※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

紹介会社から3施設を提案されたとき、それが地域の有力入居先の候補なのか、その会社が紹介できる範囲なのか、見分けられるでしょうか。
親の施設探しは急いでかまいません。空室はいつまでも待ってくれませんし、退院の期限や在宅介護の限界のほうが先に来ることもあります。「まずは落ち着いて」と言われても、落ち着ける状況ではありません。
だから、この記事は相談を止めません。変えるのは順番だけです。紹介会社へ連絡する前に、公的な一覧で自分の地域にどのような有料老人ホームがあるかを、一度だけ見ておきます。
目的は、自分だけで施設を選び切ることではありません。地域の施設数を正確に数えることでもありません。提案されなかった施設に気づき、「なぜ入居先の候補から外れたのか」を聞けるようにするためです。
すでに相談を始めていても遅くありません。提案された施設と公的な一覧を今から照らし合わせれば、同じ確認ができます。
なお、当サイトは介護施設を運営している事業者ではありません。だから、施設について正面から書ける立場にあります。
先に一覧を見ておく理由は、紹介会社が案内できる範囲がもともと限られている点にあります。
高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)が定める遵守項目では、紹介事業者は原則として個別に提携している高齢者向け住まいを紹介しており、すべての高齢者向け住まいから紹介しているわけではないことを説明する、と定められています。2025年1月以降の届出に適用されています。
遵守項目とは、届け出た紹介会社が「これを守る」と表明している約束ごとのことです。
ここで大事なのは、これが隠された事実ではないという点です。提携先から紹介しているという前提は、業界のルール上も、家族へ説明すべきものとして扱われています。だから、聞いてかまいません。
そして、ここから導かれるのは次の一点です。
提案された3施設が、地域の全施設とは限りません。
では、なぜ「連絡する前」なのでしょうか。一覧は、紹介会社へ連絡した後でも作れます。だから「問い合わせたらもう遅い」という話ではありません。先に見ておく意味は、別のところにあります。
最初に示された入居先の候補は、家族にとっての基準点になりやすいものです。たとえば、何も知らないまま3施設の資料を渡されると、家族の会話は自然に「この3つのどれにするか」から始まります。地域に他にどんな施設があるかは、その時点で話題に上りません。
先に地域の施設名を見ていれば、同じ3施設を「一定の範囲から選ばれた入居先の候補」として受け取れます。会話は「この3つのどれか」ではなく、「なぜこの3つなのか」から始められます。これが順番を変える理由です。ここは公的な資料に裏づけのある話ではなく、提案の受け取られ方についての見立てです。
費用の条件についても触れておきます。厚生労働省の標準指導指針は、施設の側に向けて、情報提供等事業者と委託契約等を結ぶ場合について、入居希望者の介護度や医療の必要度等に応じて手数料を設定しないこと、月額利用料等に比べて高額な手数料と引き換えに優先的な入居希望者の紹介を求めないことを挙げています。
標準指導指針とは、自治体が施設を指導するときのよりどころになる国の文書です。掛かる相手は施設であって、紹介会社ではありません。
つまり、国も、高額な手数料と引き換えに優先的な紹介を求める行為を、避けるべきものとして具体的に挙げています。言えるのはここまでです。ここから「紹介会社が手数料で順番を決めている」とは読めません。
だからあなたがすることも、疑うことではありません。あとで提案を受けたときに、なぜこの施設なのかを具体的に説明してもらいます。それで足ります。
関連記事:紹介手数料の差を家族が確かめる方法
一覧をどこで開くかは、次に示す2つで足ります。
※ 提案の範囲が個別の提携先であることは高住連の遵守項目の話であり、高額な手数料と優先紹介の結びつきが注意の対象であることは国の指導指針の話です。別の事実として分けて扱います。
ここで求めるのは、地域の施設をもれなく洗い出すことでも、比較表を作ることでもありません。施設名を眺めるだけで足ります。
見る先は2つあります。国が運営する検索システムと、自治体が公開している一覧です。あわせて、そこに載っている情報をどう受け取ればよいかも見ます。
2024年10月から、介護サービス情報公表システムに、有料老人ホームの情報公表と検索の機能が追加されました。名称・所在地・従業者の状況・利用料金などが公表の対象になっています。
介護サービス情報公表システムは、国が運営していて誰でも無料で使える検索の入口です。パンフレットを取り寄せなくても、地域にどんな施設があるかを一度に見渡せます。
やることは3つだけです。
※ この一覧には特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も並びます。今回メモするのは有料老人ホーム(介護付・住宅型)に限ってかまいません。
介護付と住宅型の違いは、いまは一言で足ります。介護付はホームの職員がそのまま介護保険の介護を提供する形、住宅型は外部の訪問介護などを使う形です。どちらかに絞る必要はありませんが、この別だけはメモしておきます。後で提案の理由を聞くときに役に立ちます。
完全な比較表は作りません。重要事項説明書を読み込むのも、ここでは要りません。
所要時間は自治体や端末によって変わります。数分で一覧だけ見て、余裕があれば入居先の候補をメモします。その程度で足ります。
東京都は、有料老人ホームの一覧を表計算ファイルとPDFで公開しています。姫路市のように、施設ごとの資料を公開している自治体もあります。
ただし、どの自治体でも同じものが見られるとは限りません。確認できたのは一部の自治体です。
国のシステムと自治体の一覧は、どちらか一方で足ります。両方を用意する作業にすると、それだけで相談が後ろへずれます。
介護サービス情報公表制度の「基本情報」は、事業所の自己申告が原則です。都道府県の事実確認調査が入るのは、指定された事業所だけです。
つまり、載っている数字は施設が自分で書いたもので、都道府県が全件を確かめているわけではありません。だからこの一覧は、読んで判断するためのものではなく、確かめるための材料になります。
東京都は、重要事項説明書一覧のページに、内容の完全性・正確性を保証するものではないこと、最新のものは各設置者または各施設へ直接請求することを明記しています。同じ一覧の中でも、施設によって書類の時点が混在しています。
だからといって「公表情報は信用できない」で終わらせなくてかまいません。一覧は、入居先の候補を決める答えではなく、紹介会社や施設へ質問するための材料として使えば足ります。
入居先の候補が絞れてからやること
作業は二段階に分かれます。今日やるのは上の段だけで足ります。下の段は、入居先の候補が数か所に絞れてから読めば足りるものです。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 相談前の最低限 | 施設一覧を開き、名称と種類を見ます |
| 入居先の候補が出た後の確認 | 重要事項説明書を取り寄せ、いつ時点の内容かを示す日付、利用料金、情報開示についての欄を見ます |
重要事項説明書は、有料老人ホームが交付する法定の書類で、契約の直前に初めて読むものではありません。厚生労働省の標準指導指針は、入居相談があったときに交付するほか、求めに応じて交付することを求めています。
欄の名前は、国の様式と自治体の様式で同じではありません。だから名前で探さず、中身で探します。書類がいつ時点の内容かを示す日付(東京都の一覧では「基準日」と呼ばれている)、月々かかる費用の内訳、そして財務諸表や管理規程などを入居希望者に公開するかどうかを書いた欄。この3つを中身で見つければ足ります。
関連記事:重要事項説明書のどこを比べるか
※ 自治体の様式によっては、その自治体の指導指針に適合しているかどうかを施設が自己点検した表が末尾に付いていることがあります。付いていれば、適合していない項目に目を通します。確認できたのは1つの自治体の様式だけなので、付いていなくても不備ではありません。
提案を受け取ったら、聞くのは次の4つです。対象は有料老人ホームに限ってかまいません。
いちばん効くのは1つ目です。4つ目は数を確かめる質問ですが、妥当性を判定するための数ではありません。自分がいま見ている範囲の広さを知るための数だと考えておきます。
地域の施設の総数は、提案の妥当性を測る基準にはなりません。
地域に100施設あっても、本人の医療対応・予算・空室・施設の種類・移動距離を満たす施設が3施設しかなければ、3施設の提案は少なくありません。逆に、地域に10施設しかなくても、提案されなかった有力入居先の候補があれば、それは問題になります。
公的な一覧で数えた施設の数と、その会社が紹介できる施設の数も、同じ条件で数えた数ではありません。一覧には特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も混ざっていますし、紹介できる範囲は提携の状況で決まります。差が大きいこと自体を、不信の根拠にしないでください。
だから聞くのは、数ではなく外れた理由です。
先に一覧を見ておくと、この質問が具体的な形で聞けます。「一覧にあったあの2つが入居先の候補に入らなかったのはなぜですか」と施設名で聞ける家族と、「他にもありますよね」としか聞けない家族とでは、返ってくる答えの密度が違います。
返ってきた答えの読み方は難しくありません。条件で外れたのか、提携の有無で外れたのかが分かれば、それ以上を疑う必要はありません。担当者を疑うための質問ではなく、自分が見ている範囲を確かめるための質問です。
ここで持ち帰ってほしいのは、どちらに何を相談するかを分けるという一点です。制度や介護の状態、どの施設の種類が合うかという相談は公的な窓口へ、個別の施設の紹介は紹介会社へ。役割が違います。
地域包括支援センター、ケアマネジャー、病院の医療ソーシャルワーカーは、いずれも制度・介護状態・施設の種類を考える相談先になります。ただし、個別施設の情報量や、入居先の候補探しをどこまで手伝うかは、地域や担当者によって差があります。
制度の側から見ても、この使い分けは無理のないものです。介護保険法は、地域支援事業の総合相談支援業務として「総合的な情報の提供」「総合的な支援」を広く定めており、有料老人ホームを除く文言はありません。ただし、掲げている相談内容や対応の幅は自治体によって差があります。
ケアマネジャーについては、線の引き方が少し細かくなります。指定居宅介護支援等の基準は「介護保険施設への紹介その他の便宜の提供」を定めていますが、ここでいう介護保険施設は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3種類で、有料老人ホームは含まれません。
介護保険施設という言葉は、日常語の「介護の施設」よりも狭いものです。有料老人ホームは、この3種類には入りません。
したがって、有料老人ホーム探しはこの規定にもとづく紹介義務の対象ではありません。そのうえで、公的な窓口に持ち込めることははっきりしています。要介護認定の見通し、在宅で続ける場合の選択肢、本人の状態に対して介護付と住宅型のどちらが合うか、費用の負担を軽くする制度があるか。この4つはいずれも制度と本人の状態についての相談であり、公的な窓口が本来扱う領域にあたります。
複数社に相談する場合の注意も、ここで一つだけ触れておきます。同じ施設への紹介が複数の会社で重なると、手数料の扱いをめぐって相談が進みにくくなる場合があります。これは高住連の事務局長が公開の対談で述べた説明であって、統計ではありません。
複数社を使うなら、他社にも相談していることと、重複したときの扱いを先に伝えておけば足ります。
なお、これはやることを1つ増やす話ではありません。相談の相手を分けるという、使い方の話です。
初回の相談で確かめることは3つだけで足ります。何の目的で取得するのか、誰へ共有するのか、いつ共有するのか。この3つを聞いてから伝える、という順番にします。
そのうえで、はっきりさせておきたいことがあります。情報を隠すことは勧めません。要介護度や身体状況は施設探しに必要な情報で、医療の情報を不正確に伝えれば、合わない施設を勧められることになります。
握るべきなのは、伏せる範囲ではなく、渡す順番のほうです。実際、紹介事業者が公表しているプライバシーポリシーを見ると、氏名や連絡先だけでなく、要介護度・身体状況・予算・入居時期までが取得する情報として挙げられていることがあります。項目が多いこと自体は、施設を絞るうえで必要だからでもあります。
問題になるのは、それがいつ、どこへ渡るのかが分からないまま伝えてしまうことのほうです。
紹介会社を使わないのではありません。入居先の候補の全体像を一度見てから使います。変えるのは、この順番だけです。
やることは3つに絞れます。連絡する前に、国または自治体の一覧で地域の施設名・所在地・施設の種類を見て、気になる施設を数件メモします。提案を受けたら、提案されなかった施設について外れた理由を聞きます。個人情報は、目的と共有先と時期を確認してから渡します。
この3つを支えるのが、相談先をひとつに絞らないという使い方と、入居先の候補が絞れてから重要事項説明書を読むという後段の作業です。今日やるのは、上の3つで足ります。
一覧を開く数分が、提案を受け取る側の見え方を変えます。