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昨夜は何回起こされましたか。全部をどうにかする方法を探しているうちに、また次の夜が来ます。
夜を家族の外へ出す形は、介護保険の中では「家に来てもらう」か「泊まりに出す」かの2つだけで、どちらにも上限があります。この記事では、2つの形とそれぞれの上限、そして「週に何回の夜を任せるか」の決め方を順に説明します。
眠れない夜が続くのは、あなたの体力が足りないからではありません。同じ介助でも、夜のほうが重いと答えている家族のほうが多いからです。家族が不安に挙げている介助を数えた集計と、訪問の回数との関係に、その裏づけがあります。
在宅介護実態調査という調査があります。市町村が介護保険事業計画を作るために、全国一律の様式で行う調査です。その問5は「現在の生活を継続していくにあたって、主な介護者の方が不安に感じる介護等」を、17項目の選択肢から3つまで選ぶ形で尋ねています。17項目の1番目は「日中の排泄」、2番目は「夜間の排泄」です。同じ排泄の介助を、調査票が昼と夜に分けて数えています。
この調査の集計には、範囲の限定があります。集計したのは、老健事業の受託者である三菱UFJリサーチ&コンサルティングです。母数は、在宅介護実態調査を実施し、国の自動集計分析ソフトを使用した177自治体から提供を受けた84,364件で、提供は任意です。全国のすべてを数えた官庁統計ではありません。
その集計で要介護3以上(n=13,869)を見ると、17項目のうちいちばん高いのは「夜間の排泄」で35.6%です。次が「認知症状への対応」の35.4%で、「日中の排泄」は30.5%です。介助そのものは同じで、違うのは時間帯だけです。それでも、不安に挙げた家族は夜のほうが多くなっています。
集計をまとめた資料には、次のとおり書いてあります。
要介護3以上では、主な介護者が「在宅生活の継続が困難」と判断する特に重要なポイントとして、「認知症」と「(夜間の)排泄」の2点が挙げられると考えられます。
出典: 全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果〔概要版〕 13頁
同じ集計は、訪問系サービスの利用回数別の値も出しています。要介護3以上で「夜間の排泄」を不安に挙げた割合は、訪問系の利用が0回の層(n=8,781)で37.3%、1〜14回の層(n=2,967)で33.5%、15回以上の層(n=2,121)で31.4%です。
回数の多い層ほど、割合は低くなっています。ただし、これはクロス集計であって、訪問を増やせば不安が下がるという因果までは言えません。同時に、15回以上の層(n=2,121)でも31.4%が夜間の排泄を挙げています。訪問の回数を増やした層にも、夜の負担は残っています。
出典: 全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果〔概要版〕 14頁
夜を家族の外へ出す形は、介護保険の中では数え終わっています。家に来てもらうか、泊まりに出すかの2つです。
探す範囲がこの2つに閉じているので、2つを確かめれば、探す作業はそこで終わります。
家に来てもらうサービスは、訪問介護、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護です。
眠れない家族が探しているのは、泊まり込んで朝までいてくれる形です。その形は、夜を担う訪問系のサービスの中にはありません。夜を担う訪問系の基準には、次のとおり書いてあります。
夜間において、定期的な巡回又は随時通報によりその者の居宅を訪問し、排せつの介護、日常生活上の緊急時の対応その他の夜間において安心してその居宅において生活を送ることができるようにするための援助を行うものでなければならない。
条文は、定期的な巡回と、通報を受けての訪問で組んであります。とどまり続けることを前提にした区分は、この中にありません。
出典: e-Gov法令検索 指定地域密着型サービス基準 第4条
泊まりに出すサービスは、短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護、小規模多機能型居宅介護の泊まり、看護小規模多機能型居宅介護の泊まりです。
泊まった夜は、家での介助が無くなります。ただし、泊まりには日数の上限があります。
介護保険の外で泊まりを頼む形もありますが、給付の外なので全額が自己負担になり、金額の桁が変わります。
新しい制度の名前を覚えるより先に、いま現実に動かせるものがあります。すでに来てもらっている訪問介護の、時間帯です。いまの時間帯をどう動かせるか、料金がどう変わるか、置き換える先はあるかを確かめます。
このうち時間帯の変更は、いまの契約のままできます。
いま日中に来てもらっている訪問介護は、時間帯を夜へ動かせます。事業所を替える必要はなく、いまの契約のまま動かせます。新しいサービスを探し始めるより先に動かせるのが、この形です。
週に何回の夜を任せるかを決めれば、決めた回数がそのまま「夜の訪問を週に何回入れるか」になります。
時間帯を夜へ動かすと、料金の区分が変わります。訪問介護の報酬の基準には、次のとおり書いてあります。
夜間(午後6時から午後10時までの時間をいう。以下同じ。)又は早朝(午前6時から午前8時までの時間をいう。以下同じ。)に指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の25に相当する単位数を所定単位数に加算し、深夜(午後10時から午前6時までの時間をいう。以下同じ。)に指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の50に相当する単位数を所定単位数に加算する。
出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準 訪問介護費 注9
訪問看護にも、同じ時間帯の区分で同じ割増があります。
金額の目安は、単位数で確かめられます。身体介護の所定単位数は、20分未満が163単位、20分以上30分未満が244単位、30分以上1時間未満が387単位、1時間以上が567単位です。介護保険で1か月に使える上限(区分支給限度基準額)は、要介護3で1月あたり27,048単位です。
出典: 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料
この数字をもとに、当サイトで試算しました。前提は3つです。身体介護中心の訪問であること、深夜(午後10時から午前6時)の時間帯であること、1か月を30日として数えることです。端数は四捨五入しています。
深夜に30分以上1時間未満の身体介護を毎晩1回入れると、1か月で17,430単位です。要介護3の限度額27,048単位のうち、64.4%を夜が占めます。1時間の身体介護を毎晩1回にすると25,530単位になり、同じ限度額のうち94.4%です。
限度額を超えた分は、全額自己負担になります。深夜に1時間の訪問を毎晩入れると、要介護3の枠はほぼ夜だけで埋まります。昼のデイサービスもヘルパーも、同じ枠の中に一緒に入れることになります。
夜の訪問そのものを、夜を担う仕組みに置き換える形が、定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。この仕組みは夜の時間帯の定めを持たず、24時間を対象にします。
参考の値が1つあります。定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(Ⅰ)(訪問看護なし・要介護3)は16,140単位で、要介護3の限度額27,048単位のうち59.7%です。
一方、夜だけを担ってきた夜間対応型訪問介護は、2027年(令和9年)4月1日に廃止が決まっています。2026年6月25日公布の社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)の公布通知に、次のとおり書いてあります。
4 夜間対応型訪問介護を廃止する。(改正前第8条第16 項関係)
廃止の理由は、24時間の制度への統合です。令和6年度の介護報酬改定では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(Ⅲ)という「夜間にのみ行うもの」の区分が新設されました。その値段は夜間対応型訪問介護とまったく同じで、基本が1月989単位、定期巡回の訪問が1回372単位です。
出典: 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について 144頁
この仕組みを自分の町で使えるかどうかは、地域によって違います。夜を担う制度のうち4つは地域密着型サービスで、その指定は、指定をした市町村の被保険者に対する給付についてのみ効力を持ちます。
親が住んでいる市町村で使えるかどうかは、市町村の窓口か担当のケアマネジャーで確かめてください。24時間の在宅をどう組むかは別の記事で扱うため、この記事では夜の訪問の置き換え先として選べるかどうかまでにとどめます。
泊まりに出せば、夜の介護は無くなるのか。答えは、そのとおりです。泊まりに出した夜の介助は、家から無くなります。ただし、上限が2つあります。泊まりの形2つと、その日数の上限を確かめます。
泊まれる日数の上限は、形を選ぶ前から決まっています。
ショートステイの正式の名前は、短期入所生活介護です。泊まりを単発で頼めて、いま来てもらっている事業所はそのままです。週に1回でも2回でも、減らしたい夜の分だけ頼めます。
泊まった夜の介助は、家から無くなります。
小規模多機能型居宅介護は、1か所に登録して、通い・訪問・泊まりをまとめて任せる形です。法律の定義には、次のとおり書いてあります。
居宅要介護者について、……その者の選択に基づき、その者の居宅において、又は厚生労働省令で定めるサービスの拠点に通わせ、若しくは短期間宿泊させ、当該拠点において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの及び機能訓練を行うことをいう。
通いと訪問と泊まりを、同じ相手に任せられるのがこの形の特徴です。看護小規模多機能型居宅介護も、泊まりを持ちます。
ただし登録すると、他の事業所のサービスが使えなくなります。
泊まりの日数の上限は、2つあります。
1つ目は、ケアマネジャーを対象にした省令です。居宅サービス計画を作る介護支援専門員(ケアマネジャー)には、次の定めがあります。
介護支援専門員は、居宅サービス計画に短期入所生活介護又は短期入所療養介護を位置付ける場合にあっては、利用者の居宅における自立した日常生活の維持に十分に留意するものとし、利用者の心身の状況等を勘案して特に必要と認められる場合を除き、短期入所生活介護及び短期入所療養介護を利用する日数が要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにしなければならない。
出典: e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等基準 第13条第21号
この条文には、2つのことが同時に書いてあります。上限があること(要介護認定の有効期間のおおむね半数)と、例外があること(利用者の心身の状況等を勘案して特に必要と認められる場合を除く、の部分)です。ケアマネジャーが泊まりの日数に慎重なのは、性格でも遠慮でもありません。ケアマネジャー自身が、この省令の対象だからです。
2つ目は、泊まりを連続して繋いで使い続けたときに当たる、連続した日数の上限です。連続して何日まで使えるのかは別の記事で扱います。週に2〜3回の泊まりを決めるのであれば、この上限には当たりません。
介護保険の外にも、泊まりの形があります。デイサービスの設備に夜も泊まる、いわゆるお泊まりデイです。国の指針は、これを明文で介護保険制度外の自主事業と定めています。連続して何日泊まれるかは国の指針に書かれておらず、決めているのは自治体です。たとえば京都市は条例で、原則7日以内、やむを得ない事情があると認められた場合は14日以内としています。日数は自治体で違うので、親が住んでいる市町村で確かめてください。
出典: 厚生労働省 指定通所介護事業所等の設備を利用し夜間及び深夜に指定通所介護等以外のサービスを提供する場合の事業の人員、設備及び運営に関する指針
組み合わせて使うなら、足せないほうを先に知っておきます。相談の場で組み合わせを断られるのは、担当者の裁量ではなく、落ちる組み合わせが先に決まっているからです。足せない組み合わせは、次の3つです。
3つとも、先に決まっている組み合わせの話です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護と訪問介護の報酬の基準には、それぞれ次のとおり書いてあります。
16 利用者が短期入所生活介護、短期入所療養介護若しくは特定施設入居者生活介護又は夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護……を受けている間は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費は、算定しない。
出典: 厚生労働省 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準 定期巡回・随時対応型訪問介護看護費 注16
17 利用者が短期入所生活介護、短期入所療養介護若しくは特定施設入居者生活介護又は定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護……を受けている間は、訪問介護費は、算定しない。
出典: 厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準 訪問介護費 注17
24時間の仕組みを選ぶと、いま来てもらっているヘルパーの訪問介護は、算定されなくなります。「夜は定期巡回、昼はいままでのヘルパー」は組めません。
小規模多機能型居宅介護に登録すると、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護・短期入所療養介護などが算定されなくなります。
泊まりに行っている日は、家に来てもらう分がまるごと使えません。上の2つは選んだ時点で決まりますが、これは日ごとに分かれます。泊まらない日の訪問は、そのまま使えます。
相談の場へ持って行くのは、制度の名前ではなく、週に何回の夜を任せるかという数字です。手段を先に決めると、その手段の上限が、そのまま夜の設計の上限になります。回数を先に決めておけば、上限に当たったときに、手段のほうを選び直せます。
夜がどれだけ無くなるかの大きい順に、手段は5つあります。
この5つのうち、単発のショートステイと、夜へ動かした訪問介護は、定期巡回とヘルパーの組み合わせにも、登録して使う形にも当たりません。足して、週の回数を作れます。
決めた回数を書く場所は、居宅サービス計画書の標準様式の第3表「週間サービス計画表」です。記載要領には、次のとおり書いてあります。
3 第3表:「週間サービス計画表」
第2表「居宅サービス計画書(2)」の「援助内容」で記載したサービスを保険給付内外を問わず、記載する。なお、その際、「援助内容」の頻度と合っているか留意する。
短期入所は「週単位以外のサービス」の欄に、各月に利用する分として書きます。「主な日常生活上の活動」の欄には、起床・就寝・体位変換・家族の支援を書くことになっています。夜に家族が何をしているかを書く欄が、第3表にあります。給付の上限(区分支給限度基準額)は、1月あたりで数えます。
つまり、「週に何回」で決めることは、思いつきではありません。計画の様式が週で書く形をしていて、給付の上限が月ごとに数える形をしているからです。
決めた回数を居宅サービス計画へ載せてもらうとき、ケアマネジャーに確かめることは3つです。
制度の名前を覚える必要はありません。決める数字が1つだけあります。在宅の夜の設計であなたが決めることは、週に何回の夜を任せるか、それだけです。任せる形と上限は数え終わっているので、回数さえ決まれば、手段はその回数に合わせて選べます。
次にすることは、その数字を決めて、担当のケアマネジャーへ相談に持って行くことです。これを飛ばして手段の名前から探し始めると、最初に目に付いた手段の上限が、そのまま夜の設計の上限になります。
あなたの手元には、夜を任せる形の一覧と、自分で決める数字が1つ残ります。
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