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要支援1、あるいは要介護1や2で、「まだ軽いので、うちでは」と言われて断られた親の家族に向けた記事です。歩けるし身の回りのことも半分はできるのに入れず、理由が「軽いから」のまま止まっている段階を想定しています。
この記事を読むと、その断りが制度上の対象外なのか、施設の受け入れの判断なのかを分けられます。そのうえで、どちらだった場合に次へ何を聞き、どの施設を見直すかまでが分かります。
「軽いから断られた」と受け取っている場合、そもそも制度上の対象ではない施設に申し込んでいた可能性があります。逆に、制度上は対象なのに、自分で入居先の候補から外していた施設もあります。
「軽いのに断られた」だけでは、理由はまだ分かりません。 断りには2つの種類があり、次にやることがまるで違うからです。一つは、その施設が制度上そもそも対象としていない場合。もう一つは、制度上は対象なのに、その施設が受け入れの判断として難しいと考えた場合です。前者なら、聞き方を変えても答えは変わりません。対象になる施設を探すことになります。後者なら、何が難しいのかを具体化すれば、同じ施設でも、別の同じ種類の施設でも、道が残ります。
この記事が想定する状況は、大きく2つに分かれます。まず、どちらが自分かを選んでください。
前者の論点は、制度上の対象かどうか、その施設の入居の条件、提供されるサービスの範囲です。後者の論点は、認知症への対応、外へ出ようとすること、夜間の様子、行動の特性と見守りの体制の相性です。
この2つは、断られる理由も、次に確かめる情報も違います。前者なら、この記事の前半(制度上の対象と、施設への聞き方)が本体になります。後者なら、それに加えて後半の章(歩ける認知症では行動の具体を伝える)が本体になります。
要介護度が上がるのを待つ必要はありません。 「要介護3にならないと入れないのだろう」と考えて時間を置くのは、この記事が最も避けたい進み方です。今の状態で対象になる施設はありますし、対象なのに外していた施設もあります。
なお、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームの詳しい比較、夜間の職員の人数、ケアマネジャーの変更を条件とする運用は、この記事では扱いません。「空室があると書いてあるのに断られた」の検証も、この連載の別の記事で扱います。
介護度と認知症の有無で、制度上の対象は次のように変わります。表に出てくる2つの言葉を、先に説明しておきます。
介護専用型特定施設とは、介護付有料老人ホームのうち、入居できる人が要介護の人に限られているもののことです。次の章で詳しく扱います。特例入所とは、特別養護老人ホームの原則(要介護3以上)の例外として、要介護1・2の人でも入所が認められる仕組みのことです。
| 状態 | 特養 | グループホーム | 介護専用型特定施設 |
|---|---|---|---|
| 自立・要支援1 | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
| 要支援2で認知症あり | 対象外 | 介護予防の指定と住所の条件を満たせば対象 | 対象外 |
| 要支援2で認知症なし | 対象外 | 認知症の要件を満たさず対象外 | 対象外 |
| 要介護1・2で認知症あり | 特例入所に当たるかを確認 | 住所の条件を満たせば対象 | 制度上は対象 |
| 要介護1・2で認知症なし | 特例入所に当たるかを確認 | 認知症の要件を満たさず対象外 | 制度上は対象 |
つまり、法律や省令で入れる人の範囲が決まっている施設と、決まっていない施設があります。 そして、決まっている施設でも、状態によって答えが変わります。この表は「入れる/入れない」の判定表ではなく、どこから確かめ始めるかを示すものです。
この表の欄は、2種類に分かれます。 ここを取り違えると、申し込めた先を自分で落とすことになります。
前者は、介護度と認知症の有無だけで線が引かれています。だから電話をかけずに入居先の候補から外してかまいません。
後者は、自分で判定して落とさないでください。 特例入所に当たるかは自治体と施設の運用で決まります。介護予防の指定を持っているかは事業所ごとに違います。住所の条件は、介護保険料を納めている市町村(保険者)との関係で決まります。どれも手元の書類には書かれていません。
表について、3つ注記を置きます。
グループホームの「介護予防の指定」。 要支援2で対象になるのは、その事業所が介護予防認知症対応型共同生活介護の指定を持っている場合に限られます。だから電話で確かめるのは「要支援でも入れますか」ではなく、「介護予防の指定を受けていますか」です。
グループホームの「住所の条件」。 グループホームは地域密着型サービスに分類され、介護保険法第42条の2第1項は、地域密着型介護サービス費をその市町村の被保険者が受けたときに支給すると定めています。つまり、原則としてその市町村に住民票がある人が対象になります。隣の市のグループホームで断られたなら、それは施設の判断ではなく制度上の決まりである可能性があります。この場合は「何が難しいのか」を聞いても空振りになります。自分の市のグループホームを探し直すほうが早く進みます。
介護専用型特定施設の「対象外」。 これは本人が単独で申し込む場合の話で、配偶者などと一緒に入る形については別に定めがあります。そして要支援の場合は、この列で止まらないでください。同じ「介護付有料老人ホーム」でも、次の章で扱う混合型なら話が変わります。
表の読み方はここまでです。次は、この3つの種類がそれぞれ誰を対象にしているのかを見ます。
表の「対象外」と「制度上は対象」は、こちらで決めた区分ではありません。どの種類について、どの法律と省令が誰を対象にしているのかを、順に示します。要介護1・2の家族は、この章の特例入所のところを飛ばさないでください。 表で「特例入所に当たるかを確認」となっていた欄の中身が、ここにあります。
特別養護老人ホームは原則要介護3以上です。
この決まりは、法律から省令へ3段でつながっています。介護保険法第8条第22項の括弧書きが、入所する要介護者を「厚生労働省令で定める要介護状態区分に該当する状態である者」に限っています。次に介護保険法施行規則第17条の9が、その区分を認定省令第1条第1項第3号から第5号と定めています。そして認定省令のその号が、要介護3・要介護4・要介護5です。なお第8条第22項の括弧書きは「以下この項及び第二十七項において同じ」とされているため、定員30人以上の介護老人福祉施設(第27項)にも及びます。
出典:介護保険法(平成9年法律第123号) /介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号) /要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成11年厚生省令第58号)
要介護1・2には特例入所があります。 やむを得ない事由に該当する場合に認められるもので、その事由は次の4つです。
自分の親がどれかに当たると思うなら、それは自己判定で終わらせず、申し込む施設と自治体に確かめます。要支援と自立は、この特例の対象にも入りません。
出典:厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(介護保険最新情報Vol.1141・令和5年4月7日)
グループホームは、要介護者で認知症である人が対象です。 介護保険法第8条第20項がそう定めています。要支援者向けは介護予防認知症対応型共同生活介護という別のサービスで、第8条の2第15項により要支援2のみが対象になります。要支援1と自立は、どちらにも該当しません。
介護専用型特定施設は、入居者が要介護者とその配偶者などに限られます。 介護保険法第8条第21項がそう定義し、要支援者向けの介護予防特定施設入居者生活介護(第8条の2第9項)は「特定施設(介護専用型特定施設を除く。)に入居している要支援者について」と規定して、介護専用型を明示的に外しています。
出典:介護保険法(平成9年法律第123号)第8条・第8条の2
つまり、断られたのが制度上の決まりなのか、その施設の判断なのかは、ここで分かれます。 介護度と認知症の有無だけで「対象外」と確定した施設なら、そこに何を聞いても答えは変わりません。一方、対象に入っていることが確かめられたのに断られたなら、それは施設の判断です。確定していない欄は、まだどちらとも決まっていません。
ここまでが、介護度で線が引かれている3つの種類の話です。
ここからは、要介護度の下限が定められていない種類に移ります。この種類では、介護度の軽さだけで入口が閉じることはありません。ただし、制度上の対象に入っていることと、その施設が受け入れられることは別なので、そこを2段階に分けて確かめます。
要介護度の下限の定めが無い種類もあります。 この記事で挙げるのは次の3つです。
混合型特定施設は、介護専用型ではない介護付有料老人ホームのことで、要介護の人と要支援の人が同じ建物にいる形になります。住宅型有料老人ホームでは、介護のサービスを外部の事業者と別に契約して受けます。サービス付き高齢者向け住宅には、60歳以上、または60歳未満で要介護・要支援の認定を受けている人、という年齢の要件があります。
出典:介護保険法第8条の2第9項(混合型) /老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第1項(有料老人ホームの定義に要介護度の要件は置かれていない) /サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム
ここで大事なのは、下限の定めが無いことと、その施設に入居できることは別だという点です。次の2段階に分けて考えます。
つまり、対象に入っていることは、受け入れられることの保証ではありません。 個別の施設には、それぞれの入居の条件、認知症への対応の範囲、医療への対応の範囲、年齢、契約上の条件があります。1で対象だと分かっても、2で断られることはあります。
逆に、1で確定して対象外だった施設は、2を聞く前に入居先の候補から外してかまいません。ただし外してよいのは、介護度と認知症の有無だけで線が引かれている場合に限ります。 特例入所、介護予防の指定、住所の条件が絡む欄は、聞かなければ確定しません。自分で判定して落とさないでください。
自立と要支援1の親の場合、特養・グループホーム・介護専用型特定施設はいずれも制度上の対象外で確定します。この場合に見るのは、先ほど挙げた3つ(混合型特定施設・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅)のほうです。ここが、この記事の範囲でお渡しできる手順になります。
ここまでの3つを、例に当てはめます。
当てはめの例
母は要支援2で、アルツハイマー型認知症の診断を受けています。介護付有料老人ホームに申し込みましたが「要介護の方が対象です」と断られました。グループホームは「要介護の人が入るところ」と聞いていたので、入居先の候補から外していました。
この場合、外していたグループホームが入居先の候補に戻ります。要支援2で認知症なら、介護予防認知症対応型共同生活介護の指定を持つ事業所が対象になるからです。断られた介護付有料老人ホームのほうは、介護専用型だった可能性があり、その場合は混合型を探すことになります。確かめる前に外していた先が、2つあります。
この「介護専用型か、混合型か」は、外から見ただけでは分かりません。次の章で扱います。
「介護付」と書いてあるだけでは、要支援の親が入れるかどうかは決まりません。パンフレットにも、施設の看板にも、「介護付有料老人ホーム」としか書かれていませんが、この呼び名は、入れる人の範囲が違う2つの種類をひとまとめにしているからです。
介護専用型特定施設は、入居者が要介護者とその配偶者などに限られます。混合型特定施設にはこの限定が無く、要支援や自立でも制度上は入居できます。
出典:介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第21項・第8条の2第9項
つまり、要介護の人だけを受ける施設と、要支援の人も受ける施設があります。 そして、外から見ただけでは区別がつきません。
当てはめの例
たとえば、同じ市内の「介護付有料老人ホーム」2件に、要支援2の親について問い合わせたとします。1件目は「申し訳ありませんが、要介護の方が対象です」。2件目は「要支援の方もいらっしゃいますよ」。同じ呼び名なのに答えが割れたのは、片方が介護専用型で、もう片方が混合型だったからです。
だから、最初の電話で聞く言葉が決まります。制度用語からは入りません。
現在は要支援○ですが、入居の対象ですか。要介護の方だけを対象にした施設ですか。
担当者が制度用語で話す相手なら、続けて「制度上は介護専用型ですか、混合型ですか」と添えれば足ります。ただし、こちらから制度用語で切り出す必要はありません。
ここで一つ、はっきりお伝えします。要介護1や要介護2なら、介護専用型を入居先の候補から外さないでください。 要介護1・2は介護専用型の制度上の対象です。「軽いから介護専用型は無理だろう」という思い込みで外すと、選べる先が減ります。
ここまでで、制度上の対象かどうかを確かめる材料を渡しました。次は、対象だと分かったのに断られた場合を扱います。
制度上の対象だったのに断られたなら、それはその施設の受け入れの判断です。判断である以上、何を見て難しいと考えたのかがあります。
聞くのは3つです。
「制度上の対象外」と「施設の受け入れの判断」は、次にやることが正反対です。 前者なら、その施設だけでなく、同じ種類の施設すべてが対象外になります。だから別の種類を探すことになります。後者なら、同じ種類の別の施設に可能性が残ります。この違いを聞かずに次へ進むと、対象外の種類を何件も当たることになります。
当てはめの例
「軽い方はお断りしています」と言われました。ここで引き下がらず、3つを聞きます。返ってきたのが「うちは介護専用型なので、要支援の方は制度上お受けできません」であれば1の話であり、混合型を探すことになります。返ってきたのが「日中お一人で過ごせる方向けの造りなので、目を離せない方は今の職員数では難しい」であれば2の話であり、何が「目を離せない」と判断されたのかを詰めることになります。「事前に面談して様子を見せていただければ、もう一度検討します」まで返ってくれば3の話です。
「軽いから」で終わらせないでください。 その一言の下に、制度上の決まりがあるのか、体制の話があるのか、まだ動く条件があるのかが隠れています。
親に認知症があって自分で歩ける場合は、聞くだけでなく、こちらから渡す材料もあります。次の章で扱います。認知症を伴わない親の場合は、この章までで足りるので、次の章は飛ばしてかまいません。
親に認知症があり、自分で歩ける場合の話をします。この場合、「転びません」「大丈夫です」と反論しても、施設の判断は動きません。
施設が知りたいのは、安全の保証ではないからです。知りたいのは、現在の人員と設備で対応できるかどうかです。自分で移動でき、家に帰りたいという気持ちが強い場合は、行動の範囲が広くなるため、施設は今の体制で安全に対応できるかを慎重に確認することがあります。保証を求めているのではなく、見通しを立てようとしています。
だから渡すのは、見通しを立てるための材料です。次の項目を書き出します。
つまり、その時間帯にその行動へ人を割けるかという話に、施設は答えようとしています。だから時間帯と頻度が入っていないと、施設は答えを出せません。
当てはめの例
父は要介護2で、レビー小体型認知症の診断を受けています。歩行は自立しています。夕方4時から6時ごろにかけて「仕事に行く」と言って玄関へ向かうことが、週に3回ほどあります。声をかけて用事を頼むと、10分ほどで落ち着きます。夜は21時ごろに就寝し、朝までまとまって眠ります。この半年で転倒は1回、外へ出てしまったことはありません。
この形で渡すと、施設は「夕方の2時間に、週3回、10分程度の声かけ」という具体の負担として読めます。「認知症で歩けます」とだけ伝えたときとは、渡している情報の質が違います。 断られる場合でも、何が難しかったのかが残ります。
ここまでが、断られたときに確かめることと、渡すものです。最後は、待つという選び方についてです。
要介護度が上がるのを待つのは、次にやることではありません。 待っている間に選べる先が増えるわけではありませんし、状態が変われば別の条件で断られます。
断られた理由が施設の種類の不一致だったなら、今の状態で対象になる種類へ切り替えます。「空室があると書いてあるのに断られた」と感じているなら、空室の表示と、その人を受け入れられるかどうかが同じとは限りません。この2つ(理由別の切り替えの全体像と、空室表示の検証)は、どちらもこの連載の別の記事で扱います。
そのうえで、この記事の範囲でできることが一つあります。再検討の条件を聞くことです。 何が変われば、もう一度見てもらえるのか。事前の面談、体験の利用、いま利用している支援者からの情報提供が判断の材料になるのか。それを断った施設に確かめます。
再検討の条件があるかどうかは、聞かなければ分かりません。 断られた時点で終わりだと受け取って電話を切ると、この情報は手に入りません。
認定について、一つだけお伝えします。「介護度を上げるために」認定を受け直すことは勧めません。 ただし、認定を受けたときと現在の状態にずれがあると感じているなら、それは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してかまいません。目的が「上げること」ではなく「今の状態に合わせること」であれば、話は別です。
電話で聞くことと、その返事を受けてから進めることは、別です。まず、電話で聞くことを2つに絞ります。
1本目の電話で聞くのは、次の2つだけで足ります。
前の章で挙げた3つ目(追加の情報や事前の面談で再検討される余地があるか)は、1本目では聞きません。 2の答えが返ってきてからでないと、何を出せば再検討されるのかを具体的に聞けないからです。だから3つ目は、下の分岐のほうへ回します。
この2つが分かれば、次に進む先が決まります。返事によって、進む先はこう分かれます。
対象外だと言われたとき。 章1の表に戻り、制度上の対象になる施設の種類を確かめます。要支援2で認知症なら介護予防の指定を持つグループホーム、要支援なら混合型特定施設、というように入居先の候補が残っていることがあります。確定して対象外だったのは、聞いた施設だけです。 理由別の切り替えの全体像は、この連載の別の記事で扱います。
親が自立か要支援1のとき。 特養・グループホーム・介護専用型特定施設は制度上の対象外で確定します。見るのは、要介護度の下限の定めが無い種類(混合型特定施設・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅)です。そのうえで、下限が無いことは入居できることを意味しません。 それぞれの施設の入居の条件、年齢、契約上の条件を、施設ごとに確かめます。
対象で、施設の判断だと言われたとき。 ここで前の章の3つ目を使います。どの情報を出せば再検討されるのかを聞きます。事前の面談や体験の利用が材料になるかも、あわせて確かめます。
親に認知症があって歩けるとき。 前の章の項目を一枚にまとめて渡します。動く時間帯、行動の範囲、頻度ときっかけ、夜間の様子、声かけへの反応、最近の事実です。認知症を伴わない親の場合、この作業は要りません。
空室があるのに断られたと感じるとき。 空室の表示と受け入れの可否は別のことがあります。この連載の別の記事で扱います。
言い切ると、こうなります。「軽いから」で終わらせず、制度上の対象か施設の判断かを分けてから動きます。 この分岐を1本の電話で済ませられれば、要介護度が上がるのを待つ理由は無くなります。
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この記事で使った資料は次のとおりです。
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