親の介護をきょうだいで分担するには?決める人と費用を解説

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一人で抱えないように、きょうだいや配偶者と手分けをしたはずでした。それなのに、気がつけばまた自分が病院へ付き添っていて、その日のタクシー代も自分の財布から出ています。

分担が続かなくなる原因は、行く回数が公平かどうかではありません。決める人が決まっていないことと、お金の出どころが決まっていないことの2つです。

この記事では、その2つをどう決めておくかと、決めたことをきょうだいとどう共有するかを、順に説明します。

1. きょうだいの介護の分担が続かなくなる理由

決めるべきことが決まらないまま、その日その日で動いているからです。

決まらない理由は、家族の外に答えが無いことにあります。国の調査と民法が、何をどこまで決めているのか。まず、その2つを見ます。

1-1. 公的な調査も介護者を1人で数えている

市町村が在宅の要介護者の家庭に対して行う「在宅介護実態調査」という調査があります。介護保険の計画を作るための調査で、認定調査員が聞き取ります。

3つ目の設問は、こうなっています。

問3 主な介護者の方は、どなたですか(1つを選択)

選択肢は「配偶者」「子」「子の配偶者」「孫」「兄弟・姉妹」「その他」の6つ。選ぶのは1つだけです。

次の設問も同じ形です。「主な介護者の方が行っている介護等について、ご回答ください」として、日中の排泄、夜間の排泄、食事の介助、服薬、金銭管理などが並びます。選んだ1人がやっていることとして数えられます。

家族全体を尋ねる設問もあります。ただし、聞かれるのは頻度だけです。

問2 ご家族やご親族の方からの介護は、週にどのくらいありますか(同居していない子どもや親族等からの介護を含む)

選択肢は「ない」から「ほぼ毎日ある」までの5つ。誰が何回行ったのかの内訳を書く場所は、この調査票にありません。

出典: 厚生労働省 在宅介護実態調査 調査票

厚生労働省の国民生活基礎調査も、同じ数え方をしています。2025年の集計を、在宅で介護を受けている人(要介護者等)を母集団としてみると、主な介護者が同居の家族である割合は46.1%、別居の家族等が13.4%、事業者が16.0%でした。同じ母集団に対する同居の主な介護者の続柄は、配偶者が22.5%、子が18.2%と続きます。

出典: 厚生労働省 2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

国の調査が数えているのは、介護をしている家族の人数ではありません。中心になっている1人が誰かと、その人が何をしているかです。何人でどう分けているかは、これらの調査からは分かりません。その中心の1人になった人が仕事を辞めるかどうかを考えるときに、会社へ申し出られる制度と辞めた人がその後どうなったかは、別の記事にまとめています。

1-2. 分け方を決める決まりは法律にない

民法は、親の面倒を見る義務そのものを定めています。

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。(民法第877条第1項)

きょうだいは全員、この義務を負っています。ただし、誰がどれだけ負うのかは書かれていません。書かれているのは、決まらなかったときの手続きです。

扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。(第878条)

扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。(第879条)

どちらの条文も、最初に当事者の協議が来ます。協議が調わないときに、初めて家庭裁判所が決めます。均等に割るとも、介護をした時間に比例させるとも、民法は決めていません。

出典: e-Gov法令検索 民法

分け方は、家族で決めるしかありません。決めるのは2つ。決める人と、お金の出どころです。

2. 介護の分担で決める人を1人決める

家族の中で1人を選ぶといっても、親に代わって決める人を立てるわけではありません。選ぶのは、家族からの連絡と依頼を1つにまとめる人です。

ケアマネジャーへの連絡、サービス担当者会議への出席、ケアプランへの同意。この3つの場面で、家族が誰としてそこに立つのかを順に見ます。あわせて、親のお金を動かせるのが誰かも確かめます。

2-1. ケアマネジャーへ連絡する人を1人にする

要介護認定の申請をするのは、親本人です。介護保険法第27条第1項に、こうあります。

要介護認定を受けようとする被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に被保険者証を添付して市町村に申請をしなければならない。

同じ項の後半には、この手続を代わって行わせることができる先が並んでいます。指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設、介護保険施設、地域包括支援センターの4つです。家族の名前は、ここに出てきません。家族が申請に関われないという意味ではありません。家族のうち誰がその役を担うのかを、法律の側では決めていないということです。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法

法律が決めていないぶん、誰がその役を担うのかは家族の側で決めることになります。ケアマネジャーへ電話をし、日程を調整し、変わったことを伝えるのは家族です。ここに3人が別々に連絡すると、ケアマネジャーには、どれが家族として決めた話なのかが分かりません。同じ相談が二重に届くこともあれば、誰も伝えていない用件が抜け落ちることもあります。

連絡する人を1人にします。決めるのは1行です。

「ケアマネジャーへの連絡と依頼は、長女がまとめて行う」

この1人が決めるのは、家族としての依頼を何にするかまでです。サービスを増やすか減らすかを文書で最後に決めるのは、親本人です。

2-2. サービス担当者会議には家族も参加できる

ケアプランを作るときには、サービス担当者会議が開かれます。何のための会議かは、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準の第13条第9号に書かれています。

サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために、利用者及びその家族の参加を基本としつつ、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者……を招集して行う会議……)

「利用者及びその家族の参加を基本としつつ」とあります。家族が入ることが前提です。同じ条文には、テレビ電話装置等を活用して行うことができるとも書かれています。ただし利用者や家族が参加するときは、テレビ電話装置等を使うことについて、その人たちの同意が要ります。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

連絡をまとめる人が1人でも、会議に出る人まで1人にする必要はありません。同じ説明を全員が同じ場で聞ければ、後から伝え直す手間が減ります。遠くに住むきょうだいが会議へどう加わり、何を任せられるかは、遠距離のまま介護を分ける決め方として別の記事にまとめています。

2-3. ケアプランに同意するのは親本人

ケアプランができたときに、誰が何をするのか。同じ第13条の第10号と第11号に書かれています。

介護支援専門員は、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等について、保険給付の対象となるかどうかを区分した上で、当該居宅サービス計画の原案の内容について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない。

介護支援専門員は、居宅サービス計画を作成した際には、当該居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付しなければならない。

説明を受けるのは「利用者又はその家族」。同意するのは「利用者」。交付されるのは「利用者及び担当者」です。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

家族が何人いても、文書で同意するのは親本人です。家族の中で決めた「決める人」が担うのは、そこへ持ち込む家族としての依頼をまとめることまでで、同意そのものは親が与えます。

2-4. 親のお金を動かせるのは誰か

家族の中で「母のことは私が決める」と決めても、それだけでは親の預貯金を動かせません。親のお金の扱いに関わる仕組みとして、ここでは3つを見ます。家族へ代理権が渡りうるのは1つ目だけで、あとの2つは家庭裁判所や社会福祉協議会が関わる形です。

任意後見契約は、親の判断力があるうちに、親自身が契約で代理権を渡しておく形です。任意後見契約に関する法律第2条第1号は、この契約について「第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるもの」と定めています。契約しただけでは効力は生じません。家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときから効力が生じます。

出典: e-Gov法令検索 任意後見契約に関する法律

成年後見は、判断力が十分でなくなった後の形です。民法第843条第1項は「家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する」と定めます。選ぶのは家庭裁判所で、家族が話し合って決めるものではありません。選ばれた後見人については、第859条第1項に「後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する」とあります。

出典: e-Gov法令検索 民法

福祉サービス利用援助事業は、社会福祉法第2条第3項第12号にある事業です。精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある人に対して、福祉サービスの利用について相談に応じ、助言を行い、利用に要する費用の支払に関する便宜を供与するものと定められています。日常生活自立支援事業の名前で市区町村の社会福祉協議会が行っています。契約するのは親本人で、家族に代理権が渡る仕組みではありません。

出典: e-Gov法令検索 社会福祉法

3つとも、家族の話し合いだけでは始まりません。家族の中で決めた「決める人」が持つのは、家族としての連絡と依頼をまとめる役割です。親の口座からお金を出せるかどうかは、こうした仕組みの側で決まります。家族の取り決めとは別のところにあると考えてください。

3. 介護費用の出どころを先に決める

親のお金から出すのか、誰かが立て替えるのか。戻ってくるお金は誰に戻るのか。あとから相続で取り返せるのか。この3つを確かめます。

3-1. 親のお金から出すか立て替えるか

介護保険のサービスを使ったときの自己負担は、親に生じます。ケアプランの第7表は「サービス利用票別表」という表で、表題には「区分支給限度管理・利用者負担計算」とあります。事業所ごとに、単位数、費用総額、給付率、そして「利用者負担」の欄が並びます。負担する人として書かれているのは、利用者、つまり親です。

出典: 厚生労働省 居宅サービス計画書標準様式及び記載要領

制度の上で払うのが親だとすると、家族がすることは2つに分かれます。親の口座から出すか、家族の誰かが立て替えるかです。この2つを分けずに進むと、誰がいくら出したのかが誰にも分からなくなります。

決めておくのは、次の3つです。

  1. 毎月の自己負担を、親の口座から出すか、誰かが立て替えるか
  2. 立て替えたときに、いつ・誰に・どうやって請求するか
  3. 立て替えた分を、どこに書いておくか

いくらずつ分けるかを、ここで決める必要はありません。割合の正解は民法にも書かれていないからです。決めるのは割合ではなく、出どころと、請求の時期です。

3-2. 高額介護サービス費が戻るのは親本人

介護保険には、1か月の自己負担が高くなりすぎたときに戻ってくるお金があります。高額介護サービス費です。介護保険法第51条第1項に、こうあります。

市町村は、要介護被保険者が受けた居宅サービス(これに相当するサービスを含む。)、地域密着型サービス(これに相当するサービスを含む。)又は施設サービスに要した費用の合計額として政令で定めるところにより算定した額から、当該費用につき支給された居宅介護サービス費……の合計額を控除して得た額……が、著しく高額であるときは、当該要介護被保険者に対し、高額介護サービス費を支給する。

支給される相手は「当該要介護被保険者」、つまり親です。申請する人も同じです。介護保険法施行規則第83条の4第1項は「高額介護サービス費の支給を受けようとする要介護被保険者は、次に掲げる事項を記載した申請書を市町村に提出しなければならない」と定めています。

出典: e-Gov法令検索 介護保険法

出典: e-Gov法令検索 介護保険法施行規則

ここが、立て替えたときに食い違うところです。子が立て替えても、高額介護サービス費は親本人に支給されます。 立て替えたままにしておくと、戻ったお金は親の手元に残り、立て替えた人には自動では届きません。

立て替える場合は、請求する日を先に決めます。「毎月末に、その月の領収書をまとめて母の口座へ請求する」のように、時期と相手を決めておきます。

3-3. 相続のときに介護の分を求める2つの制度

「そのぶんは相続のときに」と言われて引き受けている人もいます。民法には、介護をした分を相続に反映させる仕組みが2つあります。どちらも、今は決めなくてよい理由にはなりません。

1つ目は寄与分です。民法第904条の2第1項は、被相続人の療養看護などによって財産の維持または増加について特別の寄与をした共同相続人がいるときに、その人の相続分に寄与分を加えると定めています。加える額は「共同相続人の協議で定めた」寄与分です。

2つ目は特別寄与料です。相続人ではない親族、たとえば子の配偶者が請求できます。民法第1050条第1項に、こうあります。

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族……は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭……の支払を請求することができる。

出典: e-Gov法令検索 民法

どちらも、請求できるのは相続が始まった後です。そして、額を決めるのはやはり協議です。決めずに置いた金額は、そのときにもう一度、同じ顔ぶれで話し合うことになります。

4. 介護の記録をきょうだいで共有する

共有する紙を、新しく作る必要はありません。ケアマネジャーが作るケアプランが、そのまま使えます。

ケアプランは何枚の表で渡されるのか。月ごとの利用と自己負担はどこに載るのか。家族の希望はどこに書かれるのか。この3か所を確かめます。

4-1. 同意を得るときに示される5枚の表

厚生労働省が示す居宅サービス計画書の記載要領に、こうあります。

なお、利用者に「居宅サービス計画の説明及び同意」を得るにあたっては、当該「居宅サービス計画書」の第1表から第3表まで、第6表及び第7表を提示

第1表から第3表、第6表、第7表。同意を得るときに提示されるのは、この5枚です。居宅サービス計画書の様式が5枚しかないということではありません。

出典: 厚生労働省 居宅サービス計画書標準様式及び記載要領

親が説明を受けて同意するときに、この5枚が示されます。きょうだいで同じものを見たいなら、この5枚のコピーをもらって配れば足ります。家族で新しい記録用紙を作らなくても、全員が同じ紙を持てます。

4-2. 第6表と第7表に月ごとの利用と負担が載る

第6表は「サービス利用票(兼居宅サービス計画)」です。記載要領には「『居宅サービス計画原案』に位置付けられたサービスをもとに、月単位で作成する」とあります。表の中は「月間サービス計画及び実績の記録」で、日付ごとにサービスが並びます。

第7表は「サービス利用票別表」です。事業所ごとに、単位数、費用総額、給付率、利用者負担が並びます。区分支給限度基準額を超えた単位数の欄もあります。

出典: 厚生労働省 居宅サービス計画書標準様式及び記載要領

その月に何をどれだけ使ったのか、自己負担がいくらになったのか。この2枚を見れば分かります。「今月はいくらかかったのか」と聞かれるたびに、領収書を数え直して説明する必要はありません。

4-3. 家族の希望はケアプランの1枚目に書かれる

第1表には、利用者と家族の意向を書く欄があります。記載要領の⑬には、意向が違うときの書き方まで決められています。

なお、利用者及びその家族の生活に対する意向が異なる場合には、各々の主訴を区別して記載する。

親の希望と、きょうだいそれぞれの希望が違うとき、分けて書けます。まとめて1つにする必要はありません。

同じ第1表の⑮「総合的な援助の方針」については、こう書かれています。

課題分析により抽出された、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」に対応して、当該居宅サービス計画を作成する介護支援専門員をはじめ各種のサービス担当者が、どのようなチームケアを行おうとするのか、利用者及び家族を含むケアチームが確認、検討の上、総合的な援助の方針を記載する。

出典: 厚生労働省 居宅サービス計画書標準様式及び記載要領

きょうだいの側の事情を伝える場所も、あらかじめ用意されています。厚生労働省が示す課題分析標準項目の21番目は「家族等の状況」です。その項目の説明には、こう書かれています。

本人の日常生活あるいは意思決定に関わる家族等の状況(本人との関係、居住状況、年代、仕事の有無、情報共有方法等)、家族等による支援への参加状況(参加意思、現在の負担感、支援への参加による生活の課題等)、家族等について特に配慮すべき事項に関する項目

出典: 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1178

情報共有の方法も、参加の意思も、現在の負担感も、確かめる項目に入っています。きょうだいで決めた分担と、コピーを誰に配るのかは、ここで伝えれば記録に残ります。家族の側から切り出さなくても、聞かれる場面があるということです。

5. 決めた3つをケアマネジャーに伝える

ここまでで決めたことに、ケアプランをどう受け取るかを足した3つを、ケアマネジャーへ伝えます。3つがそろえば、何かあるたびに「誰がやる」から話し始めなくて済みます。

決めたら、次にケアプランを見直すときに、ケアマネジャーへそのまま伝えます。たとえば、次のような言い方になります。

「ケアマネジャーさんへの連絡と依頼は、私(長女)がまとめます。私以外から連絡があったときは、同じ内容を私にも伝えてください」

「介護保険の自己負担は母の口座から出します。私が立て替えた分は、月末に母の口座へ請求します」

「第1表から第3表と、第6表・第7表のコピーを毎月ください。弟と妹に同じものを渡します」

第1表の「総合的な援助の方針」は、利用者及び家族を含むケアチームが確認し、検討したうえで書くことになっています。その検討には、あなたも加わります。決めた内容を口約束のままにせず、ケアプランに書いてもらってください。

まとめ

分担が続かなくなるのは、行く回数が公平でないからではありません。決める人が決まっていないことと、お金の出どころが決まっていないことの2つです。国の調査は主な介護者を1人として数え、民法は分け方を決めていません。連絡をまとめる人と、お金の出どころ。この2つは、家族が自分たちで決めます。

次にすることは1つです。次にケアマネジャーと話すときに、「連絡と依頼は私がまとめます」と伝えてください。

そのあとで、お金の出どころと、ケアプランの受け取り方を決めます。3つがそろえば、次に何かを決めるときに、誰が決めてどこから出すのかを毎回話し合わずに済みます。

介護のあんしんでは、きょうだいや配偶者と介護をどう分け、決めたことをどう続けていくかも含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。