身体拘束ができないと断られたとき、家族が探すのは拘束せずに引き受ける施設

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「介護がつらい…」「近くにどんな施設があるの?」
まずは資料を取り寄せてみよう!

シニアのあんしん相談室


※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

 

「うちでは身体拘束ができないので受けられません」という返事を受け取って、次の1件を探そうとしている家族に向けた記事です。探しているのが拘束を引き受けてくれる施設なら、探す先が違っています。探すのは、拘束しないで引き受けている施設です。 電話をかける前に、家にいながら確かめられることがあります。

次に当てはまる方には、別の記事を用意しています。

どの施設の種類にも共通する身体拘束の禁止

何件かけても見つからなかったのは、あきらめが足りないからでも、探し方が悪いからでもありません。探している先そのものが、制度の上に無いのです。

まず、公の記録に残っている食い違いを見てください。新宿区の高齢者保健福祉推進協議会(第7回・令和3年2月5日)の議事録に、在宅で介護していた家族の事例が報告されています。

「その段階で特別養護老人ホームに入ってその対象だとなったときに、結局身体拘束が必要になってしまうので、そうすると特別養護老人ホームは身体拘束できないので駄目だということで、結局あまりお金もなかったので地方のそういう高齢者住宅みたいな所に預ける選択をした方がいるのですが」

出典:新宿区 第7回新宿区高齢者保健福祉推進協議会 議事録(令和3年2月5日)

ところが、同じ会議に出席していた特別養護老人ホームの委員の発言は逆です。

「新宿けやき園ですが、中で身体拘束についての委員会とかいうのはしっかりとありまして、そういうやむを得ない場合は施設からの了解で認証することはあります。絶対駄目ということはないです。」

この委員が言っているのは、施設の中の委員会で手続きを踏めば例外として認めることがある、という意味になります。断られたときに受けた説明は、この分野で唯一の答えではありません。

ここで、この記事で使う言葉を1つ決めます。この記事で「拘束を引き受けてくれる施設」と呼ぶのは、入居の条件として、あるいは日常の手立てとして身体拘束を引き受けてくれる施設のことです。

下の表は、3行を全部読む必要はありません。どの行にも同じ言葉が並んでいることだけを見てください。

施設の種類条文禁止の文言
特別養護老人ホーム指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第11条第4項「当該入所者又は他の入所者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない」
介護付有料老人ホーム指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第183条第4項「当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない」
グループホーム指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第97条第5項「当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない」

出典:e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

この3つは、いずれも介護保険の指定を受けた施設です。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、この表に入っていません。住まいそのものが介護保険の指定を受けた施設ではないためです。

ただし拘束の扱いは、そこへ入る介護の事業所に対して同じように定められています。拘束を引き受けてくれる事業所を探しても見つからないことは、どちらに断られた場合でも変わりません。

3行の言葉はどれも同じで、施設の種類が変わっても拘束の扱いは同じです。 入居の条件として拘束を引き受けてくれる施設は、制度の上にありません。

では、この断られ方はどれくらいあることなのでしょうか。同じ議事録の中で、区の高齢者支援課長がこう答えています。

「手元の何か客観的な数字でお示しできるものが、今のこの場の議論だとありませんが」「具体な数字などは把握できていませんので」

あれから5年半が過ぎたいまも、身体拘束ができないことを理由に入居を断った施設の割合を数えた調査も、行政が正面から示した見解も見当たりません。公の情報をたどっても、この断られ方が珍しいことなのかどうかは分かりません。

では逆に、どんなときも拘束しない施設ならあるのでしょうか。

身体拘束ゼロを掲げる施設にもある例外の定め

施設のパンフレットや説明で「身体拘束ゼロ」という言葉を見かけることがあります。その施設が拘束をしない方針で運営していることは、その言葉のとおりです。

ただし、例外の定めまで消すことはできません。どんなときも拘束しない施設も、制度の上にはないのです。

さきほどの表をもう一度見てください。どの文にも「緊急やむを得ない場合を除き」という一句が入っています。禁止と例外が1つの文の中に一緒に書かれていて、その文が省令にあります。

これで、前の章の食い違いが解けます。「特別養護老人ホームは身体拘束できないので駄目だ」も「絶対駄目ということはないです。」も、同じ1文の別のところを見て話しています。

前者は禁止の部分を、後者は緊急やむを得ない場合の部分を指した言葉です。どちらも間違ってはいません。

ここで、探す先の言葉を言い直します。探すのは「例外の定めまで無い施設」ではありません。例外の定めは残っていても、それを日常の手立てとして使わずに引き受けている施設です。 前者はどこにもなく、後者は実在します。

では、その2つを分けているものは何なのでしょうか。

拘束する施設としない施設の分かれ目

施設を分けているのは、代わりの手立てを組める体制を持っているかどうかです。

  • 人手の不足と拘束の有無の関係
  • 介護報酬の減算の仕組み
  • 入居のときに本人を引き受けた3件の記録

3つとも、公の資料から言えることです。

根拠1:人手の不足と拘束の有無の関係

夜勤の時間帯に手が足りないことは、その施設で現に起きている事実です。

ただし、職員の数が多い施設ほど拘束をしない、という関係はありません。厚生労働省老健局の身体拘束廃止・防止の手引きの記述はこうです。

「身体を拘束する理由として、夜勤帯の「人手不足」を挙げている事案が見受けられますが、その理由が本当に十分なアセスメントと協議にもとづいた理由なのかを改めて振り返ってみましょう。同じ職員数であっても、身体拘束を行っていない施設と、行ってしまっている施設があります。」

出典:厚生労働省老健局 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(令和7年3月)

同じ手引きは、もう一歩踏み込んで書いています。

「身体拘束を廃止できない理由として「人手不足」を挙げる意見もよく聞かれる。しかし、現実には現行の体制で身体拘束を廃止している施設もある。(中略)逆に、基準を上回る介護体制にありながら、身体拘束を行っているところが少なくないのも事実である。」

人手の多さと拘束の有無は、結びついていません。

すると、「うちは人手がないので拘束せざるを得ず、拘束できない以上は受けられません」という説明は成り立たなくなります。残るのは、この施設がこの人に対して代わりの手立てを組める見込みを持てなかった、という事実です。

これは裏返すと、家族にとって良い知らせでもあります。同じ地域の同じ種類の施設でも、引き受ける施設とそうでない施設に分かれるのです。次の施設へ電話をかけることには意味があります。

根拠2:介護報酬の減算の仕組み

制度が施設に何を求めているかは、介護報酬の減算の仕組みに出ています。

介護報酬とは施設が介護のサービスを提供したときに受け取るお金のことで、減算とはそれが減らされることです。

減算がかかるのは「拘束した施設」ではなく「拘束をなくす仕事をしていない施設」です。

身体拘束廃止未実施減算は、次の4つのいずれかに当たる場合に適用されます。

  • 「身体拘束等を行う場合の記録がなされていない」
  • 「身体的拘束の適正化のための対策を検討する委員会を3カ月に1回以上開催していない」
  • 「身体的拘束適正化のための指針を整備していない」
  • 「介護職員その他の従事者に身体的拘束適正化のための定期的な研修を実施していない」

出典:相模原市 身体拘束廃止措置、高齢者虐待防止措置、業務継続計画の策定が未実施の対応について

4つとも、拘束をしたかどうかではなく、体制と記録の不備を問うています。

制度が施設に求めているのは、拘束の可否を家族に決めさせることではなく、拘束を減らす体制を自分で持つことです。

拘束せずに引き受けている施設は、制度が標準として想定している姿のほうに当たります。

根拠3:入居のときに本人を引き受けた3件の記録

電話をかける先になるのは、制度の想定ではなく、実際に引き受けた記録のほうです。

厚生労働省老健局の同じ手引きには、実践事例が6件載っています。そのうち入居の場面で引き受けた記録が3件です。残る3件は、すでに入居している人の話と在宅の話になります。

1件目は、幻視で暴言や暴力行為があり、転倒の危険も高い90代男性を引き受けた特別養護老人ホームの記録です。入居の前に、施設のほうから家族へこう伝えています。

「入居前に、家族には身体拘束しない方針であること、そのために転倒や無断外出のリスクがあることを丁寧に説明し、リスクについて承知したという回答があった。」

その後、この方は実際に転倒して骨折し、入院しています。結末も隠さず、家族との関係については「特に問題とならなかった」というのが手引きの記録です。「特に問題とならなかった」は手引きの原文の表現であって、法的な責任の有無についての判断ではないのです。

なお同じ事例の概要には「人員、人材は常に不足しており、介護職員の負担は大きい」という一節もあります。

2件目は、行動を止めないまま引き受けたグループホームの記録です。入居の初めから帰宅願望が続いていた80代女性で、夫が2年前に亡くなったことの認識が難しく、夫の食事を作るために帰りたいという訴えが続いていました。この施設が決めたのは、止めることではありませんでした。

「検討の結果、夫は生きているという本人の認識を否定せず、行動を止めず、毎日職員とともにグループホームから1.5km離れた家の様子を、徒歩や車で一緒に見に行くことを決めた。」

そして、記録はこう続きます。

「毎日の自宅への往復を、 3年半継続した。」

3件目は、病院で両手を固定されていた90代男性を引き受けた特別養護老人ホームの記録です。退院の時点では、この施設が右手の固定を引き継いだ状態です。

そのうえで、チューブを抜いてしまう理由を職員たちで調べました。分かったのは、当たっている部分のかゆみで顔をかくときに一緒に抜けてしまうことでした。そこで入浴と清拭でかゆみを抑えるケアに変えています。

「入居から1カ月後には経管栄養時以外は日中身体拘束せずに過ごし、2カ月後には終日身体拘束を解除することができた。」

3件目は「拘束しないで引き受けた」ではありません。「拘束されていた人を引き受けて、後から解いた」記録になります。 他の施設で拘束されていたことは、この施設が引き受けない理由になりませんでした。

この3件で言えることには、上限があります。言えるのは、そういう施設が実在することを厚生労働省の手引きが記録しているところまでです。「そういう施設は必ずある」とも「探せば見つかる」とも書きません。

3件はいずれも手引きに載せるために選ばれた実践事例です。拘束せずに引き受けている施設が全国にどれくらいあるかを数えた調査も見当たりません。

それでも、この3件から言えることはあるのです。1件だけの例外ではないことと、施設の種類も状態も1つではないことになります。特別養護老人ホームとグループホームの両方に記録があり、幻視と暴力行為・帰宅願望・チューブと抑制帯という違う状態が並んでいます。

そういう施設があるとして、家族はどうやって見つけるのでしょうか。

次に電話をかける施設の確かめ方

電話をかける前に、家にいながら確かめられることがあります。ただし公開されている情報でできるのは、言われたことと突き合わせるところまでです。そこから先は電話で聞くしかありません。

この章で渡すのは、家族が家で確かめること2つと、電話で聞くこと3つです。この5つだけで、ほかに用意するものはありません。

なお、ここから出てくる公開情報は、介護保険の指定を受けた事業所を前提にしたものです。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅に断られた場合は、電話で聞く3つが手立てになります。

電話の前に家で見る介護サービス情報公表システム

1つ目は、介護サービス情報公表システムです。全国の事業所が自分で申告した運営の状況を、誰でも開いて確かめられます。

事業所のページで「運営状況」のタブへ進むと、「利用者の権利擁護のための取組」の中に「身体的拘束等の廃止のための取組の状況」という欄があります。

項目の番号は、サービスの種類ごとに振り方が違うのです。番号ではなく、この名前と下の設問の文言で探してください。設問は3つです。

  • 「身体的拘束等の廃止のための取組を行っている。」
  • 「やむを得ず身体的拘束等を行う場合には、利用者又はその家族に説明し、同意を得ている。」
  • 「やむを得ず身体的拘束等を行う場合には、その実施経過及び理由を記録している。」

出典:介護サービス情報公表システム

この3つは、施設を見分ける力がまったく違うものです。

1つ目の設問だけでは、施設を絞り込めません。長崎県の特別養護老人ホーム12の事業所では、1つ目の設問の回答が12件とも同じでした。ただしこの12件は全国の分布ではなく、断った施設が同じ回答とは限りません。

分かれるのは、2つ目と3つ目の設問のほうです。回答は3通りに分かれました。

  • 「身体的拘束等は行わない」と表示される事業所
  • 「身体的拘束等を行うことはあるが、事例なし」と表示される事業所
  • その表示がなく、確認事項の「同意欄に署名等がある」「実施経過及び理由の記録がある」に○が付いている事業所

3通り目の事業所は、拘束をしたときの署名と記録が手元にあるという回答です。

この回答は事業所の自己申告にとどまります。調査機関の訪問調査は経ていますが、実際に拘束をしたかどうかの記録ではありません。

それに、「身体的拘束等は行わない」と答えていることは、その施設が親を引き受けてくれることを意味しません。 例外の定めは、どの施設にも同じようにかかっているためです。

この欄の使いみちは1つに絞られます。電話で「うちでは拘束できません」と言われた施設が、公開している情報では何と答えているかを見比べてください。そこが食い違っていたら、面談のときに聞く材料になります。

2つ目は、重要事項説明書です。令和7年4月から、介護保険の指定を受けた事業所は、原則として重要事項をウェブサイトに掲載することを求められています。

出典:大崎市 令和7年4月1日から義務化される運営基準などについて

探す場所は、公表システムの「事業所の特色」のタブです。「法令・通知等で『書面掲示』を求めている事項の一覧」という欄に重要事項説明書のPDFが添えられている事業所があり、そこに身体的拘束適正化の指針そのものを上げている事業所もあります。

開いたら確かめるのは、身体拘束についての方針が書かれているかどうかだけです。指針そのものが載っていれば、その施設が拘束をどう扱うと自分で決めているかが、電話をかける前に分かります。

載っていなくても、責める材料にはなりません。掲載が求められているのは重要事項であって、身体拘束の指針を載せよという定めではありません。

断られたのが地域密着型のサービスだった場合は、この2つ目を運営推進会議の記録に替えて確かめられます。

地域密着型とは、その市町村に住んでいる人だけが使える小さな事業所のことで、グループホームがここに入ります。省令は、この会議の記録を作成して公表することを事業者に求めており、開催はおおむね2月に1回以上です。

直近の記録はあるはずなので、見せてほしいと言えます。

出典:e-Gov法令検索 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準

ここまでで分かるのは、その施設が拘束を扱う体制を持っているかどうかと、公開の場で何と答えているかまでです。実際に拘束をしているかどうかも、夜間に職員が何人いるかも、公開されている情報からは分かりません。

電話で聞く夜間の人数と断った理由

ここまでを家族が家で確かめると、手が止まる場所が出てきます。公開されている情報では分からないことが、3つあるのです。

1つは夜間にその階へ実際に何人いるか、2つ目は行動や心理症状のある方に今どう対応しているか、3つ目はこの施設が直近で誰をどんな理由で断ったかです。

この3つが、そのまま電話で聞く質問になります。聞くのは加算の名前ではなく、実際の人数と手立てです。

  • 夜間、親が入る階に職員が何人いますか。
  • 行動・心理症状のある方に、今どう対応していますか。
  • 直近で受け入れを断ったのは、どういう理由でしたか。

この3つは、そのまま読み上げてかまいません。

1つ目を聞くのは、人数の多い施設を選ぶためではありません。人数の多さで拘束の有無が分かれないことは、厚生労働省の手引きが示しています。

それでも聞く理由は2つです。1つは、公開されている情報からは実際の人数が分からないことです。もう1つは、2つ目の答えを、その人数で本当に回せる話として聞けるようになることです。

見守り機器を導入した場合に人員の要件を緩める仕組みが、制度に入っています。加算の名前や配置の基準が表示されていても、夜間に何人いるかは逆算できません。

出典:厚生労働省老健局 令和6年度介護報酬改定における改定事項について

2つ目の質問には、代わりの手立てそのものが返ってきます。どういうときに拘束を考えるのか、記録をどう残すのか、いつ解くのかが分かります。

3つ目は答えにくい質問に見えますが、断る基準がいちばん出てくるのはここです。答えの中に「拘束」以外の言葉が出てきたら、そちらが本当の理由かもしれません。

3つとも具体的な答えが返ってきた施設を、次に見学へ行く先にしてください。 3つとも答えられない施設は、代わりの手立てを持っていない場合があります。

答えの良し悪しを家族が採点する必要はなく、具体的に答えられるかどうかだけで十分です。

行かなくてよい先も1つあります。入居を断られたこと自体を裁いて入居させてくれる窓口は、どこにも無いのです。

介護サービスの苦情を受け付けている国民健康保険団体連合会は、「契約の法的有効性に関するもの」と「損害賠償などの責任の有無や確定、または謝罪を求めるもの」を苦情申立の対象外と書いています。入居を断られたという契約の前の話は、この窓口の設計に入っていないのです。

出典:京都府国民健康保険団体連合会 介護サービスの苦情処理について

もし入居した後に、本当に拘束が必要になったら、その施設は何をするのでしょうか。

拘束をするときに施設が踏む手順

拘束は施設の性格ではなく、決められた手順です。始め方と解除の決め方と残す記録の3つとも、省令と公の資料が定めています。

この手順は、家族がそのまま確かめてよいものです。どういうときなら始められるのか・始める前に何を決めるのか・始めたら何が残るのかの3つとも、電話や見学の場で聞いてかまいません。

拘束が認められる3つの要件

例外にあたるかどうかを決めるのは、3つの要件です。厚生労働省老健局の手引きは、こう定義しています。

要件手引きの定義
切迫性「本人または他の入所者(利用者)等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」
非代替性「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと」
一時性「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」

出典:厚生労働省老健局 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(令和7年3月)

3つのうち1つでも欠ければ、例外にはあたりません。そのうえで同じ手引きは、こう書いています。

「介護現場において、「切迫性」「非代替性」「一時性」を満たすケースは極めて少ない。」

この3つがそろう場面は、施設の日常ではまれです。 「拘束ができないので受けられません」という説明は、日常の手立てとしての拘束を前提にした言い方になっています。

拘束を始める前に決める解除の予定

3つ目の要件が一時性なので、一時的かどうかは始めてから考えることではなく、始める前に終わりを決める話です。

大分県が出している指導の資料は、実施の期間を「必要とされる最も短い期間(長くても1月を上限)」としています。1か月を超えて続けてよい拘束は、制度の上で想定されていないという意味です。

出典:大分県福祉保健部高齢者福祉課 監査指導室 「緊急やむを得ず」身体拘束を実施する場合の留意点

決めるのは、施設の中に設けられた委員会です。この記事の初めに引いた特別養護老人ホームの委員も、委員会が認めることがあると言っていました。

さきほどの3件目の実践事例には、解くまでの経過が残っています。入居から1か月後に経管栄養のとき以外は日中の拘束を解き、2か月後には終日で解除できたという記録です。

拘束を始めた後に残す態様と時間と理由の記録

この記事の初めに出した3つの条文は、禁止を書いた次の項で、やむを得ず拘束する場合の義務を定めています。どの条文も中身が同じです。

記録する義務のほうは、「その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない」と書かれています。

何をどれだけの時間したのか・そのときの本人の状態はどうだったのか・なぜやむを得なかったのかの3つを、施設が書き残します。

出典:e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

もう1つは、体制を整える義務です。さきほどの減算の4つのうち、記録以外の3つがこれにあたります。

省令が施設に求めているのは、書類を家族に書かせることではなく、施設の中に記録と会議と研修を持つことです。

この手順のどこにも、家族の同意書は出てきません。

入居の前に署名を求められる拘束の同意書

電話や面談で「同意書に署名してもらえれば」という話が出ることがあります。署名すれば受けてもらえる、という交換は成り立たないのです。 厚生労働省老健局の手引きに、はっきり書かれています。

「また、家族への説明の確認は、同意ではないことに留意する。家族の同意は、身体拘束を認める根拠にはならない。」

出典:厚生労働省老健局 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(令和7年3月)

家族が署名しても、それだけで拘束をしてよいことにはならない、という意味です。

同じ手引きは、事前にまとめて同意を得る形も塞いでいます。

「仮に、事前に身体拘束について施設としての考え方を本人や家族に説明し、理解を得ている場合であっても、実際に身体拘束を行う時点で、必ず個別に説明を行う。」

実際に流通している様式を開くと、この書類が何のためのものかがはっきりします。千葉県が配っている「緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書」の記載欄は、次のとおりです。

「個別の状況による拘束の必要な理由」「身体拘束の方法〔場所、行為(部位・内容)〕」「拘束の時間帯及び時間」「特記すべき心身の状況」「拘束開始及び解除の予定」

出典:千葉県健康福祉部高齢者福祉課法人指導班 緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書

「拘束開始及び解除の予定」という欄がある時点で、この書式は入居のときに将来の拘束をまとめて認めるためのものではないと分かります。目の前で起きている1回の拘束について書く紙です。

いつ誰に説明するものかも、さきほどの大分県の資料が書いています。

「説明は拘束予定期間開始前に行い、対面式により行うこと。」

「十分な理解を得られた場合は、説明書に説明を受けた旨の記名押印をいただく。」

つまり、署名するのは「同意した」ことではなく「説明を受けた」ことです。

もし入居の前に署名を求められたら、それは制度が求めている手続きではありません。ただし、違法だと決めつけるだけの材料もありません。行政が名指しでそれを否定した通知は見当たらないのです。

確かめるのは「これは何の書類ですか」の一言で、争う必要はありません。 何の書類かを聞けば、その施設が拘束をどう扱っているかが自然に出てきます。署名するかどうかは、それを聞いてから決めれば足りるはずです。

電話や面談で言われる言葉が、もう1つあります。事故の責任の話です。

事故の責任は取れないと言われたときに返す言葉

「拘束できないので、事故が起きても責任は取れません」と面談で言われると、その場で返す言葉が出てきません。

施設が恐れているのは本物です。転倒の事故は現に起きますし、起きたときに説明を求められるのは施設のほうです。

ただし、厚生労働省老健局の指針は逆を書いています。次は事故予防のガイドラインの一節です。

「過度な転倒防止策は身体拘束につながるリスクがある」「利用者を寝たきりにさせてベッドから動かないようにすれば転倒は発生しませんが、これは行動の自由そのものを奪う「身体的拘束等」に該当する可能性があり、身体拘束は介護施設等において原則禁止されています。」

出典:厚生労働省老健局 介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン(令和7年11月)

同じガイドラインは、施設の位置づけそのものにも触れています。「特別養護老人ホームをはじめとする介護施設等は、あくまで生活の場です。事故を防ぐためといって、日常の行動を制限することは、高齢者の自立を支えることにつながりません。」という一節です。

身体拘束の手引きは、もう一歩踏み込みます。

「仮に身体拘束によって転倒が減ったとしても、それは転倒を防止しているのではなく、本人を転倒すらできない状態にまで追い込んでいることになる」

出典:厚生労働省老健局 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(令和7年3月)

転ばせないことを突き詰めると、動けなくすることに行き着きます。

では、家族は何と言えばよいのでしょうか。答えは、さきほどのガイドラインの中にあります。

「施設としては「対策を取り得る転倒」の予防にフォーカスするためにも、個別の転倒リスクの把握に努め、「防ぐことが難しい転倒」があることを、本人・家族に対して十分に説明し、理解してもらうことが重要です。」と書かれています。

施設が家族に理解してほしいと求められていることを、家族のほうから先に言ってしまう形です。返せるのは「拘束してください」でも「転ばせないでください」でもありません。「防ぐことが難しい転倒があることは分かっています」です。

この言い方には裏づけがあるのです。さきほどの1件目の実践事例で、施設が入居の前に家族へ伝え、家族から承知したという回答を得ていた中身にあたります。

では、断られた理由は本当に拘束だったのでしょうか。

拘束以外の断りの理由

「拘束できないので」と言われたその下に、別の理由が隠れていることがあります。

  • 特別養護老人ホームが断った理由の調査
  • 断ることへの制限を定めた省令と通知
  • 大田区が入所の順番に使う指針

3つとも、家族が自分で開ける公の資料です。

資料1:特別養護老人ホームが断った理由の調査

特別養護老人ホームが入所を断った理由を、まとめて聞いた調査があります。その選択肢に「身体拘束ができないため」はありません。

国の補助事業として行われた調査で、一般財団法人日本総合研究所がまとめたものです。平成30年度内に特別養護老人ホームが入所不可と判断した1,778人について、その理由を聞いた結果が載っています。回答は複数選べる形式です。

断った理由割合
医療的ケアの必要性が高く、対応が難しかった67.8%
認知症による周辺症状への対応が難しかった25.3%
精神疾患等への対応が難しかった19.2%
入所申込者の性別に該当する部屋の空きがなかった8.4%
看取り希望への対応が難しかった2.6%

出典:一般財団法人日本総合研究所 特別養護老人ホームの入所申込者の実態把握に関する調査研究 報告書(令和元年度 老人保健健康増進等事業)

この数字は「平成30年度内に特別養護老人ホームが入所不可と判断した1,778人について、その理由」という設問のものです。断られる理由の7割が医療的ケアだという意味にはなりません。 断った施設が挙げた理由の中で、それがいちばん多かったという意味です。

親に医療的な処置があるなら、そちらが断りの理由だった可能性があります。

資料2:断ることへの制限を定めた省令と通知

特別養護老人ホームについて、断ってよい場合は限られたものです。省令は「正当な理由なく指定介護福祉施設サービスの提供を拒んではならない」と定めており、その読み方を示した解釈通知が、拒める場合をこう限っています。

「提供を拒むことのできる正当な理由がある場合とは、入院治療の必要がある場合その他入所者に対し自ら適切な指定介護福祉施設サービスを提供することが困難な場合である。」

出典:厚生労働省 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について(老企第43号)

この中にも「身体拘束ができないから」は出てこないのです。

さらに、断って終わりにしてよいとも書かれていません。自ら適切な便宜を提供することが困難な場合は、適切な病院や診療所・介護老人保健施設・介護医療院を紹介するなどの措置を速やかに講じることが、省令に定められています。

出典:e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

介護付有料老人ホームは、これより弱くなります。同じ形の条文はありますが、「正当な理由なく入居者に対する指定特定施設入居者生活介護の提供を拒んではならない」と、主語が「入居者」です。すでに入居している人についての定めであって、入居の申込みの段階を直接縛る条文にはなりません。

出典:e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅については、入居の申込みを断ることへの制限が見当たりません。

紹介などの措置が省令に定められているのは、ここで見た4つのうち特別養護老人ホームだけです。 ほかの3つに断られた場合、制度をたどっても次の施設は出てきません。前の章の電話で聞く3つが、そのまま手立てになります。

資料3:大田区が入所の順番に使う指針

特別養護老人ホームに入る順番に使われるのは、自治体が定める入所指針の点数です。ここでは大田区のものを例にします。

施設が拘束の理由に挙げる状態そのものが、入る順番を上げる項目として加点されています。

「認知症などによる症状」の欄は、項目がA・B・Cの3つのグループに分かれた形です。当てはまる項目1つにつき、Aは5点・Bは3点が付きます。

Aにあるのは「徘徊(室内を含む)」です。Bに並ぶのは「介護に抵抗する」「一人で外に出たがり、目が離せない」「転倒転落の危険があり、目が離せない」の3つです。

出典:大田区 指標及び項目点数表

入所指針は自治体ごとに定めるものなので、点数の付け方は地域で違います。見てほしいのは配点の数字ではなく、加点する向きのほうです。

介護報酬にも同じことが出てきます。特別養護老人ホームの介護報酬には、医師が「認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に入所することが適当であると判断した者」を受け入れた場合の加算があります。

制度はこの状態の人を、受け入れにくい人ではなく、優先して受け入れる人として設計しているのです。

出典:指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日 厚生省告示第21号)

ただし、入れるかどうかを最終的に決めるのは施設です。順位を付けるのは区でも、入所を決めるのは施設の入所検討委員会で、断る理由そのものを家族へ説明する義務も書かれていません。制度に違反しているから戦える、という話ではないのです。

そこで、前の章の3つ目の質問をしてください。「直近で受け入れを断ったのは、どういう理由でしたか」と聞きます。答えの中に医療の処置の話が出てくるなら、当たる先そのものを変えたほうが早いかもしれません。

今日から変える施設の探し方

拘束を引き受けてくれる施設を探すのは、今日でやめてください。探すのは、拘束しないで引き受けている施設です。

次の1件へ電話をかける前に、その施設が公開している情報で、言われたことを突き合わせてください。ここを飛ばすと、同じ探し方のまま次の断りを受けることになります。

当サイトは介護施設を運営している事業者ではありません。施設が自分では言いにくいことも、家族の立場から書けます。