在宅介護の限界のサインと、施設を探すタイミングが限界より前になる理由

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在宅介護の限界は、ある日いきなり来るというより、介護者の体と夜間の睡眠と本人の状態に、少しずつ形になって出ます。

そして、そのサインは感じるものというより、数えるものです。数えた紙は、そのまま家族に見せられます。

探し始めることと入居することは、別のタイミングです。サインを数え、限界より前に探し始め、家族の合意を「探し始める」に対して取れば、限界が来た夜にも行き先が残ります。

在宅介護が限界に近づいているサイン

在宅介護の限界のサインは、介護者の体・夜間・本人の状態・家族の言葉の4か所に出ます。

そして、サインは感じるものというより、数えるものです。数えると、家族に見せられます。

出る場所数えるもの
介護者の体自分の受診を後回しにした月数、切れている薬の数
夜間週に起きる回数、起きる時刻
本人の状態転倒の回数、夜間の排泄の失敗、拒否の回数、外に出て戻れなかった回数
家族の言葉怒鳴った回数、手が出そうになった回数

介護者が自分の受診を後回しにしている

最初に見るサインは、介護者自身の体です。

健診を先延ばしにしている。持病の薬が切れたまま。血圧を測る習慣が途切れている。この3つは、介護者が倒れる前の1〜2年に崩れる場所です。

介護をしていると、自分の受診は「親を誰かに見てもらえる日」に限られます。その日が作れないまま月が過ぎると、薬が切れ、数値が悪くなり、ある日倒れます。倒れた後の在宅介護は、そこで止まります。

数えるのは、自分の受診を後回しにした月数と、切れている薬の数です。「半年、健診を先延ばしにしている」「降圧剤が2か月前に切れている」と書けると、それは限界のサインとして家族に見せられます。

夜間に起きる回数が週に数回を超えている

夜間のサインは、週に何回、何時に起きるかで数えます。

トイレの介助、体位の交換、本人が起き出して声をかける。1回起きるたびに睡眠が途切れ、それが週に数回続くと、日中の判断力が落ちます。

厚生労働省の2022(令和4)年 国民生活基礎調査では、同居の主な介護者の介護時間を要介護度別に見ると、要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が多く、要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多くなっています。要介護度が上がるほど、介護の時間は一日じゅうに広がり、夜間も含まれるようになります。

数えるのは、週に起きた回数と時刻です。枕元に紙を置き、起きた時刻を書くだけで足ります。1週間分並べると、家族に「週に4回、2時と4時に起きている」と見せられます。

出典: 厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

出典: 厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況

本人の転倒と排泄と拒否が増えている

本人の状態のサインは、介護の量が増えることより、介護の質が変わる瞬間に出ます。

  • 転倒が月に複数回になった
  • 排泄の失敗が夜間に起きるようになった
  • 入浴や着替えを拒否するようになった
  • 外に出て戻れないことがあった

この4つは、施設が入居の可否を判断するときに見る項目でもあります。夜間の排泄の介助は夜勤の職員数に、拒否や外出は認知症の対応体制に、転倒は見守りの体制に関わります。この4つが進むほど、受け入れられる施設は減っていきます。

数えるのは回数です。転倒の回数、夜間の排泄の失敗の回数、拒否の回数、外に出て戻れなかった回数。月ごとに増えているなら、それが本人側のサインです。

介護者が怒鳴ったり手が出そうになったりしている

家族の言葉のサインは、「怒鳴ってしまった」「手が出そうになった」です。これは介護者の弱さというより、国の調査が集計している要因です。

厚生労働省の令和5年度(2023年度)の調査では、市町村が養護者による高齢者虐待と判断した件数は17,100件、市町村への相談・通報件数は40,386件でした。発生要因(複数回答)の上位2つは、次のように報告されています。

被虐待者の「認知症の症状」が9,639 件(56.4%)、虐待者の「介護疲れ・介護ストレス」が9,376 件(54.8%)

介護疲れは、厚生労働省の調査が虐待の発生要因として集計している項目です。

怒鳴った回数、手が出そうになった回数を数えるのは、自分を責めるためというより、在宅の介護体制を変える合図として使うためです。

ここまでの4つのサインは、施設に入居する合図とは別のものです。探し始める合図です。

出典: 厚生労働省 令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

出典: 厚生労働省 令和5年度 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果(資料1)

施設を探し始めるタイミングが限界より前になる理由

施設を探し始めるタイミングは、限界の前です。

理由は4つあります。探し始めることと入居することが別のタイミングであること。限界が来てから探すと数か月を限界の状態で過ごすこと。選ぶ余地が消えること。介護者が倒れれば本人は家族が選んでいない場所へ行くことです。

探し始める時期と入居する時期は別になる

「まだ入居する気はないから、探さない」という考え方が、タイミングを遅らせます。探し始めることと入居することは、別のタイミングです。

探し始める段階でやることは、次の5つまでです。

  • 地域の施設の一覧を見る
  • 2〜3件に電話で条件を聞く
  • 重要事項説明書を読む
  • 1件だけ見学する
  • 条件が合えば申し込んで待機に入る

この段階は、本人に伝える前でも進められます。申し込みは入居の約束というより、順番の確保です。

入居する時期は、家族が決めた決めごとに従います。「夜間に起きる回数が週に〇回を超えたら」「私の薬が切れたら」という決めごとの作り方と、ケアプランに書いてもらう方法は、在宅介護はいつ限界?施設を探し始める基準の決め方を解説の記事に書いています。

探し始めてから入居まで数か月かかる

探し始めてから入居までは、書類の用意、見学、施設の受け入れ判定、空き待ちが重なり、数か月かかることが多いです。特別養護老人ホームは、申し込みから入所までがさらに長くなります。

限界が来てから探し始めると、この数か月を限界の状態で過ごすことになります。夜間に起きながら見学の日程を組み、薬が切れたまま書類を集める。探す力が最も要る時期に、探す力が最も乏しい状態になります。

限界の前に探し始めれば、この数か月を在宅の余力がある時期に使えます。見学は平日の昼に行け、書類は余裕を持って頼め、申し込んで待機に入れば、入居の時期を家族が選べます。

限界が来た後は選べる施設が減る

限界が来た人は、退院の期限がある人と同じ状況になります。空きがあると分かった1〜2件で決めるしかなく、費用と場所と職員の体制を並べて比べる余地が消えます。見学に行けるのも1件だけで、断られたときに次を探す時間はわずかです。

さらに、本人の状態が進むほど、施設の受け入れ判定に引っかかる項目が増えます。夜間の排泄、拒否、外出、医療処置。限界のサインとして挙げた4つは、そのまま施設が見る項目です。限界の前に探し始めるほど選べる施設は多く、限界の後に探すほど少なくなります。

早く探し始めるのは、早く入居するためというより、選べる施設が多いうちに条件を確かめて待機に入っておくためです。

介護者が倒れると本人は家族が選んでいない場所へ行く

介護者が倒れて入院すると、本人はその日から一人になります。そのとき本人が行く先は、緊急のショートステイか、市町村の措置で決まる施設です。家族が条件を見て選んだ場所とは別のものです。

そこから本命の施設を探すのは、介護者が入院中で、最も難しい時期になります。介護者が退院しても、以前と同じ在宅の介護に戻すのが難しいことが多く、本人は緊急の場所から次の場所へ、2回移ることになります。

厚生労働省の2022(令和4)年 国民生活基礎調査では、要介護者等と同居の主な介護者の年齢の組み合わせは、60歳以上同士が77.1%、65歳以上同士が63.5%、75歳以上同士が35.7%です。介護者自身が高齢で、倒れるとどちらも介護が要る状態になります。限界の前に探し始める理由は、この構造にあります。

出典: 厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

家族で施設入居に合意する方法

家族の合意が取れないのは、「限界」が介護者の感覚でしか語られていないからです。

答えは4つです。記録を見せて事実にする。本人には場面で聞く。遠方の家族には夜間を体験してもらう。合意は「探し始める」に対して取る。

サインを数で記録した紙を見せる

限界に近づいているサインとして数えたものを、1枚の紙にします。

項目今月の回数先月の回数
夜間に起きた回数(時刻)(記入欄)
自分の受診を後回しにした月数
転倒の回数
夜間の排泄の失敗の回数
怒鳴った回数

この紙を、きょうだいや配偶者に見せます。「もう限界」という言葉は気持ちですが、「週に4回、2時と4時に起きている」「降圧剤が2か月切れている」は事実です。事実は、離れて暮らす家族にも同じ重さで届きます。

紙は、専門職にも渡します。ケアマネジャーは、この紙をもとにケアプランを見直せます。主治医は、介護者の体調を診る材料にできます。

本人には施設ではなく場面で聞く

本人に「施設に入るか」と聞くと、「嫌だ」で終わります。聞き方を場面に変えます。

本人への聞き方の例

「夜にトイレで起きたとき、誰が来るのがいい?」

「私が入院したら、誰と暮らす?」

「お風呂は毎日がいい? 週に何回がいい?」

場面で聞くと、本人の言う「家にいたい」の理由が出ます。近所の友達、毎日の風呂、飼っている猫。その理由が、施設を選ぶときの条件になります。

聞くのは1回でなく、週に1回、同じ質問を繰り返します。本人の答えは日によって変わるので、揃った答えの中で変わらないものが本当の希望です。本人の希望が分かってから本命の施設を一緒に見ると、拒否が小さくなります。一緒に見学する誘い方は、老人ホームの契約前、親本人ともう一度見学すべき?の記事に書いています。

遠方の家族に夜間を一晩体験してもらう

「まだ大丈夫では」と言う遠方のきょうだいには、一晩泊まって夜間の介護を体験してもらいます。夜中に2回起きて介助をすると、「まだ大丈夫」という受け取り方が変わります。

体験が難しい場合は、夜間に起きた時刻を、その場でLINEで送ります。深夜2時と4時に届くメッセージが、記録の紙より強く届くことがあります。

もう1つは、専門職の言葉で固めることです。ケアマネジャーに「介護者の体調から見て、在宅を続けられる期限」を、主治医に「本人の状態から見て、施設で受ける介護の必要性」を言ってもらいます。サービス担当者会議に家族全員が入ると、専門職の前で合意が取れます。家族の中で言い合うより、第三者の言葉のほうが通ります。

合意は入居ではなく探し始めに対して取る

合意を取る対象を間違えると、話が止まります。取るのは「入居する」への合意というより、「探し始める」への合意です。

「入居する」への合意を取ろうとすると、本人は拒否し、きょうだいは「まだ早い」と言い、話が止まります。「探し始める」への合意なら、「候補を見ておくだけ」「申し込んで待機に入るだけ」なので、通りやすくなります。

探し始めて本命が見つかってから、本人と一緒に見学し、そこで入居の合意を取ります。決める人を1人にしておくことも、合意を早くします。介護している人が決め、他の家族は条件を1つ出す。家族の分担のしかたは、老人ホーム探しに疲れて決まらない。条件は3つ、見学は3件で決めるの記事に書いています。

限界が来てしまったときの緊急の受け入れ先

すでに限界が来ている場合は、探し始めるより先に、今夜の受け入れ先を決めます。

今夜なら緊急のショートステイ。介護者が倒れたら市町村の措置。口に出す相手は地域包括支援センター。受け入れ先を確保してから、本命を探し始めます。

今夜が無理なら緊急のショートステイを頼む

今夜の介護が無理なら、ケアマネジャーに「緊急でショートステイを使いたい」と伝えます。

厚生労働省の通知は、緊急短期入所受入加算の対象となる「緊急利用者」を次のように定めています。

「緊急利用者」とは、介護を行う者が疾病にかかっていることその他やむを得ない理由により居宅で介護を受けることができない、かつ、居宅サービス計画において当該日に利用することが計画されていない者をいう。

ケアプランに載っていない日でも、担当のケアマネジャーがあらかじめ緊急の必要性と利用を認めていれば、ショートステイを使えます。やむを得ない事情で事後の判断になった場合も、加算の算定は可能とされています。この加算の算定対象期間は原則として7日以内で、家族の疾病が当初の予想を超えて長引いた等のやむを得ない事情があるときは14日を限度に延ばせます。緊急の受け入れに加算が付くため、緊急の枠を持つ事業所があります。

ケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターに電話します。「今夜の介護ができない」と伝えると、緊急の受け入れ先を探してもらえます。

有料老人ホームの体験入居も、空きがあれば早い受け入れ先です。保険外で費用はかかりますが、施設側の判断が早く、その日のうちに入れることがあります。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号)新旧対照表・令和3年度改定

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号)新旧対照表・平成27年度改定

介護者が入院したら市町村の措置に頼る

介護者が倒れて入院した場合、本人は一人になります。

このとき動くのが、老人福祉法の措置です。市町村は、やむを得ない事由により介護保険法のサービスを利用することが著しく困難であると認めるときに、本人を老人短期入所施設などへ短期間入所させる措置(第10条の4第1項第3号)と、特別養護老人ホームへ入所させる措置(第11条第1項第2号)を採ります。

やむを得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。

動かすには、地域包括支援センターに「介護者が入院した」「介護する人がいない」と伝えます。老人福祉法は、市町村の業務として、老人の福祉に関する情報の提供と相談、必要な調査と指導を行うことを定めています(第5条の4第2項)。「限界」を口に出す相手は、家族より先に地域包括支援センターです。伝え方は、介護が限界でも言えないときはどうする?相談先と伝え方を解説の記事に書いています。

介護者が退院しても、以前と同じ在宅の介護に戻すのが難しいことが多いです。措置や緊急のショートステイで本人の居場所ができたら、その時点から本命の施設を探し始めます。

出典: e-Gov法令検索 老人福祉法

緊急の受け入れ先を使った後に本命の施設を探し始める

緊急のショートステイに入れたら、そこが期限の始まりです。介護保険の短期入所生活介護は、連続して30日を超えた日以降のサービスが短期入所生活介護費の算定の対象から外れるため、30日以内に次を決めます。数え方は、ショートステイの連続利用は何日まで?の記事に書いています。

この30日で、探し始める段階の全部をやります。一覧を見る、電話で条件を聞く、重要事項説明書を読む、見学する、申し込む。介護者は夜間の介護から一時的に離れているので、探す力が戻っています。

「一度預けたら、二度と家に戻れない」という恐れは、ショートステイの仕組みで解けます。期間が決まっていて、終われば家に戻ります。緊急の受け入れ先を使った家族が、そこから本命の施設に落ち着いたり、在宅の体制を組み直して家に戻ったりしています。緊急の受け入れ先を使うのは、失敗というより、探し始めるための時間を作ることです。

出典: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第180回 資料4 短期入所生活介護

まとめ:施設を探し始めるのは限界が来る前です

在宅介護の限界のサインは、介護者の受診の後回し、夜間に起きる回数、本人の転倒や排泄や拒否、怒鳴った回数の4か所に出ます。そのサインが出たときにやることは、入居を決めることというより、探し始めることです。探し始めることと入居することは別のタイミングで、探し始めは限界より前に置きます。

今夜からできる一歩は、枕元に紙を置いて、起きた時刻と回数を書くことです。ここを飛ばすと、「もう限界」という言葉だけが家族に届き、「まだ大丈夫では」で話が止まり、限界が来てから数か月を限界の状態で過ごすことになります。

記録が1週間分たまったら、ケアマネジャーに見せて、地域の施設の一覧と緊急時の受け入れ先を確かめましょう。介護のあんしんでは、在宅介護の限界のサインと施設を探し始めるタイミングも含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。