※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

生活保護を受けている親の入居先を探していて、「生活保護の方は受け入れていません」と何件も断られている方に向けた記事です。断られる理由は、その施設が生活保護を嫌っているからではありません。家賃が住宅扶助の上限に収まるかどうかと、残りの費用を生活扶助で払えるかどうかという、料金の決まり方のほうにあります。だから家族が動かせるのは施設の判断ではなく、向かう先のほうになります。
ケアマネジャーや紹介の事業者から言われた方は、その窓口で止まっていないかを確かめる記事もあわせて読んでください。これから生活保護を申請する方と、すでに入居していて費用が足りない方は、この記事では扱いません。
何件も断られていると、生活保護を受けていること自体で選り分けられているように思えてきます。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が断るときに見ているのは、生活保護を受けているかどうかではありません。家賃が住宅扶助の上限に収まるかどうかと、残りの費用を生活扶助で払えるかどうかの2つです。
だから「生活保護の方は受け入れていません」は、その施設の料金表についての説明として聞くほうが実体に近くなります。
ここから家族が打てる手は2つに分かれます。断った相手が根拠を問える種類の施設なら、その根拠を問えます。問えない種類だったなら、行き先を変えます。向かう先は、市町村が入所を決める住まいと、料金が住宅扶助と生活扶助に収まる民間の住まいの2つです。
何件も断られているのなら、先に向かうのは市町村の高齢福祉の担当課です。 民間の住まいを当たり直す前に、そこにしか申し込めない行き先を確かめられます。
断りに根拠を問えるのは、入居の申し込みを断ることを禁じた決まりがある種類だけです。
まず、自分の親が申し込んでいるのがどの種類かをはっきりさせてください。
種類の名前は、パンフレットや重要事項説明書の初めのほうに書かれています。見つからなければ、施設に「こちらは介護付きですか、住宅型ですか」と聞けば分かります。介護付きかどうかは、「介護保険の特定施設の指定を受けていますか」という聞き方でも確かめられます。
介護老人保健施設・介護医療院・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を当たっている場合も、所得を理由に断ってよいと定めた決まりはありません。ただし、所得の多寡を名指しして禁じた解釈通知があるのは特別養護老人ホームだけです。介護老人保健施設の解釈通知が挙げているのは、要介護度の多寡のほうです。
特別養護老人ホームでは、入所の申し込みを断ることが省令で禁じられています。
指定介護老人福祉施設は、正当な理由なく指定介護福祉施設サービスの提供を拒んではならない。
出典: 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov 法令検索)
指定介護老人福祉施設というのが、制度の上での特別養護老人ホームの呼び名です。
この条文をどう読むかは、厚生労働省の解釈通知が示しています。
基準省令第四条の二は、原則として、入所申込に対して応じなければならないことを規定したものであり、特に、要介護度や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止するものである。提供を拒むことのできる正当な理由がある場合とは、入院治療の必要がある場合その他入所者に対し自ら適切な指定介護福祉施設サービスを提供することが困難な場合である。
出典: 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について(厚生労働省法令等データベース)
所得の多寡という言葉で、名指しで禁じられています。
断ってよい正当な理由として挙がっているのは2つだけです。入院治療が必要な場合と、自分のところでは適切なサービスを提供できない場合で、経済的な事情はここに入っていません。
定員がふさがっているときの優先順位も、同じ省令の第7条第2項が定めています。判断の材料は介護の必要の程度と家族等の状況の2つで、経済状況はそこに出てきません。
だから、特別養護老人ホームに所得を理由に断られたのなら、断る正当な理由は何かをその施設に聞けます。 省令と解釈通知の現物を示せば、話は「受け入れる方針かどうか」から「この断りが正当な理由に当たるかどうか」へ移ります。
要介護度を理由に断られた場合は、所得の話ではないので、この記事とは別の話になります。
所得を理由に断れないことと、申し込めば入れることは別です。定員がふさがっているときは申し込んだ順ではなく、介護の必要の程度と家族等の状況で優先順位が付きます。 親の要介護度が低いために断られているのなら、所得の話を持ち出しても入所には近づきません。
介護付き有料老人ホームが受けているのは、介護保険の特定施設の指定です。この指定には、入居の申し込みを断ってはいけないという条文が引き継がれていません。
提供拒否の禁止は指定居宅サービス等基準の第9条にあります。ただし、特定施設に何を準用するかを列挙した第192条に、この第9条が入っていません。
出典: 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第192条(e-Gov 法令検索)
代わりにあるのが第179条第1項です。
指定特定施設入居者生活介護事業者は、正当な理由なく入居者に対する指定特定施設入居者生活介護の提供を拒んではならない。
出典: 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第179条(e-Gov 法令検索)
この第1項が守っているのは、すでに入居している人です。同じ条の第3項が「入居申込者又は入居者」と書き分けているので、第1項が入居済みの人に限っているのは書き落としではないと考えています。
住宅型有料老人ホームは、そもそも介護保険の施設サービスではありません。老人福祉法第29条が定めているのは、届出と情報の開示と前払金の保全です。
国の有料老人ホーム設置運営標準指導指針にも、経済的な事情を理由に入居を断ることを制限する記述はありません。東京都が出している同じ名前の指導指針も同じです。
出典: 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について(厚生労働省)
有料老人ホームについて家族が確かめるのは、断りの当否ではなく料金の形のほうです。
介護付きのサービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームの介護付きと同じ特定施設の指定を受けています。条文の形も同じです。
一般型の根拠法は、高齢者の居住の安定確保に関する法律です。登録の基準として定められているのは、入居者を高齢者とその配偶者にすることで、収入や生活保護についての定めはありません。
出典: 高齢者の居住の安定確保に関する法律 第7条(e-Gov 法令検索)
一般型のサービス付き高齢者向け住宅と住宅型有料老人ホームについては、ここまでが制度の全部です。介護保険のサービスを自分で行っている施設には、もう1つ別の道が用意されています。
介護保険のサービスを自分で行っている事業者は、特別養護老人ホームを除いて、生活保護の指定から自分の申し出で外れられます。
介護扶助でサービスを使うには、その事業者が生活保護法の指定介護機関である必要があります。介護保険の指定を受けていれば、自動的に指定を受けたものとみなされます。
そこにただし書があります。
ただし、当該介護機関(地域密着型介護老人福祉施設及び介護老人福祉施設を除く。)が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、別段の申出をしたときは、この限りではない。
括弧の中の介護老人福祉施設は特別養護老人ホームのこと、地域密着型介護老人福祉施設は小規模な特別養護老人ホームのことです。この2つは申し出の対象から外れています。
そこが生活保護の指定介護機関かどうかは、その施設に聞いて確かめられます。 外れているのなら、その施設ではどう交渉しても介護扶助が使えません。聞いたその場で、その施設を外して次を探せます。
これは施設自身が介護保険のサービスを行っている場合の話です。住宅型有料老人ホームと一般型サービス付き高齢者向け住宅には当たりません。
指定から外れていない施設でも、入居が認められるのは料金が生活保護で払える形になっている場合だけです。有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅には、断りに問える条文もありません。
次にすることは、同じ種類の施設をもう1件申し込むことではなく、行き先を変えることです。
同じ「生活保護を受けている」という事実が、断る理由になる場所と、入る理由になる場所に分かれています。
契約を結んで入る住まいとは、仕組みそのものが違います。
養護老人ホームでは、経済的な理由で自宅での生活が難しいことが入所の要件になります。老人福祉法第11条第1項第1号が、環境上の理由と経済的な理由の2つを挙げ、65歳以上の方について市町村が入所させる措置をとると定めています。措置とは、施設と入居の契約を結ぶのではなく、市町村が入所させると決める仕組みのことです。
その経済的理由を、政令が具体的に挙げています。
法第十一条第一項第一号に規定する政令で定める経済的理由は、次のとおりとする。
一 当該六十五歳以上の者の属する世帯が生活保護法による保護を受けていること。
経済的理由の第一号が、生活保護を受けていることです。
窓口は市町村の高齢福祉の担当課です。入所を決めるのは市町村長で、入所判定委員会の意見を聴いたうえで決めます。
出典: 老人ホームへの入所措置等の指針について(厚生労働省)
契約で入る住まいなら、その施設に断られた時点で、その施設については話が終わります。措置は違います。決めるのは市町村なので、当たる先は施設ではなく市町村の窓口です。
有料老人ホームの窓口を回り続けている限り、この行き先には着きません。 市町村が入所を決める施設は、紹介の事業を通る道の外にあります。
窓口では「養護老人ホームの措置の相談をしたい」と切り出せば伝わります。措置の基準は環境上の事情と経済的事情の2つで、聞かれるのも次の3つです。
市町村が調べて入所判定委員会にかけたうえで、市町村長が決めます。返事までには日数がかかります。
養護老人ホームの定員には、全国では空きが残っています。
令和6年10月1日現在で、養護老人ホームは全国に918か所あります。定員は59,812人で、在所者は50,543人です。定員に対する在所者の割合は84.5%になります。
出典: 令和6(2024)年 社会福祉施設等調査の概況(厚生労働省)
この数字は、空いている部屋がすぐ使えるという意味ではありません。入所を決めるのは市町村なので、空いている部屋の数と入れるかどうかは別に動きます。
厚生労働省老健局高齢者支援課長の通知は、市町村へ次のように求めています。
養護老人ホームの措置状況について、地域によっては定員に対する入所者の割合が必ずしも高くないケースもあることから、各市町村の関係部(局)や地域包括支援センター、介護支援専門員、民生委員等の関係機関へ措置制度の周知や連携も行った上で、入所措置すべき者の適切な把握を行うとともに、管外に所在する養護老人ホームも含めた広域的な施設の活用など、措置を必要とする者に対する措置制度の適切な活用をお願いする。
出典: 老人保護措置費に係る支弁額等の改定について(令和7年1月23日 老高発0123第1号・厚生労働省)
この通知は、措置制度が支援に当たる関係機関にも十分に知られていないという見立てで書かれています。相談の場で措置の話が出てこなかったとしても、自分から名前を出して聞けます。
介護がどこまで受けられるかは施設によって違います。親の状態を伝えたうえで、市町村の担当課に聞いてください。
措置で養護老人ホームに入ると、生活保護は原則として廃止になります。
なお、生活保護受給者が養護老人ホームに措置された場合は、生活保護は廃止となるのが原則であるが、通院など医療的ケアが必要になったときは医療扶助(単給)を受けることも可能である。
出典: 奈良県 養護老人ホーム入所措置共通マニュアル(令和7年8月)
廃止という言葉が付きますが、支援は別の制度に引き継がれます。 暮らしの費用は生活保護費から老人福祉法の措置費に切り替わり、通院など医療的なケアが要るときは医療扶助だけを受ける道が残ります。
生活保護は、他の法律による援助を受けられるならそちらを先に使う仕組みになっています。養護老人ホームの措置は老人福祉法による援助なので、そちらが先に立ちます。
ただし、この記述が取れたのは奈良県のマニュアルで、国の通知ではありません。措置の事務は市町村の自治事務なので、自分の市町村ではどう扱われるかを窓口で確かめてください。
生活保護であることに加えて、保証人を立てられないことでも断られている方に向けた章です。
厚生労働省の成年後見制度利用促進関係資料は、保証人がいないことについて、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しないと示しています。
この記述は介護保険のサービスの提供についてのものです。施設自身が介護保険のサービスを提供しているところには、そのまま当てはまります。
一方、生活保護を名指しして同じことを知らせた文書は、厚生労働省のサイトにも自治体の通知にも見当たりません。
特別養護老人ホームを除くと、同じ人が同時に受けている2つの断りで、根拠を問える範囲が逆になります。 だから、特別養護老人ホーム以外の施設に断られたのなら、先に問うのは保証人のほうです。こちらには示せる資料があります。
措置で入る養護老人ホームはどうかというと、国の指針である「老人ホームへの入所措置等の指針」に、保証人も身元引受人も出てきません。措置の基準として書かれているのは、環境上の事情と経済的事情です。
ただし、要件に無いことと求められないことは違います。
(参考)身寄りのない高齢者の場合の対応として、施設側から身元引受人を求められたことがない市町村もあるが、身元引受人を求められた場合に市町村が身元引受人になっているケースもある。
出典: 奈良県 養護老人ホーム入所措置共通マニュアル(令和7年8月)
施設から求められることはあり、その場合には市町村が引き受けている例もあります。
2つの断りを同時に受けているなら、資料を示せるほうから先に動きます。
ここから先は、民間の住まいを当たり続けると決めた場合の話です。
パンフレットの月額から住宅扶助の上限を引き算しても、入れるかどうかは判定できません。表示された月額の内訳が、扶助ごとに分かれるからです。
住宅扶助の上限と比べるのは、内訳のうち家賃だけです。
有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅も、法律の上では「居宅」の扱いになります。生活保護法第38条が定める保護施設は、救護施設・更生施設・医療保護施設・授産施設・宿所提供施設の5つです。有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅も、この5つに入っていません。
だから住まいの費用は家賃として住宅扶助から出ます。費目がどの扶助に当たるかを分けると、次のようになります。
| 費目 | どの扶助に当たるか |
|---|---|
| 家賃 | 住宅扶助 |
| 管理費と共益費 | 生活扶助 |
| 食費 | 生活扶助 |
| 水道光熱費 | 生活扶助 |
| 介護サービスの自己負担分 | 介護扶助 |
| 上乗せのサービス費 | どの扶助にも当たらない |
費目の名前は施設によって違うので、名前ではなく、何に対して払うお金かで当てはめます。介護付きでも住宅型でも、この当てはめは変わりません。
仮に、住宅型有料老人ホームで表示月額が11万8千円だったとします。内訳は次のとおりです。
住宅扶助の上限と比べるのは、家賃の38,000円だけです。 管理費と食費まで家賃に足して上限と比べると、福祉事務所の判定とはずれた答えが出ます。
判定が詰まるとしたら、残りの8万円のほうです。このうち管理費と食費は生活扶助から出ますが、上乗せの見守り費はどの扶助にも当たらないので、生活扶助から出る分でまかなうことになります。
この分け方が使えるのは、居宅の扱いになる住まいだけです。特別養護老人ホームは施設の扱いなので、分ける費目そのものが変わります。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院では、住まいが施設そのものになります。家賃という費目が無いので、住宅扶助は原則として出ません。
代わりに動くのが暮らしの費用です。通常の基準生活費ではなく、介護施設入所者基本生活費に置き換わります。単身で自宅を残す場合に、住宅扶助を入所後6か月を限度として認める例外もあります。
介護施設入所者基本生活費が算定される者については、基準生活費は算定しないこと。
出典: 生活保護法による保護の実施要領について(厚生労働省法令等データベース)
金額は、生活保護法による保護の基準の別表第1に書かれています。生活扶助基準の第3章の2「介護施設入所者基本生活費」(1) の表の「基準額」の欄が、月額10,120円以内です。同じ2の(4)が、特例加算として月額1,000円を加えると定めています。次の加算も、同じ告示の別表第1にあります。
介護施設入所者加算は、介護施設入所者基本生活費が算定されている者であつて、障害者加算又は8に定める母子加算が算定されていないものについて行い、加算額(月額)は、10,120円の範囲内の額とする。
出典: 生活保護法による保護の基準(厚生労働省法令等データベース)
この3つは、施設に払う費用ではありません。本人が施設の中で使うお金です。基本生活費が土台で、特例加算はそこに足され、介護施設入所者加算は条件が合うときだけ足されます。
自分の親にいくら出るかは加算が付くかどうかで変わるので、ケースワーカーに聞いてください。 「手元に残るのは月1万円程度」と丸めてしまうと、加算の分を数え落とします。
食費と居住費は、所得の低い方の負担を一定の額で頭打ちにする補足給付という仕組みで軽くなります。生活保護を受けている方はいちばん負担の軽い第1段階で、預貯金額の要件も付きません。
特別養護老人ホームの第1段階の負担限度額は、次のとおりです。
居住費は部屋の種類で分かれるので、見学のときに部屋の種類を確かめておきます。特別養護老人ホームの費用を有料老人ホームと比べるときに見るのは、月額の安さではありません。暮らしに使えるお金がどう変わるかのほうです。
施設が受け入れると言っていても、生活保護の担当者のところで話が止まることがあります。
料金の面で入居を認めるかどうかを決めているのは、施設ではなく福祉事務所です。
その判断に使う料金の基準は、通知にあります。
特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、介護予防特定施設入居者介護及び介護予防認知症対応型共同生活介護については、入居に係る利用料が住宅扶助により入居できる額に限られるものであるので留意すること。
出典: 生活保護法による介護扶助の運営要領(厚生労働省法令等データベース)
住宅扶助により入居できる額かどうかが、入居を認めるかどうかの分かれ目です。
並んでいる長い名前のうち、家族が入居先として探すときに関わるのは、介護付き有料老人ホーム・介護付きサービス付き高齢者向け住宅・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)です。
この基準の当てはめ方は、ケアハウスについての課長通知の問答が分かりやすく示しています。管理費が住宅扶助基準額以下であって、事務費及び生活費が生活扶助費により対応可能であれば、新規に入所することは可能とされます。
出典: 生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(厚生労働省法令等データベース)
ここでいうケアハウスの管理費は、有料老人ホームの管理費とは違って家賃に当たる費目です。名前ではなく何に対して払うお金かで当てはめる、という見方はここでも同じになります。
福祉事務所は、家賃に当たる分が住宅扶助に収まるかどうかと、それ以外を生活扶助で払えるかどうかの2つを見ています。費目を家賃とそれ以外に分けたのは、この2つに当てはめるためです。
ケースワーカーには、こう聞いてください。いくらまでなら認められますか。上限を超えているのはどの費目ですか。
上限額を市役所が決めていると思って交渉しても、相手はその額を動かせません。
家賃、間代、地代等については、当該費用が1の表に定める額を超えるときは、都道府県又は地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)若しくは同法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)ごとに、厚生労働大臣が別に定める額の範囲内の額とする。
出典: 生活保護法による保護の基準(厚生労働省法令等データベース)
額を定めているのは厚生労働大臣で、決める単位は都道府県・指定都市・中核市です。
単身世帯の上限額は、練馬区で53,700円です。
同じ単身世帯で、大阪市は40,000円になります。1万3千円以上の開きがありますが、この額も大阪市が定めたものではありません。
出典: 大阪市 住宅扶助限度額
同じ都道府県の中でも、地域の区分・世帯の人数・住まいの床面積で分かれます。他の地域の額を自分の額として使わないでください。 自分に当てはまる額は、自分の市区町村の資料か、ケースワーカーで確かめます。
額が上下する条件もあります。世帯員の状況や地域の住宅事情によりやむを得ないと認められる場合は、単身世帯の限度額に1.3を乗じた額まで認めてよいと局長通知が定めています。逆に、単身で床面積が15平方メートル以下だと限度額が段階的に下がります。
出典: 生活保護法による保護の実施要領について 第7の4(厚生労働省法令等データベース)
この1.3倍を認めるかどうかも、減額に当てはまるかどうかも、判断するのは福祉事務所です。厚生労働大臣の個別の承認は要りません。高齢者向けの住まいの居室は15平方メートルに近いことがあるので、減額の対象になるかどうかをケースワーカーに確かめてください。
生活保護であることが値段の付け方を動かす例は、国の検査でも数えられています。会計検査院が平成25年の随時報告で、住宅扶助の上限額で受給している被保護世帯が5世帯以上入居している集合賃貸住宅1,778棟を抽出し、同じ建物の中で家賃を比べました。被保護世帯の家賃のほうが高かったのは112棟で、そのうち21棟は差額が月額10,000円を超えていました。
出典: 会計検査院 随時報告「生活保護の実施状況について」(平成25年)
これは賃貸住宅を調べた報告です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は対象に入っておらず、同じことが高齢者向けの住まいでも起きているとまでは言えません。この報告から言えるのは、家賃の額が建物ごとに動く余地があるところまでです。
家賃の支払いが続くかどうかを心配されて、話が進まなくなることがあります。
その心配に対して、生活保護法は住宅扶助の支払い先を変えられると定めています。
保護の実施機関は、保護の目的を達するために必要があるときは、〔中略〕第三十三条第四項の規定により世帯主若しくはこれに準ずる者に対して交付する保護金品、〔中略〕のうち、〔中略〕被保護者が支払うべき費用であつて政令で定めるものの額に相当する金銭について、被保護者に代わり、政令で定める者に支払うことができる。
住宅扶助の行き先は、政令が名指ししています。
施行規則第23条の2では、共益費も同じ扱いの対象です。
出典: 生活保護法施行規則 第23条の2(e-Gov 法令検索)
住宅扶助は本人に代えて家主へ直接支払うことができ、支払えば本人に渡したものとみなされます。
この形にしてもらえるかは、ケースワーカーに聞けます。 決めるのは福祉事務所なので、施設に頼む話ではありません。
介護付きの住まいに入る場合、受け入れてくれる市で申請し直すという道は、2025年(令和7年)4月1日から使えなくなりました。
どの自治体が保護を決めて支給するかは、2025年から施設の種類で分かれています。
生活保護法第84条の3が、介護保険法上の特定施設に入居している人と、介護老人福祉施設に入所している人を例外に加えたためです。この方たちについては、入居する前に住んでいた自治体が保護の実施機関であり続けます。実施機関とは、保護を決めて支給する自治体のことです。
グループホームと福祉ホームは、これまでどおり施設の所在地の自治体が実施機関です。住宅型有料老人ホームと一般型サービス付き高齢者向け住宅も同じです。
出典: 生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて 第2 問7(厚生労働省法令等データベース)
同じサービス付き高齢者向け住宅でも、特定施設の指定があるかどうかで実施機関が変わります。 家族から見れば区別のつかない差です。
特定施設の指定があるなら相談先は入居前に住んでいた自治体、無いなら施設の所在地の自治体になります。指定の有無は、施設の種類を確かめたときに一緒に聞けます。
断られた理由を施設に問い直すより、料金が住宅扶助と生活扶助に収まる先を確かめるほうが、早く前に進みます。
次にすることは、民間の住まいを回り続けることではありません。市町村の高齢福祉の担当課へ、相談を持ち込むことです。市町村の窓口では、施設を回っていても出てこない行き先の相談ができます。
当サイトは介護施設を運営している事業者ではありません。この記事で挙げた条文や通知は現物まで辿れるようにしてあるので、窓口でそのまま示せます。