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施設から「保証人を立ててください」と言われ、頼める親族がいないために断られた家族に向けた記事です。保証人の代わりに立てるのは、1人の親族ではなく、機能ごとに分けた引き受け先です。探しているのが特別養護老人ホームでも、この分け方はそのまま使えます。
別の記事のほうが早く進むのは、生活保護を受けている方・どこも満床と言われた方・たった今断られた方です。すでに入居している親の保証人がいなくなった場合はこの記事では扱いません。施設の生活相談員と地域包括支援センターの両方への相談から始めてください。
2件目でも同じことを言われたなら、次に電話をかける相手は親族ではありません。
施設が保証人に求めているのは、名前を書く人ではないからです。求めているのは、緊急のときの連絡や利用料の支払いのように、引き受け手がいないままだと現場に残る仕事です。
松阪市が市内の福祉施設132か所へ配り、103か所から回答を得た調査があります。身元保証人などが見つからない場合にどうしているかを聞いた結果は、条件を満たせば認めているのが81・断っているのが17・仕方なく受け入れているのが3でした。
この調査には、ショートステイから住宅型有料老人ホームまで10種類の施設が混ざっています。会議録に種類ごとの内訳がないため、17と81を特定の種類の数として読むことはできません。
地域を限った調査はこのようにあるものの、全国を母集団にして断っている施設の割合を示した公的な調査はありません。
断っていると答えた17の施設が挙げた理由は、次の6つです。
どれも「誰が」ではなく「何が」の話です。名前を書く人がいないから断ったのではなく、埋まらない仕事が残るから断っています。
一方、認めていると答えた81の施設が挙げた条件には、身元保証会社の利用・日常生活自立支援事業や成年後見制度の利用・緊急連絡先・行政機関の関わり・弁護士や司法書士などとの死後事務の委任契約が並びます。
どれも人の名前ではなく仕組みの名前です。医療行為の同意を除けば、断る理由と受け入れる条件は、同じ仕事を裏と表から言い換えたものです。これは施設の意地悪ではありません。断った17の施設が挙げた6つは、引き受け手がいないまま入居が決まると、その場にいる職員が全部を背負うことになります。
全部を引き受けてくれる親族を探し回る必要はありません。
ここまでが分かれば、家族が次にすることは1つです。埋まらない仕事の1つ1つについて誰が引き受けるかを一覧に書き出し、それを次の見学へ持っていきます。
出典: 松阪市「高齢者の入院・入所における身元保証に関する実態調査」(地域包括ケア推進会議 会議録)
ここからは、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の入居契約書の話です。「保証人」と呼ばれているものは、契約書の上では3つの欄に分かれています。
この3つは、別々の相手に立てられます。
暮らしの相談にも、亡くなったあとの手続きにも関わらないのが、この欄です。
頼めそうな親族が1人だけいる場合でも、その人が上限なく背負うことにはなりません。
月々の利用料のように額が先に定まらない支払いをまとめて保証する契約を、根保証契約といいます。
2020年4月1日以降に結ぶ個人の根保証契約には、上限額を決めることが必須になりました。この上限額を極度額といい、民法第465条の2第2項はこう定めています。
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
出典: e-Gov法令検索 民法
上限額を決めていない個人の根保証契約は、そもそも効力を持ちません。
全国有料老人ホーム協会は、さらに踏み込んだ見方を示しています。「極度額:月額利用料の6か月分」とだけ書かれていて金額が計算できない場合は、「その保証契約の条項部分は無効となります」としています。
契約書で確かめるのは、円単位の数字が入っているかどうかです。
出典: 全国有料老人ホーム協会 相談事例
暮らしや介護について施設と話し合い、退所するときの本人の引き取りと、亡くなったあとの遺体や遺留品の引き受けまでを担うのがこの欄です。
ただし、この職務の中身を定めた法令はありません。全国有料老人ホーム協会は「身元引受は、金銭債務を負担する保証契約とは区別される契約です」と明言し、身元引受人を指定するにあたって法令上の要件はないとも述べています。何を担うかを決めているのは、施設が用意する契約書の条文です。
沖縄県が公開している有料老人ホームの入居契約書のひな形は、この役を独立した条で立てています。その第31条第5項には「身元引受人は、連帯保証人又は返還金受取人を兼ねることができます」とあります。
返還金受取人は、前払金が戻るときの受け取り手のことです。
1人が2つの役を兼ねてよいと書かれているのですから、このひな形を使う施設なら2人で分けて受け持てます。
入居の契約書を見せてもらったら、この条項を探してください。条の番号は施設ごとに違うので、探すのは番号ではありません。身元引受人が連帯保証人を兼ねられる、と書かれたところです。
出典: 沖縄県「有料老人ホーム○○○入居契約書(比較用)」 / 全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームの入居契約における身元引受人について」
この欄に名前を書いても、それは保証の契約ではありません。 お金を保証する債務は保証契約によって生じ、その契約は書面か電子データにしなければ効力を生じないと、先ほどの民法が第446条第2項・第3項で定めているためです。
ただし、欄が求める中身も契約書ごとに違います。連絡先として何を引き受けるのかは、その施設の契約書の条文で確かめてください。
契約書に欄が3つ並んでいれば、施設は3つとも埋まった状態を求めます。けれども、全部を1人に背負わせる必要はありません。「お金の保証まではできないが、遺体の引き取りと相談ごとなら引き受けてよい」という親族が1人でもいるなら、その形で立てられます。
厚生労働省のガイドラインは、保証人に求められる働きを6つに分け、誰が担うかを関係者が書き込む様式まで示した資料です。入院の場面を想定していますが、施設に入るときに求められるものも同じ6つで分けられます。先ほどの松阪市が集めた断る理由6つとは別の分け方であり、こちらには入院計画やケアプランへの同意が入っています。
前の章が契約書のどの欄かの話だったのに対し、この章はその欄を誰に頼めるかの話です。
6つのうち、家族が引き受け先を立てて埋められるのは4つです。その4つを埋め方でまとめた次の3つは、どれも別々の引き受け先に頼めます。
並んでいる順が、そのまま埋めやすい順です。
緊急のときの連絡先は、親族でなくてかまいません。知人・友人・近隣の人でよく、平日の日中とそれ以外の時間で分け合うこともできます。同じガイドラインの事例では、時間帯で分け合ったことで、転院が実現しました。
連絡先を頼める人が誰もいない場合も、手続きは止まりません。 同じガイドラインの流れ図は、その枝に「緊急の連絡先がないことを記録の上、考えられる緊急時対応について本人の意思決定を支援する」と書いています。
出典: 厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」
この行から埋めるのには理由があります。総務省関東管区行政評価局が集めた取組の事例で市区町村が引き受けていたのは、お金ではなく連絡と同席でした。事例集に載った範囲での話です。
桶川市は担当職員の連絡先を病院や施設に伝え、閉庁時でも連絡がとれる体制を整えています。身寄りが無い場合に、職員が家族の代わりに話し合いの場へ呼ばれた例もありました。魚沼市が誰に何を頼むかを書き込む役割分担シートを作った例も、同じ事例集に載っています。
出典: 総務省関東管区行政評価局「高齢者の身元保証に関する調査」第2章 取組事例集
支払いの行は、保証人を立てるのではなく要らなくする道があります。
成年後見人は本人の財産から支払いを代行しますが、保証人にはなりません。 先ほどのガイドラインの逐語です。
成年後見人等が支払代行をしますので、成年後見人等に相談します。…なお、成年後見人等が保証人として、入院費を負担することはありません。
なお、親族ではなく専門職等の第三者が成年後見人等に選任されている場合、成年後見人等が本人の債務の保証人等になることは、一般的に適切でないとされています。
同じガイドラインは日常生活自立支援事業についても「日常生活自立支援事業は『身元保証人・身元引受人等』として契約はできない」と明記しています。
理由は脚注にあります。後見人が保証人として立て替えて払うと、お金を請求する人と、本人のお金を出す判断をする人が同じになってしまうためです。
残る道は、支払いの方法そのものを変えることにあります。
同じガイドラインの事例4は、92歳で近い親族がいない方の入所です。日常生活自立支援事業を使い、地域包括支援センターと民生委員が継続して関わりました。
その結果、施設は身元保証人の指定がないまま受け入れています。支払い方法は「請求内容をご本人に確認してもらいカード又は銀行口座引き落とし」です。
ただし、いま挙げた根拠は実際にそう扱った1件の例であって、すべての施設に当てはまる決まりではありません。申し込む施設に確かめてください。有料老人ホームの前払金がいくら戻るかと、その保全の仕組みは、前払金の保全を確かめたい方に向けた記事に譲ります。
入院や退所のときの手続きは、成年後見人・日常生活自立支援事業・地域包括支援センターや民生委員が支えられます。身元引受人の名義になれるという意味ではありません。 先ほどの「契約はできない」はその名義の話で、こちらは実際の手続きを手伝う話です。
死後の遺体と遺品の引き取りと費用の精算は、死後事務の委任契約で頼めます。
成年後見制度と日常生活自立支援事業の境目は、本人が契約の内容を自分で判断できるかどうかです。判断できないときに使うのが成年後見制度で、始めるには家庭裁判所への申立てが要ります。自分で判断できる段階なら、社会福祉協議会と契約する日常生活自立支援事業が使えます。
この見極めを自分でする必要はありません。窓口で相談すれば、どちらに当たるかを一緒に確かめてもらえます。
最高裁判所の統計では、成年後見関係事件の申立人を区分ごとに数えると市区町村長がいちばん多く、令和6年は9,980件でした。頼める親族がいなくても、市区町村長が申し立てる道があります。
審理は2か月以内に終わったものが約72.0%、4か月以内が約93.8%でした。
日常生活自立支援事業の、法律の上での名前は福祉サービス利用援助事業です。いま使えるのは福祉サービスの利用援助と日常的な金銭管理までで、2026年6月25日に公布された改正で対象が広がり、保健医療サービスや葬祭などの利用の援助も含む事業に作り直されます。
ただしこの部分の施行日は、まだ政令で定められていません。 公布の日から2年以内に定めることだけが、法律に書かれています。窓口で頼めるのは、いまのところ改正前の内容までです。
出典: 厚生労働省「日常生活自立支援事業」 / 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について」(介護保険最新情報 Vol.1518)
ここまでの3つを、ガイドラインの6つの機能に戻して並べます。
| 機能 | 誰が・何が引き受けられるか |
|---|---|
| 緊急のときの連絡 | 知人・友人・近隣の人。時間帯で分け合えます |
| 入院費と利用料の支払い | 口座引き落としやカード払い。成年後見人の代行。日常生活自立支援事業。受け入れた例があるという段階で、全施設の決まりではありません |
| 入院や退所のときの手続き | 成年後見人。日常生活自立支援事業。地域包括支援センターや民生委員。いずれも手続きを支える側で、身元引受人の名義にはなれません |
| 入院計画やケアプランへの同意 | 本人が行います |
| 死後の遺体と遺品の引き取りと費用の精算 | 死後事務の委任契約。親族が「これだけなら」と引き受ける形もあります |
| 医療行為の同意 | 本人が行います。第三者に同意の権限はないと考えられています |
下の2行は、家族が引き受け先を立てる行ではありません。入院計画やケアプランへの同意は本人が決める行で、判断が難しいときは本人の意思決定を支援する形をとります。
医療行為の同意については、次の章で扱います。
後見人を付ければ全部片づく、と言われたなら、外れる行があります。表の6行目、医療行為の同意です。後見人は2行目の保証人にもなれず、3行目でも名義にはなれませんが、そのどちらも別の引き受け先を立てられます。立てられないのは6行目だけです。
この行だけは、引き受け先を立てる話になりません。家族と施設が先に決めておくのは、誰が同意するかではなく、本人が決められないときにどう決めるかの手順です。
施設や病院がここを気にするのは、松阪市の調査で断る理由に挙がっていた項目でもあるからです。夜中に容体が変わって手術をするかどうかの判断が要るとき、誰にも連絡がつかなければ、医師も職員も次の手に進めません。
けれども、ここは代わりの人を立てる話ではありません。厚生労働省のガイドラインの逐語です。
なお、上記の他に「身元保証・身元引受等」に対して医療行為の同意をする役割を期待している事例もありますが、医療行為の同意については、本人の一身専属性がきわめて強いものであり、「身元保証人・身元引受人等」の第三者に同意の権限はないものと考えられます。
出典: 厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」
同じガイドラインは、成年後見人についても同じことを書いています。
成年被後見人等の認知症や精神障害・知的障害により判断能力が不十分な人についても、成年後見人等の第三者が医療に係る意思決定・同意ができるとする規定はなく、成年被後見人等に提供される医療に係る決定・同意を行うことは後見人等の業務に含まれているとは言えません。
同じガイドラインは医療機関に対して「成年後見人等に同意書へのサインを強要することがないよう注意して下さい」とまで書いています。
民間の身元保証会社についても同じです。令和6年度の厚生労働行政推進調査の文書は、高齢者等終身サポート事業者を含む第三者に医療同意の権限はないものと考えられている、と述べています。
いずれも法令が禁じているのではなく、権限はないものと考えられる、という示し方です。
ここは、代わりの人を立てるのではなく、決め方を先に決めておく話です。 「同意できる人がいないので受けられません」と言われたら、本人の意向をもとに医療とケアの担当者が決める形があると示せます。
同じガイドラインは、家族などがいない場合や家族が判断を医療とケアのチームに委ねる場合について、本人にとっての最善の方針をとることを基本としています。その場として挙げられているのが、倫理カンファレンスや臨床倫理委員会です。倫理カンファレンスは、担当者が集まって方針を決める話し合いのことです。
ただし「元気なうちに書面を残しておけば安心」とは言えません。令和6年度の文書は、事業者が用意した包括的な同意書やチェックリスト形式の意向表明文書について「丁寧な話し合いのプロセスを踏むことが十分に期待できないため望ましくない」としています。どのような状況を想定して書かれた意向なのかが曖昧な文書は、有効な文書と判断されない可能性があるとも書かれています。
出典: 令和6年度厚生労働行政推進調査事業費(地域医療基盤開発推進研究事業)
保証人がいないことを理由に入居を断れるかどうかは、施設の種類ごとに違います。種類ごとに違うのは、提供を拒んではならないという条文があるかどうかと、厚生労働省の通知の宛先になっているかどうかの2つです。
「保証人がいないだけで断ってはいけない」と定めた厚生労働省の通知には、宛先があります。介護保険施設、つまり特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3つです。
介護医療院は、介護療養型医療施設(介護療養病床)の転換先として作られた施設です。
提供を拒んではならないという条文だけなら、このあと表で並べるとおり、グループホームと介護付有料老人ホームにも掛かっています。
平成30年8月30日に出た通知の逐語です。
介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はなく、各施設の基準省令においても、正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできないこととされており、入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない。
介護保険施設については、保証人がいないことが断ってよい理由に当たらない、という意味です。この通知は地方自治法第245条の4第1項に規定する技術的な助言で、罰則を伴う決まりではありません。
同じ通知に添えられた一般向けの資料には「基本的に身元保証人がいなくても入院や介護施設等への入居は可能です」と書かれています。ここでいう「介護施設等」が指すのは、上の3つです。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は入っていません。
出典: 厚生労働省「身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」(介護保険最新情報 Vol.676) / 厚生労働省「介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯」
そのうえで、施設の種類ごとに掛かっている決まりを並べたのが次の表です。
| 施設の種類 | 提供を拒んではならない条文 | 平成30年の通知の宛先か | 監督しているのは誰か |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院 | あり(限定なし) | 宛先 | 都道府県知事(指定) |
| グループホーム | あり(準用) | 宛先でない | 市町村長(指定) |
| 介護付有料老人ホーム | あり(ただし「入居者に対する」提供という書き方) | 宛先でない | 都道府県知事(指定) |
| 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 | なし | 宛先でない | 届出や登録の受け先(都道府県か市) |
グループホームの位置には注意が要ります。条文の上では提供を拒んではならないとされているものの、指定と指導監督を行うのは市町村長です。平成30年の通知の宛先でもありません。都道府県に持っていっても管轄が違います。
介護付有料老人ホームについては、2つの条文の書かれ方を並べます。
特別養護老人ホームの条文は「指定介護老人福祉施設は、正当な理由なく指定介護福祉施設サービスの提供を拒んではならない」と、限定なしで書かれています。一方、介護付有料老人ホームの条文は「正当な理由なく入居者に対する指定特定施設入居者生活介護の提供を拒んではならない」です。同じ条の第3項では「入居申込者又は入居者」と2つを書き分けています。
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 / e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅には、そもそも提供を拒んではならないという条文がありません。有料老人ホームの根拠となる老人福祉法に、入居の申し込みを断ることを禁じる決まりがないためです。サービス付き高齢者向け住宅にも、同じ趣旨の条文はありません。そこで働くのが、誰と契約するかは当事者が自由に決めてよいと定めた民法第521条第1項になります。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法 / e-Gov法令検索 民法
自分が当たっている施設の種類を決めているのは、その施設が受けている指定と届出です。どの行に当たるかが分かれば、家族は施設に何を言えるかを決められます。
保証人という点に限れば、条文と通知の両方がある特別養護老人ホームがいちばん頼みやすい相手です。
ただし特別養護老人ホームには入所の要件と順番待ちがあります。断られにくいことと、実際に入れることは別の話です。
住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅が入居を断ること自体は、違法ではありません。「法律で禁じられているはずだ」と伝えても、根拠になる条文がないので、話は前に進みません。それでも、断られたあとに家族が次にできることが2つあります。
1つ目はどの施設で断られても使えます。2つ目を頼めるかどうかを分けるのは、断られた施設の種類です。
家族が相談する相手は、断られた施設の種類ごとに違います。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院と介護付有料老人ホームなら、指定と指導監督を行う都道府県の担当課です。グループホームなら、指定を行う市町村の担当課です。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅なら、届出と登録の受け先の担当課へかけます。
この受け先は、地域によっては都道府県ではなく政令指定都市や中核市です。電話をかける前に、市の高齢福祉の担当課へ「有料老人ホームの届け出はどこが受けているか」を聞いておくと空振りしません。
権限そのものはあります。老人福祉法第29条が都道府県知事に与えているのは、有料老人ホームへの報告の求めと立入検査の権限です。改善命令や、事業の制限や停止の命令の権限もあります。
届出を政令指定都市や中核市が受けている地域なら、市長が同じ権限を行います。
気をつけたいのは、その権限が誰を守るために用意されているかです。改善命令も停止の命令も、守ろうとしている相手を「入居者」と定めています。入居を断られた人は、まだ入居者ではありません。 断られたこと自体を取り消させる力までは無いと分かったうえで、電話をかけてください。
出典: e-Gov法令検索 老人福祉法
断ったあとに次を紹介する義務が書かれている種類もあります。特別養護老人ホームの基準省令 第4条の3の逐語です。
指定介護老人福祉施設は、入所申込者が入院治療を必要とする場合その他入所申込者に対し自ら適切な便宜を提供することが困難である場合は、適切な病院若しくは診療所又は介護老人保健施設若しくは介護医療院を紹介する等の適切な措置を速やかに講じなければならない。
自分のところで受けられないときは、代わりに入れる施設を示しなさい、という決まりです。ここでは「入所申込者」と明記されているので、まだ入居していない人にも掛かります。
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
介護付有料老人ホームにも似た規定がありますが、紹介先は病院と診療所に限られます。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅には、この義務を定めた規定がありません。
出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
病院は受けてくれたのに施設は断る、という話には数字の裏づけがあります。総務省関東管区行政評価局の調査で、身元保証人がいない場合に「入院・入所をお断りする」を選んだのは病院が5.9%、施設が20.6%でした。
施設側の数字には但し書きが要ります。配布先は埼玉県・東京都・神奈川県の介護保険施設で、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は入っていませんでした。
回答した782施設のうち「お断りする」を選んだのは161施設で、そのうち28施設は他の選択肢も併せて選んでいます。最も多い回答は「必要な場面ごとに個別に対応する」で60.3%でした。総務省自身も、この調査を引くときに「全国的な調査ではないが」と付けています。
読み取れるのは2つです。断られる施設が実際にあることと、通知の宛先になっている種類ですら断ると答えた施設があることです。入居先を決める根拠には使えません。
施設を指導する担当課への相談は後ろ盾であって、最初にやることではありません。 最初に出すのは、機能ごとの引き受け先を書き出した一覧です。
出典: 総務省関東管区行政評価局「高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)」
一覧を出しても押し戻されたとき、施設の口から次に出てくるのが身元保証会社です。医療行為の同意を除く機能を1つの契約でまとめて引き受ける形なので、施設は担い手を1人ずつ確かめずに済みます。
その会社が営む身元保証等高齢者サポート事業には、監督する役所がありません。総務省行政評価局の報告書の逐語です。
身元保証等高齢者サポート事業を直接規律・監督する法令・制度等は存在せず、同事業を所管する行政機関も存在しない。
出典: 総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」報告書
どこかの役所が事業者を検査して、問題があれば止めるという仕組みが無いという意味です。検査する役所がない以上、確かめる責任は契約する家族に残ります。
3つとも、契約する前に事業者へ確かめられます。
先ほどの総務省の調査では、契約書に「身元保証」の条項が無いのに、身元保証のサービスを名乗っていた事業者が見つかりました。
最初に確かめるのは料金表ではなく契約書です。 契約の前に、契約書と重要事項説明書を見せてくださいと頼んでください。
内閣官房ほかが作った高齢者等終身サポート事業者ガイドラインにも、チェックリストが付いています。その1つが「事業者に関する情報や提供しているサービス情報について、HPで公表されているなど、利用者が分かるようになっている」です。
出典: 内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」
契約書の書きぶりでいちばん揉めやすいのは、この入会金です。同じ報告書によると、入会金や契約金を受け取っている事業者は66ありました。主な内訳は、「全く返金しない」と明記していたのが28・一部返金できると明記していたのが19・規定そのものが契約書に無かったものが14です。
出典: 総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」報告書
先ほどのチェックリストでは「契約するサービスの解除方法・事由や契約変更・解約時の返金の取扱い」と「解約料について適正な金額が設定されている」がここに当たります。
死後事務の預託金は、先に預けておいて亡くなったあとの費用にあてるお金です。同じ調査では、この預託金がある69の事業者はすべて「手数料等を除いた全額を返金」と契約書に書いていました。
それでも報告書は、預託金を事業者自身の運転資金と分けずに管理している事業者があることを問題として挙げています。
契約書に全額返金と書いてあることと、そのお金が分けて管理されていることは別です。 チェックリストの「預託金の額やその根拠について明らかになっている」と「利用者からの預託金について、事業者自身の運転資金等とは明確に区分して管理している」を、その場で確かめてください。
費用の見当も示します。総務省の報告書はこう述べています。
身元保証等高齢者サポート事業を利用するには様々な費用がかかり、事業者によって金額や費目が異なるため、標準的なサービス内容やこれに要する平均的な金額を示すことは困難であるが、少なくとも100万円以上はかかるものと考えられる。
出典: 総務省行政評価局「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」報告書
公的な相場の統計はありません。事業者ごとに費目の立て方が違うので、相見積もりを取っても比べにくいと報告書は述べています。予算の見当としては、100万円を下回ることは考えにくいというところまでです。
順番としては、先に公的な制度と行政の関わりで埋められないかを確かめてください。それでも足りない機能について会社を検討するほうが得です。
厚生労働省の一般向けの資料も「すぐに契約するのではなく、本当に高齢者サポートサービスが必要かどうかを含め、まずは地域包括支援センターに相談しましょう」と書いています。
ただし、退院日が近いなど時間が無いときは、窓口へ相談しながら会社の検討を並行して進めても差し支えありません。
出典: 厚生労働省「身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」(介護保険最新情報 Vol.676)
家族が向かう先は2つです。まず地域包括支援センターへ行き、置いていない地域なら市町村の高齢福祉の担当課へかけます。
ここまでに出てきた社会福祉協議会や都道府県の担当課には、この2つから案内してもらえます。
持っていくのは、引き受け先を書き出した一覧と、自治体が作っている機能ごとのガイドラインです。
静岡県熱海市の「『身元保証等』のない方の入院・入所ガイドライン」は、身元保証に期待される働きを分けたうえで、それぞれについて身元保証人に替わる対応例を整理しています。巻末にあるのは、連絡先の一覧と支援シートです。
この熱海市の流れ図は、国の補助事業の報告書にも「身寄りのない方への対応のフローチャートの例」として載っています。その報告書は施設に向けて「このようなものを参考に、施設での対応方針及び各段階での対応策を定めておくことも有用です」と書いています。
機能ごとに分けて埋めるという進め方は、施設に向けても参考として示されている手順です。交渉のうまさを競う話ではありません。
出典: 熱海市「『身元保証等』のない方の入院・入所ガイドライン」 / 令和6年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「『身寄りのない高齢者』を介護施設等で受け入れるときの主なポイント」(株式会社日本総合研究所)
書き上がった一覧は、たとえばこうなります。親に軽い認知症があり、頼める親族がいない場合です。手続きの途中の行には△印を付けます。
△印が付いた行が、そのまま窓口で相談する内容になります。
全部が埋まっていなくても持っていけますが、空欄のままにはしないでください。いまどこまで進んでいるかを書いて出します。
明日からの順は3つです。
3つ目まで進めば、断られた理由が施設のせいなのか、埋めていない行のせいなのかが分かれます。
施設が求めているのは保証人という人ではなく、引き受け手のいないままの機能です。持ち帰るのは、その機能を誰が引き受けるかを分けたものです。
次の施設を探し続ける前に、市町村の窓口へ相談に行ってください。 施設を替えても、埋めていない機能はそのまま残ります。