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「認知症ならグループホームもありますよ」と言われて調べ始めると、小さな家で数人が暮らす写真が並びます。特別養護老人ホームより入りやすそうに見えて、入居条件のページを開いても、うちの親が対象なのかどうかがはっきりしません。
対象かどうかを最初に分けているのは、要介護度でも認知症の重さでもありません。親の住民票がどこにあるかです。
住民票で分かれる理由と、毎月かかる費用の分かれ方、そして重くなったときに退去になる条件を、順に説明します。
グループホームは、介護保険の書類の上では「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれます。名前が2つあるのは、暮らしの形と、介護保険での数え方が別のものだからです。
介護保険法第8条第20項は、認知症対応型共同生活介護を「その共同生活を営むべき住居において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うこと」と定めています。対象は「要介護者であって認知症であるもの」です。ただし、認知症の原因となる疾患が急性の状態にある人は除かれます。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
建物の形も決まっています。指定地域密着型サービス基準の第93条は、1つの共同生活住居の入居定員を5人以上9人以下と定めています。1つの事業所が持てる住居の数は1つ以上3つ以下です。居室は原則として1人で、床面積は7.43平方メートル以上です。居間と食堂、台所、浴室を備えることも決められています。
同じ第93条は、住宅地か、それと同じくらい家族や地域の人と行き来できる場所にあるようにすることも求めています。町から離れた場所に建てて完結させる形にはなっていません。
家族はグループホームへ移ることを、日常の言葉で「施設に入る」と言います。その言い方が間違っているわけではありません。ただ、介護保険の数え方では、グループホームは施設に入っていません。
介護保険法第8条第25項は、「介護保険施設」を指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院の3つと定めています。指定介護老人福祉施設は、特別養護老人ホームのことです。続く第26項の「施設サービス」も、この3つが提供するサービスだけを指しています。
グループホームが入っているのは、第8条第14項の「地域密着型サービス」です。定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能型居宅介護と同じ列に、認知症対応型共同生活介護が並んでいます。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
この数え方の違いは、書類の上の分類にとどまりません。地域密着型サービスは、市町村が事業所を指定して、その市町村の被保険者へ給付する形で作られています。グループホームがこの列にあることが、入居できるかどうかを大きく分けます。
厚生労働省の令和6年介護サービス施設・事業所調査によると、2024年10月1日現在の事業所数は14,341、定員は227,525人です。
出典: e-Stat 令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査
数だけを見れば、候補はいくらでもありそうに見えます。ただし、この14,341か所が全部あなたの親の候補になるわけではありません。
住民票のある市町村が候補を絞ってしまうのは、地域密着型サービスの給付が市町村ごとに区切られているからです。この章では、その区切り方と、隣の市の事業所を使えるのか、住民票を移せば済むのかを順に確かめます。
介護保険法第42条の2第1項は、市町村が地域密着型介護サービス費を支給するのは、要介護の被保険者が「当該市町村の長が指定する者」から指定地域密着型サービスを受けたときだ、と定めています。
第78条の2第1項は、その指定が誰への給付について効力を持つかを書いています。指定は事業所ごとに行い、「当該指定をする市町村長がその長である市町村が行う介護保険の被保険者」への地域密着型介護サービス費の支給について効力を持つ、とあります。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
言い換えると、A市が指定した事業所を使って地域密着型介護サービス費を受け取れるのは、A市の被保険者です。B市の被保険者が同じ事業所へ入っても、A市の指定はB市からの給付の根拠になりません。
探し始めるときに先に決まるのは、地図の上でどこまで通えるかではありません。親の保険者がどこの市町村かです。
第78条の2第4項は、市町村が指定の申請を拒める場合を並べています。その第4号が、「当該申請に係る事業所が当該市町村の区域の外にある場合であって、その所在地の市町村長の同意を得ていないとき」です。
区域の外にある事業所を自分の市の被保険者に使わせるには、その事業所がある市町村長の同意が要る、ということです。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
実際の窓口の案内も同じです。大阪市は、地域密着型サービスを利用できるのは「原則としてその事業所がある市町村の被保険者のみ」だと説明しています。そのうえで、特別な事情があるときは、事業所がある市町村長などの同意と、大阪市による事業者の指定という手続きを経て利用できる場合があるとしています。手続きを取らずに利用した場合は給付できない、とも書かれています。
出典: 大阪市 本市被保険者の他市町村の地域密着型サービスの利用について
ここは「隣の市のグループホームには絶対に入れない」ではありません。例外として使える場合があります。ただしその場合も、事業所がある市町村長などの同意と、親が加入している市町村による事業者の指定が先に要ります。この手続きは、入居の申し込みより前に済ませておくものです。
では、親の住民票をグループホームのある市へ移せばよいのか。ここにもう1つの決まりが関わります。
介護保険には住所地特例という仕組みがあります。ある施設に入るために住所を移した人について、前に住んでいた市町村が引き続き保険者になる、という決まりです。介護保険法第13条は、その対象になる施設として、介護保険施設、特定施設、老人福祉法第20条の4に規定する養護老人ホームの3つを挙げています。
グループホームは、この3つに入っていません。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
そのため、グループホームへ移るために住民票を移した場合、保険者は移した先の市町村に変わります。前の市町村が保険者のまま残る類型ではありません。
ただし、住所を先に動かせば入れる、という順番の話でもありません。入居できるかは事業所の空きと契約で決まり、給付が出るかは市町村の指定で決まります。この2つは別々に確かめるものなので、動く前に、今の保険者である市町村の窓口と、事業所がある市町村の窓口の両方へ聞いてください。
住民票のある市町村で候補が見つからなかったときは、介護保険で施設に数えられない住まい全体をどう見分けるかという話になります。その見分け方は、別の記事で扱います。
住民票のある市町村を確かめたら、次は親自身の条件です。介護保険法と運営の基準が決めているのは3つあります。
介護保険法第8条第20項の対象は「要介護者であって認知症であるもの」です。要支援の人は、この定義に入りません。
要支援の人には、介護予防認知症対応型共同生活介護という別のサービスがあります。ただし介護保険法施行規則第22条の20は、その対象を要支援2に限っています。要支援1は対象外です。
実際に利用している人の要介護度も公表されています。厚生労働省の令和6年度介護給付費等実態統計から、2025年4月審査分の構成を見ます。数えたのは、介護予防を含めて、短期の利用を除いてこのサービスを使っている人です。この全体のうち、要支援2が0.5%、要介護1が22.6%、要介護2が25.4%、要介護3が24.7%、要介護4が16.4%、要介護5が10.3%でした。
指定地域密着型サービス基準第94条は、事業者に対して、入居申込者の入居に際して「主治の医師の診断書等により当該入居申込者が認知症である者であることの確認をしなければならない」と定めています。
家族が認知症だと感じている、というだけでは足りません。主治医の診断書などの書類が要ります。かかりつけの医師がいない場合は、書類をそろえるところから日数がかかります。そのあいだ親が一人で暮らす場合に火とお金と薬を外からどこまで補えるかは、別の記事にまとめています。
同じ第94条は、対象を「要介護者であって認知症であるもののうち、少人数による共同生活を営むことに支障がない者」としています。
要介護度と診断がそろっていても、この一文で対象から外れることがあります。5人から9人が1つの居間と食堂と台所を使う暮らしなので、ほかの入居者との生活が成り立つかを事業所が見ます。
グループホームの毎月の請求は、介護保険から出る分と、保険の外で全額払う分に分かれます。毎月の負担を下げる制度の対象になるのは、このうち保険の中の分だけです。
厚生労働省が公表している介護報酬の算定構造(2026年6月施行版)では、認知症対応型共同生活介護費の基本部分が、1日あたりの単位数で決まっています。
| 要介護度 | 共同生活住居が1つの事業所(Ⅰ) | 住居が2つ以上の事業所(Ⅱ) |
|---|---|---|
| 要介護1 | 765単位 | 753単位 |
| 要介護2 | 801単位 | 788単位 |
| 要介護3 | 824単位 | 812単位 |
| 要介護4 | 841単位 | 828単位 |
| 要介護5 | 859単位 | 845単位 |
出典: 厚生労働省 介護給付費算定構造
この単位数をそのまま円に置き換えることはできません。1単位あたりの単価は地域で変わります。そこへ夜間の体制や医療との連携などの加算が乗り、最後に1割から3割の自己負担割合が掛かります。金額は事業所に出してもらってください。
介護保険法第42条の2第1項には、認知症対応型共同生活介護の給付から除く費用が書かれています。「食事の提供に要する費用、居住に要する費用その他の日常生活に要する費用」です。住むことと食べることにかかる費用は、初めから給付の外にあります。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
指定地域密着型サービス基準第96条は、事業者が保険の自己負担分とは別に受け取れる費用として、食材料費、理美容代、おむつ代、そのほか日常生活で通常必要になる費用を挙げています。同じ条は、これらについて事前に説明し、同意を得ることも求めています。
保険の中の介護費と、この保険の外の生活費は、対象になる制度が違います。合計額だけでは、負担限度額認定と高額介護サービス費が、それぞれどの費用を対象にしているのかが分かりません。
所得が低い人の食費と居住費を下げる仕組みとして、特定入所者介護サービス費があります。窓口では負担限度額認定と呼ばれます。
介護保険法第51条の3は、この給付の対象になるサービスを6つ挙げています。指定介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス、介護医療院サービス、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護です。
認知症対応型共同生活介護は、この6つに入っていません。特別養護老人ホームで食費と居住費が下がる制度は、グループホームでは使えません。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
一方、月々の自己負担に上限を設ける高額介護サービス費は使えます。
介護保険法第51条は、この給付の計算の対象を、居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスに要した費用としています。グループホームは地域密着型サービスなので、この計算に入ります。
出典: e-Gov法令検索 介護保険法
ただし、上限が掛かるのは保険の中の自己負担だけです。食事と居住にかかる費用は、この計算に入りません。同じ「負担が下がる」でも、対象になる費用が違います。
「重くなったら出される」という話は、グループホームを調べていると必ず出てきます。ただし、退去について制度が定めていることも、実際に退居した人を数えた調査が挙げている理由も、要介護度そのものではありません。
要介護度が上がると使えなくなる、という決まりはありません。実際に、半数を超える人が要介護3以上で暮らしています。厚生労働省の令和6年度介護給付費等実態統計によると、2025年4月審査分で短期の利用を除く受給者は21万8千人で、そのうち要介護3から5は合わせて11万2700人、およそ51.7%にあたります。
要介護度別の内訳は、要介護1が4万9600人、要介護2が5万5800人、要介護3が5万4200人、要介護4が3万6000人、要介護5が2万2500人です。
指定地域密着型サービス基準の第94条は、入居と退居について定めた条です。ここに「要介護度がいくつになったら退居」という決まりはありません。
書かれているのは、まず申し込みのときの話です。第3項が挙げるのは「入居申込者が入院治療を要する者であること等入居申込者に対し自ら必要なサービスを提供することが困難であると認めた場合」です。このとき事業者は、ほかのグループホーム、介護保険施設、病院または診療所を紹介するなどの措置を速やかに講じなければなりません。基準になっているのは、必要なサービスを自ら提供できるかどうかです。
退居のときについては、第5項が、利用者と家族の希望を踏まえ、退居後の生活環境や介護の継続性に配慮して、退居に必要な援助を行わなければならない、と定めています。第6項は、指定居宅介護支援事業者などへ情報を提供し、連携に努めることを求めています。
どちらの項も、退居させてよい状態を決めてはいません。そのため、どうなったら退居になるかは、事業所ごとの契約と重要事項説明書を読んで確かめることになります。
厚生労働省が平成29年度に行ったグループホームの医療の提供に関する調査は、直近1年間の退居者9,375人について、退居の理由を集計しています。この9,375人のうち、最も多いのは本人や家族の意向で44.8%でした。次いで、日常生活動作の低下や認知症の行動・心理症状の悪化が18.5%、対応できなかった医療上の必要が16.5%、長期の入院が13.9%です。同じ9,375人の退居先は、その他の医療機関が22.2%、介護老人福祉施設が15.4%でした。
同じ調査は、対応できなかった医療上の必要があったと答えた事業所712か所に、その中身も尋ねています。療養上の世話が26.1%、健康状態の観察が19.9%、喀痰吸引が19.5%、ターミナルケアが18.8%、胃ろう・腸ろうが15.3%でした(複数回答)。
出典: 厚生労働省 認知症対応型グループホームにおける医療の提供等に関する調査研究事業
これは平成29年度の調査で、今の全国の割合ではありません。それでも、いちばん多い退居の理由が本人や家族の意向であり、事業所が対応できなかった医療上の必要はそれに続く理由の1つだったことは確かめられます。退居した後の行き先を広げて見るなら、サービス付き高齢者向け住宅と住宅型有料老人ホームの介護と夜間の体制は、別の記事にまとめています。
指定地域密着型サービス基準第90条が定めるグループホームの人員基準に、看護職員を必ず置くという定めはありません。日中は利用者3人またはその端数ごとに介護従業者を1人以上、夜間と深夜は共同生活住居ごとに1人以上、ほかに計画作成担当者などを置くことが求められています。
看護の体制は、加算という形で作られています。令和6年度の介護報酬改定で、医療連携体制加算(Ⅰ)は3つに分かれました。看護師を常勤換算で1人以上配置する場合が1日57単位、看護職員を常勤換算で1人以上配置する場合が47単位です。事業所の職員または病院・診療所・訪問看護ステーションとの連携で看護師を1人以上確保する場合は、37単位になります。いずれも、看護師との24時間の連絡体制を確保することなどが要件です。
出典: 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について
求められているのは24時間の連絡体制であって、看護師が24時間その建物にいることではありません。37単位の区分は、外部との連携で要件を満たす形です。パンフレットに加算の名前が並んでいても、誰が何時までそこにいるかは別に聞く必要があります。
見学の予約を入れる前に、電話で終わる確認が2つあります。
1つ目は、親の介護保険の保険者がどこの市町村かということです。介護保険被保険者証に書かれています。そのうえで、候補の事業所がその市町村の指定を受けているかを、市町村の介護保険の窓口へ聞きます。区域の外にある事業所なら、例外で使えるかを両方の市町村へ聞きます。
2つ目は、要介護度と診断書です。要介護1以上か、要支援2か。主治医から認知症の診断書を出してもらえるか。この2つがそろわないと、申し込みの手前で止まります。
見学まで進んだら、聞くことは3つあります。
1つ目は費用です。保険の中の介護費と、食事や居住にかかる費用を分けた見積書を出してもらってください。合計額だけの見積りでは、高額介護サービス費の対象になる費用がどこまでかが分かりません。
2つ目は医療です。今親に必要な行為と、これから必要になりそうな行為を書き出して持っていきます。喀痰吸引、経管栄養、酸素、夜間の急変、入院したあとの再入居、看取り。この項目ごとに、誰が何時まで対応するのかと、夜につなぐ相手の名前を聞きます。
3つ目は退去の条件です。重要事項説明書と運営規程と契約書に書かれているので、パンフレットではなくこの3つを見せてもらい、その場で読んでください。
2つ目の医療は、事業所の中の体制だけの話ではありません。指定地域密着型サービス基準第105条は、協力医療機関について定めています。協力医療機関をあらかじめ定めること自体は義務です。ただし、病状が急変したときに医師や看護職員が相談に応じる体制と、求めがあれば診療を行う体制を常時確保している医療機関を選ぶことは、努力義務です。入院して軽快した人を速やかに再び入居させることも、努力義務として書かれています。
一方、夜間の緊急時の対応などのために、介護老人福祉施設や病院などとの連携と支援の体制を整えることは、努力ではなく義務です。夜に何かあったときにどこへつなぐのかは、どの事業所でも決まっているはずのものです。協力医療機関の名前と、夜につなぐ先は、見学のときに聞けます。
グループホームは、介護保険では施設ではなく地域密着型サービスに数えられます。この数え方が、探し方を変えます。最初に絞られるのは親の住民票のある市町村で、要介護度でも認知症の重さでもありません。
費用は保険の中と外に分かれ、特別養護老人ホームで食費と居住費を下げる負担限度額認定は使えません。退去を決めているのも要介護度ではありません。退居した人を数えた調査でいちばん多い理由は本人や家族の意向で、事業所が対応できなかった医療上の必要はそれに続く理由の1つでした。
次にすることは1つです。親の介護保険被保険者証を出して、保険者になっている市町村の名前を確かめてください。ここを飛ばすと、通いやすさで選んだ候補が、あとから給付の対象外だと分かることになります。
あなたの手元には、候補になる市町村の名前と、見学のときに聞く項目が残ります。
介護のあんしんでは、グループホームを申し込む前に住民票と費用と医療を分けて確かめる方法も含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。