※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

「普段は目を離せないほど大変なのに、調査員さんの前だと、なぜかしゃきっと受け答えしてしまう」
要介護認定の訪問調査を控えたご家族から、よく聞く心配です。このままだと、普段の状態が伝わらないんじゃないか。
ただ、家族にできることは、はっきりしています。困っている印象を強めることでも、答え方を工夫することでもありません。普段の状態と、調査日の様子との差を、具体的な行為と頻度と介助のしかたで書いて残しておくことです。
その記録が、準備票(家族が書いて渡す記録)です。介護の知識がなくても、欄を埋めるだけで形になるようにしました。
準備票の目的は、ひとつだけです。
普段の様子を知っている家族しか持っていない事実を、言葉にしておくこと。
調査の場で家族が思い出しながら話そうとすると、たいてい抜けが出ます。緊張しますし、本人の前では話しづらいこともある。だから、当日までに書いておく。
書くときに、うまい文章である必要はありません。
この形で残った情報は、調査員が事実として受け取りやすくなります。
逆に、「大変です」「心配です」だけでは、行為も頻度も分かりません。同じ困りごとでも、書き方で伝わる量が変わります。
準備票に置く欄は、次の7つです。多いと感じるかもしれませんが、埋まらない欄は空欄のままでかまいません。
書く順番は決まっていません。
まず、困っている場面を「行為の名前」で書き出します。
起き上がり、移動、排泄、食事、服薬、意思疎通。こうした行為ごとに整理すると、調査で見られる項目と重なりやすくなります。
「最近つらい」ではなく、「どの行為でつらいのか」に分ける。ここから書き始めてください。
行為ごとに、普段できる範囲と、できないときの具体例を書きます。
同じ行為でも、日によって差があるのが普通です。「できる日もあれば、できない日もある」なら、そのまま書いてください。
できるときの様子と、できないときの様子を、両方書く。どちらか一方だけだと、実際の姿から離れてしまいます。
準備票のいちばん大事な欄です。
誰が、どんな介助を、どのくらいの頻度で行っているか。この3点をそろえて書きます。
| 書き足りない形 | 伝わる形 |
|---|---|
| 物忘れがある | 服薬を忘れる。家族が◯◯の方法で管理している。週◯回 |
| 火の始末が心配 | 火の消し忘れがある。家族が確認している。月◯回 |
| 夜が大変 | 夜間に起き出す。家族が付き添って対応している。週◯回 |
| お風呂を嫌がる | 声かけしないと入浴しない。洗髪と背中は家族が介助 |
「できない」だけで止めず、「家族が何をしているか」まで書く。ここが抜けると、実際に行われている介助が見えなくなります。
調査の当日、本人が普段と違って見えたなら、それも記録の対象です。
普段は答えられない質問に答えていた。普段は手伝っている動作を、自分でやってみせた。そうした点を、その場でメモしておく。
これは本人を否定するための記録ではありません。普段の状態と調査日の様子の「差」そのものが、伝えるべき事実だからです。
書いた内容には、できるだけ直近の具体例と日付を添えます。
「いつのことか」が分かると、記録としての精度が上がります。日付が思い出せなければ、「先週」「今月に入ってから」でもかまいません。
古い話より、最近の話。ここだけ意識してください。
本人の前では言いにくいことは、必ず出てきます。
その内容は準備票に書いたうえで、「この部分は本人の前では話しにくい」と分かるようにしておく。付箋を貼る、欄を分ける、印をつける。方法は何でも大丈夫です。
言いにくいことを無理に口に出す必要はありません。書いておけば、伝える手段は残ります。
最後に、立会いと個別の聞き取りについて、いつ誰へ相談するかを書いておきます。
調査の連絡を受けた時点で相談するのが、いちばん確実です。相談する予定も準備票に書いておけば、慌てずに済みます。
そのまま書き写して使える形にしました。行為の数だけ、同じ枠を増やしてください。
作成日 ◯年◯月◯日 / 記入者(続柄) / 連絡先
行為 (起き上がり・移動・排泄・食事・服薬・意思疎通 など)
普段できる範囲
できないときの様子
介助している人
介助の内容
介助の頻度 (週◯回・月◯回・毎日 など)
直近の具体例と日付 (◯月◯日に◯◯があった)
調査日だけ普段と違った点 (当日に気づいたことを追記)
本人の前では話しにくい補足 (該当する項目に印)
立会い・個別の聞き取りの相談 (いつ・誰へ相談したか)
手書きで問題ありません。全部の欄が埋まらなくても、書けたところから渡せば十分です。
準備票と並んで大事なのは、当日の立会いと日時の相談です。
認定調査員は、調査対象者や家族等の実際の介護者と調査日時を調整して調査を行うことになっています。つまり、日時の調整は相談してよいということです。普段いちばん介護している人が立ち会えるように、早めに希望を伝えてください。
さらに、必要に応じて調査対象者と介護者の双方から聞き取りを行い、個別に聞き取る時間を設けるよう工夫するとされています。本人の前では話しにくいことがある、と事前に伝えておけば、そのための時間を考えてもらえる可能性があります。
独居の方や施設に入所している方の場合も、可能な限り、日頃の状況を把握している家族や施設職員等に立会いを求め、正確な調査を行うよう努めるとされています。
遠方で同席できないときも、打つ手はあります。日頃の様子を知っている人が立ち会えるよう、早い段階で相談しておいてください。
出典:厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト2009改訂版 令和6年4月」
準備票に「能力」と「実際の介助」の両方を書くのには、理由があります。
調査項目には、能力で評価する項目、介助の方法で評価する項目、行動の有無で評価する項目があります。評価のしかたが項目ごとに違うため、どちらか一方だけ書くと足りなくなるのです。
そして、能力と実際の介助方法の関係が不自然に見える特殊な事例は、特記事項へ丁寧に記録することが審査上重要とされています。
「本人はできると答えるが、実際には家族が手伝っている」。この形は、まさにその不自然に見える場面にあたります。だからこそ、能力と介助の両方を並べて書いておく意味があります。
知っ得メモ 「できる」と「している」は分けて書く
準備票を書くときに迷いやすいのは、本人が「自分でできます」と言う場面です。
このとき、どちらかを選ぶ必要はありません。
「本人は自分でできると話している」「実際には家族が◯◯を手伝っている」。この2行を並べて書けば、それで十分です。
どちらが正しいかを家族が判断しなくていい。事実を2つ並べて置くだけで、記録としての役目は果たせます。
出典:厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト2009改訂版 令和6年4月」
調査の日に、たまたま急病などで状態が一時的に変化してしまうこともあります。
その場合、適切な調査ができないときは、状況が安定した後に再度調査日を設定する扱いが示されています。
普段と違いすぎる状態のまま進めなければいけない、というわけではありません。当日の状態が普段とかけ離れていると感じたら、その場で伝えてください。
準備票の「調査日だけ普段と違った点」の欄は、こういうときにも役立ちます。
出典:厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト2009改訂版 令和6年4月」
家族の書いたメモが、そのまま認定結果を決めるわけではありません。認定は、調査項目、特記事項、主治医意見書等を踏まえて行われます。
準備票は、主治医意見書や自治体の正式な手続きの代わりにはなりません。書いた内容が必ず特記事項に載る、と約束できるものでもありません。
それでも書く意味は、はっきりあります。
普段の様子を知っているのは家族だけです。その事実が言葉になっていなければ、誰にも渡せない。準備票は、渡せる形にするための道具です。
そして、要介護度を高くするための答え方を考える必要はありません。演技も、誇張も、いりません。普段どおりの事実を、具体的に書く。それだけで足ります。
書き方が分かっても、いざ手が止まる。ここでつまずく方は多いです。
「本人の前で、できないことを並べるなんて、裏切っているみたいで苦しい」
そう感じるのは、あなたが本人を大事に思っているからです。
覚えておいてほしいことが、2つあります。
1つめ。本人が人前で頑張るのは、その人の気持ちの問題です。
「他人の前ではちゃんとしていたい」。この気持ちは、否定しなくていい。だからこそ、その場で訂正しなくていいんです。
書きにくいことは準備票に書いて、本人の前では話しにくいと分かるようにしておく。それで足ります。
2つめ。書くのは評価ではなく、記録です。
「できない人だ」と書くわけではありません。どの行為で、誰が、どんな介助を、どのくらいの頻度でしているか。起きている事実を並べるだけです。
本人の良いところや、できていることも、同じ準備票に書いてかまいません。むしろ、その両方があるほうが、普段の姿に近づきます。
準備票を書く前に、よく出てくる質問をまとめました。
どれも、気を遣って黙っておくより、調査の連絡を受けた時点で希望を伝えておくほうが動きやすくなる場面です。
失礼にはあたりません。
調査は、日頃の状況をふまえて正確に行われることが求められています。普段の様子を知っている家族が、事実を整理して伝えることは、その助けになる情報です。
相談する価値はあります。
必要に応じて調査対象者と介護者の双方から聞き取りを行い、個別に聞き取る時間を設けるよう工夫するとされています。事前に「本人の前では話しにくいことがある」と伝えておいてください。
まず、日時の調整を相談してください。調査は、実際の介護者と日時を調整して行われることになっています。
そのうえで、日頃の状況を把握している家族や施設職員等に立会いを求めることも示されています。近くにいる方に立会いを頼むこと、準備票を事前に渡す方法を相談することも考えられます。
考え方は同じです。
施設に入所している方についても、可能な限り、日頃の状況を把握する家族や施設職員等に立会いを求め、正確な調査を行うよう努めるとされています。
普段の様子をよく知っているのは、そこで日々関わっている職員の方です。調査があることを事前に伝えておき、家族としての準備票も併せて渡してください。
出典:厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト2009改訂版 令和6年4月」
難しい知識は必要ありません。
普段の様子を、行為と頻度と介助のしかたで、書いて渡す
これだけ覚えていただければ、大丈夫ですよ。