※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

「親の介護、そろそろ相談しないと」
そう思ったまま、数か月が過ぎていませんか。何をどう話せばいいのか分からない。たったそれだけの理由で、電話をかける手が止まる。よくあることだと思います。
事情をきれいに説明できるようになってから相談する必要は、ありません。用意するのは、事実を欄に分けて書いた一枚だけです。
一枚に書く欄は七つです。最後の一つは、相談の場で埋めます。
相談の準備というと、診断名を確かめたり、制度の名前を調べたりすることだと思われがちです。
でも、それは家族の仕事ではありません。
家族にしか書けないのは、日々の暮らしで見えていることです。
「夕方になると同じことを何度も聞く」
「先週、玄関で転んだ」
こうした事実を、思いつくままではなく、欄に分けて書く。それだけで、話す順番に迷わなくなります。
相談する先のひとつが、地域包括支援センターです。市町村が設置している窓口で、高齢者の総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防に必要な援助などを担っています。
必要な支援を把握して、適切な保健・医療・福祉のサービスや機関、制度の利用につなげる。それが総合相談支援の役割です。
担当するセンターは、住所によって異なります。だから、基準になるのは相談する人の住所ではなく、親の住所です。
一枚に置く欄は、次のとおりです。
思い当たるものだけ、一言ずつで構いません。
| 欄 | 何を書くか |
|---|---|
| いま最も困っている場面 | いつ、どこで、何が起きるか |
| 本人が自分でできていること | できている行動をそのまま |
| 本人が望むこと、嫌がること | 本人の言葉に近い形で |
| 家族ができること、できないこと、続けられないこと | 三つを分けて書く |
| すでに関わる医療・介護・地域の人と連絡先 | 名前と連絡先を並べる |
| 今日決めたいこと | 相談の場で答えがほしいこと |
| 相談後の担当者、次の行動、期限 | 相談の最後に埋める欄 |
上の六つは、相談へ行く前に書きます。
最後の一つだけは空欄のまま持っていって、相談の場で埋めます。この欄が埋まるかどうかで、相談のあとに動けるかが決まります。
書き方で迷いやすいのが、最初の欄と、家族についての欄です。
困っている場面は、状態ではなく場面で書く。
「認知症かもしれない」ではなく、「朝、薬を飲んだかどうかを何度も聞く」。
診断名や制度名を家族が確定させる必要はありません。むしろ、確定していない段階の事実こそ、そのまま伝わる形で書いておくほうがいい。
できていることも、必ず書く。
困りごとだけを並べると、一枚が実態より重くなります。「風呂は一人で入れる」「近所のスーパーまでは歩いて行く」。できている行動も、同じ重さの事実です。
家族の「できないこと」は、そのまま書く。
週に何回も通えない。夜間は対応できない。仕事があって平日は動けない。
これらは、心構えの問題ではありません。前提条件です。書かずに伏せておくと、続けられない前提のまま話が進んでしまいます。
知っ得メモ① 「できない」と「続けられない」は分けて書く
いまは何とかできている。でも半年後は分からない。
そういう項目は、「できること」ではなく「続けられないこと」の欄に書いてください。
一時的にできていることを「できる」として渡すと、その状態が続く前提で話が組み立てられます。
いま可能なことと、この先も維持できることは、別の情報です。
相談した当日に、制度の利用やサービスの開始が決まるとは限りません。
そこは、期待しすぎないほうがいい。相談は、その場ですべてが片づく場ではないからです。
だからこそ、最後の欄が要ります。
帰る前に、この三つを口に出して確認して、一枚に書き込む。
「では、次は私のほうから何をすればいいですか」
「いつごろまでに動けばいいですか」
この二つを聞くだけで、欄は埋まります。
一回目の相談を次につなげるのは、当日に出た答えではなく、ここに残った三行です。
知っ得メモ② 連絡先の欄は、一つに絞らない
すでに関わっている人がいるなら、全員を書き出しておきます。
かかりつけ医、通っている医療機関、介護の担当者、近所で様子を見てくれている人。
窓口を一か所だけに絞ってしまうと、その一か所につながらなかったときに手が止まります。
連絡先の欄は、一つに絞らず並べておきます。
親がすでに居宅のケアマネジャーに担当してもらっている場合があります。
そのときは、いま使っているサービスやケアプランに関する相談は、その担当者にできます。
どちらの窓口が上ということではありません。話したい内容によって、相談する相手が変わるだけです。
一枚は、どちらに持っていっても使えます。書く欄が同じだからです。
一回で思ったとおりに進まないことは、あります。そのときも、一枚があれば持ち帰るものが残ります。
どれも、進まなかった理由をそのまま欄に書き足して、次の行動と時期だけは決めて帰る、という点は同じです。
「介護なんて必要ない」と本人が言う。よくあることです。
そのときは、その言葉を「本人が望むこと、嫌がること」の欄に、そのまま書いてください。
嫌がっているという事実は、相談を止める理由ではなく、伝えるべき情報のひとつです。
その場で何かが始まらなくても、最後の欄は埋められます。
「どんな変化があったら、また連絡すればいいですか」
そう聞いて、次の行動と目安の時期を書き込む。それだけで、最後の欄は埋まります。
担当は親の住所で決まります。自分がどこに住んでいるかは、その基準ではありません。
そのうえで、帰省しないと動けないこと、平日は連絡が取りにくいことは、「家族ができないこと」の欄に書いておく。
行けないという条件を含めたところから、次の行動を決めてもらえます。
親の介護の相談は、この三つで始められます。
親の住所を基準に、相談する先を決める。担当は、自分の住所ではなく親の住所で分かれます。
事実を欄に分けて、一枚に書く。困っている場面、できていること、本人の希望と拒否、家族の限界、関わっている人の連絡先、今日決めたいこと。思い当たるものだけで構いません。
最後の欄は、相談の場で埋める。担当者、次の行動、期限。この三行を持ち帰れたら、一回目の相談は成功です。
きれいに説明できるようになってから、相談するのではありません。
書けるところだけ書いた一枚を持って、電話をかける。それで足ります。