親を呼び寄せて介護するとどうなる?手続きと確かめる順番を解説

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「介護がつらい…」「近くにどんな施設があるの?」
まずは資料を取り寄せてみよう!

シニアのあんしん相談室


※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

 

離れて暮らす親のことが気がかりで、呼び寄せるか、自分が実家へ戻るかを考え始めた。決めかねているあいだにも、親の体は少しずつ変わっていきます。

親の家まで通う時間がなくなれば、介護は楽になりそうに思えます。ただ、住民票を移した日に変わるのは、住む場所だけではありません。

変わるのは、親の介護保険を運営している市町村です。市町村が変われば、ケアマネジャーも、いま使っているサービスも、費用の判定も、移した先の市町村の制度で決まり直します。その一方で、そのまま引き継げるものもあります。この記事では、何が引き継げて何が切れるのか、そして移す前に確かめる順番を、順に説明します。

1. 親を呼び寄せると介護保険はどう変わる?

呼び寄せで最初に手続きするのは、住民票の転出と転入です。この章では、親の介護保険を運営する市町村が入れ替わる日はいつなのかと、入れ替わらずに済む仕組みが子の家に住む場合にも使えるのかを確かめます。

1-1. 住民票を移した日に保険者が変わる

介護保険を運営しているのは、親が住んでいる市町村です。介護保険法の第9条は、被保険者を「市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者」と定めています。基準になるのは住所であって、生まれた場所でも、子の住所でもありません。

日付の決まり方も条文にあります。第10条は、65歳以上の人が「当該市町村の区域内に住所を有するに至ったとき」から資格を取得すると定めています。第11条は、住所を有しなくなった日の翌日から資格を失うとしたうえで、ただし書きで「当該市町村の区域内に住所を有しなくなった日に他の市町村の区域内に住所を有するに至ったときは、その日から、その資格を喪失する」としています。

引っ越しの日に前の市町村を抜けて、同じ日に新しい市町村へ入ります。介護保険が空く日はできません。

出典: e-Gov 介護保険法

住民票の届出には期限があります。住民基本台帳法の第24条は、転出を「あらかじめ」届け出るものとしています。第22条は、転入した日から14日以内に届け出るものとしています。転出は先に、転入は後から14日以内です。

出典: e-Gov 住民基本台帳法

1-2. 子の家に住むと住所地特例は使えない

介護保険には、住所を移しても前の市町村が保険者のまま続く仕組みがあります。住所地特例といいます。

住所地特例が働くのは、介護保険法の第13条が挙げている施設へ入ったときだけです。条文は「次に掲げる施設(以下「住所地特例対象施設」という。)に入所又は入居(以下「入所等」という。)をすることにより当該住所地特例対象施設の所在する場所に住所を変更したと認められる被保険者」と書き、続けて3つを挙げています。介護保険施設、特定施設、老人福祉法第20条の4に規定する養護老人ホームです。

子の家も、実家も、この3つには入っていません。呼び寄せて同居する場合、住所地特例は使えません。保険者は必ず移ります。

出典: e-Gov 介護保険法

2. 要介護の認定は引き継げる?

引き継げます。移した先で認定調査からやり直す必要はありません。ただし、転出のときに受け取る紙が1枚と、14日という期限があります。

2-1. 転出の前に受け取る受給資格証明書

引き継ぎに使う紙は、介護保険受給資格証明書です。厚生労働省が示している帳票の様式には、被保険者番号、氏名、生年月日のほかに、次の欄があります。

  • 住所(転出先予定)
  • 異動予定日
  • 要介護状態区分
  • 認定年月日
  • 認定の有効期間
  • 利用者の負担割合

転出先と異動予定日を書く欄があります。移った後に取り寄せる紙ではなく、転出の手続きに合わせて、いまの市町村の介護保険の窓口で受け取る紙です。

認定の有効期間の欄は「年 月 日 から  年 月 日まで有効」という形です。移った先で新しく期間が付け直されるのではなく、いまの認定の期間がそのまま書かれます。

負担割合の欄には「(住所移転前の負担割合)」という断り書きが付いています。証明書に書かれるのは、移す前の市町村で決まっていた割合です。移した先でも同じ割合になるとは、様式のどこにも書かれていません。

出典: 厚生労働省 帳票レイアウト(介護保険受給資格証明書)

2-2. 転入から14日以内に申請する

期限の根拠は、介護保険法の第36条です。

市町村は、他の市町村による要介護認定又は要支援認定を受けている者が当該市町村の行う介護保険の被保険者となった場合において、当該被保険者が、その資格を取得した日から十四日以内に、当該他の市町村から交付された当該要介護認定又は要支援認定に係る事項を証明する書面を添えて、要介護認定又は要支援認定の申請をしたときは、(中略)認定審査会の審査及び判定を経ることなく、当該書面に記載されている事項に即して、要介護認定又は要支援認定をすることができる。

条件は2つです。移した先に住所を持った日から14日以内に申請すること。前の市町村が交付した証明書を添えること。この2つがそろえば、認定審査会の審査と判定を省いて、証明書に書かれたとおりに認定できます。

要介護3の親は、移した先でも要介護3のまま使えます。

出典: e-Gov 介護保険法

2-3. 14日を過ぎるとどうなるか

介護保険法の第36条が審査の省略を認めているのは、14日以内に申請したときだけです。過ぎると、この条文は使えません。

出典: e-Gov 介護保険法

使えなくなると、新しく申請する扱いになります。認定調査を受けて、認定審査会の審査と判定を経ることになります。

要介護度がその日に消えるわけではありません。使えなくなるのは、審査を省いて前の認定をそのまま引き継ぐ扱いです。引っ越しの片づけが落ち着いてから役所へ行こうとすると、この14日を過ぎます。転入届と認定の申請は、同じ日に済ませてください。

3. いま使っているサービスは続く?

いま使っているサービスは、3つに分かれます。保険者が変わると給付の対象から外れるもの、事業所を探し直せば続けられるもの、書類を引き継いで組み直すものです。

3-1. 地域密着型のサービスは続けられない

介護保険のサービスのうち、地域密着型と呼ばれるものは、その市町村の被保険者だけが使えます。

根拠は介護保険法の第42条の2です。地域密着型介護サービス費が支給されるのは「当該市町村(中略)の長が指定する者」から地域密着型サービスを受けたときだと定めています。保険者が移れば、前の市町村の長が指定した事業所は「当該市町村の長が指定する者」ではなくなります。

どのサービスが当たるかは、同じ法律の第8条第14項に並んでいます。定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、複合型サービスの9つです。

出典: e-Gov 介護保険法

市町村の案内も同じことを書いています。横浜市は、地域密着型サービスについて「原則としてその事業所が所在する市町村の被保険者のみが利用できるサービスです」としたうえで、転居の場面について次のように書いています。

サービスの利用開始時だけでなく、利用継続中に「他市町村の家族のもとへの転居」や「他市町村の施設等への入所」等、何らかの理由により住民票を横浜市外に異動した場合は、サービスの利用(保険給付)ができなくなりますので、ご注意ください。

「他市町村の家族のもとへの転居」と名指しされているものが、呼び寄せです。

例外はあります。同じ横浜市の案内は「市町村間での協議の上、事業所が所在する市町村長の同意を得ることにより、他市町村の被保険者が利用することができる場合があります」としています。ただし、同意が必ず得られるとは書かれていません。得られる前提で移す日を決めるものではありません。

出典: 横浜市 区域外の地域密着型サービスの利用について横浜市 地域密着型サービスの利用期間中の住所変更について

親が小規模多機能型居宅介護やグループホームで暮らしを保っている場合、呼び寄せはその利用を終わらせる判断でもあります。移すかどうかを決める前に、ここを先に確かめてください。

3-2. 訪問介護や通所介護は事業所を探し直す

訪問介護、通所介護、福祉用具貸与などの居宅サービスに、地域密着型のような住所の制限はありません。移した先でも、同じ種類のサービスを使えます。

ただし、いまの事業所がそのまま来てくれるとは限りません。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準の第29条は、訪問介護の事業所が運営規程に定める事項の1つとして「通常の事業の実施地域」を挙げています。事業所ごとに、来られる範囲が決めてあります。

移した先がその範囲の外なら、事業所を探し直すことになります。通所介護も同じで、送迎できる範囲があります。

出典: e-Gov 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

福祉用具の貸与も、貸している事業所との契約です。事業所が新しい家まで来られない場合は、いったん返して、移した先の事業所から借り直すことになります。

3-3. ケアマネジャーから受け取る書類

ケアマネジャーも変わります。居宅介護支援の事業所にも、来られる範囲があるためです。

引き継ぎのための書類は、頼めば出してもらえます。指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準の第15条が、次のように定めています。

指定居宅介護支援事業者は、利用者が他の居宅介護支援事業者の利用を希望する場合、要介護認定を受けている利用者が要支援認定を受けた場合その他利用者からの申出があった場合には、当該利用者に対し、直近の居宅サービス計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならない。

「交付しなければならない」と書かれています。厚意で出してもらうものではなく、事業者の義務です。直近のケアプランと、その実施状況が分かる書類の2つを受け取ってください。

出典: e-Gov 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

移した先の新しいケアマネジャーは、この2つを読めば、親がこれまで何をどれだけ使ってきたかが分かります。家族が口頭で伝え直す手間が減ります。

3-4. 特別養護老人ホームの申し込み

特別養護老人ホームに申し込んで待っている場合、その申し込みは自動では移りません。

広域型と呼ばれる特別養護老人ホームに、住所の要件はありません。市外に住んでいても申し込めます。ただし、優先度は市町村の指針で変わります。横浜市は、よくある質問で次のように答えています。

申込みは可能ですが、「横浜市特別養護老人ホーム入退所指針」において、横浜市の介護保険証をお持ちの方を優先とする10点の加点項目を設けていますので、優先度は低くなります。

出典: 横浜市 横浜市民でなくても横浜市内の特別養護老人ホームに申込できますか

加点の項目と点数は市町村ごとに違います。横浜市の例をそのまま他の市町村へ当てはめることはできません。移す先が決まったら、その市町村の入退所の指針を確かめてください。

申し込み先が小さな特別養護老人ホームの場合は、扱いが変わります。介護保険法の第8条は、地域密着型介護老人福祉施設を「老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が二十九人以下であるものに限る。)」と定めています。定員29人以下の特別養護老人ホームは地域密着型サービスなので、保険者が移れば、そこへの申し込みは続けられません。

出典: e-Gov 介護保険法

いま申し込んでいる施設には住所が変わったことを届け、移した先では改めて申し込むことになります。

4. 呼び寄せで変わるお金

呼び寄せで変わるお金は3つあります。親が払う介護保険料、世帯を1つにしたときの利用料の判定、後期高齢者医療の保険料です。

4-1. 介護保険料は市町村ごとに違う

65歳以上の人が払う介護保険料は、市町村ごとに決まります。同じ所得でも、住む市町村が変われば額が変わります。

厚生労働省の資料によると、第9期(令和6年度〜令和8年度)の保険料基準額は、保険者ごとの月額を全国で加重平均して6,225円です。同じ数え方の第8期(令和3年度〜令和5年度)は6,014円で、211円上がりました。

同じ資料には、全国でいちばん低い市町村といちばん高い市町村も載っています。低いほうは東京都小笠原村で月3,374円、高いほうは大阪府大阪市で月9,249円です。これは全国の両端どうしの比較で、呼び寄せで実際に生じる差の目安ではありません。

出典: 厚生労働省 第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について

この額は基準額です。同じ資料は「本資料における保険料額は、保険者ごとの保険料基準額(月額)を全国加重平均したもの」と注記しています。実際に払う額は所得の段階で変わるため、親が払う額そのものではありません。移す先が決まったら、その市町村の保険料の段階表で確かめてください。

4-2. 世帯を一つにすると変わるもの

同じ家に住むことと、住民票の世帯を1つにすることは、別の手続きです。住民基本台帳法は、住所の届出(第22条から第24条)と、どの世帯に属するかの届出(第25条の世帯変更届)を、別の条に分けています。

出典: e-Gov 住民基本台帳法

世帯を1つにすると、介護の費用の判定が変わりうるところが3か所あります。ただし、1つ目は条件が付きます。

1つ目は、利用料の負担割合です。介護保険法施行令の第22条の2は、判定に使う所得を「介護給付対象サービスを受けた第一号被保険者及びその属する世帯の他の世帯員である全ての第一号被保険者」の分としています。足すのは第一号被保険者、つまり65歳以上の人の所得です。同居する子が65歳未満なら、その所得は入りません。

出典: e-Gov 介護保険法施行令

2つ目は、高額介護サービス費の上限です。1か月の自己負担が上限を超えたときに、超えた分が戻る仕組みで、上限は世帯の課税の状況で決まります。厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、市町村民税が世帯非課税の場合は月24,600円、市区町村民税の課税世帯(課税所得380万円未満)の場合は月44,400円です。差は月19,800円です。

同じ資料は「「世帯」とは住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額を指し」と注記しています。判定に使うのは、住民基本台帳の世帯です。

3つ目は、施設の食費と居住費を下げる負担限度額認定です。同じ資料は、対象になる人の要件を「世帯全員が市町村民税非課税で」と書いています。課税されている子と同じ世帯になれば、この要件から外れます。

出典: 厚生労働省 介護サービス情報公表システム 介護サービスにかかる利用料

課税されている子と同じ世帯にすると、2つ目と3つ目が変わります。1つ目の負担割合は、子が65歳未満なら変わりません。子が65歳以上であれば、その所得も判定に入ります。

世帯を1つにするかどうかは、移す先の市町村の窓口で、この3つがどう変わるかを聞いてから決められます。

4-3. 後期高齢者医療は都道府県ごとに違う

親が75歳以上なら、医療の保険も切り替わります。

後期高齢者医療を運営しているのは、都道府県ごとの広域連合です。高齢者の医療の確保に関する法律の第48条は「都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する広域連合」を設けるものとしています。

資格の切り替わり方は介護保険と同じです。第53条のただし書きは、住所を有しなくなった日に他の広域連合の区域内へ住所を持った場合、その日から資格を失うとしています。

保険料の率は広域連合ごとに決まります。第104条第2項は、保険料率を「後期高齢者医療広域連合の全区域にわたつて均一の保険料率であることその他の政令で定める基準に従い後期高齢者医療広域連合の条例で定めるところにより算定された保険料率」としています。都道府県をまたげば、率が変わります。

出典: e-Gov 高齢者の医療の確保に関する法律

同じ都道府県の中で移るなら、広域連合は変わりません。県をまたぐかどうかで、確かめることが変わります。

5. 家を直す枠と福祉用具はどうなる?

移すことで減るものばかりではありません。家に手すりを付けたり段差をなくしたりする介護保険の枠は、転居すると使い直せます。一方、借りている福祉用具は選び直しになります。

5-1. 転居すると住宅改修の枠が戻る

介護保険の住宅改修には、20万円の支給限度基準額があります。この枠は、一生に一度だけのものではありません。

神戸市の案内は、支給限度基準額を「要介護状態区分(要介護・要支援)に関わらず、一律20万円」としたうえで、給付の実績がリセットされる場合を2つ挙げています。要介護状態区分が3段階以上上がった場合と、次の場合です。

転居した場合(一つの住民票住所地につき、20万円)

出典: 神戸市 介護保険住宅改修費の支給

親が前の家で20万円を使い切っていても、移した先の家では改めて20万円の枠を使えます。

20万円は、現金でもらえる額ではありません。給付の対象になる工事費のほうの上限です。

何割が戻るのか、どんな工事が対象になるのか、いつ申請するのかは、住宅改修そのものを扱う別の記事で確かめてください。

5-2. 福祉用具は新しい家で選び直す

ベッドや手すりを借りている場合、同じものをそのまま新しい家で使えるとは限りません。

指定居宅サービス等の基準の第199条第四号は、福祉用具貸与について「利用者の身体の状況等に応じて福祉用具の調整を行う」ことを定めています。第200条は、福祉用具専門相談員が、利用者の心身の状況と希望、そして住まいの状況を踏まえて福祉用具貸与計画を作ることを定めています。

引っ越しで変わるのは、この住まいの状況です。部屋の広さも、廊下の幅も、段差の位置も変わります。前の家に入っていたベッドが、新しい部屋には入らないこともあります。

出典: e-Gov 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

移した先の福祉用具専門相談員に新しい家を見てもらってから、何を借りるかを決めることになります。

6. 同居すれば介護は楽になる?

通う時間はなくなります。ただし、介護そのものが軽くなるとは限りません。国の調査は、同居して主に介護している人が1日のどれくらいを介護に使っているかを、要介護度別に数えています。

6-1. 要介護3以上は「ほとんど終日」が最多

その集計を出しているのは、厚生労働省の2025(令和7)年 国民生活基礎調査です。

分母は、その要介護度の「同居の主な介護者」です。

「同居の主な介護者」の介護時間について、「要介護者等」の要介護度別にみると、「要支援1」から「要介護2」までは「必要なときに手をかす程度」が多くなっているが、「要介護3」以上では「ほとんど終日」が最も多くなっている

「ほとんど終日」を選んだ割合は、要介護3で29.5%、要介護4で48.5%、要介護5で54.2%です。要介護5では半分を超えています。

出典: 厚生労働省 2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ介護の状況

これは全国を集計した割合で、あなたの家がそうなると決まっているわけではありません。それでも、要介護3以上の親と同居して主に介護している人のうち、いちばん多い層が1日の大半を介護に使っていることは、決める前に知っておく材料になります。

6-2. 同居でも生活援助は使える

同居すると、ヘルパーの生活援助(掃除、洗濯、買い物、調理など)が使えなくなると言われることがあります。国は、そういう決め方をしないよう市町村へ通知を出しています。

厚生労働省老健局振興課長の通知(老振発1224第1号・平成21年12月25日)は、生活援助の提供が「適切なケアプランに基づき、個々の利用者の状況に応じて具体的に判断されるべきもの」だとしたうえで、次のように書いています。

生活援助等において同居家族等がいることのみを判断基準として、一律機械的にサービスに対する保険給付の支給の可否について決定することがないよう、改めて周知徹底していただくようお願いいたします。

出典: 厚生労働省 同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて

同居していれば必ず使えるという意味ではありません。判断はケアプランと個々の状況で行われます。日中は仕事で家にいない、自分の体を痛めている、といった事情を新しいケアマネジャーへ伝えて、ケアプランに書いてもらってください。同居を理由に断られたときは、この通知があることを窓口で確かめられます。

6-3. 虐待の調査に出ている同居の割合

厚生労働省は毎年、養護者による高齢者虐待の件数と内訳を公表しています。令和6年度に養護者から虐待を受けたと判断された高齢者は、17,472人でした。この17,472人を分母にした内訳が、次の数字です。

被虐待高齢者における虐待を行った養護者(虐待者)との同居・別居の状況については、「虐待者のみと同居」が9,446人(54.1%)で最も多く、「虐待者及び他家族と同居」の5,523人(31.6%)と合わせると14,969人(85.7%)の被虐待高齢者が虐待者と同居していた。

出典: 厚生労働省 令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

分母は、虐待を受けたと判断された高齢者です。同居している家庭の85.7%で虐待が起きるという意味ではありません。

この数字から言えるのは、近くにいることが、それだけでは親を守ることにはならないということです。呼び寄せた後も、外のサービスを使い続ける前提で組んでください。

7. 移す前に確かめる順番

決める前に確かめることと、決めた後に手続きすることには、順番があります。上から順に進めると、後から取り返しがつかなくなる決め方を避けられます。

  1. いまのケアマネジャーに、使っているサービスの中に地域密着型が入っているかを聞く(小規模多機能型居宅介護、認知症対応型通所介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、グループホームなど)
  2. 入っていたら、移した先で同じ種類の事業所があるかを、移す先の市町村の介護保険の窓口に聞く
  3. いまの事業所に、移した先が「通常の事業の実施地域」に入るかを聞く
  4. 移す先の市町村の窓口で、世帯を1つにした場合の負担割合、高額介護サービス費の上限、負担限度額認定がどう変わるかを聞く
  5. 転出届を出すときに、いまの市町村で介護保険受給資格証明書をもらう
  6. いまのケアマネジャーに、直近の居宅サービス計画と実施状況の書類の交付を求める
  7. 移った日から14日以内に、移した先の市町村へ受給資格証明書を添えて認定の申請をする
  8. 移した先でケアマネジャーを決め、ケアプランを組み直す
  9. 家を直すときは、移した先の市町村の介護保険の窓口で、住宅改修の進め方を確かめる

1から4までは、移すかどうかを決める前に済ませられます。1と2は特に先に置いてください。親が地域密着型のサービスで暮らしを保っている場合、呼び寄せそのものを考え直す材料になります。遠くに住んだまま続ける場合にその場で誰が判断するかをどう決めておくかは、別の記事にまとめています。

まとめ

親を呼び寄せることは、住まいを変える話であると同時に、介護保険を運営する市町村を変える手続きです。住民票を移した日に保険者が変わり、そこから先は移した先の市町村の制度で決まります。

引き継げるものと、引き継げないものがあります。要介護の認定は、受給資格証明書を添えて14日以内に申請すれば、審査なしで引き継げます。訪問介護や通所介護は、事業所を探し直せば続けられます。地域密着型のサービスは、保険者が変わると給付の対象から外れます。住宅改修の20万円の枠は、移した先の家で改めて使えます。

次にすることは1つです。いまのケアマネジャーに、親が使っているサービスの中に地域密着型のものが入っているかを聞いてください。入っていなければ、次に確かめるのは事業所の実施地域と、世帯をどうするかです。入っていれば、そのサービスを手放してよいかどうかから考えることになります。

同居すれば介護が軽くなるとは限りません。通う時間はなくなりますが、要介護3以上では同居している介護者の「ほとんど終日」が最も多くなっています。近くに引き取ることと、介護を家族だけで抱えることは、同じではありません。

介護のあんしんでは、親を呼び寄せる前に確かめることも含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。