介護が限界でも言えないときはどうする?相談先と伝え方を解説

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親を家で介護していて、もう限界に近いのに、「もう限界です」の一言だけがまだ言えないままになっています。施設を探すと決めたわけではなく、この暮らしを続けるために誰へ何と言えばよいかが分からないだけです。

言えないのは、あなたの気持ちが弱いからではありません。頼める人がいても頼みにくい関係があり、言った後に何が起きるかも見えないからです。そのうえ「もう限界」という言葉のままでは、受け取った相手も次に何をすればよいかを決められません。

言えない理由と、伝えたときに市町村がすること、相談する相手、そして伝えるときの言い方を、順に見ていきます。

1. 介護が限界でも「言えない」のはなぜ?

言えない理由を自分の性格の中に探しても、答えは出てきません。ここでは2つを見ます。1つはあなたと周りの人との関係に、もう1つは家族へ用意されているものの形にあります。親に施設へは入れないと約束したこと、周りの目、自分が音を上げることへの後ろめたさなど、言えない理由はほかにもありますが、どれであっても、第2章から先の行き先は同じです。

1-1. 頼める人はいても頼みにくいから

代わりに介護を頼める人が、いないわけではありません。ただ、頼みにくいのです。その答えを書く選択肢が、調査票に最初から並んでいます。

越谷市が令和5年度に行ったケアラーの実態調査は、介護している本人567人に、代わりにケアをしてくれる人がいるかを尋ねています。選択肢は「いる」と「いない」の2つではありません。「いる」13.2%、「頼めばいる」21.7%、「頼みにくい」24.0%、「いない」32.5%、無回答8.7%です。

出典: 越谷市 ケアラー・ヤングケアラー実態調査

いちばん多い「いない」に次ぐのが、「頼みにくい」です。近い状態を数えた選択肢は、埼玉県が地域包括支援センターを利用している介護者に尋ね、1,022人から回答を得た調査にもあります。埼玉県は「頼めばいるが頼みにくい」を1つの選択肢にしていて、20.0%でした。

出典: 埼玉県 ケアラー実態調査

この2つは、対象の選び方も選択肢の作りも違う調査です。越谷市は「頼めばいる」と「頼みにくい」を分けて尋ね、埼玉県は「頼めばいるが頼みにくい」の1つにまとめています。割合を並べて同じ傾向として読むことはできません。

越谷市の調査でいちばん多かったのは「いない」で、頼める人が本当にいない場合もあります。そのうえで、頼める人がいても頼めない状態があることは、どちらの調査票にもその答えを書く選択肢が最初から用意されていることから分かります。

1-2. 言った後に何が起きるか分からないから

言った後に何が起きるかが見えないのは、あなたの想像力の問題ではありません。介護している家族へ何が用意されているかは、外側からは見えにくいところにあります。

厚生労働省が平成30年3月にまとめた「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル」は、市町村の取組状況をこう書いています。「家族介護継続支援事業」と「認知症高齢者見守り事業」に取り組んでいる市町村の割合は約8割でした。これは平成30年3月にまとめられたマニュアルに載っている数字なので、いま自分の市町村にあるかどうかは、窓口で確かめることになります。

同じマニュアルは、その取組が何であるかも書いています。「これらの取組は、健康相談や介護者交流会の実施、家族への慰労金、介護用品の支給等、家族介護者が行う『介護』そのものに対する支援が中心となっています。」

出典: 厚生労働省 市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル

介護保険法も同じです。市町村が行う地域支援事業のうち、「介護方法の指導その他の要介護被保険者を現に介護する者の支援のため必要な事業」は、第115条の45第3項にあります。第1項と第2項の事業が「行うものとする」と書かれているのに対して、第3項は「行うことができる」です。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法

家族へ用意されているものが無いのではありません。用意されているのは、介護を続けるための手助けです。そのため、「もう限界です」とだけ言っても、受け取った相手が次に何をすればよいかは決まりません。

2. 「もう限界」と伝えたら何が起きる?

伝えられた市町村が何をすることになっているかは、条文で決まっています。相談に応じること、負担を軽くする措置をとること、そして緊急のときに親が泊まれる居室を確保すること。この3つです。

2-1. 市町村には相談に応じる義務がある

その決まりを持つ法律の名前は、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律といいます。名前に虐待と入っているので身構えるところですが、この法律は虐待の防止と、支えている人への支援の2つを持っています。

この法律は「養護者」という言葉を使います。第2条第2項は養護者を、高齢者を現に養護する者であって施設や事業所の職員以外の者、と定めています。家で親を介護しているあなたが、この養護者にあたります。

第6条は、「市町村は、養護者による高齢者虐待の防止及び養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護のため、高齢者及び養護者に対して、相談、指導及び助言を行うものとする。」と定めます。相談の相手として、高齢者と並んで養護者が書かれています。

第14条第1項は、そこから一歩進みます。「市町村は、第六条に規定するもののほか、養護者の負担の軽減のため、養護者に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずるものとする。」目的として書かれているのは、養護者の負担の軽減です。親の状態ではありません。

出典: e-Gov法令検索 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

「行うものとする」「講ずるものとする」は、市町村の義務を表す語尾です。相談を受けるかどうかを市町村が選べる形にはなっていません。

2-2. 負担を軽くする措置

負担を軽くする措置と書かれていても、何が来るのかは条文からは分かりません。実際に動くことが多いのは、いま親が使っている介護保険のサービスです。

そのサービスの決まりには、家族の負担の軽減が目的として書かれています。短期入所生活介護の基本方針を定める指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準の第120条は、この事業が「利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない」と定めます。通所介護の基本方針である同じ基準の第92条にも、「利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減」という同じ言葉が入っています。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

この2つの条文が名宛人にしているのは、サービスを行う事業者です。その事業者に求められているのが、利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減です。介護している家族の負担を軽くすることは、サービスの目的として条文に書かれています。

いま使っているサービスを増やす相談が、まず来ます。それでは間に合わないほど切迫しているときのために、別の措置がもう1つ定められています。

2-3. 緊急時に泊まれる場所の確保

もう手が出てしまいそうだと感じている方や、声を荒げてしまった日がある方がいます。その状態にいる人のための項が、同じ法律の中にあります。

高齢者虐待防止法の第14条第2項は、こう定めます。「市町村は、前項の措置として、養護者の心身の状態に照らしその養護の負担の軽減を図るため緊急の必要があると認める場合に高齢者が短期間養護を受けるために必要となる居室を確保するための措置を講ずるものとする。」

出典: e-Gov法令検索 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

条文が要件にしているのは、養護者の心身の状態です。虐待があったと判断されることを、この条文は要件にしていません。

この条を持つ法律は、虐待を防ぐための法律です。同じ法律の第6条が、養護者への相談・指導・助言を「養護者による高齢者虐待の防止」のためのものとして書いているとおり、支えている人が追い詰められる前に手を打つことが、虐待を防ぐ道として組み立てられています。条文が見ているのは、限界に近いというあなたの状態です。

そして、この項の語尾も「講ずるものとする」で、市町村の義務です。介護している人が倒れたときの、その日のうちに親を預ける手順と使える日数は、別の記事にまとめています。

3. 介護の限界を相談できる窓口

伝える相手は3つあります。地域包括支援センター、市役所の高齢者福祉の窓口、そして親についているケアマネジャーです。どれか1つに言えば全部が動くのではなく、3つは持っている役割が違います。

3-1. 地域包括支援センター

いちばん近い入口です。地域包括支援センターは、介護保険法の第115条の46第1項が定める施設で、条文の言葉では「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行う」ところです。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法

介護している家族も、この窓口が相談を受ける相手です。

厚生労働省の家族介護者支援マニュアルは、地域包括支援センターにおける相談・支援の流れを4つの段で示し、最初の段についてこう書いています。「早期に発見し、相談につながったら、まず、要介護者だけでなく、家族介護者に対するアセスメントも実施していきましょう」。

同じマニュアルは、その対象の広さもこう書いています。「現行の介護保険制度では、家族介護者に対する支援は、その要介護者の自立度、要介護度にかかわらず広く家族介護者全般を潜在的な相談支援対象としています。」

出典: 厚生労働省 市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル

親の要介護度がいくつでも、家族は相談の対象に入っています。条文に介護している家族を名指しした語はありませんが、条文の目的語と、窓口が相談を受ける相手は別のものです。

3-2. 市役所の高齢者福祉の窓口

相談に応じること、負担を軽くする措置をとること、緊急のときに居室を確保すること。これらを定める条文は、どれも「市町村は」で始まっています。措置を決めるのは市町村です。

そのため、措置そのものを求めるときに持って行く先は、市役所(区役所・町村役場)の高齢者福祉の担当課になります。

市町村が持っている措置は、もう1本あります。老人福祉法の第10条の4です。柱書は「市町村は、必要に応じて、次の措置を採ることができる。」と書き、第1項第三号は、65歳以上の人が「養護者の疾病その他の理由により、居宅において介護を受けることが一時的に困難となつたもの」であり、やむを得ない事由により短期入所生活介護を利用することが著しく困難だと市町村が認めるときに、その人を短期間入所させる措置を挙げています。要件になっているのは、親の状態ではなく養護者の事情です。

出典: e-Gov法令検索 老人福祉法

介護保険で使う短期入所とは、別の道です。介護保険の枠の中で足りているうちは、この道は出てきません。

ただし、語尾が違います。こちらは「採ることができる」で、市町村の裁量です。相談に応じることや居室を確保することのように「講ずるものとする」と書かれた義務とは、強さが違います。同じ強さの2本として数えることはできません。

3-3. ケアマネジャー

3つ目は、親についているケアマネジャーです。会う機会がいちばん多い相手なので、いちばん先に言いやすい相手でもあります。

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準の第13条第七号は、アセスメントについて「利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない」と定めます。第十四号は、月に1回のモニタリングにあたって「利用者及びその家族、指定居宅サービス事業者等との連絡を継続的に行う」と定めます。家族と会って話すことは、ケアマネジャーの仕事の中に決まりとして入っています。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

ただし、同じ第13条の第六号が明らかにする対象は「利用者が現に抱える問題点」です。あなたの限界そのものを、ケアプランの解決すべき課題として立てる形にはなっていません。

伝えることに意味が無いのではありません。ケアマネジャーが動かせるのはサービスの組み方で、市町村の措置を決めるのは市役所です。求めるものによって、話す相手が変わります。

4. 限界を伝えるときの言い方

窓口に着いても、「もう限界です」だけでは相手は動けません。渡すのは介護の重さではなく、支えているあなた自身に起きていることです。

ここで挙げるのは、限界かどうかの判定ではなく、相談で渡すための言葉です。

伝えるのは3つです。体の不調、眠れていないこと、そして「もう限界」の後ろに続ける一言です。

4-1. 体の不調をそのまま伝える

越谷市の調査は、同じ567人に健康維持の状態も尋ねています(複数回答)。「身体的に不調がある」38.3%、「通院している」37.7%。「特に問題はない」と答えた人は18.9%でした。

出典: 越谷市 ケアラー・ヤングケアラー実態調査

窓口で言うのは、「介護が大変です」ではありません。「腰を痛めて、先月から整形外科に通っています」「血圧の薬が増えました」。病院にかかっていることと、いつからかを添えるだけで足ります。

介護の重さは相手に測れませんが、あなたが通院していることは相手に伝わります。

4-2. 眠れていないことを伝える

同じ質問(複数回答)で、「休養が取れない」は36.0%、「睡眠不足」は34.9%でした。567人のうち3人に1人を超える人が、休めていないと答えています。

出典: 越谷市 ケアラー・ヤングケアラー実態調査

伝えるときは、「眠れていません」で止めないでください。それだけでは、どれくらい眠れていないのかが相手に伝わりません。

言うのは、昨夜どうだったかです。「夜中に2回起こされて、続けて眠れたのは3時間くらいです」。何時に起こされたか、続けて何時間眠れたかを言葉にしておけば足ります。この数を続けて数える方法と、その数からどうなったら決め直すかの条件を作る話は、別の記事で扱います。

4-3. 「もう限界」だけで終わらせない

体の不調と、眠れていないこと。それを言った後に、もう一言だけ足します。何をしてほしいか、です。

たとえば、こうなります。

「夜中に2回起こされる日が続いていて、腰も痛めています。泊まりを増やす相談をしたいです。」

「もう手が出そうな日があります。緊急のときに親が短期間泊まれる居室の確保について、相談させてください。」

「もう限界です」は、間違った言葉ではありません。ただ、その言葉だけを受け取った相手には、次に何をすればよいかが決まりません。決めるのは、その後ろに続く一言です。そして、その一言を言えるのはあなただけです。

まとめ

言えないのは、あなたが弱いからではありません。頼みにくい関係があり、言った後に何が起きるかが見えず、「もう限界」という言葉のままでは受け取った相手も次に何をすればよいかを決められないからです。

次にすることは1つです。相談する相手を1つ決めて、自分の体に起きていることと、してほしいことを続けて伝えてください。ここを飛ばすと、限界に近いという事実は、あなたの中にだけ残り続けます。

あなたの手元には、伝える相手の名前と、その相手に言う言い方が残ります。

介護のあんしんでは、限界を誰にどう伝え、そこから先を人と一緒に考えられるようにするかも含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。