医師の説明を受けて家族

3列目は、定め1の医療・ケアチームの中で、その場面に応じて誰が前に出るかを書いたものです。チームで判断するという点は5つとも同じで、変わるのは、その中で誰の判断が最初に要るかです。 心停止のように時間の無い場面では医師が前に出て、数日かけて話す場面では家族が前に出ます。

5つとも、するかしないかを今日決めるのではありません。誰がどの時点で判断するかを決めます。書類に丸を付ける作業は、この枠組みを先に決めておくためのものです。

「そのとき決めたい」と書ける行と書けない行

その場で決められないときの書き方が1つあります。いま決められないので、そのときに医師の説明を受けてから決めたい、と書いて出す形です。 空欄のまま出すのとは違います。書いてあれば、そのときに家族へ連絡して説明する、という手順が決まります。

ただし、この書き方が成り立つのは5つの行のうち4つです。 分かれ目は、家族へ連絡して説明を受ける時間があるかどうかです。

  • 3行目から5行目(食べられなくなったとき・水分が取れなくなったとき・治る見込みのある病気になったとき)は、数日から数週間かけて話す場面です。そのときに説明を受けてから決めたい、と記入すれば、そのとおりに進みます。
  • 2行目(急に具合が悪くなったとき)も、連絡は付きます。ただし電話で短く決めることになります。この行に書くのは、誰に何分以内に連絡するかと、つながらなかったときにどうするかまでです。
  • 1行目(心臓や呼吸が止まったとき)だけは、そのとき決めたい、と記入しても成り立ちません。心肺蘇生を始めるかどうかは、その場の数分で決まります。家族へ連絡して説明を受ける時間がありません。

1行目を空欄にするか「そのとき決めたい」と記入すると、方針が無いまま職員がその場に立つことになります。 この記事がいちばん避けたい状態を、いちばん取り返しのつかない場面で作ることになります。

1行目に書くのは、今日どちらかに付ける丸ではありません。どういう状態のときにどうしてほしいかを、医師と一緒に書き分けられます。 面談で医師に、どういう経過をたどったときにどの処置がどこまで意味を持つのかを説明してもらい、それを状態ごとの方針として残す形です。丸を1つ付けるより時間はかかります。この行に限っては、その時間をかけるだけの違いがあります。

それでも決めきれないことはあります。そのときは、決められないまま置くのではなく、次にいつもう一度話すかを面談で決めます。 定め2と定め3のとおり、方針は繰り返し話して更新できるものとして扱われます。

表の中で気持ちの負担が大きい2つの行

5つのうち、いちばん誤解が起きやすいのが最後の行です。看取りの方針に同意したことは、どんな病気も治療しないという意味ではありません。 肺炎・骨折・脱水のように、治療すれば治る見込みのあるものは、看取りの方針とは別に治療の対象になります。ここを取り違えると、治せるものを治さない判断につながります。

3行目の胃ろうについても、先に知っておくと面談が短くなることがあります。胃ろうは、口から食べられなくなったときに、おなかに小さな口を作って栄養を入れる方法です。始めるかどうかと、始めた後に続けるかどうかは、別の場面で問われます。 始めた後の話は、定め1のとおり医療・ケアチームが医学的な妥当性を見て判断することになるので、家族が今日その先まで約束する場面ではありません。この行で今日決められるのは、どういう状態になったら医師の説明を受ける場を設けてほしいか、までです。

2行目の救急車についても、先に知っておくとよいことがあります。救急車を呼ぶと、そこから先は搬送先の病院の判断になります。施設で看取る方針にしていても、搬送された病院では救命のための処置が行われるのが基本です。呼ぶか呼ばないかは、その意味で分かれ目になります。

だからといって、呼ばないと決めておくのが正解というわけでもありません。呼ぶか呼ばないかを先に固定するより、そのときに誰が判断するかを決めておくほうが、実際の場面では動けます。 苦しそうにしているのに何もできない、という状態を家族が抱えずに済むためです。

あわせて決めておくと動きやすくなるのが、連絡が付く順番です。誰に最初に電話するか・その人につながらないときは誰か・夜中でもかけてよいかの3つを決めます。5つの場面のどれが起きても、まず連絡が要ります。

この5つを面談で1つずつ確かめると、時間はかかります。それでも、先に分けておくと、そのときに家族が受ける説明が短くなります。何も決めていない状態で電話を受けると、状況の説明から始まり、判断までを数分で求められます。

「看取り対応可」の意味は施設ごとに違う

看取りができるという説明の意味は、施設ごとに違います。確かめる欄は2つです。

  • 欄1:看取り介護加算のあり・なし
  • 欄2:夜間の看護と協力医療機関

この2つの欄が載っているのは、介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設)の重要事項説明書です。 重要事項説明書は、入居のときに受け取った書類のうち、費用と職員の体制とサービスの内容を一覧にした冊子です。特別養護老人ホームと認知症のグループホームでは、施設が備えている運営規程と、契約のときに受け取った書面を開きます。 運営規程とは、その施設が自分で定めている運営の決まりです。探すのは、看取りの体制と夜間の職員配置について書かれた項目です。 欄の名前は施設ごとに違うので、名前ではなく中身で探します。

以下の2つの節は、どちらもこの断りの上に成り立ちます。

欄1:看取り介護加算のあり・なし

厚生労働省が示している重要事項説明書の別紙様式には、加算の対象となる体制の有無を書く欄があります。加算の対象は特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホームで提供される介護保険のサービス)で、その欄の中に看取り介護加算のあり・なしを書く場所があります。

出典: 厚生労働省 重要事項説明書(別紙様式)

看取りへの対応そのものは、この種類だけのものではありません。令和3年度の介護報酬改定の資料は、看取りへの対応の充実として、特別養護老人ホーム・介護付きホーム・認知症グループホームのそれぞれを項目に挙げています。3つのどれにも、看取りに対応するための制度上の仕組みがあります。 ただし、人員の要件も体制の組み方も種類ごとに違うので、名前だけが違うわけではありません。自分の親の施設で何ができるかは、その種類の書面で確かめます。

あり・なしが示しているのは、その施設が看取りの体制を届け出ているかどうかです。 そこで実際に何ができるかは、面談で聞くことになります。

「なし」だから看取れない、と決まるわけでもありません。加算は、条件を満たした施設だけが受け取れる上乗せの報酬です。届け出ていない施設でも、協力医療機関と組んで最期まで見ているところがあります。逆に「あり」でも、条件を付けている施設があります。老衰に限る、嘱託医が認めた場合に限る、といった形です。

欄を見た後は、同じことを口でも聞きます。うちの親の場合は、どういう状態になったら施設で看取れるのか、と聞きます。 これを聞くために欄を見ます。

この加算には、家族にとって意味のある条件が付いています。令和3年度の介護報酬改定で、看取りに係る加算の算定要件が変わりました。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うことが求められています。

出典: 厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における改定事項について

この加算を算定している施設は、繰り返し話し合う取組をすることになっています。一度署名を取って終わりにする運用は、加算の要件のほうと噛み合いません。

欄2:夜間の看護と協力医療機関

同じ様式には、夜間看護体制加算のあり・なしを書く欄と、協力医療機関の協力内容を書く欄もあります。

急変は夜間にも起きます。夜間に看護職がいるかどうかと、協力医療機関が夜間に何をするかで、その施設でできることが変わります。 昼間なら施設で見られることでも、夜は救急車を呼ぶしかない施設もあります。

面談で聞くことは3つに絞れます。夜間に誰がいるか・医師へどうつなぐか・どこまでを施設で見るかの3つです。3つとも、書面の欄を見てから聞くと具体的な答えが返ってきます。欄が空いているところや内容が薄いところが、そのまま聞く場所になります。

答えを聞くときに、体制の名前だけで納得しないようにします。看護職がいるという説明でも、館内にいるのか・電話でつながるだけなのかで、できることが変わります。 夜中の2時にどうなりますか、という聞き方をすると、実際の動きで答えが返ってきます。

協力医療機関の欄については、協力内容の書き方を見ます。往診に来るのか・24時間つながるのか・入院を受け入れるのかを見ます。看取りの場面で意味を持つのは、この協力内容のほうです。名前と診療科目だけでは、夜に何が起きるかが決まりません。

一度決めた後に変えられるか

変えられます。

根拠は、定め2と定め3です。本人の意思は変化しうるものとして扱って話し合いを繰り返すことと、話し合った内容をその都度文書にまとめることの2つです。繰り返すことが前提になっているので、前の記録は最後の答えではありません。

言い方は簡単です。前に決めた内容を見直したい、と伝えます。理由を説明する義務は無いので、気持ちが変わった、でも足ります。

見直したいと言ったときに、施設がすぐに動かないこともあります。そのときに使えるのが、この2つの定めです。話し合いを繰り返すことと、その都度文書にまとめることは、ガイドラインに書かれています。家族の我がままとして頼むものではありません。

それでも進まないときは、次の面談の場で介護の計画を作る担当者にも入ってもらいます。計画を見直す場は定期的に来るので、その場に載せると話が進みやすくなります。

変わりやすい場面は3つあります。本人の状態が変わったとき・家族の中で意見が変わったとき・一度救急搬送を経験したときです。実際に救急車を呼んだ経験をすると、書類の上で考えていたことと、目の前で起きることの違いが分かります。そこで前の方針を見直すのは、迷いではなく更新です。

変えたときには、伝える先が2か所あります。施設の担当者と、かかっている医師です。

厚生労働省の令和4年度の意識調査では、人生の最終段階で受けたい医療・ケアについて家族等や医療・介護従事者と話し合ったことがある一般国民は898名でした。分母は、この調査に回答した一般国民3,000名です(6,000名へ配布し、回収率は50.0%)。そのうち、話し合った内容を医療・介護従事者と「共有していない」と答えた人が733名(81.6%)います。この81.6%の分母は、話し合ったことがあると答えた898名のほうです。

出典: 厚生労働省 令和4年度 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査

この調査は20歳以上の一般国民を対象にしたもので、施設に家族を入居させている人だけを対象にしたものではありません。 施設の家族の何%がそうだ、という数字には読み替えられません。

それでも読み取れることが1つあります。家族の中で話していても、その内容が医療や介護の担当者へ伝わっているとは限りません。 決めたことを変えたときには、伝える作業が別に要ります。

伝える順番は、施設の担当者が先で構いません。施設から医師へ伝わる仕組みがあるので、家族が2か所へ同じ説明をしなくて済むことがあります。ただし、伝わったかどうかは確かめます。次の面談のときに、前に話したことがどう記録されているかを見せてもらう形です。

変えた内容は、書き直した書類として残ることも、前の書類に追記される形になることもあります。どちらでも構いませんが、日付が入っているかどうかは見ます。 日付が無い場合は、どちらが新しいのかが後から決まりません。

家族の中で先に決めておく2つのこと

面談の前に、家族の中で2つを決めておきます。

  • 決めごと1:本人の意思を推定する人
  • 決めごと2:意見が割れたときの場

2つとも、本人の状態が変わる前に決められます。

決めごと1:本人の意思を推定する人

ガイドラインは、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて話し合いを繰り返すことが重要だとしています。そのうえで、次のように書いています。

この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも重要である。

代わりに決める人ではありません。本人ならこう言うだろう、ということを伝える人です。役割が違うので、いちばん近くにいる人が務めるとは限りません。本人が何を大事にしてきたかを知っている人になります。

入居契約書に書かれている身元引受人と同じ人でなくても構いません。 身元引受人は契約や費用について施設と向き合う役で、意思を推定する人は本人の考えを伝える役です。同じ人が両方を務める形もあれば、別々の人にする形もあります。

違う人になる場合は、施設へその旨を伝えます。伝えていない場合は、施設は契約書に名前のある人へ連絡します。夜中に判断が要る場面で、伝える相手が違っていると時間がかかります。

決めるのは本人です。本人が元気なうちに、本人に決めてもらいます。

すでに決められない状態になっている場合は、ガイドラインが3つの段に分けて扱いを定めています。

  • 家族等が本人の意思を推定できる場合は、その推定意思を尊重することが基本とされています。
  • 推定できない場合は、本人にとって何が最善かを家族等と十分に話し合うことになります。
  • 家族等がいない場合は、本人にとっての最善の方針をとることが基本とされています。

3つのうちどれに当たるかで、家族が求められることが変わります。1つ目なら本人ならこう言うだろうということを伝える役、2つ目なら本人にとっての最善を一緒に考える役です。どれに当たるかは家族が決めるのではなく、話し合いの中で医療・ケアチームと確かめていくことになります。

決めごと2:意見が割れたときの場

家族の中で意見が割れることがあります。ガイドラインは、その場合についても書いています。

家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合

この2つの場合については、複数の専門家からなる話し合いの場を別途設置することとされています。医療・ケアチーム以外の者を加えて、方針等についての検討及び助言を行うことが必要である、という書き方です。

割れたまま決めなくてよい、という定めです。 割れたときに開く場が、あらかじめ用意されています。

家族からは、面談の前に1つ聞けます。「家族の意見が割れたときはどうしますか」と、施設へ尋ねる形です。施設がこの場をどう用意するかを、決める前に知っておきます。

そういう場は無い、と言われることもあります。ガイドラインが求めているのは、方針を決める側がこの場を設けることです。施設が自前で用意できない場合でも、協力医療機関の医師や地域の相談の窓口に入ってもらう形はあります。

家族の中で割れているときに、いちばん避けたいのは、割れたまま面談の日を迎えることです。その場でいちばん強く言った人の意見で決まりがちです。面談の前に、家族の間でどこが割れているのかだけを出しておきます。意見を1つにしてから行く必要はありません。

誰がどの時点で判断するか

看取りの意思確認で決めるのは、治療をやめるかどうかではありません。誰がどの時点で判断するかです。

次にすることは、面談の場で、5つの場面を1行ずつ分けて話すことです。いま決められる行・そのときに説明を受けてから決めたい行・状態ごとに書き分けたい行は、同じ紙の上で分けられます。とくに心臓や呼吸が止まったときの行は、後から連絡を受けて決める形が取れません。 その行だけは、面談の場で医師と一緒に、状態ごとの方針まで残します。

親の最期をどう迎えるかは、一度の面談で決めきれるものではありません。この面談で残せるのは、これから何度でも話し直せる道筋のほうです。