※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

「今のケアプラン、なんだか合っていない気がする」
在宅で介護保険サービスを使っていると、あるときふと、そう感じる瞬間が来ます。本人ができることが変わった。家族の事情が変わった。サービスは前と同じように入っているのに、埋まらない時間が出てきた。
けれど、そこで言い出せなくなる方が多いと思います。「ケアマネさんに何と言えばいいのかわからない」「『見直してください』とだけ言うのも、なんだか漠然としている」。そうなんですよね。困っているのは確かなのに、言葉にしようとするとうまくまとまらない。
そこで、話す前に書くための記録票を用意しました。前と変わった事実。家族ができなくなったこと。今のサービスで埋まらない時間。この3つを分けて書くだけで、見直す対象と次の確認日まで決められるようになります。
ケアプランは、作って終わりの書類ではありません。
居宅介護支援では、プランを作ったあとも、サービスの実施状況と利用者の状態を継続的に把握し、必要に応じて計画の変更や事業者との連絡調整を行うことになっています。
厚生労働省の介護サービス関係Q&Aでは、モニタリングで利用者の解決すべき課題に変化が認められる場合、居宅サービス計画の変更を求めていると説明されています。
つまり、「変わったなら見直す」は、制度にもともと組み込まれている考え方です。
家族から変化を伝えるのは、ケアマネジャーが見直しを判断するための情報を渡すことにあたります。
知っ得メモ① 見られているのは本人の状態だけではない
モニタリングで見ているのは、本人の状態の変化だけではありません。
家族の状況や社会状況の変化によって、解決すべき課題が変わっていないかも、継続的に確認します。
だから、「本人は前と変わらないけれど、家族の事情が変わった」も、伝えていい変化です。記録票に家族の欄があるのは、そのためです。
言い出せない理由は、遠慮だけではありません。
「何が変わったのか」を自分でも整理できていないから、というのが実際のところだと思います。
たとえば、こんな伝え方になりがちです。
「最近ちょっと大変で……見直してもらえますか」
これでも相談は始まります。ただ、ここから先はケアマネジャーが一つずつ聞き取って組み立て直すことになる。
一方で、次のように分かれていたらどうでしょう。
同じ内容でも、見直す対象がはっきりします。
コツは、たったひとつです。
本人の変化と、家族の変化と、埋まらない時間を、混ぜずに分けて書く。
記録票は、7つの欄でできています。紙でもスマートフォンのメモでも構わないので、用意してください。
順番どおりに埋めていけば、そのまま相談の材料になります。
最初に書くのは、比較の基準です。
「以前はどうだったか」と「変わったのはいつ頃か」。
日付は正確でなくて構いません。「先月の下旬あたり」「退院してから」で十分です。時期が入るだけで、変化として扱えるようになります。
次に、本人の今の状態。
できなくなったことだけを書くと、支援が過剰になりやすくなります。できていることも並べて書いてください。
そして、それぞれに頻度と時間帯を添える。
「トイレに間に合わないことがある」ではなく、「夜間に2回ほど間に合わないことがある」。この違いが、あとの相談で役に立ちます。
ここが、抜けやすい欄です。
以前は家族ができていたのに、今はできなくなったこと。そして、その理由。
「仕事の時間が変わった」「自分の通院が増えた」「別居になった」。
理由まで書くのは、責任を説明するためではありません。一時的なことなのか、続くことなのかで、サービスの組み方が変わるからです。
本人の変化と家族の変化を重ねると、誰も手当てできていない時間がわかります。
曜日と時間帯で書いてください。
「平日の朝7時から8時半」「土曜の日中」。
見直しは、この空白をどう埋めるかの話になります。ここが具体的なほど、話が早い。
聞きたいことは、思いついた時点で書き留めておく。
電話の場では、たいてい忘れます。
「今の内容で何ができるのか」「別の方法があるのか」。わからないことをわからないまま書いて構いません。
話し合ったあとに埋める欄です。
サービス担当者会議の記録では、決まったことを「いつまでに誰が行うか」という形で明確にし、役割の漏れや重複を確かめるという留意点が示されています。
同じ形を、家族の手元にも残しておく。
「誰が」「何を」「いつまでに」。この3つが揃っていない項目は、たいてい後で進まなくなります。
最後に、次に見直す日を書きます。
決めた内容が合っているかどうかは、しばらく使ってみないとわかりません。
だから、あらかじめ日を置いておく。「1か月後の今日」でも「次の受診のあと」でも構いません。
次の日付が入っていると、それまでの変化を書きためられます。記録票が続くのは、この欄があるからです。
記録票が埋まったら、そのまま準備票として使えます。
電話や訪問の前に、この順で読み返してください。
そして、伝えるときのコツをひとつ。
サービスや人への評価ではなく、変化した事実を主語にする。
「今月に入ってから、朝の身支度に付き添えなくなりました。平日の7時台がどうしても空いてしまって。何か方法があるか、一度相談させてもらえますか」
これで十分です。
整理して組み立て直すのは、ケアマネジャーの仕事です。家族が渡すのは、正確な材料のほうでいい。
知っ得メモ② 症状の緊急度は記録票で判断しない
この記録票は、暮らしの変化を整理して相談につなげるためのものです。
急な発熱、強い痛み、意識やけいれんの異常といった症状の緊急度を、この票で判定しないでください。
急な体調の変化は、記録票の順番を待たずに、かかりつけの医療機関や救急の窓口へ。記録票は、落ち着いたあとで書けば十分です。
見直しの話し合いが終わったら、記録票の下2つの欄に戻ります。
「誰が何をいつまでに確認するか」と「次に見直す日」。
この2つを埋めたものが、引継ぎ票になります。
決まったことを役割の形で書き出して、漏れや重複がないかを確かめる。これは公的な記録上の留意点として示されている考え方で、家族の手元でも同じように使えます。
書いておくと、こういうときに役立ちます。
そして、次に見直す日が来たら、また上の欄から書き直す。
記録票は、一度きりの書類ではなく、更新していく1枚です。
出典:厚生労働省「高齢者向け住まい等における効果的なケアプラン点検推進のためのヒント」
正直なところ、見直しを申し出れば、希望どおりのサービス量や事業所が必ず確保される、とは言えません。
事業所の受け入れ状況もありますし、話し合った結果、別の形に落ち着くこともあります。
それでも、記録票を書く意味はあります。
漠然とした「大変です」のままだと、何を調整すればいいのかが誰にもわからない。変化と空白時間が分かれていれば、希望どおりでなくても、代わりの案が出しやすくなります。
次に見直す日を決めておけば、今回埋まらなかった部分を持ち越せる。
一度で全部を解決しようとしなくていい、ということでもあります。
「見直してください」の一言だけで、うまく説明しようとしなくて大丈夫です。
書けるところから記録票を埋めて、それを持ったまま、まずは電話を一本。