※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

週3回の透析に通う親を、有料老人ホームに預けたい。検索サイトで「透析対応」に絞り込み、電話をかけると「送迎が難しくて」と断られる。その繰り返しで手が止まっている方に向けて書いています。
断られる理由は、本人の病状よりも、施設側に送迎・急変時の対応・看護師・受け入れ経験の4つがそろっているかどうかで決まっています。施設側に聞いた調査が、その内訳を数字で示しています。
探す起点を施設の一覧から透析クリニックへ移すと、候補の見え方が変わります。この記事では、受け入れが少ない理由、受け入れやすい種類、探す順番、送迎と費用の確認点を順に説明します。
「透析の方は難しい」と言われると、病気が重いから断られたと感じます。ただ、施設側が挙げる理由は別のところにあります。
日本透析医会の介護委員会が福岡県内の全介護関連入居施設2,418か所に行った調査(2018年8月・回答1,914施設・回答率79.2%)では、受け入れを難しくしている理由の上位は「送迎」と「急変時の対応」でした。施設に運ぶ体制と診る体制があるかどうかで決まっている、ということです。理由は次の5つです。
この調査は福岡県1県を対象にしたもので、全国の平均として読むには幅があります。それでも、施設側が自分で答えた数字がまとまって出ている資料として、探す側の見取り図に使えます。
血液透析は、週に2〜3回、1回あたり4時間以上かけて行います。施設から見ると、1人の入居者のために週3回、職員1人と車1台を半日ずつ空けることになります。調査でも、受け入れが難しい理由として「透析施設へ送迎問題での対応が難しい」を挙げた施設は複数回答で67.0%と最も多く、主な理由をひとつだけ選ぶ形でも32.9%で最多でした。
そのうえ、有料老人ホームの送迎は介護保険の報酬の外にあります。令和6年度の介護報酬改定で「特別通院送迎加算」(594単位/月)が新設されましたが、算定できるのは介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と地域密着型介護老人福祉施設で、施設の職員が月12回以上の送迎を行った場合に限られます。有料老人ホームが送迎をすれば、人件費はそのまま施設の持ち出しです。
「送迎さえ何とかなれば」と考える施設が多いのは、この構造のためです。裏返せば、送迎の手当てがついた瞬間に、最大の壁が下がります。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
出典: 全国腎臓病協議会 血液透析
透析が終わった直後は、体から一度に水分を抜いた反動で血圧が下がることがあります。全国腎臓病協議会は、低血圧を「もっとも発生頻度の高い合併症」と説明し、高齢や糖尿病、貧血、心機能障害を血圧低下を起こしやすい状況として挙げています。施設にとっては「帰ってきてから誰が見るのか」が問題になります。
調査では「急に悪化した際の対応をどうするか心配」を挙げた施設が複数回答で56.3%あり、送迎に次ぐ理由でした。看護師の配置と受け入れの関係もはっきりしていて、看護師が常時いる施設は38.2%が過去5年に透析患者の受け入れ経験を持つのに対し、通常いない施設では26.0%にとどまります。
施設の種類でも差が出ています。同じ調査で「看護師が通常いない」と答えた割合は、介護付き有料老人ホームなどの特定施設で0.9%、住宅型有料老人ホームで20.4%、サービス付き高齢者向け住宅で29.4%でした。看護師がいる時間帯に帰ってこられるかどうかが、施設側の判断を左右します。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
透析は外のクリニックや病院で受けます。ですから、施設と透析クリニックの間に「送迎はどちらが担うか」「透析中に体調が悪くなったらどこへ連絡するか」という取り決めが要ります。
ところが、その取り決めを最初から持っている施設はわずかです。調査では、経営母体が透析医療を行っていない施設が92.4%を占め、同じ敷地内で透析を受けられる施設は2.2%でした。経営母体が透析医療を行っている施設の過去5年の受け入れ率は55.2%で、行っていない施設の31.6%を大きく上回ります。
つながりの薄い施設は、送迎も連絡先もゼロから作ることになるため、二の足を踏みます。裏返せば、すでに透析クリニックと組んでいる施設を探し当てるのが近道です。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
ここが、探す側にいちばん知っておいてほしい点です。
透析患者を受け入れた経験のない施設は、70.0%が「現状では受け入れは難しい」と答えています。一方、受け入れた経験のある施設に「初めて受入れた時の不安に比べて」どうだったかを聞くと、「予想よりも問題は少なかった」が41.5%、「予想通りだった」「もともと不安を抱いていなかった」を合わせると81.5%になりました。「予想よりも問題は大きかった」は18.5%です。
今後の受け入れ意向も、これと重なります。受け入れ経験のある施設の回答は「積極的に」29.6%、「消極的だが」25.5%、「軽度なら」27.5%、「中等度以上なら」6.9%で、合わせて89.5%が何らかの形で受け入れる意向を示し、「現状では難しい」は10.5%でした。この調査の要旨は、次のように書いています。
透析患者の受入れを経験した入居施設では,受入れ後の印象が想定より悪化したのは18.5%のみで,90%は今後も受入れたいとした.
探すときに使える事実
受け入れた経験のある施設の9割は、条件付きを含めて今後も受け入れる意向を示しています。断りの多くは、実際にやってみて難しかった結果ではなく、やったことがないための不安から来ています。
つまり、すでに透析患者が入居している施設を探せば、話が進みやすくなります。この点は探し方の章で具体的に説明します。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
透析を受けている人の食事では、カリウム・塩分・水分・たんぱく質の管理が要ります。全国腎臓病協議会は、カリウムが果物・生野菜・芋類・肉類に多いこと、塩分を摂りすぎるとむくみや高血圧を起こしやすく、喉が渇いて水分管理が難しくなることを挙げています。調査でも「食事管理が難しそうで対応が難しい」を理由に挙げた施設が複数回答で36.5%ありました。
食事を外部の給食会社に委託している施設なら、委託先が透析用の献立を持っているかどうかで、個別対応を引き受けられるかが決まります。
裏返せば、透析患者がすでに入居している施設は、この献立をすでに持っています。見学のときに「透析の方の食事はどう出していますか」と聞くと、受け入れ経験の有無がそのまま答えに表れます。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
有料老人ホームと一口に言っても、「介護付き」「住宅型」、それに似た「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」で、受け入れやすさと送迎の組み方が違います。
受け入れ経験があるのはこの3種類に集中していて、その中で「送迎の費用を誰が持つか」と「透析後に看護師が見られるか」が入れ替わります。
| 種類 | 過去5年に透析患者を受け入れた施設の割合 | 看護師が通常いない施設の割合 | 送迎の組み方 |
|---|---|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム(特定施設) | 60.7% | 0.9% | 職員送迎か自費。外部の訪問介護は介護保険の対象外 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 52.4% | 29.4% | 外部の訪問介護の通院等乗降介助を介護保険で組める |
| 住宅型有料老人ホーム | 51.4% | 20.4% | 外部の訪問介護の通院等乗降介助を介護保険で組める |
| 特別養護老人ホーム | 24.6% | 0.3% | 令和6年度から特別通院送迎加算が算定できる |
| 介護老人保健施設 | 12.9% | 0% | 受け入れ自体が少ない |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 12.2% | 37.3% | 受け入れ自体が少ない |
割合は日本透析医会の福岡県調査によります。「特定施設」には介護付き有料老人ホーム200施設のほか、ケアハウス8施設と軽費老人ホーム16施設が含まれます。以下、上の3種類の違いを順に説明します。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。施設の職員が食事・入浴・排せつの介助を行い、看護師を配置します。調査では、この特定施設の60.7%が過去5年間に透析患者を受け入れており、全種類の中で最も高い割合でした。「看護師が通常いない」と答えた特定施設は0.9%です。
理由は単純で、透析後の血圧低下やだるさを看護師が見られる体制があるからです。夜間は介護職員だけの施設もありますが、透析から帰る夕方までは看護師がいる施設なら、施設側も受け入れを検討しやすくなります。
「透析の受け入れ実績がある介護付き」は、探すときの第一候補になります。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
ただし介護付きには、送迎で不利な面があります。
特定施設入居者生活介護の費用の算定について、厚生省老人保健福祉局企画課長通知(老企第40号)第二の4(1)①は、次のように定めています。
特定施設入居者生活介護を受けている者の入居中の居宅サービス及び地域密着型サービスの利用については、特定施設入居者生活介護費を算定した月において、当該居宅サービス及び地域密着型サービスに係る介護給付費(居宅療養管理指導費を除く。)は算定しないものであること
介護付きに入居している間に介護保険で算定できる外部のサービスは、医師・歯科医師・薬剤師などが行う居宅療養管理指導だけです。外の事業者に「通院等乗降介助」を介護保険で頼む組み方は、この対象から外れます。
そのため介護付きでの送迎は、次の3つのどれかになります。
職員送迎は、協力医療機関以外への通院だと別料金になる施設があります。東京都に届け出られたある介護付き有料老人ホームの重要事項説明書には、協力医療機関等以外の医療機関への通院・入退院時の送迎介助は1時間ごとに1,650円(うち消費税等150円)と、タクシー代・駐車場代等の実費を負担する、と書かれています。同じ書類には、車両の使用状況や職員の配置状況によっては対応できない場合がある、という断り書きも並んでいます。介護付きを選ぶなら、送迎の担い手と料金を契約前に確かめておく必要があります。
出典: 全国老人保健施設協会 法令検索 老企第40号 第二の4(1)①
出典: 東京都 有料老人ホーム重要事項説明書(ニチイホーム不動前)
住宅型とサ高住は、施設そのものが介護保険の指定を受けず、入居者が外部の訪問介護事業所と個別に契約して介護を受けます。介護保険法第8条第2項は、訪問介護の「居宅」に有料老人ホームの居室を含めると定めており、住まいの中で外部の訪問介護を使えます。この仕組みのおかげで、訪問介護の「通院等乗降介助」を介護保険で組めます。
通院等乗降介助は、ヘルパーが運転する車への乗車・降車の介助と、その前後の移動や受診の手続きまでを一連のサービスとして行うもので、令和6年度の介護報酬改定で1回99単位から97単位になりました。運賃は別にかかりますが、介助の部分は介護保険でまかなえます。
同じ第8条第2項は、訪問介護の対象を「要介護者」と定めています。要支援の認定を受けている方は、住まいの市区町村の総合事業で使える手立てを、担当のケアマネジャーに確認することになります。また、住宅型とサ高住は「看護師が通常いない」と答えた施設がそれぞれ20.4%・29.4%あり、透析後の見守りは介護職員が中心になる施設が一定数あります。送迎を介護保険で組みたい方に合う形です。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
調査には、はっきりした傾向がもうひとつあります。経営母体が透析医療を行っている法人の施設は、過去5年の受け入れ率が55.2%で、行っていない施設の31.6%を大きく上回りました。この傾向は、特養や老健を含むすべての施設の種類で共通です。
同じ法人であれば、送迎の担当も、透析中に体調が変わったときの連絡先も、検査値を誰に渡すかも、入居の前から決まっています。探す側にとって、これがいちばん楽な形です。
ただし数は少なく、同じ敷地内で透析ができる施設は全体の2.2%でした。近くに透析クリニックを持つ医療法人があれば、その法人が有料老人ホームやサ高住を運営していないかを最初に調べる価値があります。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
比較のために、有料老人ホーム以外にも触れておきます。特別養護老人ホームの受け入れ経験は24.6%、介護老人保健施設は12.9%、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は12.2%で、いずれも有料老人ホームの半分以下です。
老健は、止まっている場所が他と違います。受け入れを難しくしている主な理由として「その他、介護保険制度上の諸問題で困難が生じる」を挙げた老健は41.7%で最も多く、急変への不安(26.5%)や送迎(12.9%)を上回りました。制度の側で止まっているぶん、家族の交渉で動かせる幅は狭くなります。
特養は、令和6年度に特別通院送迎加算ができたことで、送迎の条件が変わりました。費用の安い特養をあきらめ切れない場合は、自治体の介護保険窓口に「透析患者の受け入れ実績がある特養」を聞いてみてください。
ただし待機は長いので、有料老人ホームと並行して動くのが現実的です。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
探し方の順番を変えるだけで、見つかる確率が上がります。
施設の一覧より先に、通っている透析クリニックを起点にして、そこから施設を絞り、最後に電話で受け入れ実績を確かめる。この順番です。手順は次の6つです。
透析クリニックには、相談員(医療ソーシャルワーカー)や看護師がいます。送迎の車が施設まで迎えに行っている場合、通っている患者さんがどの施設に入っているかを、クリニック側は把握しています。
ですから、最初に聞く相手は施設よりも、いま通っているクリニックです。
聞き方の例
「うちの父と同じように、施設から通っている方はいらっしゃいますか。どこの施設に入られているか、差し支えなければ教えてください」
すでに透析患者が入居している施設、つまり受け入れ経験のある施設の名前が出てきます。理由の章で見たとおり、経験のある施設は9割が条件付きを含めて今後も受け入れる意向を示しており、話が早く進みます。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
透析クリニックの無料送迎は、クリニックが自主的に行っているサービスです。人件費も車もクリニックが持つため、対象エリアには線が引かれています。東京都板橋区の赤塚幸クリニックは、対応エリアを「片道おおよそ30分以内」として板橋区・練馬区・北区を挙げ、高齢者施設と自宅のどちらもピックアップできると案内しています。
つまり、入れる施設の範囲を決めるのは施設よりも、クリニックの送迎エリアです。順番は次のとおりです。
この順番を守ると、気に入った施設を見つけたあとで「通えない」と分かる回り道を避けられます。
出典: 赤塚幸クリニック 通院が不安な方へ。無料送迎で透析をもっと身近に
施設検索サイトの「人工透析対応」という絞り込みは、施設が自分で申告した「相談できます」という印です。実際に受け入れられるかどうかは、透析の曜日や本人の歩行状態、送迎の手段によって変わります。
そこで、一覧で見つけた施設には、電話で2つだけ聞いてください。
人数がゼロなら、その施設は受け入れ経験を持たない施設です。人数がいて、通い方まで具体的に答えられる施設は、送迎の仕組みをすでに持っています。表示の有無よりも、この答えで候補を絞ります。
施設が「受け入れられるか」を判断する材料は、病名よりも生活の形です。問い合わせの最初に、次の5つをまとめて伝えると、施設はその場で送迎の可否を答えられます。
歩行状態で送迎車の種類が変わり、曜日と時間帯で職員の勤務と合うかが決まります。この5つがそろっていると、施設側は「うちの職員の勤務と合うか」「提携先の送迎車が回れるか」をその場で照らし合わせられます。
老人ホームの紹介センターは、探す側は無料で使えます。費用は、入居が決まったときに施設側が紹介手数料として払う仕組みです。高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)が厚生労働省老健局高齢者支援課と協議のうえ運営している紹介事業者届出公表制度は、届け出た事業者の遵守項目として「原則各々の紹介事業者が個別に提携している、高齢者向け住まいを紹介」することを挙げています。
そのため、紹介センターが出してくる候補は、提携している施設に限られます。透析対応の施設は数が少ないので、提携先にひとつも該当がないセンターもあります。
使うなら、相談の最初に「透析患者さんの入居を決めた実績は何件ありますか」「その方はどこの施設に入りましたか」と聞いてください。実績のあるセンターなら、送迎の仕組みまで含めて具体的に答えられます。答えがあいまいなセンターに時間を使うより、クリニックの相談員に聞くほうが早いこともあります。
出典: 高齢者住まい事業者団体連合会 紹介事業者届出公表制度
候補が決まったら、契約の前にもうひとつ済ませておくことがあります。施設とクリニックの間の連絡の取り決めです。
調査では、透析患者を受け入れた経験のある718施設のうち95施設、13.2%が、透析施設との連携で「なかなか解決しない問題があった」または「二度と受入れたくない様な問題あり」と答えています。そして、連携で大きな問題があった施設は、その後の受け入れについて「現状では難しい」と答える割合が高くなっていました。
決めておくのは3つです。
これらは、施設とクリニックのどちらかが言い出してはじめて決まります。家族が「入居前に一度、施設とクリニックで連絡の形を決めてください」と頼むのが確実です。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
「送迎あります」「提携クリニックがあります」と言われたら、そこから先を聞いてはじめて安心できます。送迎については誰が・どこまで・いくらで、提携については空き枠・転院・夜間を、分けて聞く必要があります。
見学のときに持っていける6つの確認点をまとめました。
| 確認点 | 聞き方 |
|---|---|
| 送迎の担い手と費用 | 誰が運転しますか。月額に含まれますか |
| 提携クリニックの空き枠 | いま新しい患者を受け入れられますか |
| 転院の要否 | 今のクリニックのまま通えますか |
| 透析日の食事と入浴 | 透析日の昼食と入浴はどうなりますか |
| 透析後の見守り | 帰った時間に看護師はいますか |
| 夜間の急変時 | 夜に体調が急に変わったらどこへ運びますか |
順に、なぜその質問が要るのかを説明します。
送迎の担い手は4通りあります。透析クリニックの送迎車、施設の職員、介護タクシー、家族です。どれになるかで、月の費用と本人の疲れ方が変わります。クリニックの送迎なら無料で行っている例があり、施設の職員なら別料金の施設があり、介護タクシーなら運賃と介助料が毎回かかります。
聞き方は「送迎はありますか」よりも、「誰が運転して、往復でいくらかかりますか」です。あわせて「透析クリニックの送迎車は、この施設まで来ていますか」と聞いてください。来ているなら、その施設はすでに送迎の仕組みを持っています。
費用は「月額に含まれるか、1回ごとの別料金か」まで確かめ、別料金なら重要事項説明書の料金表で金額を見せてもらいます。金額の目安は費用の章で扱います。
透析クリニックには、ベッドの数と透析を回せる時間帯で決まる「枠」があります。施設が「提携クリニックがあります」と言っても、そのクリニックの枠が埋まっていれば、入居後も今のクリニックへ通い続けることになります。
聞かずに進むとこうなります
提携先が満床のまま入居すると、送迎車の来ない遠いクリニックへ、自費のタクシーで通い続けることになります。施設も家族も「提携があるから大丈夫」と思ったまま契約が進むと、この行き違いは入居してから表に出ます。
見学のときに「提携先のクリニックは、いま新しい患者さんを受け入れられますか。曜日と時間帯はどこが空いていますか」と聞いてください。施設が即答に困るなら、提携先へ直接確認してもらいます。空き枠の有無は、施設の良し悪しとは別に、入居のタイミングを左右します。
提携クリニックに移るということは、主治医が変わるということです。透析は続く治療で、体重の目標(ドライウェイト)や薬の調整をずっと見てきた主治医との関係は、本人にとって大きな支えです。「通い慣れたところを離れたくない」と本人が言うことはよくあります。
転院が必要なら、今の主治医に診療情報提供書を書いてもらい、新しいクリニックで一度診察を受けてから入居日を決める流れになります。今のクリニックの送迎エリア内の施設なら、転院は不要です。
どちらの形になるかを、施設と本人の両方に確認してから、候補を決めてください。
透析は1回4時間以上で、送迎を含めると半日かかります。午前の透析なら昼食の時間は施設の外にいます。午後の透析なら帰りが夕食の時間を過ぎることがあります。施設によっては「透析の日は昼食なし」「入浴は透析のない日だけ」となり、本人の楽しみが減ります。
聞くのは次の3つです。
透析の日は入浴でシャントの部分をぬらさない配慮も要るので、その扱いも一緒に確かめます。受け入れ経験のある施設は、この質問に慣れています。
出典: 全国腎臓病協議会 血液透析
透析から帰った直後は、血圧が下がってふらつく、だるくて動けない、という状態が起こります。ここで見守るのが介護職員だけか、看護師がいるかで、施設側の受け止め方も家族の安心感も変わります。
聞き方は「看護師さんは何時から何時までいますか」と「透析から帰るのは何時ごろになりますか」の2つです。午後の透析で帰りが18時になり、看護師が17時で帰る施設なら、見守りは介護職員になります。
血圧を測って判断できる人がいる時間に帰れる組み方のほうが安全です。透析の時間帯を午前に変えられるかを、クリニックにも相談してみてください。
透析クリニックは、夜間は閉まっています。夜中にシャントの部分から出血した、シャントが詰まった、息が苦しくなった、というときは、クリニックの代わりに病院へ運ぶことになります。慶應義塾大学病院は、シャント(バスキュラーアクセス)を「透析患者さんにとっては命綱のようなもの」とし、日常生活でも閉塞しないような注意が必要と説明しています。
施設に「その病院はどこですか」と聞いて、即答できる施設は、透析患者の夜間対応を経験しています。確認するのは3つです。
さらに、入院になったときに居室がそのまま残るか、その間の費用はどうなるかも聞いておきます。東京都に届け出られた重要事項説明書には、入院期間中も月額利用料のうち管理費・家賃相当額・厨房管理費を払い、居室利用権は存続する、と書いた例があります。扱いは施設ごとに違うので、契約書と重要事項説明書の現物で確かめてください。
出典: 東京都 有料老人ホーム重要事項説明書(ニチイホーム不動前)
費用は「施設の月額」「送迎」「透析の医療費」の3つに分けて考えます。施設の月額は高めの施設に寄りがちですが、透析の医療費は制度を使えば月1万円で止まり、収入の側に障害年金を足せます。
「透析だからお金がかかる」という思い込みは、制度を並べてみると形が変わります。
| 費用 | 内容 | 軽くする制度 |
|---|---|---|
| 施設の月額 | 家賃・食費・管理費・介護費 | 高額介護サービス費 |
| 送迎 | 担い手で0円から月数万円 | 通院等乗降介助(住宅型・サ高住) |
| 透析の医療費 | 外来血液透析で月約40万円が保険で1〜3割に | 特定疾病療養受療証・重度障害者の医療費助成 |
| 収入の側 | 障害年金の請求 | 障害基礎年金2級 |
順に説明します。
調査には、施設の月額と受け入れ率の関係も出ています。入居者の毎月の自己負担の総額が12万円未満の施設では26.8%しか受け入れ経験がなく、16万円未満で35.5%、20万円未満で43.4%、24万円未満では63.9%と、月額が高いほど受け入れ経験率が上がります。
これは「透析対応だから高い」というより、看護師を配置し、送迎の職員を確保できる施設は、そのぶん人件費がかかり、月額が高くなるという順序です。透析対応の施設を探すと、結果として月額の高い施設に寄っていきます。
予算を組むときは、地域の相場より数万円高い前提で見ておくと、あとで慌てずに済みます。
出典: 日本透析医会 介護関連入居施設側からみた透析患者や透析医療に関する意識および実態調査(日本透析医会雑誌 Vol.34 No.2)
送迎の費用は担い手で決まります。週3回、月に12往復(片道24回)として比べます。次の表はモデルケースで、金額は仮定です。実額は、通うクリニックと使う事業者、施設の料金表で確かめてください。
| 担い手 | 月の費用(モデルケース) | 置いた仮定と計算 |
|---|---|---|
| 透析クリニックの送迎車 | 0円 | 無料送迎を行っているクリニックの場合 |
| 通院等乗降介助(住宅型・サ高住) | 介助分 約2,300円+運賃 | 97単位×10円×自己負担1割=1回約97円。97円×24回 |
| 介護タクシー(全額自費) | 約36,000円 | 片道の運賃と介助料の合計を1,500円と仮定。1,500円×2×12往復 |
| 介護付きの職員送迎 | 施設の料金表による | 1時間ごと1,650円+実費と書いた重要事項説明書の例がある |
自分の数字に置き換えるときの式は次のとおりです。
介護タクシーの運賃は、国土交通省の運輸局が公示した福祉輸送サービスの運賃制度に沿って、時間制・距離制・定額のいずれかで決まります。一方、乗り降りの介助料は「旅客の運送に直接伴うものではない料金」として認可も届出も不要とされており、事業者ごとに違います。だから、運賃と介助料は分けて聞くのが確実です。
介護保険の1単位あたりの単価は地域で10円から11円台まで変わるので、上の約97円も地域で動きます。自己負担が2割・3割の方は、その割合で計算し直してください。
出典: 国土交通省 関東運輸局 一般乗用旅客自動車運送事業の運賃及び料金(福祉輸送サービスに限る。)に関する制度について
出典: 東京都 有料老人ホーム重要事項説明書(ニチイホーム不動前)
全国腎臓病協議会は、1か月の透析治療の医療費を、患者一人につき外来血液透析で約40万円と説明しています。健康保険で1割から3割の負担になっても、そのままなら月4万円から12万円です。これを月1万円で止めるのが「特定疾病療養受療証」です。
加入している健康保険(国民健康保険、後期高齢者医療、会社の健康保険)に申請すると、1つの医療機関につき1か月1万円までが自己負担の上限になります。人工透析が必要な慢性腎不全の方で70歳未満の限度額区分「ア」「イ」に該当する世帯は、1つの医療機関につき1か月2万円までです。
大事なのは、申請してはじめて上限がかかるという点です。すでに透析を受けている人は取得している場合が多いものの、施設に移るときに加入する保険が変わるなら、新しい保険で受療証を取り直すことになります。
身体障害者手帳の認定基準では、じん臓機能障害の1級を次のように定めています。
等級表1級に該当する障害は、じん臓機能検査において、内因性クレアチニンクリアランス値が10mℓ/分未満、又は血清クレアチニン濃度が8.0mg/dℓ以上であって、かつ、自己の身辺の日常生活活動が著しく制限されるか、又は血液浄化を目的とした治療を必要とするもの若しくは極めて近い将来に治療が必要となるものをいう。
ここでいう血液浄化を目的とした治療が、人工透析にあたります。同じ基準には、慢性透析療法を実施している人の判定は、その療法を始める前の状態で行うという注記も付いています。
手帳の1級・2級を持つ人には、都道府県や市区町村が医療費の自己負担分を助成しています。名称は自治体で異なり、大阪市の「重度障がい者医療費の助成」では、1医療機関・薬局・訪問看護ステーションごとに1日あたり最大500円、ひと月の一部自己負担額は最大3,000円です。ただし本人の所得に制限があります。
注意したいのは、この制度が自治体ごとに違うことです。対象の等級も所得制限の額も自治体で変わります。施設に入って住民票を移すと、施設のある自治体の制度が適用されます。今の自治体と施設の自治体の両方で、対象と自己負担を確認しておいてください。
出典: 大阪府 身体障害者福祉法 じん臓機能障がい(身体障害認定基準)
出典: 大阪市 重度障がい者医療費の助成
支出を減らす制度だけでなく、収入を増やす制度もあります。日本年金機構は「人工透析を行っている場合は原則2級(主要症状、検査成績、日常生活状況等によってはさらに上位等級)に認定されます」と案内しています。
障害基礎年金の2級は、令和8年4月分から、昭和31年4月1日以前に生まれた方が年額844,900円、昭和31年4月2日以後に生まれた方が年額847,300円です。月に直すと7万円前後で、厚生年金に加入していた期間がある方は、これに障害厚生年金が上乗せされます。
すでに老齢年金を受け取っている人は、障害年金と老齢年金のどちらか有利なほうを選ぶ形になります。まだ請求していない人は、「透析を始めた日」と「その病気で初めて受診した日」を整理して、年金事務所で相談してください。初診日の証明が要るので、古いカルテがある病院の名前を思い出しておくと手続きが進みます。
出典: 日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
透析の医療費と施設の介護費の両方を払っている世帯には、「高額介護合算療養費」があります。1年間(毎年8月から翌年7月末まで)の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、所得に応じた限度額を超えた分が支給されます。後期高齢者医療制度では、所得区分が「一般」の場合、限度額は56万円です。
支給を受けるには申請が要ります。手続きの窓口と必要な書類は、加入している医療保険に確かめてください。
透析の自己負担が受療証で月1万円に収まっていても、施設の介護費と合わせると限度額を超える世帯があります。年に一度、7月が終わったところで計算してみてください。
出典: 東京都保健医療局 後期高齢者医療制度について 5 医療費(3)高額介護合算療養費
断られる理由は、本人の病状ではなく、施設側に送迎・急変時の対応・看護師・受け入れ経験がそろっているかどうかです。福岡県内の全介護関連入居施設に聞いた調査では、受け入れ経験のある施設の9割が、条件付きを含めて今後も受け入れる意向を示していました。「現状では難しい」と答えるのは、受け入れた経験のない施設のほうです。
次の一歩は、いま通っている透析クリニックの相談員に「施設から通っている方はいらっしゃいますか」と聞くことです。ここを飛ばして施設の一覧から探すと、送迎の届かない場所で候補を集めることになり、気に入った施設を見つけてから「通えない」と分かる回り道になります。
クリニックの送迎エリアが分かったら、その中の施設に電話をかけ、いま透析を受けている入居者が何人いるかと、その方がどうやって通っているかを確かめてください。介護のあんしんでは、透析を受けている方の有料老人ホーム探しも含めて、老人ホーム探しで悩むあなたに信頼できる情報を提供しています。