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「在宅介護は月5万円」という全国平均と、「この施設は月20万円」という見積もりを、そのまま引き算してはいけません。平均と個別見積もりであるうえ、数えている費目も違うからです。
引き算して出た「月15万円の差」は、あなたの家計が実際に15万円変わることを意味しません。それどころか、その数字はあなたの家の話を一つも含んでいません。
この記事が答えるのは、在宅を続けるのと施設へ移るのとで、自分の家計は毎月いくら変わるのか。その差額を、全国平均ではなく自分の数字で出すにはどうすればいいかという問いです。
最初に、その全国平均がなぜ自分の家計に使えないのかを確かめます。そのうえで、現在の家計から「介護のために実際に増えている支出」と、施設へ移った後も残る支出を分けていきます。
よく引かれるこの2つの数字は、そのまま引き算できるようには作られていません。生命保険文化センターの2024年度の全国実態調査によれば、介護にかかった月々の費用は平均8.95万円、介護を行った場所別では在宅5.25万円、施設13.79万円です。
この数字自体に問題はありません。問題は、これを計算の起点にすることにあります。引き算に使えない理由は3つあります。
在宅の月額に何が入っているかは、調査票を見れば分かります。家計経済研究所が2016年に行った在宅介護の調査は、費用を25項目に分けて尋ねています。その項目立てを見ると、食料費に立っているのは介護食・栄養補助食品・配食・外食の4つだけで、普段の食費を書く欄がありません。光熱水道費の欄もありません。家賃・住宅ローンの欄も一つもありません。
一方で、税金・社会保険料の欄はあります。この調査で在宅の平均は月5.0万円(中央値3.3万円)ですが、その中には健康保険料・介護保険料・所得税・住民税が月約1万円分含まれています。
つまり、在宅の5万円は介護に要した費用と本人の税・社会保険料であって、生活費ではありません。これは推測ではなく、調査票の費目一覧で確かめられる事実です。
ここから2つのことが出てきます。
第一に、施設の月額(居住費と食費を含む)と在宅の月額(居住費と食費を含まない)は、そもそも同じものを数えていません。同じ「月額」という名前が付いているだけです。
第二に、この5万円を起点にして、おむつ代や在宅サービスの自己負担や家族の交通費を足してはいけません。これらはすでに5万円の中に入っています。足せば二重計上になります。
※ 生命保険文化センターの調査と家計経済研究所の調査は別の調査であり、対象も年次も違います。2つの数字を接続して一つの内訳を組み立てることはできません。ここでは、別の調査の調査票でも通常の食費・光熱費・住居費が費目に置かれていない、という補強として並べているだけです。
生命保険文化センターの数字は、過去3年以内に家族や親族の介護経験がある595人の自己申告です。領収書を集計したものではありません。費用が「不明」と答えた人が一時費用で22.0%、月額で16.1%おり、平均はそれを除いて算出されています。
さらに、対象者の状態も施設の種類も介護度も、集団として同じではありません。施設13.79万円という平均の内訳には、公的な施設と病院が混在しています。
あなたが握っている「介護付き有料老人ホームの月20万円台」は、この13.79万円とは別の種類を指した数字です。同じ「施設」という言葉でくくられているだけで、比べられる関係にありません。
もう一つ、誤解されやすいところがあります。
在宅で使う介護サービスの自己負担には上限があります。区分支給限度基準額を限度いっぱいまで使った場合でも、1単位10円・1割負担なら、要介護3で月27,048円、要介護5でも月36,217円にとどまります。もとになる単位数は、堺市などの自治体が要介護度別の区分支給限度基準額として公表しています。
つまり、在宅の介護サービス費には天井があり、青天井に膨らむものではありません。限度額の額は、平均の内訳を説明するために置いた数字ではありません。上限の位置を示しているだけです。
そのうえで、家計経済研究所の調査が示した費目の一覧を思い出してください。そこには住まいの費用も、普段の食費も、光熱水道費もありませんでした。在宅が安く見えるのは、介護サービスが安いからではありません。生活費が家計の他の項目に紛れて、介護の費用として数えられていないからです。
親が自宅で食べている食事も、使っている電気も、住んでいる家の費用も、家計簿の別の行に載っています。施設へ移れば、それらが「施設の月額」という一つの行にまとまって見えるようになります。金額が増えたように見えるのは、見え方が変わった分を含んでいるからです。
全国平均から分かるのは、「介護にはこの程度の桁の出費が伴う家庭が多い」ということまでです。自分の家の差額は、1円も分かりません。
だから、集めるものを変えます。全国平均ではなく、いまあなたの家で実際に出ている現金と、入居先の候補の施設へ移った後に実際に出る現金を集めます。次の章がその手順になります。
集めるのは、いまの家計から実際に出ている現金と、入居先の候補の施設へ移った後に実際に出る現金です。この章では、比較を三つに分けたうえで、いまの在宅で介護のために増えている支出、入居先の候補になる施設の料金表から拾う支出、入居後も残る自宅の費用の順に、集め方を決めていきます。最後に空欄の比較表を置くので、それを埋めながら読み進めてください。
比較は3つに分けます。混ぜると計算が壊れます。
1つ目は、毎月の現金です。実際に増減する現金だけを入れます。ここに、配賦した生活費(本人分として按分した住居費など)や、機会費用(働けていたら得られたはずの収入)を入れてはいけません。実際には出ていない金が、比較の中に混ざります。
2つ目は、一度だけ出る費用と、それを一定の期間でならした総額です。入居一時金、引越し、住宅改修など。月額の差が小さくても、ここで結論が変わることがあります。だから月額と同じ表に混ぜません。
3つ目は、家族が実際に失った手取り収入です。統計上の平均損失を一律に足すのではなく、自分の給与明細から出します。
この記事では、毎月の現金から順に扱います。
三つと聞くと重く感じるかもしれませんが、入居一時金のある施設が入居先の候補になく、介護のために仕事を削ってもいないなら、費用面の判断は毎月の現金だけで入れます。
逆に、入居一時金のある施設が入居先の候補に入っているなら、一度だけ出る費用まで埋めないと結論が出ません。月額の差が小さくても、一時金の有無で順序が入れ替わるからです。家族の収入の減りは、介護のために仕事を削っている家庭だけが足せば足ります。当てはまらない家庭は、そもそも埋めなくてかまいません。
三つを同時に埋めようとして手が止まるくらいなら、毎月の現金だけを埋めて判断に入るほうが確実です。
直近3か月の記録から、次の項目を拾います。全国平均は使いません。
拾うときの線引きは一つだけです。「介護のために増えた分」だけを入れ、入居しても変わらないものは除きます。税金・社会保険料は、親が施設へ移っても払い続けるので入れません。親が自宅で食べていた分の食費も、施設へ移れば施設の食費に置き換わるので、増えた分(介護食や配食など)だけを入れます。
3か月分を見るのは、月によって波があるからです。おむつの購入も、通院も、毎月同じ額では出ていません。
なお、親が別居していて通っている場合は、交通費が大きくなります。生命保険文化センターの調査でも、在宅の内訳は自分の家より親や親族の家のほうが高くなっています。交通費の行に、その分をきちんと入れます。
次は施設側です。拾う先は2つ。施設が出す料金表と、重要事項説明書です。どちらも見学や資料請求で受け取れます。入居前は手元に請求書がないので、この2つで費目と金額の一覧を作ります。この記事では、以後もこの2つの書類の名前で通します。公的な平均値は使いません。
ここで注意が要ります。費目の名前と数は、施設の種類によって違います。共通の骨は「介護の対価/住まいの対価/食事/日用品と医療/面会や通院の交通費」ですが、料金表に並ぶ名前は次のように変わります。なお、表の1行目に並べた3つは費用の制度が似ているだけで、役割と入所の目的は違います(この点は次の節で扱います)。
| 施設の種類 | 料金表に並ぶ費目 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院 | 施設サービス費の自己負担、居住費、食費、日常生活費、医療費 |
| 介護付き有料老人ホーム | 家賃、管理費、食費、介護サービス費の自己負担(定額)、日常生活費、医療費、おむつ代、上乗せの介護費 |
| 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 | 家賃、管理費(共益費)、食費、外部の居宅サービスを使った分の自己負担、日常生活費、医療費、おむつ代 |
「管理費」という行は、特別養護老人ホームの料金表には現れません。逆に「居住費」という行は、有料老人ホームには現れません。表に書き写すのは、入居先の候補になる施設の料金表に実際に載っている費目名そのものにします。上の表は、抜けている費目がないかを確かめるための照合用に使います。
とくに注意したいのが3行目です。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の表示月額には、介護サービス費が入っていません。外部の事業者と契約して使った分が別に加わります。これを足さないと、介護保険施設の月額と同じ条件で比べられません。
公的な統計(介護保険施設の基本額、3種類の居住費用の平均など)は、内訳や種類による差を理解するために読むものであって、これを積み上げて総額を作るためのものではありません。施設ごとに定義の違う費目を足すと、見かけだけ精密な数字ができあがります。
拾った費目を月額の見積りとして組み直す手順は、別の記事で扱っています。
関連記事:老人ホームの月額を四つに分け、重度化と入院に備えて三枚の見積りを用意する手順
費目を拾う前に、入居先の候補に入れる施設を確かめておきます。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院は、費用の制度が似ているだけで、役割と入所の目的が違います。とくに介護老人保健施設は、在宅復帰を目的とする施設です。
月額が安いという理由だけで長期の住まいの候補に入れると、比較表そのものが成り立たなくなります。費用が近いことと、同じ役割を果たすことは別です。入居先の候補に入れる前に、その施設がどういう目的の施設なのかを確かめます。
見落とされやすいのがここです。親が施設へ移っても、自宅の費用は消えるとは限りません。
入れ方には一つ規則があります。本人分を按分して在宅側に足すのではなく、入居後も実際に残る現金だけを施設側に足します。
たとえば、親と同居している持ち家に家族が住み続けるなら、親が施設へ移っても住宅ローンも固定資産税も1円も減りません。ここで「本人分は3分の1だから」と按分しても、家計の現金支出は変わりません。比べるべきなのは「本人分として理論上いくらか」ではなく、「入居後に実際にいくら減るか」です。
そして、いまも入居後も同じ額が出続ける費用は、比較表に書きません。両側に同じ額が立つので、差額には効かないからです。書くのは、入居によって新しく増える分だけ。実家が空き家になって、これまで無かった管理の費用が発生するなら、その増えた分だけを入居後の側に入れます。
実家が空き家になる場合は、逆に維持費が残ります。国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査(N=1,381千戸)によれば、年間の維持管理費の分布は次のとおりです。
| 年間の維持管理費 | 割合 |
|---|---|
| かかっていない | 12.1% |
| 1万円未満 | 10.6% |
| 1万円から3万円未満 | 14.1% |
| 3万円から5万円未満 | 11.0% |
| 5万円から10万円未満 | 15.6% |
| 10万円から20万円未満 | 16.7% |
| 20万円から30万円未満 | 8.5% |
| 30万円以上 | 8.5% |
| 不明 | 2.9% |
この国土交通省の調査では、年10万円未満に収まる家が63.4%を占める一方で、年10万円以上かかっている家も33.7%あります。ただし、これは空き家全体の自己申告であり、実家を残して施設に入る世帯に限った数字ではありません。
読み取れるのは、この費目の桁が家によって大きく違うということまでです。自分の家がどこに入るかは、固定資産税の通知書と、火災保険・光熱費の実額から出します。少なくとも、自宅を残すことで費用が一律に大きく膨らむ、とは書けません。
自宅を残す判断の重さは、金額ではなく税のリスクの側にあります。2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法で「管理不全空家」が新設され、勧告を受けると住宅用地特例が解除されます。土地の固定資産税の軽減がなくなるので、税額は跳ね上がります。空き家にするなら、管理をどうするかを先に決めておく必要があります。
ここまでの項目を、次の表に書き入れます。数字はこちらでは入れません。あなたの家の数字を入れる表です。
毎月の現金の表
| 費目 | 現在(在宅・月額) | 入居後(月額) | 印 |
|---|---|---|---|
| 介護サービスの自己負担 | |||
| おむつ・介護用品 | |||
| 医療費 | |||
| 食費(介護のために増えた分) | |||
| 光熱水道費(介護のために増えた分) | |||
| 交通費 | |||
| 自費サービス | |||
| その他の実費 | |||
| 施設の費目1(料金表の名前をそのまま書く) | |||
| 施設の費目2 | |||
| 施設の費目3 | |||
| 施設の費目4 | |||
| 施設の費目5 | |||
| 施設の費目6 | |||
| 入居で新しく増える自宅の費用 | |||
| 合計 | |||
| 差額(入居後から現在を引く) |
費目の列には、上の8項目に続けて、入居先の候補になる施設の料金表に載っている費目名をそのまま書き足します。行が足りなければ足します。特別養護老人ホームなら4行前後、介護付き有料老人ホームなら6行前後になります。現在の列と入居後の列には、それぞれの月額を入れます。印の列は次の節で使います。
一度だけ出る費用と、家族の収入の減りは、この表に入れません。別に次の欄を作ります。
| 区分 | 書き入れるもの | 金額 |
|---|---|---|
| 一度だけ出る費用 | 施設側の一時費用(入居一時金・引越し・家財処分・原状回復) | |
| 一度だけ出る費用 | 在宅側の一時費用(これから使う住宅改修・福祉用具) | |
| 一度だけ出る費用 | 何年で見るか(1年・3年・5年など) | |
| 家族の収入の減り | 介護で減った手取り月収のうち、入居後に回復が見込める額 | |
| 家族の収入の減り | 回復までにかかる見込みの月数 |
差額の行がプラスなら、施設へ移ると毎月の現金支出が増えます。マイナスなら減ります。その額が、あなたの家の実際の差額です。全国平均の引き算で出た数字と一致する理由は、どこにもありません。
次は、どの費目が施設へ移ると消え、どの費目が残るのかを見ていきます。
施設へ移ると、費目は消えるものと消えないものに分かれます。差額がどこから生まれるのかを、費目の単位で見ていきます。まず、おむつ代を例に、施設側で消える費目と消えない費目が施設の種類で分かれることを確かめます。次に、在宅を続ける側にも軽減があることを押さえます。そのうえで、比較表の行に消える・残る・新しく生まれるの印を付けるところまで進みます。
在宅では、おむつ代は全額自己負担です。家計経済研究所の調査では、おむつ等の介護用品が月1.2万円でした(2016年・n=243・同居かつ要介護者1名の世帯限定という制約が付きます。紙おむつ代の全国的な実額統計はありません)。
施設へ移ったときにこれが消えるかどうかは、種類で変わります。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・短期入所については、国の通知(老企第54号)が、おむつ代・おむつカバー代・それらに係る洗濯代等おむつに係る費用を一切徴収できないと定めています。この種類に限れば、おむつ代は消えます。費目の単位では、ここが最もはっきりした引き算になります(金額としてどの引き算がいちばん大きいかは、家庭と種類で変わります)。
介護付き有料老人ホームは違います。適用される省令の列挙に「おむつ代」があるので、徴収してかまいません。消えません。
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅も消えません。こちらはそもそも自分で用意することになります。
つまり、「施設に入ればおむつ代は浮く」と一般化はできません。自分の入居先の候補になる施設がどの種類かで、この行が消えるかどうかが決まります。
ここで片手落ちになりやすくなります。施設側の引き算だけを並べて、在宅側の軽減を数えないという間違いです。
在宅にも次の軽減があります。
おむつ代の医療費控除は、おおむね6か月以上寝たきりで、医師が必要と認める場合に対象になります。令和6年分の申告からは、市町村の確認書や主治医意見書の写しでよくなりました。自治体の紙おむつ給付は、現物支給や購入費の助成という形で出ます。自治体ごとに要件も額も大きく異なりますので、住んでいる市区町村の制度を確認します。
高額介護サービス費は、介護サービスの自己負担の月額上限であり、在宅サービスにも同じようにかかります。在宅の医療系サービスの医療費控除は、訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリ等が対象で、訪問介護・通所介護等は医療系と併せて利用する場合に限り対象になります。
これらを数えると、在宅で払っているおむつ代がまるごと浮くわけではないことが分かります。引き算は両側で行います。
作業に落とします。比較表の在宅側に書いた8行を上から見て、それぞれに印を付けます。
消える行は、施設側で請求されなくなるもの。介護保険施設ならおむつ代がここに入ります。残る行は、施設へ移っても同じように出るもの。医療費が典型です。新しく生まれる行は、在宅では出ていなかったもの。居住費や家賃がこれにあたります。
印を付けてみると、種類が決まらないと印も付かないことが分かるはずです。おむつ代の行がどちらになるかは、入居先の候補になる施設の種類で決まります。だから、比較表は入居先の候補になる施設を1つ以上決めてから埋めます。
続いて、公的な軽減制度をこの表のどこに効かせるかを決めます。
軽減制度を「いくら引けるか」で並べると、計算が狂います。効き方が3種類あり、効く場所が違うからです。請求時に下がるもの、後から支給されるもの、確定申告で税負担が変わるものを順に見て、最後にそれぞれを比較表のどこへ書き込むかを決めます。
請求書の金額そのものが下がるのが、この種類です。
負担限度額認定(補足給付)は、居住費と食費を段階別の上限まで下げます。ただし対象は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・短期入所だけで、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームには効きません。
要件は3つすべてを満たす必要があります。本人と世帯全員が住民税非課税であること、世帯分離していても配偶者が非課税であること、預貯金等が段階別の要件額以下であること(単身で1,000万円・650万円・550万円・500万円と段階によって違います)。段階ごとの要件額は、品川区などの自治体が一覧で公表しています。
下がる額は段階で決まります。国は居住費と食費について「基準費用額」という標準の額を定めています。この額で請求している施設なら、負担限度額認定を受けると、請求される居住費と食費が所得段階ごとの上限まで下がります。その差が、毎月の請求書で実際に減る額になります。
次の額は、特別養護老人ホームのユニット型個室に入った場合の居住費と食費が、基準費用額から段階別の限度額まで下がる差を30日で換算したものです(2026年8月1日以後の額。品川区の案内などで確認できます)。
| 所得段階 | 何で分かれるか | 下がる額(月・30日換算) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 老齢福祉年金受給者または生活保護受給者 | 約7.3万円 |
| 第2段階 | 年金収入等が82万6,500円以下 | 約7.0万円 |
| 第3段階① | 82万6,500円超から120万円以下 | 約4.7万円 |
| 第3段階② | 120万円超 | 約2.2万円 |
同じ「非課税世帯」でも、下がる額は3倍以上違います。居室の種類や施設の種類が変われば、額も変わります。比較表には、自分の段階で計算した額を入れます。
もう一つ、自治体のおむつ給付・助成もこの種類に入ります。現物や助成の形で、請求される前に負担が減ります。
高額介護サービス費は、介護サービスの自己負担が月額の上限を超えたときに、超えた分が後から戻る制度です。上限は所得区分ごとに決まっており、江東区などの案内によれば一般世帯で44,400円です。
効き方の注意が2つあります。第一に、居住費・食費・日常生活費には効きません。対象は介護サービスの自己負担だけです。第二に、在宅サービスの自己負担にも同じ上限がかかります。つまり、在宅側と施設側の両方で効きます。片側だけに効く制度ではありません。
比較表に入れるときは、月額の行を書き換えるのではなく、表の外に「年間で戻る見込み」として別に書きます。
医療費控除は、この3種類のうち最も誤解されやすい制度です。
国税庁の説明によれば、特別養護老人ホームは自己負担額の2分の1、介護老人保健施設と介護医療院は全額が対象になります。有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)とグループホームは対象外です。
ただし、これは所得控除であって、対象額がそのまま戻る制度ではありません。実際の税負担の減り方は、所得・税率・その年の他の医療費によって変わります。そして、毎月の請求額は1円も変わりません。
だから、医療費控除を月次の引き算に入れません。比較表には書き込まず、年単位の話として別に整理します。
※ 施設へ入所して住所を変更しても、住所地特例により、入所前の住所地の市町村の被保険者のままになります。保険料や負担割合が住所の移動で変わるのではないかという心配は、ここでは要りません。
3種類を、比較表のどこに効かせるかで整理します。
請求時に下がるものは、比較表の施設側の金額そのものを書き換えます。負担限度額認定の対象なら、居住費と食費の行を軽減後の額にします。
後から支給されるものは、比較表の外に書きます。月額の行を下げてしまうと、毎月の資金繰りを見誤ります。実際には一度払ってから戻ってきます。
確定申告で税負担が変わるものは、比較表に書き込みません。年末の話として別の紙に書きます。
この区別を守れば、「施設側から7万円引く」と「医療費控除の対象になる」を同じ引き算に入れる、という間違いは起きません。
ここまでが毎月の現金の話になります。次は、一度だけ出る費用を別に扱います。
一度だけ出る費用は、毎月の現金の表に混ぜず、別の欄で比べます。入居一時金のある施設が入居先の候補に入っている家庭だけが、ここを読めば足ります。施設側の一時費用と在宅側の一時費用をそれぞれ拾い、何年で見るかを決めてから月額と足し合わせる、という順で進みます。
入居時に出ていく現金は、種類で形が違います。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院には、入居一時金がありません。
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームは、入居一時金(前払家賃)がある場合とない場合があります。0円プランを選べば入居時の負担はありませんが、その分だけ月額が高くなります。入居一時金と月額は、交換の関係にあります。
前払いで払った額のうち、どこまでが実際に保全されているかは、別の記事で扱っています。
関連記事:有料老人ホームの入居一時金のうち、実際に保全されている額を契約前に確かめる方法
サービス付き高齢者向け住宅は、敷金という名前で置かれている場合があります。名称ではなく、返還の条件で確かめます。
どの種類でも共通してかかるのは、引越し費用、家財処分費、原状回復費です。実家を引き払う場合は、家財処分費がまとまった額になることがあります。
在宅を続ける側にも一時費用があります。こちらは公的な上限が決まっています。
住宅改修の支給限度基準額は、要介護度にかかわらず20万円です(厚生労働省)。使い切るまで分割して使え、要介護区分が3段階上昇した場合と転居した場合は再度使えます。特定福祉用具販売の限度額は年10万円です。
工事費の桁も見ます。民間の介護情報サイトが示した目安では、玄関の段差解消が2万円から45万円、和式から洋式への便器交換が20万円から60万円、ユニットバスの導入が65万円から150万円です。ただし、これらは相場の統計ではなく、幅の広い目安にすぎません。実際の額は住宅の状態で大きく変わるので、見積もりを取ってから入れます。
ここに入れるのは、これから使う分だけです。すでに使った住宅改修費は、施設へ移っても戻りません。過去に払った金額は、これからの判断には効きません。
一時費用は、月額と足し合わせるときに期間を決める必要があります。1年で見るか、3年で見るか、5年で見るかで、結論が変わるからです。
たとえば、入居一時金が300万円かかる施設と、0円プランで月額が5万円高い施設。5年で見ればほぼ並びますが、1年で見れば0円プランのほうが安く済みます。どちらが得かは、何年住むかを決めないと出ません。
ここで、介護期間の全国平均を自分に当てはめないでください。平均は集団の話であって、あなたの親が何年その施設にいるかを示すものではありません。期間は自分で仮定として置き、複数の年数で計算して幅を見ます。これが一度だけ出る費用の正しい使い方になります。
三つ目の、家族の収入の減りは次の章で扱います。
この章は、介護のために仕事を削っている家庭だけが読めば足ります。時短勤務や休業をしていない家庭は、飛ばして次の章へ進んでください。加えるのは統計の平均ではなく自分の給与明細の差から出した額であり、それも入居後に全額が戻る前提では置きません。
ここに入れるのは1つだけです。介護を理由に減った手取り月収のうち、施設入居後に現実的に回復すると見込める額。
出し方は具体的で足ります。介護を始める前の給与明細と、直近の給与明細を並べて、手取りの差を見ます。残業ができなくなった分、時短にした分、休業した分が、そこに出ています。
そのうえで、回復までにかかる期間も置きます。施設へ入居した翌月からフルタイムに戻れるとは限りません。慣らしの期間、手続きの期間を見込みます。
ここは慎重に見積もる必要があります。入居後も、次のものは残ります。
そして、すでに離職している場合は、再就職できるとは限りません。求職の期間、年齢、これまでの職種によって、戻れる賃金の水準は変わります。時短勤務を解消しても、賃金がすぐに元の水準へ戻るとも限りません。
なお、介護・看護を理由とした離職者は、総務省の就業構造基本調査(2022年10月時点の過去1年)で約10.6万人です。これはこうした家庭が現に存在する規模を示す数字であって、あなたの家庭で収入がいくら戻るかを示すものではありません。ここに入れるのは、自分の給与明細から出た額だけです。1人あたりいくらという平均値を、ここに入れません。
※ 介護休業は対象家族1人につき3回・通算93日まで取得できます。これは全介護期間を休むための制度ではなく、介護の体制を整えるための期間として設計されています。使うなら、その前提で計画に組み込みます。
次は、ここまでの手順を二つの例に当てはめます。
ここまでの手順を、2つの例に当てはめてみます。どちらも仮定を明示した例であり、実在の家庭ではありません。ここまでに出した数字だけを使います。見るのは毎月の現金の表で、どの行が消え、どの行が新しく生まれ、どの行が残るかです。
仮定:親は要介護3。世帯全員が住民税非課税で、預貯金は段階別の要件額以下。所得段階は第2段階。入居先の候補は特別養護老人ホームのユニット型個室。実家は空き家になり、売らずに残します。
消える行。おむつ代がここで消えます。特別養護老人ホームは通知により徴収できないからです。在宅で払っていた分がそのまま無くなります。ただし、在宅側でおむつ代の医療費控除や自治体の給付を受けていたなら、浮く額はその分だけ小さくなります。
新しく生まれる行。居住費と食費が施設側に立ちます。ここに負担限度額認定が効きます。第2段階なので、居住費と食費が基準費用額から約7.0万円下がります(特養のユニット型個室・30日換算)。
残る行。医療費は残ります。そして、実家の維持費が施設側に残ります。固定資産税、火災保険、最低限の光熱費、管理の費用。空き家にするなら、管理不全空家の勧告を受けないための管理も要ります。
差額がどこから生まれたか。この家庭では、居住費と食費の軽減がいちばん大きく下げています。次におむつ代が消えた分。逆に費用を押し上げているのが、実家の維持費が丸ごと残ることです。
この家庭について言えることは、費用面では施設を諦める理由が薄くなるということです。ただし、実家をどうするかを決めていないと、その分だけ差額が読めません。
仮定:親は要介護3。世帯は住民税課税。入居先の候補は介護付き有料老人ホーム。実家には家族が住み続けます。
消える行。おむつ代は消えません。介護付き有料老人ホームは省令の列挙におむつ代があるので、施設が請求してかまいません。在宅で払っていた額が、そのまま施設の請求書に移るだけです。
新しく生まれる行。家賃と管理費と食費が立ちます。介護サービス費は定額で月額に含まれます。
負担限度額認定は効きません。課税世帯であること以前に、そもそも有料老人ホームは対象外です。この家庭が使えるのは高額介護サービス費だけで、それも介護サービスの自己負担にしか効きません。家賃にも管理費にも食費にも効きません。
残る行。実家に家族が住み続けるので、住宅ローンも固定資産税も1円も減りません。按分して在宅側に計上していた分は、現金としては1円も浮きません。
差額がどこから生まれたか。この家庭では、消える行がほとんどなく、新しく生まれる行が大きくなります。差額はほぼそのまま家計の負担増になります。
この家庭について言えることは、施設へ移った後の家計負担は重くなりやすいので、具体的な資金計画が先に必要だということです。これは「在宅を続けるべきだ」という結論ではありません。費用は判断材料の一つであって、在宅介護の安全性や家族の健康は別の話です。この記事が言えるのは、費用面で選択肢から外すべきかどうかまでです。
最後に、自宅の売却や賃貸をどう扱うかを決めておきます。
比較表に入れてはいけないものを一つ挙げておきます。自宅の売却代金と賃貸収入です。
売却代金は資産の換金であって、月額費用が安くなったわけではありません。手元の現金は増えますが、それは家という資産が現金に変わっただけです。賃貸に出す場合も、修繕、空室、税金、管理費がかかるので、家賃がまるごと収入になるわけではありません。
自宅の処分は、費用比較ではなく、資金調達と資産管理の問題です。比較表の差額を出してから、その差額をどう賄うかという別の話として考えます。順序を逆にすると、比較表そのものが歪みます。
ここまでで、比較表に入れるものと入れないものがそろいます。次は、今日から手をつける順に並べ直します。
次の3つを行います。入居一時金のある施設が入居先の候補にないなら、①だけで費用面の判断には入れます。
①では、毎月の現金の8項目を記録から書き出します。入居後も残る自宅費用と、回復可能な手取り収入は、①ができてから足せば足ります。②では、料金表と重要事項説明書から費目を拾います。全国平均は使いません。③で確認するのは、負担限度額認定、高額介護サービス費、自治体のおむつ給付です。医療費控除は確定申告の話として別に整理します。
この3つが分かれば、比較表が埋まります。埋まった表の差額の行が、あなたの家の答えです。
その差額を持って、月々の予算からどの種類が視野に入るかを見るところは、別の記事で扱っています。
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足し引きの根拠(省令・通知・税・自治体)
自宅を残す費用
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