※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

親が認知症と診断される。
そこから施設を探し始めると、必ず2つの言葉にぶつかります。
「グループホーム」と「介護付き有料老人ホーム」。
この違いが分からないまま、時間だけが過ぎていく。本当によくある話です。
この2つを比べるとき、見るべきなのは「いまの費用や設備」ではありません。症状が進んだ3年後、5年後に何が起きるかです。
ここを外すと、月額の安さで選んで、数年後にもう一度ゼロから施設を探すことになります。
4つの質問に答えるだけで方向性が出る診断チャート、10年住んだ場合の総額シミュレーション、見学で施設の本音を引き出す質問リスト。この3つを用意しました。
介護の知識がなくても、「うちの場合はどっちか」を自分で判断できます。
どちらが合うかは、パンフレットではなく親御さんの状態で決まります。
次の4つで、候補を絞り込みます。
上から順に答えるだけです。
認知症が中心で、体はまだわりと元気ならグループホーム。
体の介護や医療的なケアも必要で、今後も増えそうなら介護付き有料老人ホーム。
まずはこの2つを目安に、1つずつ答えていってください。
インスリン注射、たんの吸引、経管栄養(胃ろう)。
こういう毎日の医療的なケアが必要かどうか。
ここで「はい」なら、悩む余地はほとんどありません。
これ、意外と知られていません。
グループホームは「施設と同じ市区町村に住民票がある人」しか入れない決まりがあります。しかも人気で、空き待ちも多い。
つまり、選びたくても選べないことがある施設なんですね。
目安として、グループホームは月15〜20万円。介護付き有料老人ホームは月20〜35万円+施設によっては入居一時金。
ここが、最後の分かれ道です。
決め手になるのは、何を優先するかです。
| グループホーム | 介護付き有料老人ホーム | |
|---|---|---|
| ひとことで言うと | 認知症の方専門の、少人数の共同生活の家 | 介護スタッフが24時間いる、幅広い人向けの住まい |
| 人数・雰囲気 | 5〜9人の少人数。家庭的で、料理や洗濯を一緒にやることも | 数十人〜と大きめ。ホテルに近く、お世話は基本お任せ |
| 医療対応 | 弱め(看護師がいない施設も多い) | 比較的強い(日中は看護師がいるのが標準) |
| 費用の目安 | 月15〜20万円 | 月20〜35万円+入居一時金がかかる施設も |
| 入居条件 | 認知症の診断+要支援2以上+同じ市区町村の住民票 | 施設ごとに違うが、条件はゆるめ |
グループホームの強みは、認知症ケアに慣れたスタッフと、毎日同じ顔ぶれで過ごせる安心感です。
環境の変化で混乱しやすい認知症の方にとって、これは大きい。「役割」を持って暮らすことで、症状の進行をゆるやかにすることを目指します。
一方、介護付き有料老人ホームの強みは体制です。介護が重くなっても、医療ケアが増えても対応しやすい。認知症専門フロアを持つ施設もあります。
ここまでが、パンフレットに書いてある話。
ただ、この「いまの比較」だけで決めると、落とし穴にはまります。
大事なのは、入居後3年、5年で何が起きるかです。
グループホームと介護付き有料老人ホームでは、抱えるリスクの種類も、10年間で必要になるお金も違います。
リスクの種類が違う以上、月額の安さだけで比べると、判断を誤ります。
グループホームは、医療体制が手厚くありません。
だから、たん吸引や点滴が日常的に必要になったり、寝たきりに近い状態になったりすると、退去して別の施設へ移らなければならないことがあります。
そのとき家族に起きるのは、これです。
症状が重くなった親を連れて、もう一度ゼロから施設探しをする。
環境の変化は認知症の方にとって大きな負担ですし、探す家族の負担も、初回の比じゃありません。
もちろん、看取りまで対応するグループホームも増えています。
だからこそ見学の際に、その施設が「どこまで対応できるか」を必ず確認する。ここは絶対に省略しないでください。
一方、介護付き有料老人ホームのリスクは、お金一点です。
住み替えの心配は小さい。その代わり、高めの月額を何年も払い続けることになります。
仮の条件で、ざっくり並べてみます(あくまで一例です。地域や施設で大きく変わります)。
| グループホーム | 介護付き有料老人ホーム | |
|---|---|---|
| 入居一時金 | 0〜30万円程度 | 0〜数百万円(0円プランの施設も多い) |
| 月額 | 18万円と仮定 | 25万円と仮定 |
| 10年の総額 | 約2,200万円 | 約3,000万円+一時金 |
差額は、およそ800万円以上。
ただしグループホームの場合、途中で退去して介護付き有料老人ホームへ住み替えとなれば、引っ越し費用や新たな一時金がかかります。差は縮まります。
つまり、「安い方」ではなく「わが家が最後まで払い切れる方」。
比べるべきは、そこだけです。
費用相場を眺めても、たぶん決まりません。
親御さんの年金額から逆算する。こっちのほうが、圧倒的に現実的です。
年金でまかなえない分を、貯蓄で何年支えられるか。そのうえで、公的な負担軽減の仕組みを確認する。
年金額と月額費用の差から計算します。
例えば、親御さんの年金が月14万円だとします。
| 施設タイプ | 月額の仮定 | 不足額 | 貯蓄500万円がもつ年数 |
|---|---|---|---|
| グループホーム | 18万円 | 月4万円 | 約10年 |
| 介護付き有料老人ホーム | 25万円 | 月11万円 | 4年弱 |
グループホームなら、年48万円の取り崩しで済みます。
介護付き有料老人ホームだと、年132万円。
同じ貯蓄額でも、施設のタイプで「もつ年数」がまるで違います。
そして認知症の方の施設入居は、5年、10年と続くことが珍しくありません。
だから、「入居時に払えるか」ではなく「10年払えるか」。ここで判断してください。
高額介護サービス費は、介護保険の自己負担が月の上限額を超えた分を、申請すると払い戻してもらえる仕組みです。
世帯分離は、親御さんを住民票上で別世帯にすると所得判定が親御さん単独になり、自己負担の上限額が下がる場合があります。
医療費控除は、施設費用の一部が対象になることがあり、確定申告で税金が戻る場合があります。
詳しくは、市区町村の窓口やケアマネジャーに「使える制度はありますか」と聞けば教えてくれます。
たったこの一言です。
この一言を知っているかどうかで、年間数十万円変わることがあります。
知っ得メモ① 親の口座は、認知症が進むと「凍結」されることがある
認知症が進んで本人の意思確認ができなくなると、銀行が預金を保護するために取引を制限することがあります。
つまり、「親のお金で施設費用を払うつもりだったのに、引き出せない」。これが実際に起きます。
判断能力があるうちに、代理人カードの発行や、任意後見・家族信託といった備えを検討してください。すでに判断が難しい段階なら成年後見制度が選択肢になりますが、手続きに時間と費用がかかります。早めに地域包括支援センターへ相談を。
候補が決まったら、必ず見学へ。
ただし、何も決めずに行くと、ただのきれいな建物見学で終わります。
何を聞き、どこを見るかを決めてから行く。そうすると、パンフレットでは絶対に分からない部分まで見えてきます。
質問と観察、両方そろえると、施設ごとの差がはっきり出ます。
次の4つを、そのまま使ってください。
一番大事なのは、1つ目の退去についての質問です。
この一問で、看取りまで対応できる施設か、重度化すると退去になる施設かが分かります。
看取りについては、「対応可能」と「実績あり」は別物です。だから実績の有無まで聞く。
夜間の職員体制は、パンフレットに書かれていません。手薄さは、口頭で確かめるしかないんですね。
協力医療機関は、訪問診療の頻度、緊急時の対応、入院時の扱いまで。ここまで聞いて、はじめて答え合わせができます。
食事の時間帯は、施設の質が一番出ます。入居者の表情、スタッフの声かけ、食事介助の様子。全部見えます。
入居者とスタッフが名前で呼び合っているか。放置されている人がいないか。ここも確かめてください。
においと清潔感は、排泄ケアが行き届いているかのバロメーターです。
そして、親御さん本人が一緒に行けるなら、ぜひ連れて行ってください。本人の表情や反応が、たぶん一番正直な判断材料になります。
知っ得メモ② 「重要事項説明書」は見学前に入手できる
施設選びで一番使える公開書類が、この「重要事項説明書」です。
すべての施設に開示義務があり、ホームページに載っているか、頼めば見学前にもらえます。
ここに書かれているのは、退去要件、職員の人数や離職の状況、入居者の要介護度の分布。パンフレットには絶対に載らない部分です。
候補施設のものを事前に読み比べてから見学に行くと、質問の質がまるで変わります。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」でも、各施設の情報を検索できます。
方向性が決まったら、あとは順番どおりに動くだけです。
要介護認定の結果が出るまでには、1か月ほどかかります。
早く動くほど、選べる施設が残ります。逆に言えば、迷っている間に選択肢は減っていきます。
担当のケアマネジャーがいれば、まずそこへ。
いなければ「地域包括支援センター+お住まいの市区町村名」で検索してください。
無料です。しかも、地域の空き状況を含めた具体的な情報がもらえます。
市区町村の窓口で申請できます。
認定がないと、グループホームには入れません。結果が出るまで1か月ほどかかるので、早めに。
1施設だけ見て決める。これは避けてください。
見学チェックリストを持って2〜3施設を回ると、比較の目が自然と養われます。
1つ目では気づかなかったことが、2つ目で見えてくる。だいたいそうなります。
知っ得メモ③ 「合わなかったら」に備える90日ルールと体験入居
「入居してから合わなかったらどうしよう」で動けなくなる方は、本当に多いです。
でも実は、有料老人ホームには「90日ルール」(短期解約特例)があります。入居から90日以内に解約すれば、入居一時金は原則返還されます(滞在日数分の費用などは差し引かれます)。
また、多くの施設には数日〜1週間程度の体験入居制度があります。契約前に親御さんが実際に泊まってみて、夜の様子やスタッフとの相性を確かめられます。
「決めたら終わり」ではありません。これを知っておくと、体験入居や申し込みへ進みやすくなります。
1.医療ケアがある・空きがない・住み替えを避けたい → 介護付き有料老人ホーム。
2.体は元気・費用をおさえたい・家庭的な環境を重視 → グループホーム。
3.どちらを選ぶにしても、先に考えるのは「症状が進んだらどうなるか」と「10年払い続けられるか」。
4.見学では「昨年度の退去者数と理由」を必ず聞く。この一問だけは、絶対に落とさない。
認知症の親の施設選びで後悔する人は、たいてい「いま」で選んでいます。
進行とお金。この2つの「これから」を先に見た人が、後悔していません。