介護している自分が倒れたら親はどうなる?当日の手順と備えを解説

介護のあんしん 記事2082 サムネイル

「介護がつらい…」「近くにどんな施設があるの?」
まずは資料を取り寄せてみよう!

シニアのあんしん相談室


※1999年創業の会社が運営する「シニアのあんしん相談室」よりサービス提供を受けております。

 

親を家で介護しているのは自分ひとりで、代わりを頼める人がいません。そういう暮らしが続くと、胸が苦しくなった日や、階段で足を滑らせた日に、「自分が倒れたら、親はどうなるのだろう」と考えます。

その日に間に合うのは、預け先を探すことではありません。誰に連絡するかを先に決めてあるかどうかです。

この記事では、倒れた日に親を預けられる仕組みと、それを動かす相手、そして倒れる前に決めておくことを、順に説明します。

1. 介護している人が倒れた日に親を預ける方法

倒れたその日に、預け先を一から探すことになると思うかもしれません。介護保険には、その日のための決まりが先に用意されています。計画に入っていない日でも使えること、満床でも受け入れられること、預け先が1種類ではないこと。この3つです。

1-1. 計画に無い日でも使える緊急の短期入所

親が使う介護サービスは、いつ何を使うかをケアプランで先に決めてあります。その日はショートステイの予定が入っていない、という日に急に泊まらせることは、本来の使い方ではありません。

それでも、介護報酬の基準は、計画に無い日に泊まらせる場合の決まりを定めています。

厚生労働省が定める算定基準は、「居宅サービス計画において計画的に行うこととなっていない指定短期入所生活介護を緊急に行った場合」について、緊急短期入所受入加算として1日につき90単位を加算する、と定めています。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準

計画に無い日の受け入れに、名前の付いた加算があります。予定外の泊まりは、例外として黙認されているのではなく、報酬の付く行いとして基準に書かれているということです。

1-2. 満床でも受け入れられる決まりがある

満床のときの扱いは、定員そのものを定めた条文に書かれています。

短期入所生活介護には、定員を守る決まりがあります。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準の第138条第1項は、定員を超える人数に同時にサービスを行ってはならない、と定めています。

その同じ条文の第2項に、続きがあります。

利用者の状況や利用者の家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護を受けることが必要と認めた者に対し、居宅サービス計画において位置付けられていない指定短期入所生活介護を提供する場合であって、当該利用者及び他の利用者の処遇に支障がない場合にあっては、前項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる利用者数を超えて、静養室において指定短期入所生活介護を行うことができるものとする。

出典: e-Gov法令検索 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

定員がいっぱいでも、静養室で受け入れられます。条文が理由として挙げているのは「利用者の状況」と並んで「利用者の家族等の事情」です。介護している家族に何かあったことが、定員を超える理由として書かれています。

1-3. 老健や病院の短期入所も同じ扱い

短期入所には2つの種類があります。特別養護老人ホームなどで行う短期入所生活介護と、介護老人保健施設(老健)や介護医療院などで行う短期入所療養介護です。

同じ算定基準は、短期入所療養介護についても、計画に無い日に緊急に行った場合の緊急短期入所受入加算を定めています。日数の上限も、1日90単位という額も、生活介護と同じです。同じなのはこの加算の扱いで、満床のときに静養室で受け入れられる定めのほうは、短期入所生活介護の基準に書かれたものです。老健などが満床のときにどうなるかは、電話をかけたときに確かめてください。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所療養介護費)

探す先を1種類に絞らなくて構いません。いつも使っているショートステイが満床でも、老健の短期入所という道が残っています。

2. 緊急の短期入所は何日使える?

使える日数には限りがあります。原則は7日、介護している家族が病気のときは14日です。ただし、この7日と14日が何の日数を指しているかは、条文を読むと見た目と違います。

2-1. 原則は7日まで

先ほどの算定基準は、緊急短期入所受入加算を「当該指定短期入所生活介護を行った日から起算して7日」を限度とする、と定めています。

7日たったら親を家に連れ帰らなければならないのか、と心配になるところです。算定基準が7日を限度としているのは加算であって、泊まりそのものではありません。

同じことを、厚生労働省の通知が短期入所療養介護について書いています。

七日を限度として算定することとあるのは、本加算が、緊急に居宅サービス計画の変更を必要とした利用者を受け入れる際の初期の手間を評価したものであるためであり、利用開始後八日目以降の短期入所療養介護の利用の継続を妨げるものではないことに留意すること。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について

加算が付くのは最初の7日分までで、8日目から先も、通常の短期入所として続けられます。ただし、ここまでの7日・14日は加算の日数です。通常の短期入所として何日まで続けられるかは別の決まりによるため、詳細は別の記事で扱います。この記事で押さえておきたいのは、8日目に打ち切られるのではないという点です。

2-2. 介護する家族の病気なら14日まで

7日の限度には、延びる場合が書き添えられています。算定基準の言葉では、「利用者の日常生活上の世話を行う家族の疾病等やむを得ない事情がある場合は、14日」です。

延ばす条件を、厚生労働省の通知はもう少し細かく書いています。

利用者の介護を行う家族等の疾病が当初の予想を超えて長期間に及んだことにより在宅への復帰が困難となったこと等やむを得ない事情により、七日以内に適切な方策が立てられない場合には、その状況を記録した上で14日を限度に引き続き加算を算定することができること。

出典: 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定 実施上の留意事項について(新旧対照表)

条件として名指しされているのは、親の状態ではありません。介護している家族の病気です。入院が思ったより長引いたときに日数が延びる形が、あらかじめ決めてあります。

2-3. 7日のあいだにケアマネジャーと次を決める

同じ通知は、7日という期間の使い方も書いています。その間に「緊急受入れ後に適切な介護を受けられるための方策について、担当する指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員と密接な連携を行い、相談すること」と定めています。

7日は、家に戻るまでの猶予ではありません。次をどうするかをケアマネジャーと決めるための時間です。

市町村が独自に持っている事業も、7日で区切り、必要なら延ばす形をとっています。横浜市の高齢者緊急ショートステイ事業は、利用期間を1回につき7日以内とし、必要日数が7日を超えることが当初から見込まれ、真にやむを得ないと認める場合は14日以内で決定できるとしています。そのうえで、利用期間の後も要件に該当し他に代わる手段がない場合は、原則7日以内の延長を認めることができる、としています。

出典: 横浜市 高齢者緊急ショートステイ事業実施要綱

7日で区切り、そこで様子を見て、必要なら延ばす。介護保険の加算も、市町村の事業も、同じ刻み方をしています。

3. 倒れた日に動かすのは誰?

ここまでの決まりは、どれも同じ人が動かすことを前提に書かれています。倒れた日に最初に連絡するのはその人で、つながらないときの行き先は別にあります。

3-1. 「緊急」と認めるのはケアマネジャー

定員を超えて静養室で受け入れられるのは、条文の言葉では「指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護を受けることが必要と認めた者」です。緊急かどうかを認めるのは、親についているケアマネジャーです。

厚生労働省の通知も、短期入所療養介護について、ケアマネジャーが必要性を認めることを算定の条件にしています。

本加算は、介護を行う者が疾病にかかっていることその他やむを得ない理由により短期入所が必要となった場合であって、かつ、居宅サービス計画において当該日に短期入所を利用することが計画されていない居宅要介護者に対して、居宅サービス計画を担当する居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、その必要性を認め緊急に短期入所療養介護が行われた場合に算定できる。

通知が要件の最初に挙げているのは「介護を行う者が疾病にかかっていること」です。親の状態が変わったことではなく、介護している人が病気になったことが、緊急の理由として書かれています。

連絡が間に合わなかったときのことも、同じ通知の次の項に書かれています。

やむを得ない事情により、当該介護支援専門員との事前の連携が図れない場合に、利用者又は家族の同意の上、短期入所療養介護事業所により緊急に短期入所療養介護が行われた場合であって、事後に当該介護支援専門員によって、当該サービス提供が必要であったと判断された場合についても、当該加算を算定できる。

出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について

老健などの短期入所については、先に連絡できなかったからもう駄目だ、とはなりません。倒れて連絡どころではなかった場合でも、本人か家族が同意して受け入れてもらい、後からケアマネジャーが必要だったと判断すれば通ります。

倒れた日に最初にすることは、施設を探すことではありません。ケアマネジャーの電話番号にかけることです。

3-2. ケアマネジャーにつながらないときの窓口

ケアマネジャーは1人の人間なので、夜間や休みの日につながらないことがあります。

そのときの行き先が地域包括支援センターです。厚生労働省の通知は、地域包括支援センターが行う総合相談支援業務について、地域の高齢者がその人らしい生活を継続できるよう、どのような支援が必要かを把握し、適切なサービスや関係機関、制度の利用につなげる、と定めています。

出典: 厚生労働省 地域包括支援センターの設置運営について

市町村が独自の事業を持っている場合は、手続きの順番にも例外があります。八王子市の高齢者生活支援ショートステイ事業の要綱は、市長が緊急を要すると認めるときは申請等の手続を省略して実施できるとし、手続は事後に速やかに行うものとする、と定めています。

出典: 八王子市 高齢者生活支援ショートステイ事業実施要綱

書類を揃えてから相談するのではありません。先に電話をして、書類は後です。

ここまでは親を預けるための連絡先ですが、その電話をかけるのは自分自身です。自分の具合が悪くなり、救急車を呼ぶかどうかで迷ったときには、♯7119という番号があります。医師や看護師、相談員から電話でアドバイスを受けられる窓口です。ただし実施している地域は限られており、令和6年11月現在で36の地域です。住んでいる地域で使えるかどうかを、先に確かめておいてください。

出典: 総務省消防庁 令和6年版消防白書 救急安心センター事業(♯7119)の推進

4. 倒れる前に決めておくこと

ここまでの仕組みは、どれも連絡がついてはじめて動きます。そして倒れた日に、自分が電話をかけられるとは限りません。そのため前もって決めておくのは、預け先ではありません。誰に連絡するか、その連絡先を書いた紙をどこに置くか、その置き場所を自分以外の誰が知っているか。この3つです。あわせて、どうなったら在宅を決め直すかの条件を先に決めておく方法は、別の記事にまとめています。

4-1. ケアプランの1枚目に緊急時の連絡先を書いてもらう

連絡先を書く欄は、ケアプランの1枚目にあります。

ケアプランの第1表には「総合的な援助の方針」という欄があります。厚生労働省が示す記載要領は、この欄についてこう書いています。

あらかじめ発生する可能性が高い緊急事態が想定されている場合には、対応機関やその連絡先、また、あらかじめケアチームにおいて、どのような場合を緊急事態と考えているかや、緊急時を想定した対応の方法等について記載することが望ましい。

出典: 厚生労働省 居宅サービス計画書標準様式及び記載要領

同じ記載要領は、この欄を「利用者及び家族を含むケアチームが確認、検討の上」書くとしています。書いてもらう相手はケアマネジャーですが、記載要領がいう「ケアチーム」には利用者と家族が含まれます。何を書くかは、あなたも一緒に決めます。

頼むときは、次のように言えばそのまま伝わります。

「私が入院して介護できなくなったときの連絡先を、第1表の『総合的な援助の方針』の欄に書いてもらえますか」

4-2. 親の情報を冷蔵庫にまとめておく

連絡先が決まったら、次はその紙の置き場所です。

多くの市区町村が、救急医療情報キットという取り組みを持っています。緊急連絡先やかかりつけの医療機関を書いた用紙、本人の写真、お薬手帳の写し、診察券の写し、保険証の写しなどを容器に入れて、冷蔵庫に保管しておくものです。玄関扉の内側と冷蔵庫の外側にステッカーを貼り、救急隊員がそれを見てキットの中の情報を確認します。

出典: 調布市 救急医療情報キット

なぜ冷蔵庫なのかは、横浜市磯子区がQ&Aで答えています。ほとんどの家庭に冷蔵庫があること、そして多くの市区町村が冷蔵庫に入れる方法で進めていることが理由です。置き場所を各家庭で決めると、駆けつけた救急隊員が見つけられません。

出典: 横浜市磯子区 救急医療情報キット

同じ容器に、介護保険の被保険者証と負担割合証の写しも入れておきます。介護保険法施行規則は、サービスを使うときに被保険者証を提示し、そこに負担割合証を添えなければならない、と定めています。親を預けるときに要るものが、あらかじめ決まっているということです。

出典: 厚生労働省 介護保険法施行規則

住んでいる市区町村がキットを配っていない場合は、同じものを封筒に入れて冷蔵庫に貼っておく方法があります。ただし、自分で決めた置き場所には、救急隊員に知らせるステッカーも市区町村からの周知もありません。どこに置けば救急隊員に伝わるかを、地域包括支援センターや市区町村の高齢者福祉の窓口で確かめてください。

4-3. その場所を自分以外の人も知っている状態にする

最後の1つが、いちばん飛ばされます。連絡先を決めて、冷蔵庫に入れても、それを知っているのが自分だけなら、倒れた日には誰も開けられません。

介護している人自身が高齢であることは、めずらしくありません。厚生労働省の国民生活基礎調査は、要介護者等と同居の主な介護者の年齢の組合せについて、「65歳以上同士」が61.9%、「75歳以上同士」が37.1%だとしています。介護時間が「ほとんど終日」の同居の主な介護者では、配偶者が64.6%を占めます。

出典: 厚生労働省 2025年国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

救急車で運ばれる人の多くが高齢者だという数字もあります。総務省消防庁によると、令和5年中に救急自動車で搬送された664万1,420人のうち、65歳以上の高齢者は409万3,552人で、61.6%を占めました。これは搬送された人全体に占める高齢者の割合であり、介護している人がどれくらい運ばれるかを示す値ではありません。

出典: 総務省消防庁 令和6年版 救急・救助の現況

介護している人自身が高齢である場合、救急車で運ばれるのは親だけとは限りません。そのため、冷蔵庫に何が入っているかを、少なくとももう1人に伝えておきます。伝える相手は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、離れて住むきょうだい、近所の人のうち、連絡が取れる人です。

伝え方は一言で足ります。「私に何かあったときのために、母の連絡先と保険証の写しを冷蔵庫に入れてあります」。

まとめ

倒れた日に親を預ける仕組みは、すでに用意されています。計画に無い日でも使え、満床でも静養室で受け入れられ、老健の短期入所という道もあります。ただしそれを動かすのは制度ではなく、ケアマネジャーという人です。

決めておくのは行き先ではありません。誰に連絡するか、その連絡先をどこに置くか、その置き場所を自分のほかに誰が知っているかの3つです。

次にすることは1つです。次にケアマネジャーと会うときに、自分が入院したときの連絡先を第1表に書いてもらえるかを聞いてください。

ここを飛ばすと、仕組みがあることと、その日にそれが動くことは別のままです。連絡先を知っているのが自分だけなら、自分が動けない日には誰も動けません。

あなたの手元には、書いてもらった連絡先と、それが入っている冷蔵庫の容器が残ります。そして、その置き場所を知っている人が、あなたのほかにもう1人います。

介護のあんしんでは、自分が倒れた日に誰へ連絡するかを先に決め、そこから先の暮らしを組み直せるようにすることも含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。