老人ホームに入居して1か月、家に帰りたいと言われたとき施設へ渡す記録

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シニアのあんしん相談室


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親を老人ホームに入居させて、まだ1か月も経っていません。面会のたびに「家に帰りたい」と言われ、このまま待てばよいのかを決めかねている家族に向けた記事です。

最初の1か月にすることは、様子を見て待つことではありません。家族が見たことを書き留めて、入居先ごとに決まった相手へ渡すことです。

次に当てはまる方には、別の記事を用意しています。

この記事が渡すのは、本人を知ってもらうために家族が出せる材料です。

計画をつくる人で分かれる入居先の種類

入居した後のケアは、計画という書面に沿って行われます。その計画を施設がつくるのか、入居する前から担当していたケアマネジャーがつくり続けるのかで、家族が話す相手と場面が変わります。

  • 種類1:施設が計画をつくる入居先
  • 種類2:外のケアマネジャーが続く入居先

どちらに当たるかは、入居のときに受け取った書面で確かめられます。

種類1:施設が計画をつくる入居先

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護付有料老人ホーム・グループホームの4つです。前の2つは施設の名称でそのまま分かります。

有料老人ホームかどうかで迷うときは、重要事項説明書を開きます。国の指導指針が示している様式では、住まいの概要のところに「類型」という欄があり、「介護付」「住宅型」「健康型」から選んで書くことになっています。介護付であれば、介護保険事業者番号と指定した自治体名も入ります。この番号があれば、介護保険の特定施設として指定を受けた介護付です。

この4つでは、施設の中の担当者が計画をつくります。書面の名前は施設ごとに違います。特別養護老人ホームと介護老人保健施設では施設サービス計画、介護付有料老人ホームでは特定施設サービス計画、グループホームでは認知症対応型共同生活介護計画です。次の章から扱う手順は、この種類に入居した場合の話です。

出典: 厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針

種類2:外のケアマネジャーが続く入居先

住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の2つです。重要事項説明書に「住宅型」と書かれているか、サービス付き高齢者向け住宅の登録を受けている旨が書かれていて、介護保険事業者番号の記載がありません。

この2つでは、介護保険の指定を受けているのが住まいではなく、訪問介護や通所介護の事業者です。計画をつくるのは、入居する前から担当していた居宅のケアマネジャーで、入居しても担当は替わりません(指定居宅介護支援等基準 第13条第1号)。書面の名前は居宅サービス計画です。この場合に何が進むかは、後の「外のケアマネジャーが続くときの手順」で扱います。

なお、サービス付き高齢者向け住宅の中には、特定施設入居者生活介護の指定を受けているものがあります。重要事項説明書に介護保険事業者番号があれば、種類1と同じ読み方になります。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

入居した月に施設が進める手順

施設が計画をつくる入居先では、最初の計画ができるまでに4つの段が進みます。そのうち2つは、施設から家族へ声がかかる場です。

施設は入居のときに本人の暮らしと病気を聞き取り、本人と家族に会って困りごとを洗い出します。そのうえで最初の計画の案をつくり、最後にその案を家族へ説明して同意を求めます。

入居のときの聞き取り

入居のときに施設が行うのは、本人がどこで何をしてきた人かを把握する作業です。

特別養護老人ホームの運営基準は、入所に際して心身の状況・生活歴・病歴・それまでのサービスの利用状況を把握するよう努めなければならないと定めています(指定介護老人福祉施設の基準 第7条第3項)。介護老人保健施設の基準も同じです(第8条第3項)。グループホームの基準は、心身の状況・生活歴・病歴等の把握に努めることを求めています(指定地域密着型サービス基準 第94条第4項)。介護付有料老人ホームの基準にあるのは、心身の状況と生活の環境を把握する定めまでで、生活歴と病歴は条文に入っていません(指定居宅サービス等基準 第179条第4項)。

4つとも条文は「努めなければならない」で終わっています。把握する努力を求めてはいますが、どこまで聞き取るかまでは決めていません。特別養護老人ホームと介護老人保健施設で把握の方法として挙がっているのは、それまで担当していた居宅介護支援事業者への照会などです。照会で受け取れるのは、そのケアマネジャーが記録に残していた分です。

入居前の暮らし方そのものは、家族が話さなければ残りません

出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

家族への面接と課題の洗い出し

計画をつくる前に、施設は本人と家族に会って困りごとを洗い出します。

特別養護老人ホームの運営基準は、解決すべき課題の把握について「入所者及びその家族に面接して行わなければならない」と定めています(第12条第4項)。介護老人保健施設も同じです(第14条第4項)。同じ項の後段は、面接の趣旨を本人と家族に十分に説明し、理解を得なければならないとしています。

家族への面接は、施設の好意ではなく、計画をつくるために踏むことになっている段取りです。計画をつくる作業の一部なので、面接は計画ができる前に行われます。

介護付有料老人ホームとグループホームの基準には、家族への面接を求める条文がありません(指定居宅サービス等基準 第184条第2項・指定地域密着型サービス基準 第98条第3項)。この2つでは、本人の状態を評価することは求められていますが、家族に会う場が定めとして用意されていません。家族が話す場面を自分から作りにいくことになります。

計画の原案と家族の希望

洗い出した課題をもとに、施設は計画の案をつくります。この案に、家族の希望が入ります。

特別養護老人ホームの運営基準は、案の作成について「入所者の希望及び入所者についてのアセスメントの結果に基づき、入所者の家族の希望を勘案して」と定めています(第12条第5項)。介護老人保健施設も同じです(第14条第5項)。介護付有料老人ホームでは「利用者又はその家族の希望」に基づいて作成することになっています(指定居宅サービス等基準 第184条第3項)。グループホームだけは条文に家族の希望が書かれておらず、本人の心身の状況と希望と生活の環境を踏まえるという書き方です(指定地域密着型サービス基準 第98条第3項)。

つまり、家族が希望を言うことは割り込みではありません。特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護付有料老人ホームでは、案をつくる材料として先から数えられています。グループホームでは条文が家族の希望を名指ししていないので、案の説明を受ける場で自分から出すことになります。

特別養護老人ホームの第12条第5項は、案に書く事柄も挙げています。本人と家族の生活に対する意向・援助の方針・解決すべき課題・サービスの目標と達成時期・サービスの内容・提供するうえでの留意事項の6つです。このうち家族が話した内容が載るのは、望んでいることを書く欄と、ケアのときに気をつけることを書く欄の2つです。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

原案の説明と同意

案ができると、施設は家族へ説明し、同意を求めます。

特別養護老人ホームの運営基準は、案の内容について入所者又はその家族に説明し、文書により入所者の同意を得なければならないと定めています(第12条第7項)。作成した計画は入所者に交付しなければならないとしています(第12条第8項)。署名するのは本人で、説明を受けるのは本人か家族です。本人が署名できない状態であれば、その扱いを施設に確かめます。

介護付有料老人ホームでも、説明・文書による同意・交付の3つは同じ形で求められています(指定居宅サービス等基準 第184条第4項・第5項)。グループホームは説明と同意と交付を求めていますが、同意を文書で得ることまでは条文に入っていません(指定地域密着型サービス基準 第98条第4項・第5項)。

この場は、説明を聞いて署名する場に見えます。実際には、案という言葉のとおり、ここはまだ案の段階です。手続きをやり直さずに最初の計画へ希望を入れられるのは、この場までです。 計画ができた後も書き直せますが、そのときは案をつくり直すところから同じ段を踏み直すことになります(第12条第12項)。

なお、最初の計画をいつまでに作るかを定めた条文はありません。ケアは計画に沿って行うことになっているため(特別養護老人ホーム 第11条第1項・介護老人保健施設 第13条第1項)、計画そのものは入居後まもなく作られると考えられます。ただし何日目に面接が来るのかは施設ごとに違うので、いつごろになるかは入居のときの窓口に聞いておきます。

外のケアマネジャーが続くときの手順

住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、計画をつくり直す場が施設の外にあります。家族が呼ばれる場も、施設の中ではなくケアマネジャーが開く場になります。

居宅のケアマネジャーは、課題の把握のときに利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならないことになっています(指定居宅介護支援等基準 第13条第7号)。案は本人の希望と把握の結果に基づき、家族の希望を勘案して作ります(同第8号)。ここまでは、施設が計画をつくる場合と同じ形です。

違うのは会議です。ケアマネジャーが開くサービス担当者会議は「利用者及びその家族の参加を基本としつつ」開くことになっています(同第9号)。家族が入ることが前提として書かれているのは、この形だけです。 案の説明と文書による同意、計画の交付も同じように定められています(同第10号・第11号)。

計画ができた後は、少なくとも1か月に1回、ケアマネジャーが本人に面接することになっています(同第14号イ)。入居して暮らしが変わったのであれば、次の面接はその変化を伝える場になります。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

家族が書き留めておく材料

家族が渡せるのは、施設がまだ持っていない情報です。

面会で見聞きした場面を施設も見ているかどうかは、家族には分かりません。分かっているのは、その場面が家族の手元にしかないことだけです。日付を付けて渡せば、施設に残っている同じ日の記録と突き合わせられます。

  • 材料1:入居前の1日の過ごし方
  • 材料2:落ち着くものと嫌がること
  • 材料3:面会で見た様子と日付

3つとも、面接や連絡のときに口で答えるだけでは抜け落ちます。書き留めておくと、そのまま渡せます。

材料1:入居前の1日の過ごし方

起きる時刻・食べ方・日中にしていたことなどを書きます。付き合いのあった人がいれば、その人のことも書きます。

入居のときの聞き取りで埋まるのは、施設が使う書式に収まる分です。書式の外にあることは、家族が話さなければ残りません。

書くときは、良し悪しではなく順番と時刻で書くと、そのままケアの手順に置き換えられます。「几帳面な人でした」よりも「毎朝6時に起きて新聞を読んでから朝食でした」のほうが、職員が動ける形になります。

材料2:落ち着くものと嫌がること

手元に置くと落ち着く物・呼ばれ慣れた呼び方・急かされたときに起きることなどを書きます。これらは、ケアのときに気をつけることを書く欄に載る種類の情報です。手元の計画書では「留意事項」という名前とは限らないので、欄の名前ではなく、そこに何が書かれているかで探します。

計画そのものは書面として残ります。特別養護老人ホームでは、施設サービス計画を記録として整備し、完結の日から2年間保存することになっています(指定介護老人福祉施設の基準 第37条第2項第1号)。居宅のケアマネジャーが続く場合も、居宅サービス計画は同じように2年間保存することになっています(指定居宅介護支援等基準 第29条第2項第2号)。口で伝えたことと違い、計画に載れば担当の職員が代わっても残ります。

材料3:面会で見た様子と日付

いつ行って何分いたか、そのとき本人が何を言ったか、前回と違って見えたことは何かを書き留めます。

日付の付いた観察は、後から施設の記録と突き合わせられます。施設は提供したサービスの内容等を記録することになっているので(特別養護老人ホーム 第8条第2項)、家族にも日付があれば、同じ日の話ができます。訪問介護などの事業者にも同じ定めがあります(指定居宅サービス等基準 第19条第2項)。

「元気がなかった」ではなく「8月10日は30分いて、その間ずっと目を閉じていた」と書くと、突き合わせられる形になります。

慣れの経過とは別に扱う体の変化

「家に帰りたい」と言い続けることと、体に出ている変化は、分けて扱います。

次の6つは、慣れの経過としてまとめられません。

  • 食事の量
  • 体重
  • 眠り方
  • 日中に起きている時間
  • 薬の変更
  • 腕や足のあざやすり傷

施設は、提供したサービスの内容等を記録することになっています(特別養護老人ホーム 第8条第2項・介護老人保健施設 第9条第2項)。事故があったときは、その状況と採った処置についても記録することになっています(特別養護老人ホーム 第35条第3項・介護老人保健施設 第36条第3項)。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、訪問してケアをした事業者に同じ記録が残ります。つまり、家族が気づいた体の変化には、突き合わせられる記録がどの入居先にもあります。

ここまで挙げた変化に気づいたときは、書き留めて次の面接まで持たずに、その日のうちに伝えます。慣れの話としてまとめて出すと、体の話として扱われないまま時間が過ぎます。

書き留めたものを渡す場面

書き留めたものを出す場面は3つです。面会と、施設から家族へ声がかかる2つの場をあわせた数です。

  • 面会のとき
  • 計画をつくる面接のとき
  • 計画を受け取った後

3つは、この順で来ます。どこで何を出すかを分けると、一度に全部を渡そうとせずに済みます。

面会のときに短く伝える

その日に気づいたことを1つだけ、その場にいる職員へ口で渡します。

面会は職員と顔を合わせる機会でもあり、短く1つなら相手の作業も止めません。ここで渡すのは、材料3(面会で見た様子)と、前の章の体の変化です。

計画をつくる面接で答える

材料1と材料2は、この面接でまとめて出します。

面接の趣旨は本人と家族に十分に説明し、理解を得なければならないとされています(特別養護老人ホーム 第12条第4項後段)。趣旨の説明を受けたら、聞かれたことに答えるだけで終わらせず、書き留めておいたものをそのまま渡します。

介護付有料老人ホームとグループホームでは、この面接が制度として求められていません。その場合は、計画の説明を受ける場面が最初の機会になります。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、居宅のケアマネジャーが行う面接がこの場に当たります。

計画を受け取った後に申し出る

計画は交付されます。受け取ったら、話した内容が載っているかを見ます。

載っていなければ、そのことを申し出ます。計画は作成後も実施状況の把握を行い、必要に応じて変更することになっています(特別養護老人ホーム 第12条第9項)。条文はこの把握をモニタリングと呼び、定期的に本人と面接して結果を記録することを求めています(指定介護老人福祉施設の基準 第12条第10項)。定期的に会って、計画のとおりになっているかを確かめて書き残す作業のことです。

つまり、計画は入居した後も書き直せます。ただし書き直すときは、案をつくり直して説明と同意と交付までを踏み直すことになります(指定介護老人福祉施設の基準 第12条第12項)。介護付有料老人ホームとグループホームにも、変更の手続きが同じように定められています(指定居宅サービス等基準 第184条第7項・指定地域密着型サービス基準 第98条第7項)。居宅のケアマネジャーが続く場合も同じです(指定居宅介護支援等基準 第13条第16号)。

入居した月に家族が残せる記録

入居して最初の1か月は、合うか合わないかを決める期間ではありません。施設か外のケアマネジャーが本人を知るための手順を進めている最中で、家族はその手順に材料を出せます。

いま始められるのは、面会のたびに日付と見たことを書き留めることです。ここを飛ばすと、計画をつくる面接で聞かれたときに、その場で思い出せる分しか渡せません。渡せなかったことは計画に載らないまま進みます。

介護のあんしんでは、入居してからの1か月のように、家族が何を伝えればよいのか分かりにくい時期の判断を扱っています。