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親を家で介護しながら特別養護老人ホーム(特養)に申し込み、受理されましたと言われてから、電話は鳴らないままです。うちは今、何番目なのだろう。そう思いながら待っています。
特養の順番は、申し込んだ日を基準にした列ではありません。施設が点数を付けて並べた名簿で、その点数は、あなたが申込書を書いた日の状況で付いています。
順番の決まり方と、申し込みが切れることがある理由、状況が変わったときに出す届け、順番が来たときの返事の仕方を、順に見ていきます。
決めているのは、申込書を受け取った職員ではありません。誰が、何をもとに決めているのかが分かると、待っているあいだにできることも決まります。
入所の決定は、施設に置かれた委員会の話し合いで行われます。
厚生労働省が自治体へ示している指針は、「施設に、入所に関する検討のための委員会を設け、入所の決定は、その合議によるものとすること。」としています。委員会は施設長と生活相談員、介護職員、看護職員、介護支援専門員などで構成し、施設の職員以外の人にも参加を求めることが望ましいとされています。
出典: 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1141「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」の一部改正について
申し込んだ順に入らない根拠は、全国共通の運営基準にあります。第7条第2項は、申込者の数が空いている床の数を超えている場合について、施設は「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならない。」と定めています。
出典: e-Gov法令検索 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
語尾は「努めなければならない」です。必ずそうなると決まっているわけではありません。それでも、申込日ではなく介護の必要の程度と家族等の状況で優先を決めるように、と国が施設に求めています。
点数が付くのは、親の状態だけではありません。
国の指針は、「介護の必要の程度」について「要介護度を勘案することが考えられること。」、「家族の状況」について「単身世帯か否か、同居家族が高齢又は病弱か否かなどを勘案することが考えられること。」としています。そのほかの勘案事項として「居宅サービスの利用に関する状況」も挙げています。
出典: 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1141「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」の一部改正について
実際の配点は、自治体ごとの指針で決まります。神戸市の入所指針は、100点を3つに分けています。本人の状況が50点、介護の必要性が25点、在宅介護の困難性が25点です。
「介護の必要性」は在宅サービスの利用率で点数が分かれ、「在宅介護の困難性」は、身寄りや介護者が誰もいないこと、主たる介護者の長期入院や高齢・障害、ほかにも要介護者がいること、就業や育児で介護が難しいことなどで点数が分かれます。
これは神戸市の配点で、全国どこでも同じではありません。ただ、親の要介護度だけでなく、介護している人が働いているか、病気をしていないか、家の中にほかにも介護が必要な人がいないかが点数になることは、国が示した勘案事項とも重なります。
名簿の順番は、前に進むだけではありません。
神戸市のQ&Aは、入所時期の見込みについて「退所者がいつ頃、何名退所するかによって変化するため、これを予測することは困難です。」としたうえで、「後から入所の必要性の高い方が申し込んできた場合など、入所の優先順位が変わることがあります。」と書いています。
1年待った人の後ろに、あとから申し込んだ人が並ぶとは限りません。点数が高ければ、前に入ります。
聞けるものと、聞いても答えてもらえないものが分かれています。しかも、その分かれ方が地域で違います。
名簿の順番を伝える自治体もあれば、答えないと決めている自治体もあります。
宮城県が示している入所規程の参考例には、「名簿の順番については、ご本人様又はご家族の方のご依頼があればお教えします。」と書かれています。
出典: 宮城県 指定介護老人福祉施設等入所指針(入所規程参考例)
神戸市は逆です。Q&Aに「入所の優先順位や時期についてはお答えすることができません。」とはっきり書いています。
同じ「何番目ですか」に、地域で逆の答えが返ります。答えてもらえなかったとしても、その施設が隠しているわけではありません。
順番を答えない神戸市も、点数は答えられるとしています。
同じQ&Aは、こう書いています。「個人ごとの評価結果(点数)については、入所指針の客観的基準であり、問合せがあればお答えできると考えていますが、入所の優先順位や時期についてはお答えすることができません。」
順番が分からなくても、点数が分かれば、自分の家の事情が今どう登録されているかは確かめられます。聞き方を「うちは何番目ですか」から「うちの評価は何点になっていますか」に変えると、答えが返ってくることがあります。
点数の付け方そのものも、家族が見られます。
国の指針は、「指針は公表するとともに、施設は、入所希望者に対してその内容を説明するものとすること。」としています。
出典: 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1141「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」の一部改正について
神戸市のQ&Aも「入所指針の内容は、希望される方にお示しできます。」とし、市のホームページで公開していると書いています。あわせて、内容が専門的な部分もあるため、ケアマネジャーなどから説明を受けてほしいと添えています。
自分の市区町村の名前と「特別養護老人ホーム 入所指針」で探すと、点数表まで公開されていることがあります。
厚生労働省は、公表している特養の入所申込者の数に注意を付けています。「長期間にわたり各施設の申込者名簿に登載されている方も含まれております」としたうえで、「必ずしも現に入所を必要としている場合に限らない点に留意する必要があります。」としています。
出典: 厚生労働省 特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)
名簿に載っている人と、いま入所が必要な人は、同じではありません。そのため、自治体の指針は申し込みを整理する仕組みを持っています。
申し込みそのものに期限を置いている自治体があります。
千代田区の入退所指針は、「入所申込みの有効期限は当該年度末日とし、翌年度の入所申込みの継続を希望する者は、再度申込を行うものとする。」としています。
年度が変われば、申込書はもう一度出すことになります。出さなければ、翌年度の名簿には載りません。
期限を置かず、確認への返事で維持する形もあります。
神戸市の入所指針は、施設が「入所申込みの継続意思並びに入所申込者及び介護者等の状況について、原則一年に一度必要な調査を行う」としています。
返送しないとどうなるかも、Q&Aに書かれています。「確認調査票が返送されないと、入所申込みの意思が確認できないことだけでなく、入所申込者や介護者の状況についても確認できませんので、正確な評価ができないため評価を保留せざるを得ません。」そして「入所申込みを行っていただいていても、評価ができなければ入所することができないことになります。」と続きます。一定期間(2年以上)返送がない場合は「入所申込みを取消扱いとします」としています。
申込書が名簿にあることと、順番が進むことは別です。返事をしないあいだ、評価は保留されたままになります。
施設から確かめてくれる仕組みもあります。ただし間隔があります。
京都市の入所指針は、「優先入所該当者名簿は,少なくとも6箇月に一度は点検を行い,更新していくこととする。」としています。
出典: 京都市 介護老人福祉施設入所指針
宮城県の参考例は、調書に書いた内容が変わったとき「お申し出により、再度調書を作成します。なお、お申し出がない場合は、1年に1度程度、○○苑から記載内容に変化がないか確認させていただくことがあります。」としています。
出典: 宮城県 指定介護老人福祉施設等入所指針(入所規程参考例)
この2つは京都市と宮城県の例で、点検の間隔は申し込み先ごとに違います。点検までのあいだに親の状態や介護の事情が変われば、名簿の上の点数は古いままになります。自分の申込先が、年度末で切れる型なのか、意思の確認で維持する型なのか、施設が点検する型なのかは、申し込んだ施設か市区町村の窓口で確かめられます。
点数は、申込書を書いた日の状況で付いています。変わったことを届けるまで、書いた日のままです。何を、どこへ、どう伝えるかを見ていきます。
届ける先は、申し込んだ施設です。
京都市は、入所申込後に要介護度などが変わった場合や申込みを取り下げる場合、担当のケアマネジャーを通じて「様式4(入所申込変更(取下げ)届)を各施設に提出してください。」と案内しています。届け出る主な事項は「要介護度」「主たる介護者の状況」「居住環境」などです。
出典: 京都市 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所指針について
神戸市は、要介護度や在宅サービスの利用率に大きな変化があった場合、「添付書類を添えて特別養護老人ホームへ変更の申し出を行ってください。」としています。添付書類は「認定調査票(写)」「被保険者証(写)」「サービス利用票及び別表(写)」のうち、変更に関するものです。
京都市の入所申込書には、申込者が署名して出す文として、次の一文が印刷されています。「なお,入所の待機中に,貴施設以外の施設に入所が決定した場合,また,要介護度や連絡先,介護の状況等について変更がありました場合は,速やかに貴施設に連絡いたします。」
変更があれば速やかに連絡すると、申し込んだときにすでに約束して出しています。届け出は、あらためてお願いすることではありません。
届け出た後に何が起きるかも、指針に書かれています。
京都市の入所指針は、名簿の見直しについて、少なくとも6箇月に一度の点検に加えて、こう定めています。「ただし,総合評価A以外に該当する申込者で,心身や居住環境等の状況変化等により変更の届出があった場合や,入所の必要性の高い新規申込者があった場合は,入所検討委員会において,随時変更を行う。」
出典: 京都市 介護老人福祉施設入所指針
定期の点検を待つと、次の見直しまで半年近く空くことがあります。届け出れば、その回の委員会で見直されます。順位が上がると決まっているわけではありませんが、少なくとも今の状況で評価されます。待つあいだに次に確かめ直す日を先に決めておく方法は、別の記事にまとめています。
待っているあいだに要介護度が下がることもあります。
特養への入所は、平成27年4月1日以降、原則として要介護3以上に限られています。ただし要介護1・2にも特例入所があります。国の通知は、「居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があることによる要介護1又は2の方の特例的な施設への入所(以下『特例入所』という。)が認められている。」としています。
特例入所の判定で十分に考慮するとされている事情は4つです。認知症で日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること。知的障害・精神障害等を伴い、同じような困難さが頻繁に見られること。家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること。単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること。
出典: 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1141「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」の一部改正について
千代田区の指針は、入所候補者が要介護1・2に下がったとき、施設が区と話し合って特例入所に当たるかを判断し、当たらないと判断したときは名簿から削除して本人へ通知するとしています。
自動で残るのでも、自動で消えるのでもありません。あいだに判断が入ります。
答えは地域で分かれます。あわせて、複数申し込んだことが公表の数字にどう出るかも見ておきます。
神戸市のQ&Aは「複数施設への申込みは可能です。」と明記しています。そのうえで、必要性が高ければ比較的短い期間で入所できることや、施設が居住地などの地域性を考えることから、「広域的に多くの施設に申し込まれる必要はないと考えています」と続けています。これは神戸市の考え方です。実際に申し込み先を増やすかどうかの判断は、別の記事で扱います。
千代田区は形が違います。区が入所申込者名簿をまとめて管理していて、施設ごとの入所候補者名簿に載った人については、「他の施設への申込みをすることができない。」としています。制限がかかるのは入所候補者名簿に載った段階で、申し込みそのものができないという意味ではありません。
京都市の入所申込書には、その施設だけに申し込むのか、ほかにも申し込む予定があるのか、その箇所数を書く欄があります。複数の施設に申し込むことは様式の側で織り込まれていて、そのうえで箇所数の申告が求められている、ということです。
複数の施設に申し込んでも、公表される数は増えません。厚生労働省が公表している特養の入所申込者は、2025(令和7)年4月1日時点で、要介護3以上が全体20.6万人、そのうち在宅の人が8.6万人です。要介護1・2は全体1.8万人、そのうち在宅が0.9万人です。
厚生労働省は、入所申込者数について「重複申込等(複数の施設への申し込み、申し込み後の死亡等)を排除して入所申込者の実数に近づけるよう各都道府県に依頼しているものです。」としています。
出典: 厚生労働省 特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)
20.6万人は、施設へ出された申込書の枚数ではありません。同時に、この数字から自分の待ち時間を割り出すこともできません。
入所の連絡が来て、まだ決められないときにどうなるか。断ったときの扱いは、申し込み先ごとに違います。
断ると、順位が下がるか、名簿から外れます。
神戸市の入所指針は、「申込者の都合により一時辞退があった場合は順位を繰り下げ、再度の辞退があった時は受付簿から削除することができる。」としています。
千代田区は、入所の意思確認のときに自分の都合で辞退した場合、申込みを取り下げたものとみなして扱うとしています。
宮城県の参考例は、施設から連絡した際に辞退された場合「その日から半年間、名簿からお名前を削除いたします。」としています。
出典: 宮城県 指定介護老人福祉施設等入所指針(入所規程参考例)
外れている期間も、決まり方が違います。
千代田区は、取り下げた日から起算して「3月間、施設の入所の申込みを行うことができない。」としています。
宮城県の参考例は半年です。京都市は、辞退などを理由に申込みを取り消した人が再び入所を希望する場合は「改めて申し込まなければならない」としています。
出典: 京都市 介護老人福祉施設入所指針
3か月あけるのか、半年あけるのか、申し込み直しになるのか。断る前にどれなのかが分かっていないと、返事は決められません。
断ったときの扱いは申し込み先ごとに違うので、確かめる相手は、自分が申し込んだ施設です。
申し込んだ施設に電話をして、聞くことは6つです。
初めの3つが分かっていれば、電話が鳴った日に決めるのは、入るか入らないかだけになります。残りの3つは、名簿の上の自分の家がいまどう登録されているかを確かめるものです。
特養の順番は、申し込んだ日を基準にした列ではありません。施設の委員会が点数を付けて並べた名簿で、その点数は、あなたが申込書を書いた日の状況で付いています。
待っているあいだにすることは、順番を待つことではありません。点数のもとになっている情報を、今のものにしておくことです。
次にすることは1つです。申し込んだ施設に電話をして、6-3に挙げた6つを聞いてください。返事の期限、断ったときに順位や名簿がどうなるか、いつからまた申し込めるか、申し込みに有効期限があるか、継続の意思をどのくらいの間隔で確認するか、今の評価は何点かです。
親の状態や、あなたの働き方や、使っている在宅サービスが変わったときは、そのつど施設へ伝えます。伝えないかぎり、名簿の上のあなたの家は、申込書を書いた日のままです。
介護のあんしんでは、申し込みを出した後に家族が確かめられることも含めて、介護に向き合うあなたに信頼できる情報を提供しています。