特養(特別養護老人ホーム)の待機状況は何ヶ月?何年?地域別の空き状況と最新統計動向

特別養護老人ホーム(特養)への入所を検討する際、最も気がかりなのは「いつ入所できるのか」という「空き状況」に関する点だと思います。

全国的には待機期間に大きな地域差があるので注意が必要です。

本記事では、統計データと経験を基に、特養の待機期間の実態と入所までの期間を左右する要因について詳しく解説していきます。

特別養護老人ホーム(特養)の空き状況の目安

特養への入所にかかる待機期間は、地域によって大きく異なり、場所によって約2倍もの開きがあります。この待機期間は、要介護度や家族状況、施設の立地など複数の要因で変動するため、入所を検討する際はこれらの要素を総合的に考慮する必要があります。

特養の平均的な空き状況は何ヶ月?何年?

都市部の平均待機期間は1~3年でみると良いでしょう。東京都、神奈川県、大阪府など都市部では、平均待機期間が1~3年ほどです。中には3年以上待つケースもあり、人気のある施設や要介護度が高い方が優先される施設ではさらに長くなることもあります。

地方の平均待機期間は半年~2年が目安です。地方では都市部ほどの待機リストはないものの、入居希望者が多いため半年から2年程度の待機期間が一般的です。県庁所在地や中核都市など人口が多いエリアでは、都市部と同様に待機期間が長くなる傾向があります。

空き状況に影響を与える要因は?

特養の待機期間にはいくつかの要因が影響します。主な要因を以下にまとめます。

1.要介護度
特養では要介護度が高い方が優先的に入居できます。要介護3以上が入居対象ですが、特に要介護4や5の方や、家族が介護できない緊急性が高い場合は待機リストの上位に配置され、空きが出た際に優先されます。要介護度が低いと待機期間が長くなる傾向があります。

2.施設の立地と人気
都市部や評判が良い施設は待機人数が多く、入居までに時間がかかります。逆にアクセスが悪い地域や小規模施設では空きが出やすいこともあります。都市部にある特養ほど待機期間が長くなる傾向です。

3.自治体の方針や地域差
自治体によって特養への入居優先度の基準が異なるため、待機期間も地域ごとに差があります。特に都市部の自治体では、需要に対して供給が不足しているため、待機期間が長くなる傾向があります。

4.家族のサポート状況
家族の介護体制が整っていない場合(例:家族が遠方に住んでいる、共働きで日中の介護が難しいなど)は、緊急性が高いと判断され、待機期間が短縮されるケースがあります。一方、家族がある程度サポートできると判断されると、待機期間が長くなる場合があります。

特養の空き状況の最新統計情報

入所を希望する方々にとって最も気になるのは実際の空き状況(=待機状況)です。以下では、厚労省などの行政機関等が保有する公共データから、地域ごとの特徴や経年変化を分析していきます。

入所を検討されている方々の判断材料として、また介護施設の整備状況を理解する上で重要な指標となります。

全国の特養の空き状況

厚生労働省が2022年(令和4年)に実施した全国調査によると、特養への入所申込者数は着実に変化を見せています。この調査は47都道府県すべてを対象としており、複数施設への重複申し込みや申し込み後の死亡などを除外した実質的な待機者数を示しています。

注目すべきは、要介護3以上の方の待機者数が2019年から2022年にかけて大きく減少したことです。2019年には全体で29.2万人(うち在宅者11.6万人)だった待機者数が、2022年には25.3万人(うち在宅者10.6万人)まで減少しました。これは3年間で全体として3.9万人の減少を意味します。

特例入所の対象となる要介護1・2の方についても同様の傾向が見られます。2019年の全体3.4万人(うち在宅者1.6万人)から、2022年には全体2.2万人(うち在宅者1.1万人)へと減少しました。

出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」

地域別の特養の空き状況

地域別の分析からは、都市部における特養需要の特徴が浮かび上がってきます。全国25.3万人の待機者のうち、最も多くを占めるのが関東地方です。これは首都圏特有の社会構造が影響していると考えられます。共働き世帯の増加や急速な高齢化が、施設介護への需要を押し上げている要因として挙げられます。

次いで待機者が多いのが近畿地方で、特に大阪府や兵庫県といった都市部での需要が顕著です。一方、中部地方や中国・四国地方でも、新潟県や広島県など人口規模の大きな地域を中心に、一定の待機者数が確認されています。

九州・沖縄地方は相対的に待機者数が少ないものの、福岡県などの都市部では依然として需要が高い状況が続いています。

この地域差からは、都市部における施設介護の需要の高さと、地方における状況の違いが明確に読み取れます。このような地域特性を理解することは、今後の施設整備や介護サービスの計画において重要な示唆を与えてくれます。

都道府県別・地方別の空き状況(入所申込者数)一覧表

まず、各地方別に特養への入所申し込みをしている人数の一覧表です。申し込み人数(=待機人数)の多い所は、入居できるまでに時間のかかる可能性が高いと考えられます。

地方 申込者数(人)
北海道・東北地方 39,277
関東地方 63,927
中部地方 42,746
近畿地方 44,760
中国・四国地方 35,611
九州・沖縄地方 26,730

次に、各地方ごとに都道府県別の特養への入所申し込みをしている人数の一覧表です。近隣の都道府県と比べて、お住いの都道府県の待機人数が多いか少ないか見てみましょう。

北海道・東北地方 申込者数
北海道 9,245
青森県 4,063
岩手県 4,415
宮城県 5,347
秋田県 6,120
山形県 3,966
福島県 6,121

関東地方 申込者数
茨城県 4,762
栃木県 2,892
群馬県 2,630
埼玉県 7,247
千葉県 10,663
東京都 21,495
神奈川県 14,238

中部地方 申込者数
新潟県 8,318
富山県 2,755
石川県 1,592
福井県 2,035
山梨県 4,878
長野県 5,346
岐阜県 5,740
静岡県 5,069
愛知県 7,013

近畿地方 申込者数
三重県 4,191
滋賀県 5,285
京都府 9,012
大阪府 10,687
兵庫県 11,534
奈良県 2,261
和歌山県 1,790

中国・四国地方 申込者数
鳥取県 1,839
島根県 3,604
岡山県 5,789
広島県 9,491
山口県 4,563
徳島県 1,275
香川県 2,883
愛媛県 4,366
高知県 1,801

九州・沖縄地方 申込者数
福岡県 6,909
佐賀県 1,400
長崎県 3,498
熊本県 3,188
大分県 2,077
宮崎県 2,536
鹿児島県 4,198
沖縄県 2,924

出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)に関する調査結果」
参考:政府統計の総合窓口e-Stat

特養の空き状況の更新頻度とタイミング

特別養護老人ホーム(特養)への入所を検討する際、気になるのが空き状況の更新頻度と更新されるタイミングの情報です。ここでは、必ずしも絶対的な答えではありませんが考えられる可能性を具体的に解説していきます。

空き状況の情報の更新頻度は?

まずは自治体による空き状況の情報についてです。多くの自治体が、管内の特養の空き状況を取りまとめたサイトを運営しています。この更新頻度は一般的に週に1回が多いです。例えば、毎週月曜日にまとめて更新されるケースが多く、最新情報は月初や週初めに更新されることが多いです。

次に、施設独自の情報発信についてです。特養自体が直接情報を発信する場合、更新頻度は施設によりますが、少なくとも月に1回程度は更新されるケースが一般的です。空きが出た際にすぐ更新する施設もありますが、これは少数派で、多くの施設は週1〜月1程度の更新です。

実践的なアドバイスとしては、毎週の決まった曜日に確認することをおすすめします。自治体のまとめサイトや施設のホームページを毎週月曜日や週の初めにチェックする習慣をつけると、最新情報を見逃しにくくなります。

また、一番良いのは施設に直接問い合わせることです。特に人気の施設では空き状況が更新される前に埋まってしまうこともあるため、空きが出るタイミングが知りたい場合は、施設に直接電話で確認するのが確実です。ただし施設に迷惑にならない程度にしましょう。また、自治体の福祉課へ電話して確認することも検討してください。

特養の空きが出るタイミングの予測

空きが出るタイミングは多くの要因に左右されるため完全な予測は困難ですが、いくつかのポイントが参考になります。

まず、冬から春にかけて(12月〜3月)です。特に寒い時期は高齢者の体調悪化が増え、施設内での入退所が多くなる傾向があります。このため、年末年始や春先(12月〜3月)は、比較的空きが出やすい時期とされています。

次に年度初め(4月)です。新しい年度の始まりに合わせて、施設側が待機リストの更新を行い、新規入所者を受け入れる準備をすることが多いため、4月は空きが発生しやすい時期とされています。

空きが出やすい曜日と時間帯に関しては、「月初や月末の平日」が考えられます。多くの施設が入退所を管理する都合上、月初や月末、特に平日の午前中に入所や退所が処理されることが多いです。このため、空きが出やすいタイミングとしては、月の初めと終わり、平日の午前中が狙い目です。

また、「毎週月曜日・火曜日」も狙い目と考えられます。週の始めに空き状況が更新されやすいため、月曜日や火曜日の午前中に問い合わせると、最新の空き状況を得やすいです。

このように、複数の情報源と手段を組み合わせることで、より確実に空き状況の情報を得ることができます。特養への入所を検討される方は、これらの方法を状況に応じて使い分けることをお勧めします。

特養の待機期間を短くして入居可能性を上げる方法8選

特養の待機期間は、地域や施設により異なりますが、一般的に半年から数年程度とされています。都市部では待機人数が多く1年以上待つことが一般的ですが、地方や小規模な地域では比較的短い場合もあります。

この待期期間の現実に対して戦略的にとれる手段をお伝えします。

1. 複数の特養施設に同時に申し込む

入居の可能性を上げるため、複数の特養施設に同時に申し込みを行うことが有効です。各施設での待機人数や待機時間は異なるため、同時に複数の施設で空きが出るのを待つことで、早く入居できる確率が上がります。

注意点としては、施設によっては他の特養との二重申請が可能かどうか確認が必要です。申込先の施設が複数になると手間は増えますが、入居が早まる効果が期待できます。

2. 市区町村の優先度の高い申請者の基準を理解して、条件を確認する

多くの市区町村では、入居の優先順位を「要介護度」「家庭の介護負担」「独居や身寄りの有無」などで決めています。入居を早めるためには、自治体が定める優先順位の基準を理解し、それに沿った申請を行うことが重要です。

具体的なポイント
・要介護度が高い(要介護5に近いほど優先度が高い)場合、入居しやすくなります。
・家庭での介護負担が重い場合(介護者が高齢や病気で介護が難しい、あるいは仕事や家庭の事情で負担が大きい場合)も優先されやすくなります。
・独居や身寄りがいないケースや、家庭での支援が困難な場合も優先度が高まる傾向があります。

必要であれば、これらの状況をしっかりと書類に記載し特養側に伝わるようにするのも一つの方法です。自治体の担当者に相談して、優先度が上がる条件に該当しているかを確認しましょう。

3. ケアマネージャーに入居優先度を上げるための書類作成をサポートしてもらう

ケアマネージャーは、申請者や家族の現状をよく理解しているため、必要な情報を的確に書類に反映する手助けをしてくれます。特に、申請者の状態や家庭での支援体制について詳細に記載することで、施設側に優先度の高さが伝わりやすくなります。

ケアマネージャーに、申請者の介護負担や健康状態、家庭の介護環境について詳細に書いてもらい、優先度を上げるための補足資料として提出します。現状を適切に反映することで、特養の入居の判断基準に沿った情報提供ができます。

4. 希望する地域の特養だけでなく、近隣地域の特養も検討する

希望する市区町村に特養の空きがない場合、近隣の自治体の特養に申し込みを行うことで、入居可能性が上がることがあります。近隣の地域であれば、通える範囲であったり、少し待機期間が短くなる場合もあります。

具体的には、各地域の特養施設に問い合わせ、入居者の受け入れ対象として市外からも受け付けているか確認します。また、近隣の自治体や地域包括支援センターで、近隣地域の特養について相談することも有効です。

注意点としては、近隣地域の特養を検討する場合は家族の面会や通いやすさも考慮しましょう。

5. 待機期間中にショートステイを活用する

特養入居までの待機期間が長引く場合、ショートステイ(短期入所)を併用することで、施設側が入居の必要性を理解しやすくなることがあります。特養のショートステイを繰り返し利用することで、空きが出た場合に入居候補として優先されるケースもあります。

具体的には希望する特養でショートステイを利用できるか確認し、定期的に利用するスケジュールを組むことで、施設側との接点を増やし、入居に関するアピールにつながります。

6. 空き状況のこまめな確認と更新依頼を行う

特養は空き状況が日々変動するため、こまめに空き状況を確認し、施設や福祉課に定期的に状況を確認することで、空きが出た際に早めに連絡を受けやすくなります。

具体的には、数週間おきに希望する特養施設や市区町村の福祉課、ケアマネージャーに空き状況を確認するよう依頼します。また、特養施設のホームページや介護サービス事業者情報公表システムなどで、最新の空き状況をチェックすることも有効です。

注意点としては施設側や福祉課に過度に連絡すると、迷惑と受け取られることもあるため、定期的な確認の頻度を保ちながら進めましょう。

7. 独居または介護者がいない状況を証明できる書類を準備する

独居であるまたは介護者がいない場合、入居優先度が高くなります。家庭での支援が難しい状況を証明する書類を添付し、入居の必要性を伝えます。

具体的な書類としては、独居であることを証明する住民票や、介護者が他にいないことを示す書類を提出します。家族が遠方に住んでいる場合なども、申請書に記載しておくと、入居優先度が高まることがあります。

ただし虚偽の申請は厳禁です。必要な情報を適切に記載し、実際の状況が施設側に伝わるようにしましょう。

8. 社会福祉法人の運営する特養に申し込む

特養は市区町村だけでなく、社会福祉法人によって運営されている場合もあります。法人が複数の特養を運営している場合、その法人を通じて複数施設の空き状況を確認しやすくなるため、入居可能性が高まることがあります。

具体的には、社会福祉法人の窓口に問い合わせ、法人内で複数施設に申し込みが可能か確認します。場合によっては、申し込みを一括で受け付けていることもあるため、効率的に申し込みを進められることもあります。

まとめ

特養への入所待機期間は、地域や要介護度、家族状況など、様々な要因によって変動します。都市部では1~3年、地方では半年~2年が目安となりますが、これはあくまで平均的な期間です。

より早期の入所を希望する場合は、複数の施設への申し込みや、定期的な空き状況の確認、そして何より早めの準備が重要です。また、地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談し、個々の状況に応じた具体的なアドバイスを受けることをお勧めします。