介護保険の住宅改修20万円で何ができる?福祉用具との順番も解説

介護のあんしん 記事2064 サムネイル

「介護がつらい…」「近くにどんな施設があるの?」
まずは資料を取り寄せてみよう!

シニアのあんしん相談室


※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

 

在宅で介護を続けていると、住み慣れた家のつくりが急に危なく見えてきます。つかまる所が無い廊下、またぐのがつらくなった段差、立ち上がりにくい便座。気になるところが少しずつ増えていきます。

介護保険には、家を直すための20万円の枠があります。毎月のサービスの限度額とは別の枠なので、使っても訪問介護やデイサービスの回数は減りません。

ただし、その20万円を使う順番があります。工事を頼む前に、借りて試せるものがあるからです。

1. 介護保険で直せる工事と20万円の枠

20万円の枠は、毎月のサービスの限度額とは別に用意されています。対象になる工事、実際に戻る額、毎月の限度額との関係、要介護度との関係を順に確かめます。

1-1. 対象になる6種類の工事

介護保険で直せる工事は、国の告示で6つに決まっています。

  1. 手すりの取付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

3番目と6番目は言葉が硬いので言い換えます。3番目は床や通路の材料を滑りにくいものへ替えること、6番目は1〜5の工事をするために必要になった工事のことです。浴室の床を滑りにくいものへ替えるのは3番目、手すりを付けるために壁を補強するのは6番目に当たります。

この6つに当てはまらない工事には、介護保険は使えません。手すりを付けるついでに浴室を広くしたい、という希望は対象外です。

出典: 厚生労働省 厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類(平成11年厚生省告示第95号)

1-2. 戻るのは工事費の9割

20万円は、戻ってくる金額ではありません。対象になる工事費のほうの上限です。

介護保険法第45条は、住宅改修費の額を「現に当該住宅改修に要した費用の額の百分の九十に相当する額」と定めています。自己負担が1割の人であれば、20万円の工事をして戻るのは18万円です。厚生労働省の通知にも「20万円の住宅改修を行った場合、通常、保険給付の額は18万円」とあります。

自己負担が2割の人は16万円、3割の人は14万円が戻ります。20万円の工事に対して、手元から出る分がそれぞれ2万円・4万円・6万円になります。

出典: 厚生労働省 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(平成12年3月8日老企第42号)

1-3. 毎月の限度額とは別の枠

訪問介護やデイサービスには、要介護度ごとに毎月の限度額があります。区分支給限度基準額といいます。住宅改修の20万円は、この毎月の限度額とは別に管理されます。毎月の限度額がいくらで、超えた分がどうなるかは、別の記事にまとめています。

厚生労働省の制度の説明では、福祉用具の貸与費が毎月の居宅サービスとして給付されるのに対し、福祉用具の購入費と住宅改修費は、それぞれ独立した支給限度基準額で管理されます。

家を直しても、その月のヘルパーやデイサービスの回数は減りません。 住宅改修が最後の手段ではなく先に使える枠なのは、ここが理由です。

出典: 厚生労働省 福祉用具・住宅改修

1-4. 要介護度で額は変わらない

20万円は、要支援1でも要介護5でも同じ額です。

厚生労働省の通知は、居宅介護住宅改修費支給限度基準額を要介護状態区分にかかわらず定額の20万円としています。毎月の限度額は要介護度が上がると増えますが、住宅改修の枠は増えません。

待っても額は増えないので、必要になった時点で使って差し支えありません。

出典: 厚生労働省 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(平成12年3月8日老企第42号)

2. 工事の前に確かめる福祉用具

6種類の工事のうちいくつかは、工事をしなくても同じ困りごとが解ける場合があります。つかまる所がほしい、段差を越えたい、便座の高さが合わない、浴槽をまたげない。この4つは、借りる福祉用具や買う福祉用具でも解けることがあります。

手すりは、国の告示に工事とまったく同じ名前の福祉用具があります。段差は、用具の種目名こそ「スロープ」ですが、その定義に「段差解消のためのもの」と書かれていて、工事と同じ困りごとを指しています。便器と浴室は名前が違い、同じ困りごとを解く道具があるだけです。

2-1. 手すり

福祉用具として借りられる13の種目に、「手すり(取付けに際し工事を伴わないもの)」が入っています。工事をせず、置いて使う手すりです。

住宅改修の1番目も「手すりの取付け」です。同じ「手すり」という言葉が、借りるものと工事の両方にあります。 分けているのは、工事を伴うかどうかだけです。

立ち上がるときにつかまる所がほしい、という困りごとであれば、まず置く手すりを借りて試せます。合わなければ返せますし、置く場所も後から変えられます。

出典: 厚生労働省 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号)

2-2. 段差

同じ告示の8番目に、「スロープ(段差解消のためのもので、取付けに際し工事を伴わないもの)」があります。置いて使うスロープです。住宅改修の2番目は「段差の解消」です。種目名は違いますが、用具の定義に「段差解消のためのもの」とあるとおり、ここでも借りるものと工事の両方が同じ困りごとを指しています。

なお、固定用スロープは2024年(令和6年)4月から、借りるか買うかを選べるようになりました。選べるようになったのは、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く)・多点杖の4つです。福祉用具専門相談員かケアマネジャーが両方の利点と欠点を説明し、本人の意向を確かめて決めます。

出典: 厚生労働省 一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入について

2-3. 便器

買う福祉用具の1番目は「腰掛便座」です。据え置いて使う便座や、いまの洋式便座に載せて高さを補うものが含まれます。

住宅改修の5番目は「洋式便器等への便器の取替え」で、便器そのものを入れ替える工事です。

手すりと違い、告示の種目名までは一致していません。 座る・立つという同じ動作を助けるだけです。和式便器のままなら工事が要りますが、すでに洋式で高さだけが合わないのであれば、買う福祉用具で足りることがあります。

出典: 厚生労働省 厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目等(平成11年厚生省告示第94号)

2-4. 浴室

同じ告示の4番目は「入浴補助用具」です。入浴用椅子・浴槽用手すり・浴槽内椅子・入浴台・浴室内すのこ・浴槽内すのこ・入浴用介助ベルトが含まれます。

浴室の工事は、3番目の「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」です。

ここも種目名までは一致していません。浴槽をまたぐのが難しいのであれば買う福祉用具で足り、床が滑ること自体を直すのであれば工事になります。困っているのがどちらなのかで、選ぶものが変わります。

出典: 厚生労働省 厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目等(平成11年厚生省告示第94号)

3. 借りるほうを先に試す理由

工事と福祉用具の両方が使えるとき、先に試すのは借りるほうです。この章では、国が福祉用具について示している考え方、体に合わなかったときに戻せること、そして申請の様式という3つの側から、その理由を確かめます。ただし、「住宅改修より先に福祉用具を試すこと」を定めた決まりはありません。 3つとも、そう決められているという話ではなく、そうしたほうが失敗しにくいという話です。

3-1. 国の原則が体の変化を見込んでいるから

国が原則にしているのは、福祉用具の中で借りるか買うかを比べたときの話です。工事より先に福祉用具を試せという決まりではありません。

厚生労働省の制度の説明は、福祉用具について「利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適時・適切な福祉用具を利用者に提供できるよう、貸与を原則」としています。工事と比べた話ではありませんが、体の状態が変わることを見込んで、後から取り替えられるほうを国が原則にしているという考え方は、工事を決めるときにも当てはまります。工事は取り替えられません。

出典: 厚生労働省 福祉用具・住宅改修

3-2. 体に合わなければ返せるから

借りたものは返せます。実際に、返せることを理由に借りるほうを選んでいる人がいます。

厚生労働省が2025年度(令和7年度)に行った選択制の調査では、固定用スロープで貸与を選んだ決め手のうち、「不要になれば返却できるため」が46.5%で最も多くなりました(1508件のうち701件)。選択制になった4種目のどれでも、この理由が1位です。 歩行器は33.8%、多点杖は31.1%、単点杖は25.2%でした。

この数字には限定があります。調査に答えた事業所と利用者を集計したもので、全国のすべての利用者を数えた値ではありません。制度としてどちらを先に使うべきかを示した数字でもありません。言えるのは、返せることを利点として数えている人が現に多いということです。

工事のほうは、これができません。壁に付けた手すりの位置が合わなくても、外して付け直すにはもう一度お金がかかります。

出典: 厚生労働省 一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入に関する調査研究事業(報告書)

3-3. 理由書に福祉用具の欄があるから

住宅改修の申請には「住宅改修が必要な理由書」を付けます。厚生労働省の様式には、次の欄が並んでいます。

  • 利用者の身体状況
  • 介護状況
  • 住宅改修により、利用者等は日常生活をどう変えたいか
  • 福祉用具の利用状況と住宅改修後の想定
  • 改善をしようとしている生活動作
  • 改修目的・期待効果
  • 改修項目(改修箇所)

4番目に「福祉用具の利用状況と住宅改修後の想定」があります。いま何を使っていて、工事の後は何を使うのかを、同じ紙の上に並べて書く作りです。

工事の内容だけを書けば通る様式ではありません。福祉用具を確かめないまま工事の相談を始めると、この欄で手が止まります。

出典: 厚生労働省 住宅改修が必要な理由書

4. 工事でなければできないもの

6種類の工事のうち、借りる福祉用具でも買う福祉用具でも代わりにならないものがあります。3番目の「床又は通路面の材料の変更」と、4番目の「引き戸等への扉の取替え」、そして6番目の付帯する工事です。

廊下や浴室の床が滑ること自体は、置くもので直りません。開き戸が重くて開けられない、車いすで通れないという困りごとも、扉を替えるほかにありません。借りられる13の種目にも、買える9つの種目にも、床材と扉の代わりになるものは入っていないからです。

この3つは、借りて試す手順を踏まずに工事で構いません。 先に借りて試す意味があるのは、同じ困りごとを借りるもので解ける場合だけです。

出典: 厚生労働省 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(平成11年厚生省告示第93号)

5. 住宅改修の申請の出し方

工事を選んだら、出す順番が決まっています。先に出すほうが有利なのではなく、先に出さないと支給されません。着工の前に出す書類、理由書を書く人、支払い方の2通りを、この順に確かめます。

5-1. 着工前に出す4つの書類

介護保険法施行規則第75条は、住宅改修費の支給を受けようとする者は、住宅改修を行おうとするときには「あらかじめ」書類を提出しなければならない、と定めています。工事が終わってから申請しても支給されません。

着工前に出すのは、次の4つです。

  1. 改修の内容、箇所及び規模並びに施工者名
  2. 改修に要する費用の見積り及び着工予定年月日
  3. 介護支援専門員その他の専門知識・経験を有する者が作成する、住宅改修が必要と認められる理由を記載した書類
  4. 住宅改修の予定の状態が確認できるもの

4番目は、工事の前に撮った写真です。工事が終わった後には、領収証・工事費内訳書・完成後の状態が分かるものを出します。

出典: 厚生労働省 介護保険法施行規則第75条(法令等データベース)

5-2. 理由書を書く人

3番目の理由書を書くのは、家族ではありません。

施行規則は「介護支援専門員その他の専門知識・経験を有する者」が作成すると定めています。厚生労働省の通知は、作成者を基本的にケアマネジャーと地域包括支援センターの担当職員とし、一定の専門家も含むとしています。

工事の相談は、工務店より先にケアマネジャーへ持って行きます。 担当のケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターが相談先になります。

出典: 厚生労働省 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(平成12年3月8日老企第42号)

5-3. 償還払いと受領委任払い

支払い方は2通りあります。

償還払いは、工事費の全額をいったん施工業者へ払い、後から保険の分が戻る形です。介護保険法は、かかった費用に対して後から支給する形で住宅改修費を定めています。

受領委任払いは、自己負担の分だけを施工業者へ払い、保険の分は市区町村が施工業者へ直接払う形です。自己負担が1割で20万円の工事なら、いったん用意するのは2万円で済みます。ただしこちらは市区町村の運用によるもので、扱っていない市区町村もあります。工事の前に施工業者との手続きが要るため、使うのであれば着工前に確かめます。

出典: 神戸市 介護保険住宅改修費の支給

6. 20万円で足りないときに調べるもの

20万円を使い切っても、調べる先が残っています。要介護度が大きく上がったときと引っ越したときは、20万円をもう一度使える場合があります。それとは別に、市区町村が介護保険とは違う助成を持っていることもあります。

6-1. 要介護度が3段階以上上がったとき

最初の工事を始めた時点と比べて、介護の必要の程度が3段階以上上がったときは、その後に初めて行う工事について、改めて20万円まで使えます。ちょうど3段階に限らず、4段階でも5段階でも当たります。この扱いは1回限りです。

段階は、要介護度を次のように並べたものです。

段階要介護度
第1段階要支援1
第2段階要支援2・要介護1
第3段階要介護2
第4段階要介護3
第5段階要介護4
第6段階要介護5

要支援2のときに工事をした人が要介護3になった場合、第2段階から第4段階なので2段階です。この扱いには当たりません。要介護5まで上がって第6段階になれば4段階なので当たります。

出典: 厚生労働省 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(平成12年3月8日老企第42号)

6-2. 引っ越したとき

20万円は、住んでいる家ごとに管理されます。引っ越した場合、前の家で使った分は新しい家の枠に入りません。引っ越し先で、改めて20万円まで使えます。 親を自分の家へ呼び寄せることを考えているなら、呼び寄せで介護保険の手続きがどう変わるかは、別の記事にまとめています。

出典: 厚生労働省 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(平成12年3月8日老企第42号)

6-3. 市区町村の助成

介護保険とは別に、市区町村が独自の助成を持っている場合があります。額も条件も市区町村ごとに違います。

神戸市の住宅改修助成事業は、限度額を100万円とし、介護保険の20万円を差し引いた分を市の助成の対象にしています。所得に応じた助成率があり、原則1世帯1回です。

出典: 神戸市 住宅改修助成事業

横浜市の住環境整備費の助成は、浴室や便所などの住宅改造費を120万円まで助成します。介護保険の対象になる工事は、介護保険が優先します。

出典: 横浜市 住環境整備費の助成

国土交通省も、介護保険の住宅改修を住宅リフォームの支援制度の1つとして案内し、あわせて地方公共団体の支援制度を探す先を示しています。上の2つはあくまで例で、住んでいる市区町村に同じ制度があるとは限りません。 高齢福祉の窓口で確かめてください。

出典: 国土交通省 住宅リフォームの支援制度

まとめ

家を直すお金は、毎月の介護サービスとは別に用意されています。順番さえ間違えなければ、その枠を使い切る前に、もっと軽い手段で済むことがあります。

次にすることは1つです。工事を頼む先を探す前に、いま困っている動作をケアマネジャーへ伝えてください。「浴室に手すりを付けたい」と場所と工事から切り出すと、話はその工事の内容から始まり、借りて試せたはずのものが最初から選択肢に入りません。

借りて試せるものがあるなら先に借り、床や扉のように借りるものが無いなら工事へ回します。この見分けが付けば、20万円は最後まで取っておくお金ではなくなります。

介護のあんしんでは、家を介護に合わせて直す順番も含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。